神様のケーキを頬ばるまで の商品レビュー
「新しい星」で綾瀬まるを知り、他の作品も読んでみようと手に取ったが、期待外れだった。キャラクターの行動の理由がわからなかったり、表現が分かりづらい。作者が20代の頃の作品だからか、荒削りな部分が目についた。 一作目の「泥雪」では、2人の子供を育てるシングルマザーのマッサージ師に共...
「新しい星」で綾瀬まるを知り、他の作品も読んでみようと手に取ったが、期待外れだった。キャラクターの行動の理由がわからなかったり、表現が分かりづらい。作者が20代の頃の作品だからか、荒削りな部分が目についた。 一作目の「泥雪」では、2人の子供を育てるシングルマザーのマッサージ師に共感しかけたが、1人目の子供を連れて離婚後に客と恋仲になり妊娠、男は逃げ2人目の子供を抱えることになったという過去の描写で一気に冷めた。もっと思慮深い人のように見えたのに、なぜそんな考えなしの行動を取ったのだろう…。1人目の中学生の子供が荒れる描写があるのだが、そりゃ荒れるわと思い感情移入できなかった。 謎の比喩の表現も多い。「森の奥でひっそりと空を写し続ける秘密の湖のように私のスマホは沈黙を続け」「痛みの薔薇は肺のあちこちでぶくりぶくりと増殖」長い割にピンと来ないし中二臭い。 「光る背中」でたくさん出てくるのだが、ウツボの鳴き声って「しゃあ、しゃあ」なのか?それは蛇では。そもそもウツボって鳴くの?全くイメージできず。
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人の弱いところや醜い想いが現実を苦しくしてしまうこともあるけど、それでも救いは必ずあるはず。そう信じたいと思いました。ありがとうございます。
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それぞれの物語で、主人公は何かに悩み、努力して、それでも毎日は過ぎていき、少しでも前に進もうと心を決める。それがあるから、トーンの暗さだけで終わっていないと感じた。自分でもやってみよう、頑張ってみようと、そういうきっかけになるピースが見つかるかもしれない。 登場するウツミマコト...
それぞれの物語で、主人公は何かに悩み、努力して、それでも毎日は過ぎていき、少しでも前に進もうと心を決める。それがあるから、トーンの暗さだけで終わっていないと感じた。自分でもやってみよう、頑張ってみようと、そういうきっかけになるピースが見つかるかもしれない。 登場するウツミマコトの絵画「泥雪」、映画「深海魚」が観たくなる。そして表題になっているケーキを食べたくなる。
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雑居ビルを舞台に仕事や恋や生活のこと、他者から見た自分のこと、サラッと流れるように核心をついてくる。でも嫌じゃなかった。 どこかで人との繋がりがあり、出会いや経験が混ざり合って自分を作っていく。 人々が抱く痛みがチクチクと胸を刺すけれど、思い込みで狭くなった視野を広げてくれ、身体にじんわりと温かさが復活するような短編集だった。 もうちょっと読んでいたい気持ちが残る。人の数だけこういう物語があるのだと思うと人間は面白い。
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連作の鎖になっているウツミマコトがあんまり効いていないというか、なんか独りよがりな感じがして、あまりそそられなかった。 再読。 一つ一つの生きにくい人の何かとの決別の瞬間を 苦しみながらのりこえていくところはキュンとくる。
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ウツミマコトと錦糸町の雑居ビルが人々をうっすら繋いでいる連作短編集。ウツミマコトの作品の評価の分かれ方が面白い。 「泥雪」 ウツミマコトの絵を大切にするマッサージ店の店長。DV夫に愛されていると思いたかった。息子はどんどん彼に似てくる。絵の価値をじぶんで決められない。 紺色のペディキュアの理保。そして相手。この道を選ぶきっかけの女性。怖くても、言葉にしたら何か変わるかもしれない。桜色のペディキュア。 「七番目の神様」 正直、タイトルは…。 どう言ったら相手が喜ぶかが分かる。だけど、もうそれだけじゃ我慢ができない。相手に自分を好きになってほしい。 「メン・イン・ブラック」百点満点だ。 「龍を見送る」 好き。 自分が一番相手の良さを引き出せると思いたかった。でも、無理をしていたのも事実。相手が輝けるのなら、応援する。だけど、もうそばにはいられない。 「そばにいなよ」と思う反面、離れなければずっと苦しいままだもんね。 「光る背中」 イケメン、金持ち、そんな彼の一番になりたい。 新着メールは届いていません。 女を振り回してムカつく!と言いたくなるけれど、相手をアクセサリーとして見ていたのはこちらも同じ。 ウツボのフィギュア、プロレス。芦原さんはちょっとできすぎかな。 「塔は崩れ、食事は止まず」 一緒にやってきたはずだったのに、そこが苦しい場所になっていた。憎まれ役を演じているつもりで、自分だけが頑張っているつもりになっていた。私に刺さる。 ホームセンターでの仕事と同僚、その子どもとの出会いを通して少しずつ変わっていく。変わった今ならまた会えるかもしれない。
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5つの物語からなる本。 図書館で見つけてタイトルに惹かれて借りてみた! 錦糸町にあるビルに入ってるお店で働いてる人たちが、それぞれ主人公。 どの話も微妙に、「あ!前に出てきた人や!」って脇役というか風景というか背景というか微妙に登場したり。 最初の話は、絵の所がすごく素敵だが物語が進むにつれ主人公の家庭の話になりそこは微妙だった。 あー、この本微妙かなーと思ってたら気付いたらこの本の虜になってた笑 2番目の「七番目の神様」は結構好き! 河原でおじいちゃんと畑で取れた野菜食べたり、老人たちに混じって青空囲碁したり、すごーく素敵な休みを過ごしててほっこり。 お店で小銭が合わなくて地べたを這いつくばってる所も印刷的。 3番目は「龍を見送る」これも結構好き! 展開的には読めるしよくある展開なんやけど、なんか心に残る。 バンド解散した時の朝海の荒んだ心からの、爽やかなラストが素晴らしい! そして、古書店の店長もサバサバで好き。 4番目は「光る背中」もなかなか良き。 特にウツボのしおりさんと、同僚の澄子さんが素敵! ラストの「塔は崩れ、食事は止まず」も結構好き。 パンケーキが食べたくなる! 始めは主人公が結構嫌いなタイプやったけど家でパンケーキ作る所からなんか好きになった。 ナミエハルヒコとオオノアマネってどっかに出てきた?なんか見たことあるような?? 1番目の「泥雪」で出てきたマッサージ屋のおばちゃんも出てくる。 優しい人やし三鷹でも幸せに頑張ってほしい!
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なんとなくタイトルに惹かれて読んでみた。 錦糸町の古い雑居ビル近辺が中心の舞台となっている。 マッサージ店の店長の『泥雪』、イタリアンの店長の『七番目の神様』 ミュージシャンの『龍を見送る』、ウツボを拾った『光る背中』 パンケーキ店の元店長の、『塔は崩れ、食事は止まず』 の5編の短編が収められており 全作にウツミマコトという作家の作品が登場しリンクしている。 日常に潜みやり過ごしつつも、時折やるせなくてどうしようもなくなる 棘のようなものを抱え、日々を過ごしている人たち。 あの時ああしていたらと後悔したり、こうしていたらどうなっていただろうと 思いを馳せたり、時に行動に移したり。 自分が一番好きだったのは、『龍を見送る』。 アサの「歓びに震えるとがった肩を見ながら、なぜか私は、新雪を踏み荒らすのに似た高揚を感じていた。」という感じ方が印象的だったし、 新しい曲を購入したものの、聴けない気持ちがとてもよく分かった。 フォックステイルを解散せずに新ユニットをやる方法もあったと思うが、 哲平にその意志がなかったのだろう。 歌詞を書かせてもらえないことで未来が閉ざされた気持ちになったかもしれない。 アサが連絡を拒んだのは良くないけれど、だからと言って自分の決意だけ話して、 結論を待たずブログで解散を発表してしまうのは駄目だ。 似たようなケースを実際目にしたことがあるが、それは炎上するだろう。 世論が自分の味方をしてくれていて、溜飲が下がるというより不安になるというのもわかるなと思った。 そこで被害者になりきって哲平を叩けないほどにはプライドがあるし 過去にもなっていない。 「一人の人間が深く苦しみながら身体の外に放り出した概念は、どんなものでもあれ人間一人分の確かさを持って他の人間を支える」 という言葉が好きだった。 山椒魚の改変問題についても取り上げられていた。 アサが哲平の曲を聴いて、良かったと感想を電話するところが素敵だったし 別れたくないと言う哲平に別れを告げたことが偉いと思う。 千景のパートナーの愛理が、彼女の傷の形が蝶みたい、と名前をつけて可愛がってくれて だから受け入れられたというエピソードはとても素敵だったし、 アサがどんな歌にするのかとても聴いてみたい。 『光る背中』の 「正直に、取り繕わず、制作者の心をさらけだした作品は、必ず誰かに嫌われます。そういうものは力強い代わりに粗も多く、でこぼこで、違う意見を持つ人にとってはひどく目障りになるからです」 も印象的だった。 『塔は崩れ、食事は止まず』 クレーマーは全然いい人だったので、それでも不快になりそれを顔に出してしまうのが 駄目なところだったのだろうし、 傍から見て前の仕事でガンガンやってきた人だなってなんとなくわかるような 仕事ぶりが、良いところでもあったのだろう。 居心地が良いお店を目指すあまり回転率が悪くなって、入店できない人が増え 食べ歩き用のパンケーキは雑な味付けなのに売れて、というのが さもありなんという感じだが、だから噛み合っていなかったのだと気が付けたことが良かった。 雑居ビルが取り壊されるが、子供にビルなんでなくなったのと言われた時 新しいものをつくるためだよ、と返すところが、テーマのメタファーであるように感じられた。 無くなることは悲しいし、取り返せないけれど、新しく作って続けることはできる。 パンケーキを食べに行ける日が来るだろうし、 他の4作の主人公たちもそれぞれ、少しずつ仕切り直して先へ進んでいくだろう。 淡々とした中に仄明るい未来が見える作品だった。
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ウツミマコトの「深海魚」 同じ作品なのに登場人物が抱く印象や感想が違って面白いなーと。 考えてみれば、現実では当たり前なことだけど 一主人公を中心に描かれるのとは違って、連作ということでこういう機能の仕方もあるんだなと思った。 人間ってどんなことがあっても、食べて、寝て、働いて ...
ウツミマコトの「深海魚」 同じ作品なのに登場人物が抱く印象や感想が違って面白いなーと。 考えてみれば、現実では当たり前なことだけど 一主人公を中心に描かれるのとは違って、連作ということでこういう機能の仕方もあるんだなと思った。 人間ってどんなことがあっても、食べて、寝て、働いて そしてまたいつか笑える日がくるんだなー。 5人の登場人物の悩みってどれかしら自分に当てはまるところがあるんじゃないかな。 わたしは、"七番目の神様"が自分に近いと感じて "龍を見送る"が好きでした。
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短編集ではあるけど、映画監督やビルなど些細な繋がりのある人達の話で、まとまっていて読みやすかった。読後に充足感があって、日常に彩りをくれる。この方の作品はもっと読みたい。
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