悪医 の商品レビュー
+++ 現役の医師でもあり作家でもある著者が、満を持して取り組んだ「悪い医者とは?」を問いかける感動の医療長編小説。 がん治療の拠点病院で、52歳の胃がん患者の小仲辰はがんが再発したあと、外科医の森川良生医師より「これ以上、治療の余地がありません」と告げられた。 「私にすれば、死...
+++ 現役の医師でもあり作家でもある著者が、満を持して取り組んだ「悪い医者とは?」を問いかける感動の医療長編小説。 がん治療の拠点病院で、52歳の胃がん患者の小仲辰はがんが再発したあと、外科医の森川良生医師より「これ以上、治療の余地がありません」と告げられた。 「私にすれば、死ねと言われたのも同然」と、小仲は衝撃のあまり診察室を飛び出す。 小仲は大学病院でのセカンドオピニオンを断られ、抗がん剤を専門とする腫瘍内科、免疫細胞療法のクリニック、そしてホスピスへ。 それぞれの場所で小仲はどんな医師と出会うのか。 一方、森川は現在の医療体制のもと、患者同士のいさかい、診療での「えこひいき」問題など忙殺されるなか、診療を中断した小仲のことを忘れることができず、末期がん患者にどのように対したらよいのか思い悩む日々がつづく。 患者と医師の間の溝ははたして埋められるのか。 がん治療に対する医師の本音と患者の希望は軋轢を生み、物語は運命のラストへと向かう。 ひくにひけない命という一線を、患者と医師双方の切迫した事情が迫真のドラマを生み出す問題作。 +++ 重く壮絶な物語だった。当事者にならない限り、ほんとうには理解できないであろう患者の想いと、そんな患者を数多く担当する医師の想い。立場の違い、知識の違いなどによって、互いに理解し合えないことも多い。どのように病気と向き合うか、どのように患者に寄り添うかを、それぞれが問われているようにも思われる。さまざま考えさせられ、重苦しい気分になるが、考えることは無駄ではないとも思わされる一冊である。
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末期がん患者にもう治療法はないと宣告する医師と、そう宣告されても生への執着で藁をもすがる思いで治療を求める患者のそれぞれの思いに焦点を当てた作品。 医師は、患者のためを思い無理な治療で命を縮める事をせず、最後の時間を有意義に過ごしてもらいたいと願ったが、それを聞いた患者は、死ねと言われたも同然と医師への怒りをあらわにした。 患者の治療への希望を逆手に取り営利をもくろむ医師や、ホスピスで死を前にした患者に寄り添う医師が登場して、いろいろと考えさせられた。 最後に間接的にではあるが、この医師の思いを患者が理解し、患者の残した言葉で患者の気持ちを知ることができたのは良かった。 わが家にもがん治療をしている家族がいるので身につまされる思いで読み終えた。
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がん治療の現実と限界をうまく描いている。 2人に一人が癌になる時代。 治療ができない、希望が持てないというのはつらい人生だ。 しかし、嘘をつくこともできない。 主人公の外科医に共感してしまう。 データのために治療方針を変えない医師には驚いた。 このままの医師はいないだろうが、近...
がん治療の現実と限界をうまく描いている。 2人に一人が癌になる時代。 治療ができない、希望が持てないというのはつらい人生だ。 しかし、嘘をつくこともできない。 主人公の外科医に共感してしまう。 データのために治療方針を変えない医師には驚いた。 このままの医師はいないだろうが、近い医師はいるのであろう。
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がん患者と医者、それぞれの「有意義」の違い。 どこまで行っても営利組織である事は脱せない病院。どうしようもない事ではあるけど、切ない現実だ。 医師の苦悩を垣間見た気がした。 「自分にうなずく」という言葉が、妙に心に残る。
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