1,800円以上の注文で送料無料

ハンナ・アーレント の商品レビュー

4.1

70件のお客様レビュー

  1. 5つ

    17

  2. 4つ

    25

  3. 3つ

    14

  4. 2つ

    0

  5. 1つ

    0

レビューを投稿

2014/05/25

非常に陳腐な表現であるが、何て強い人なんだろうというのが本書を読んで先ず思ったこと。 そして、もっとアーレントの生きた時代、彼女が考え理解しようとしたことについて知りたいという欲求に取りつかれている。

Posted byブクログ

2014/05/25

ホロコーストに関して、あれこれと読む中で、ハンナ・アーレントという名前に幾度か遭遇し、いつかきちんと読もうと思っていた。先日、機会があって、『イェルサレムのアイヒマン』を読んだ。感銘を受ける一方、いまひとつ読みこなせた自信が持てず、もう少し、アーレント関連の本を読んでみたいと思っ...

ホロコーストに関して、あれこれと読む中で、ハンナ・アーレントという名前に幾度か遭遇し、いつかきちんと読もうと思っていた。先日、機会があって、『イェルサレムのアイヒマン』を読んだ。感銘を受ける一方、いまひとつ読みこなせた自信が持てず、もう少し、アーレント関連の本を読んでみたいと思っていたところ、よい評伝が出ていると聞き、手に取ってみたのが本書である。 アーレントに興味があって何か読みたいという方は、まずこちらを読む方が適当かもしれない。 アーレントの生涯とその思想の道筋がコンパクトかつ明晰にまとめられた1冊。 門外漢にもわかりやすい言葉で、アーレントの思索へと読者を導く。客観的事実に内面への考察を加えたほどよい距離感は、おそらくは、著者がアーレントに向ける冷静な敬愛の賜物だろう。 アーレントは、ドイツ中産階級のユダヤ人の両親の元に生を受けている。ユダヤ教信徒ではなかったがユダヤ人である自覚をなくしたことはなく、一方で、社交的な母の元、さまざまな宗教的・文化的背景の人々とも触れ合った。シナゴーグにもキリスト教の日曜学校にも接点を持ち、進歩的な考えの人々とのつながりもあった。 思索に耽り、詩を愛する少女は、長じて、哲学を学ぶことを決意する。 マールブルグ大学に入学したアーレントは、時の人・ハイデガーの「ミューズ」となる。不倫関係は長くは続かず、アーレントはハイデルベルク大学に移る。ハイデガーは、後に一時、親ナチスの立場を取っている。アーレントはハイデガーが誠実さに欠けることは知りつつ、その思想・哲学には惹かれ続けたようである。 ハイデルベルグ大学で博士論文の指導を受けたヤスパースとは、生涯に渡る師弟関係を結んでいる。同時期、シオニスト指導者のブルーメンフェルトとも出会い、父のような存在として深い交流を持つ。 ナチスが台頭する中、アーレントはヨーロッパ各地を転々とし、一時期、フランスで収容所生活を送る。辛くもそこを抜け出し、苦労の末に難民としてアメリカに渡る。混乱の中で、親しい人々の中にも、絶滅収容所に送られるもの、絶望して自ら命を絶つものがあった。 アメリカに噂として伝わってきた大量殺戮は、身を以てナチスの危険を知っていたはずのアーレントたちユダヤ系難民にすら、衝撃的な事実だった。 人間を大量に殺すために作られたシステム。 それは1つの民族が嫌われることに止まらない、理解を越えた絶望的な事件だった。アーレントはしかし、それを理解するため、考え続けていくのである。 思考し、理解しようとし続けることで「世界」と向き合い、対話するために。 ユダヤ人であってもユダヤ教徒ではなく、生まれ故郷を追われるように去り、どこにも確固たる根がない。アーレントはどの集団にも属そうとはしなかった。友人は大切な存在だったが、それは個人としての結びつきであった。 「アイヒマン裁判」を傍聴した報告書である『イェルサレムのアイヒマン』は大きな反響を呼び、同時に、激しい非難を浴びた。ユダヤ人自身の責任を問う問題提起に対する反感は特に高く、アーレントは多くのユダヤ人友人を失う。 アーレントの視線は「どこにも属さないもの」の視線であり、その馴れ合いを排した客観性は、場合によっては「冷たい」と捉えられかねないものだっただろう。 特にホロコーストのような出来事の中で、「被害者」側に対する批判が激しい拒絶反応を引き起こしたのは、ある意味、無理のないことに思われる。 だが、アーレントは一方でそれに傷つきながらも、屈することはなかった。 アーレントは思索は1人でするものだと言っている。一方で、世界とのつながりを絶つことはしていない。それは思索のための思索ではなく、世界を理解するための思索だからである。ときには人と交わりつつ、ときには1人思索を深める。そうすることにより、世界のリアリティと向き合い続ける。その姿勢は思索を職業とするのではないすべての人々に必要なものだとアーレントは説く。 アーレントが魅力的であるのは、アーレントの思考に触れることで、自分の思考もまた動き出し、深まりを持とうとするためなのだろう。渦巻きを作り出す最初の力、結晶の核となる最初の粒。そうした原動力がこの人の中にはあるのだと思う。

Posted byブクログ

2014/05/18

“アーレントは別の論稿では「何もしないという可能性」,不参加という可能性」という言葉を使っている。彼女は,こうした力のなさを認識するためには現実と直面するための「善き意志と善き信念」を必要とする指摘し,絶望的な状況においては「自分の無能力を認めること」が強さと力を残すのだ,と語っ...

“アーレントは別の論稿では「何もしないという可能性」,不参加という可能性」という言葉を使っている。彼女は,こうした力のなさを認識するためには現実と直面するための「善き意志と善き信念」を必要とする指摘し,絶望的な状況においては「自分の無能力を認めること」が強さと力を残すのだ,と語った" 綺麗なアーレント本って感じ。

Posted byブクログ

2014/05/12

2012年にはフランス・ルクセンブルク・ドイツの合作で映画も作られたハンナ・アーレントの、数奇な生涯とその思想をコンパクトにまとめた良書。(院生アルバイトスタッフ)

Posted byブクログ

2014/05/08

世界の大問題と取り組み続けたハンナ・アーレントの姿を、落ち着いた筆致で伝える堅実な評伝。アーレントの政治思想の解説書だと思って読むと肩透かしを食らうかもしれないが、色々な意味で「あの時代にユダヤ人としてドイツで生を受けたこと」がアーレントの政治思想を根本的に規定していること、また...

世界の大問題と取り組み続けたハンナ・アーレントの姿を、落ち着いた筆致で伝える堅実な評伝。アーレントの政治思想の解説書だと思って読むと肩透かしを食らうかもしれないが、色々な意味で「あの時代にユダヤ人としてドイツで生を受けたこと」がアーレントの政治思想を根本的に規定していること、また、アーレント自身、自らの理論は日常生活から生まれたものだと語っていること(p.145)などを考え合わせると、やはりこの評伝は彼女の政治思想を理解するうえで有効な手掛かりとなるだろうと思う。 本書を読んでみて、この「分かりづらい思想家」の「分かりづらい理由」が少しだけ分かったような気がする。

Posted byブクログ

2014/05/06

基本、伝記です。思想入門ではありません。だけど、この人ほど伝記という注釈が必要な人もないでしょう。それを教えてくれるという点でぜひ読んでいただきたい本。

Posted byブクログ

2014/05/06

最近、注目を集めることが多くなっていると感じるハンナ・アーレントの入門的な伝記である感じた。 類書に FOR BEGGINERシリーズや講談社現代新書の「今こそアーレントを読み直す」などがあるが、本書は彼女の生涯に的を絞っており、難解ともいわれる著作等には深入りはせずに入門書ト...

最近、注目を集めることが多くなっていると感じるハンナ・アーレントの入門的な伝記である感じた。 類書に FOR BEGGINERシリーズや講談社現代新書の「今こそアーレントを読み直す」などがあるが、本書は彼女の生涯に的を絞っており、難解ともいわれる著作等には深入りはせずに入門書トンなっている。彼女の哲学に興味をもったら、この本から別な本に当たればよいと思う。 また、ハンナ・アーレントがなぜこのようなことに疑問をもち、このような発言をしなければならなかったのか、彼女の生涯に多くの答えがあるような気がした。ハンナ・アーレントの原書を読んでみたくなった。

Posted byブクログ

2018/11/18
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

矢野久美子『ハンナ・アーレント 「戦争の世紀」を生きた政治哲学者』中公新書、読了。全生涯をかけて人間を「無効化」することと対峙し続けたアーレント。本書は、その強靱で根源的な思索の軌跡を浮かび上がらせる最新の評伝。新書で人物一人を語ることほど難儀はないが、本書は見事に成功している。

Posted byブクログ

2014/04/25

たとえ身体の自由がままならなくても思考の世界で泳ぐことは読書という所作に耐えられれば自由である。本書からアーレント自身の人生の歴史を踏まえながらも難解なその思想に触れることができた。思想家へのアプローチは無防備に双手を上げて歩みよるよりも、外堀を埋めるように近づいて行く方が良いと...

たとえ身体の自由がままならなくても思考の世界で泳ぐことは読書という所作に耐えられれば自由である。本書からアーレント自身の人生の歴史を踏まえながらも難解なその思想に触れることができた。思想家へのアプローチは無防備に双手を上げて歩みよるよりも、外堀を埋めるように近づいて行く方が良いと感じた。そろそろ原著に挑んでみるべきかもしれない。

Posted byブクログ

2014/03/28

セブンイレブンで購入する。読者を選ぶ本です。哲学に関する教養がなければ読めない本ではありません。逆に言えば、哲学に関する教養のある人には読み応えがないでしょう。欧米のユダヤ人に関する歴史に関する知識がなければ読めない本ではありません。逆に言えば、その手の問題に詳しい人には物足りな...

セブンイレブンで購入する。読者を選ぶ本です。哲学に関する教養がなければ読めない本ではありません。逆に言えば、哲学に関する教養のある人には読み応えがないでしょう。欧米のユダヤ人に関する歴史に関する知識がなければ読めない本ではありません。逆に言えば、その手の問題に詳しい人には物足りないでしょう。僕のように、哲学、ユダヤ人の歴史に関する教養もないが、この著名な哲学者に興味ある人には、最適な入門書です。

Posted byブクログ