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ハンナ・アーレント の商品レビュー

4.1

70件のお客様レビュー

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2016/10/29

1933年から44年までの間に、およそ23,000人から25,000人の知識人たちがヨーロッパからアメリカに移ったと言われている。知識人の大移動とも呼ばれるこの事態は、アメリカの学問や文化をきわめて豊穣にしたけれども、ヨーロッパにとってそれは、回復に時数十年を要するほどの知的大損...

1933年から44年までの間に、およそ23,000人から25,000人の知識人たちがヨーロッパからアメリカに移ったと言われている。知識人の大移動とも呼ばれるこの事態は、アメリカの学問や文化をきわめて豊穣にしたけれども、ヨーロッパにとってそれは、回復に時数十年を要するほどの知的大損失だった。新世界での知識人たち自身の経験や適応状況は、知名度や年齢や学問分野によって様々であった。アインシュタインやトーマス萬といった国際的著名人は、アメリカでも同等の地位と名声を得るのに困難はなかった。しかし彼らほど知名度のないい教授たちにとっては、パスポートをもたない難民としてのスタートは、かなりの心労をともなうものであったようだ。アーレントはドイツで博士号まで取得していたが、すでに獲得した地位があったわけではなく、英語を習得しなければやっていけない世代に属していた。アーレントより2歳年上でのちに著名な国際政治学者となり彼女の親しい友人にもなった1904年にドイツに生まれたユダヤ人のハンス・モーゲンソーは1937年にニューヨークに移ったが、最初はエレベーター係として働き英語を学んだという。彼らには年長の世代のような名声への期待はなく、アメリカでネットワークを広げなければ生きていけないという覚悟があった。またアメリカの知識人社会では英語の訛りなどは問題ともならず、ヨーロッパからの有能な人々を受け入れる開放性があった。彼らよりももっと若い世代は、アメリカで教育をうけ、訛りのない英語を話すことになる。

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2016/03/01

アーレントの生涯を辿りつつ、同時代の様々な課題と取り組んだ彼女の思想を描き出す新書。『全体主義の起源』、『人間の条件』、『イェルサレムのアイヒマン』など彼女の主要な著作のポイントを紹介しつつ、その中にレッシング論や公民権運動とアーレントの関わりといった問題を組み込むことで、アーレ...

アーレントの生涯を辿りつつ、同時代の様々な課題と取り組んだ彼女の思想を描き出す新書。『全体主義の起源』、『人間の条件』、『イェルサレムのアイヒマン』など彼女の主要な著作のポイントを紹介しつつ、その中にレッシング論や公民権運動とアーレントの関わりといった問題を組み込むことで、アーレントの思考の論争的な部分にも行き届いた解説が加えられている。

Posted byブクログ

2015/11/24

 図書館より  ハンナ・アーレントはユダヤ人の政治哲学者さん。この本では彼女の生涯と代表的な著作『全体主義の起源』や『人間の条件』などの要約なども書かれています。  ハンナ・アーレントについては映画を通して初めて知ったのですが、その人生は思っていた以上にドラマチックでした。 ...

 図書館より  ハンナ・アーレントはユダヤ人の政治哲学者さん。この本では彼女の生涯と代表的な著作『全体主義の起源』や『人間の条件』などの要約なども書かれています。  ハンナ・アーレントについては映画を通して初めて知ったのですが、その人生は思っていた以上にドラマチックでした。 師匠であるハイデガーとの恋愛や、ナチスによる逮捕、そしてアメリカへの亡命、徐々に実績を認められつつも、ユダヤ人虐殺に携わったドイツの高官をめぐる「アイヒマン論争」で友人の多くと絶縁状態となり…  映画ではアイヒマン論争に的を絞って描かれていましたが、それは本当に正解だったと思います。彼女の人生全部取り上げようと思えば、ものすごく薄味の映画になっていたと思います。  彼女の思考や哲学の根底にあったのは自身が「ユダヤ人」であったことなのかな、と本を読み終えて思いました。  長い迫害の歴史で、帰属するべき共同体もない、そしてナチスによる虐殺、そうした中でアーレントは迫害された民族としてのユダヤ人を冷徹に、客観的に直視し、そしてユダヤ人虐殺を許した全体主義も感情的にならず見つめました。  人と人の多様性から生まれる公共性(リアリティ)をアーレントは重要視します。そして「思考の動き」ためには他の人の思考の存在、つまり対話や論争の際、一つの立脚点に固執しない柔軟性が必要と説きます。  それと対極なものとして大衆ヒステリーなどで、思考に動きが無くなってしまうことを思考の欠如と説き、それは私的で主観的なものと捉えました。  そして公共的なものがなくなり、人々が孤立した時、人間は大きなイデオロギー、つまり全体主義に組み込まれるとしました。  パリのテロ後、地元のイスラム教徒が迫害を受けるニュースや、パリの移民がISに魅力を感じる理由などが取り上げられた報道を見ました。そういうのを見ていると、思考の欠如がパリ市民の一部がイスラム教を見境なく憎む、というイデオロギーに、 また現状に不満を持つ移民層がISのイデオロギーに取り込まれる様子も、彼女の哲学が今も生きていることを証明してしまっているように思います。  しかしこの哲学が正しいなら、そうした思考の欠如を避けるためには、公共性を取り戻すこと、つまり他者との対話、そして多様性を認めることしかないということもきっと正しいはず!  また報道の話ですが、イスラム教徒の男性がパリの広場で目隠しをして立っている姿が話題を呼んでいるそうです。 この男性は「私はあなたたちを信頼しています。あなたも私を信頼してくれるなら、私にハグをしてください」というメッセージの書かれた紙を足元に置いています。 そしてパリの人々は彼にハグをしていくのです。  思考の欠如を避けるためには、こうしたお互いの歩み寄りが何よりの武器になるということだと思います。  こんな時代だからこそ、全体主義の罠に陥らないためにきっと彼女の哲学は役に立つはずだと思います。  少し前アーレントの『人間の条件』を読もうと思って挫折してしまった自分にとって、この本はありがたかったです。いつか再挑戦したいなあ。

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2015/10/27

『全体主義の起源』『人間の条件』『イスラエルのアイヒマン』等のハンナアーレントの生涯が描き表されている本。 ユダヤ人として、ユダヤ・イスラエルにおいてもドイツに おいても、アメリカにおいても全体主義というか 思考を停止させてしまういろいろな現象に対して勇気 をもって警告する彼女の...

『全体主義の起源』『人間の条件』『イスラエルのアイヒマン』等のハンナアーレントの生涯が描き表されている本。 ユダヤ人として、ユダヤ・イスラエルにおいてもドイツに おいても、アメリカにおいても全体主義というか 思考を停止させてしまういろいろな現象に対して勇気 をもって警告する彼女の生き方・考え方に対いして 感銘を受ける内容です。 日本の東京裁判。いまの日本。世の中の状況などが 彼女がどのように思考するかが聞いてみたいと 思います。 また、それらで垣間見える全体主義というか、凡庸な悪に対して思考を停止することに対してあらがってみる ことを心に持っていたいと思います。 近代の哲学家・思想家の中でも感銘を受けるうちの 一人であると思っています。

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2015/08/18

素晴らしい人生。素晴らしい思想。アーレントは人間の条件を読んだだけだが、難しかった。しかし、本書はの記述は焦点を絞り、易しく分かりやすい。無国籍問題の重さをつよく感じた。 ・「ひとたびすべてが〈政治化〉されてしまうと、もはやだれ一人として政治には関心を持たなくなる」。総力戦を戦...

素晴らしい人生。素晴らしい思想。アーレントは人間の条件を読んだだけだが、難しかった。しかし、本書はの記述は焦点を絞り、易しく分かりやすい。無国籍問題の重さをつよく感じた。 ・「ひとたびすべてが〈政治化〉されてしまうと、もはやだれ一人として政治には関心を持たなくなる」。総力戦を戦うとき、選択や決断や責任に対する自覚が失われる。 ・反ユダヤ主義はナショナリズムの昂揚期ではなく、国民国家システムが衰退し帝国主義になっていく段階で激化した。 ・共同体の政治的・法的枠組みから排除されている彼らは、すべての権利の前提である「権利を持つ権利」を奪われている。 ・カトー:独りだけでいるときこそもっとも独りでない =オアシス ・「社会というものは、いつでも、その成員がたった一つの意見と一つの利害しか持たないような、単一の巨大家族の成員であるかのように振る舞うよう要求する」(『人間の条件』)。そして、統治の最も社会的な形式として「誰でもない者」による支配、「無人支配」である官僚制をあげた。 ・加害者だけでなく被害者においても道徳が混乱することをアーレントは全体主義の決定的な特徴ととらえていた。 ・「どんな悲しみでも、それを物語に変えるか、それを物語れば、耐えられる」:アイザック.ディネセン ・アーレントにおける権力は暴力と異なり、人々が集まり言葉と行為によって活動することで生まれる集団的な潜在力だった。

Posted byブクログ

2015/08/14

映画を見て(インテリアが)すごく素敵だったので読んでみた。ここで描かれる「全体主義」がそのまま今の日本の状況に当てはまるので冷え冷えとした気持ちになる。またいつか読み返したい。

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2015/08/03

2015・08・03読了 ハンナ・アーレントの生涯を描いた作品。 彼女のバックボーンや、思考の形成される過程がわかりやすく理解できる一冊であり、個別の著書を読む前に基礎知識代わりに読んでおくと良いと思う。 反ユダヤ主義に対するアーレントの考え方、イェルサレムのアイヒマンの箇所...

2015・08・03読了 ハンナ・アーレントの生涯を描いた作品。 彼女のバックボーンや、思考の形成される過程がわかりやすく理解できる一冊であり、個別の著書を読む前に基礎知識代わりに読んでおくと良いと思う。 反ユダヤ主義に対するアーレントの考え方、イェルサレムのアイヒマンの箇所等は、現代社会の問題にも非常に通じるものがあり、一文一文が、とても考えさせられるものであった。 2013年に公開された映画『ハンナ・アーレント』も観ておきたかった。

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2015/08/25

ずっと長い間気になっていたが読めていなかった一冊。 激動の時代を生きて、その中で考えることをやめなかったとても強い意志を持った女性の伝記的な一冊。 ユダヤ人の立場が理不尽に弱かった戦時中と戦後のイスラエルによるナチズムへの報復の感情が強かったアイヒマン裁判などで自身で考え抜いて周...

ずっと長い間気になっていたが読めていなかった一冊。 激動の時代を生きて、その中で考えることをやめなかったとても強い意志を持った女性の伝記的な一冊。 ユダヤ人の立場が理不尽に弱かった戦時中と戦後のイスラエルによるナチズムへの報復の感情が強かったアイヒマン裁判などで自身で考え抜いて周囲からどのような批判を受けようとその考えを変えることはなかった。 彼女の大切なものはユダヤ人という人種ではなく周囲の友人などでありナショナリズムなどは関係ないという言葉はやはり力強い。 彼女の哲学の内容というとしっかりと理解することはできなかったが伝記として読むととても分かりやすく面白い本であると思う。

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2015/01/29

ハンナアーレントは法律や政治に哲学が必要な事を教えてくれる。哲学、それは人間であるという事だ。人間である事をやめなければいけないような法律や政治に従って生きることは出来ない。哲学こそがお金に支配されたこの世界に未来をもたらす鍵なのだ。

Posted byブクログ

2014/11/01

『イェルサレムのアイヒマン』を読む前に読んでみた。公平(公正)な主張。物事を俯瞰で見ることは、ある種の孤独をもたらす。

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