明日の子供たち の商品レビュー
「児童養護施設」を扱った話。 なんだか重たい話のようで、なんだか避けたくなりそうなのに、作中で描かれている世界は、暗さや、辛さが見えながらも、どこか温かく、優しい。 他の、有川浩さんの作品と同じように。 それはきっと、「当事者」である、奏子と久志が、安心して暮らせる施設で暮らし、...
「児童養護施設」を扱った話。 なんだか重たい話のようで、なんだか避けたくなりそうなのに、作中で描かれている世界は、暗さや、辛さが見えながらも、どこか温かく、優しい。 他の、有川浩さんの作品と同じように。 それはきっと、「当事者」である、奏子と久志が、安心して暮らせる施設で暮らし、「自分は大切にされている」 と以前の環境より思えて、「必要とされている」とまでは思えなくても「誰かに必要とされる存在でありたい」と思えていて、「社会に出ても恥ずかしくない自分でいたい」と思っているからじゃないかと感じた。 読みながら、高校生の時に学校で希望者を募っていたことをきっかけに、一度児童養護施設に行ったことを思い出した。施設に着くと、ものすごい勢いで幼稚園くらいの子たちが寄ってきた。笑顔で。あれは、子どもたちに、試されていたのだと、本を読みながら、10年越しに知って衝撃を受けた。彼らにとって、どんな人間に見えたのだろう。たった1日、数時間の関わりだけれど、「やっぱり人間は信じられない」というような、失望を与えていなかったらいいな、と願う。そして、幸せに、未来を見据えて、暮らしていてほしいと切に願った。 最後まで読み、何故、有川浩さんが、この本を執筆するようになったのか知り、またまた衝撃を受けた。 この本は、一種の「種まき」であり、一種の「未来への投資」だと思う。 自分と関わりのない世界のことを知るのは、難しい。いつの間にか、勝手なイメージを持ってしまう。この本がもっと広まり、児童養護施設の理解や支援につながっていってほしいと思う。 私に確かに植えられた種に、どう水をやり、育てていくのか、考え続けたい。 そして、新たに、種を蒔くために、他の人にもこの本を強く勧めたいと思う。
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児童養護施設で働くことになった新人職員、先輩職員、ベテラン職員、入所している男女の高校生、主語が次々と入れ替わる不思議な作品。 この手の小説は、それぞれのショートストーリーが最終章で全て繋がるのが定番だが、この作品ではそれぞれの章で主人公が変わるのに、自然に話は繋がっていく。 有...
児童養護施設で働くことになった新人職員、先輩職員、ベテラン職員、入所している男女の高校生、主語が次々と入れ替わる不思議な作品。 この手の小説は、それぞれのショートストーリーが最終章で全て繋がるのが定番だが、この作品ではそれぞれの章で主人公が変わるのに、自然に話は繋がっていく。 有川浩さんの読ませる力に圧倒された。 児童養護施設で生活する子どもについて、多くの人が抱いている先入観に対する価値観の転倒が見事に成功している。 あまり注目されることのない児童養護施設については、偏見が多いと思う。誇張の少ないこういう作品が広く読まれたらいいのに。
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自分が5年間児童養護施設と密に関わっていたので、この作品が世に出た意味の大きさを感じた。 かなり詳細に取材したことがうかがえるリアルさで、多くの人に児童養護施設の現状を知ってもらうきっかけとなるには十分な作品。人気作家の有川浩がこのような作品を描いてたくれたことに感謝。 この作品...
自分が5年間児童養護施設と密に関わっていたので、この作品が世に出た意味の大きさを感じた。 かなり詳細に取材したことがうかがえるリアルさで、多くの人に児童養護施設の現状を知ってもらうきっかけとなるには十分な作品。人気作家の有川浩がこのような作品を描いてたくれたことに感謝。 この作品を通して、児童福祉にスポットが当たったり何か支援をするきっかけになれば嬉しい。そうは言っても何かするのは難しいと思うので、「知る」というスタートラインに読者を立たせてくれることに意義がある。
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児童養護施設の子供たちと、そこで働く職員の日常を描いた物語。有川浩らしく生き生きとした会話が多く、施設への暗いイメージが払拭される。正義感に燃える新人職員三田村の奮闘も微笑ましい。「解説」から、かなり実際の施設の様子に近いことが分かる。子供たちは「明日の大人たち」。児童福祉の意義...
児童養護施設の子供たちと、そこで働く職員の日常を描いた物語。有川浩らしく生き生きとした会話が多く、施設への暗いイメージが払拭される。正義感に燃える新人職員三田村の奮闘も微笑ましい。「解説」から、かなり実際の施設の様子に近いことが分かる。子供たちは「明日の大人たち」。児童福祉の意義について考えさせられる。
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児童養護施設を舞台にした話。どの登場人物も良かった!新人三田村はついつい応援したくなるタイプ。バレンタインのチョコがもらえるかそわそわするのも可愛い。カナとヒサの初恋も初々しくてにやにやしてしまう。手紙の文面協力、という一文を見てびっくり。本当に手紙が来たのかな。かわいそうだと思...
児童養護施設を舞台にした話。どの登場人物も良かった!新人三田村はついつい応援したくなるタイプ。バレンタインのチョコがもらえるかそわそわするのも可愛い。カナとヒサの初恋も初々しくてにやにやしてしまう。手紙の文面協力、という一文を見てびっくり。本当に手紙が来たのかな。かわいそうだと思って欲しくない、とカナは言うが、この本を読んでもやっぱりかわいそうだな、と思う
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「児童養護施設」「社会的養護」 言葉は聞いたことがある。 言葉から意味を連想することもできる。 でも、本当の意味はまだ知らない。 私たちは、経験からしかモノゴトを考えることができない。 だから、人と話したり、本を読んで他の人の経験から学ぶことが大切なんだ。 知らないことを責め...
「児童養護施設」「社会的養護」 言葉は聞いたことがある。 言葉から意味を連想することもできる。 でも、本当の意味はまだ知らない。 私たちは、経験からしかモノゴトを考えることができない。 だから、人と話したり、本を読んで他の人の経験から学ぶことが大切なんだ。 知らないことを責めることはできない。 し、だからこそ知って行かなければいけないんだろうなあ。 「本を読むのは物知りになれるから素敵なんだって」 「今は、いろんな価値観を知ることができるから素敵なのかなって」 どれも正解。正解なんてない。 久志の気持ちがストンと落ちた。
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事情があって親元で暮らせない子どもたちの施設を舞台にした小説。施設で暮らす高校生の男女と、職員たちをメインにストーリーが展開する。有川浩らしい、軽快なタッチだが、扱う内容はシリアスだ。ただ、施設の子が偏見を持たれないように、最大の注意を持って書かれている。本書を書くにあたって、い...
事情があって親元で暮らせない子どもたちの施設を舞台にした小説。施設で暮らす高校生の男女と、職員たちをメインにストーリーが展開する。有川浩らしい、軽快なタッチだが、扱う内容はシリアスだ。ただ、施設の子が偏見を持たれないように、最大の注意を持って書かれている。本書を書くにあたって、いろいろ取材や調査をしたようだ。 明確な問題提起もしてあり、社会にこういう施設があって、どうして行政から支援を受けづらいのかも書かれている。最後はとても綺麗にまとまっている。 テーマとしては素晴らしいが、この作家のわざとらしさが、正直なところあまり好みではない。とても簡単に読めたのは良かった。
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児童養護施設に少し関わったことがあったので、興味を持ち手に取りました。施設の現状がすごくリアルで、どうしてここまで詳細にかけたのだろうと気になり、最後まで読んで納得しました。たくさんの人に読んでもらって、ぜひ知って頂きたい内容でした。
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児童養護施設の実態をありのままに描いて,なおかつ職員の葛藤やそこで暮らす子供達の声に寄り添った,素晴らしい物語.新人職員三田村の成長する姿が微笑ましく,彼と共に何かが変わっていくところも良かった.
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長編だったがすんなり読めた。児童養護施設の物語は初めて読んだが、世界が広がった。私自身もここで暮らす子供達に対しては「可哀想」という感情をもっていたが、改められた。決まったルールがあるなかで日常生活を送れることは彼らにとっては幸せなのだ。日本には同じような施設が沢山あるはずなのに...
長編だったがすんなり読めた。児童養護施設の物語は初めて読んだが、世界が広がった。私自身もここで暮らす子供達に対しては「可哀想」という感情をもっていたが、改められた。決まったルールがあるなかで日常生活を送れることは彼らにとっては幸せなのだ。日本には同じような施設が沢山あるはずなのに、スポットライトが当たらない。もっと注目されてしかるべきだ。そこにいるのは未来あるこれから大人になる子供たちなのだから。 20180521読了
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