アル中病棟 失踪日記2 の商品レビュー
漫画家、吾妻ひでお先生が自身の体験から搾り出す様にして描かれたノンフィクションマンガの傑作であります。アルコール依存症となり、担ぎ込まれた通称『アル中病棟』での日々がコミカルに濃密に記されております。 本文に入る前に一つ触れなくてはいけないことがあります。それは何かと申し...
漫画家、吾妻ひでお先生が自身の体験から搾り出す様にして描かれたノンフィクションマンガの傑作であります。アルコール依存症となり、担ぎ込まれた通称『アル中病棟』での日々がコミカルに濃密に記されております。 本文に入る前に一つ触れなくてはいけないことがあります。それは何かと申しますと、吾妻先生と同じくアルコール依存症という病を抱えていた故・鴨志田穣氏原作の映画『酔いがさめたら、うちに帰ろう』が劇場公開されていた頃、僕はツイッター上で吾妻先生に、 「この映画をご覧になられましたか?」 と問うたところ、 「辛くて見れないな」 という返事が返ってまいりました。その理由が本書を読んでつくづく理解できました。この場を借りて吾妻先生にはお詫び申し上げます。吾妻先生、あの時は誠に申し訳ございませんでした。 以前、吾妻先生と、同じく漫画家の西原理恵子女史。彼女もまた、アルコール依存症であった夫の鴨志田穣氏を最後まで面倒見ていたという縁で、彼ら二人に加えて、司会もまたアルコール依存症の経歴を持ち「こわれものの祭典」等でも有名な月乃光司氏でトークショーをしている動画があり、(動画自体はYoutubeで閲覧可能)その中で西原女史がおっしゃっていた言葉の中に、 「アル中にも『金のアル中』『銀のアル中』『普通のアル中』というのがあって、吾妻先生は『金のアル中』だった」 や 「アルコール依存症という病気はお酒というものがその人にとっては『覚醒剤』になってしまうものだ」 などの「サイバラ節」で会場を大いに笑わせつつ、アルコール依存症という病気の恐ろしさを語っていらしていたのがとても印象的でありました。皆さんも宜しければ一度ご覧になることをお勧めいたします。 さて、大分本題から外れてしまいましたので戻りますと、2005年5月に出版された自身の壮絶な体験―失踪。自殺未遂。路上でのホームレス生活。そして、漫画家の仕事とは全くかけ離れた職種であるガス管を設置する肉体労働に従事していた―を描いたノンフィクションマンガ『失踪日記』より満を辞して刊行された、自身がアルコール依存症のために入院していた病院での日々を描いたものが本書ということになります。 まず手にとって驚いたのがその分厚さであります。それだけでも吾妻先生がこの時期に送ってきた日々の過酷さを物語っているようでありました。さらに、吾妻先生と共に入院している 『懲りない面々』 もこれまた多士済々でありまして、糖尿持ちにも関らず深夜に毎日カップ焼きそばをすする「クマさん」や、吾妻先生と同室で、何かにつけては騒動を巻き起こしていた「浅野さん」フルコンタクト空手の有段者でプロレスファン。自らの足で入院してきたという「安達君」など、彼らを始めとする個性豊かな面々と繰り広げる世界はまさに『非日常が日常』と化した世界であり、この不条理な体験をギャグマンガにまで昇華させるというのは、まことにもって吾妻先生の「才能」に他ならないわけであります。 そんな彼らも一人、また一人と治療期間を終えて退院、または強制的に転院、退院していったり、またあるものは再飲酒して舞い戻ってくる…。そんな中でも吾妻先生は淡々と治療プログラムをこなし、回復へと歩みを進めていくのです。しかし、アルコール依存症という病は「不治の病」であり、酒を経って何年、何十年しても、再度酒を飲むとたちまち元通りになってしまうという恐ろしい病であり、そこもしっかりと描かれております。 ですので、この『止め続ける』ということがいかに難事業であるかを身をもって示してくれた吾妻先生に心から感謝すると共に、酒を飲まれる場合は自らの許容範囲を外れることなく、 『酒は飲んでも飲まれるな』 というなんともありきたりな結論へと帰結するのでありました。 ※追記 吾妻ひでお先生は2019年10月13日、東京都内の病院で死去いたしました。死因は食道がん。69歳でした。この場をお借りして、ご冥福を申し上げます。吾妻先生、今まで本当にありがとうございました。
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大勢の強烈な人たちが登場し、その中に主人公もいる。なんというか、『魔の山』に匹敵する傑作かも? 俯瞰の画面がなんか好き。 細かいところまで描き込まれている心地よさ。 病棟はそれ自体が一種のコミュニティとなっているようだ。(もちろんそんなことはないのだろうけど)ある意味楽しそうでも...
大勢の強烈な人たちが登場し、その中に主人公もいる。なんというか、『魔の山』に匹敵する傑作かも? 俯瞰の画面がなんか好き。 細かいところまで描き込まれている心地よさ。 病棟はそれ自体が一種のコミュニティとなっているようだ。(もちろんそんなことはないのだろうけど)ある意味楽しそうでもあり刺激的でもある。 知らない世界を知ることができる興味深さもある。 素面って 不思議だ……(p.169) たとえ地図があっても俺は目的地には辿り着けない…(p.303) 時折の大きなコマに、自分と世界が乖離してる感覚、疎外感のようなものが残っているように見える。 舞台が病院なだけに前の巻ほど押しつぶされるような感じはない。
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★★★ 今月10冊目。 自伝漫画。前回ホームレスになりアル中になり病棟に。 無茶苦茶なおっさんだな。
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「失踪日記」の続編。アルコール依存症を患った漫画家の吾妻ひでおは、アルコール依存症専門の病棟、「アル中病棟」に入院する。その時の経験を漫画で綴ったもの。 アルコール依存症は、本人にとっても家族にとっても悲惨な病気であるが、日本にどれくらいの依存症の人がいるのか、ネットで調べてみる...
「失踪日記」の続編。アルコール依存症を患った漫画家の吾妻ひでおは、アルコール依存症専門の病棟、「アル中病棟」に入院する。その時の経験を漫画で綴ったもの。 アルコール依存症は、本人にとっても家族にとっても悲惨な病気であるが、日本にどれくらいの依存症の人がいるのか、ネットで調べてみると、80万人以上ということであった。80万人というのは、日本全体の人口1.2億人からすれば、0.6-0.7%程度。成人人口の比率からすれば、おそらく1%程度になるのだろう。ただ予備軍を含めると、その5倍以上の440万人になると言われており、成人人口の5%以上になるのだろう。予備軍の440万人という数もすごいし、5%という比率も大きな数字だ。 漫画の中で、吾妻ひでおはアルコール依存症について、下記のように語っている。 「アルコール依存症って、回復はしても完治はしない不治の病なんですよね。何十年断酒していようと一度呑んでしまえば元の木阿弥。いずれ内臓のどこか、あるいは脳を侵され廃人になるか死に至ります。」 不治の病であるから、依存症に陥った人が普通に生活しようとすれば、出来ることは、「お酒を呑まない」ということだけとなる。それを1日1日続けることだけが出来ることだ。そして、それをサポートするのが、アル中病棟である。ただ、治療成績は悪い。統計によれば、アルコール依存症患者は治療病院を退院しても1年後の断酒継続率はわずか20%、ほとんどの人は再入院、もしくは死んだり行方不明になったりしているということだ。それくらい恐ろしい病気なのである。 吾妻ひでおは、なんとか治療を進め、退院にこぎつける。そこで、この漫画は終わっているが、実は勝負はこれからなのだ。アルコール依存症患者の飲酒欲求はなかなか治まらないもので、最低でも2年、長くて10年つきまとうらしい。 この漫画を読んでいると、絶対に酒に吞まれないようにしなければ、アルコール依存症には絶対にならないようにしなければ、という気持ちにさせられる。
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アルコール中毒について講義で学び、入院治療ってどんな感じなんだろ…と思ったときに大学の図書室でこの本を発見。 医療提供者目線ではなく当事者目線で書かれているためとても面白かった。漫画なためにサクサク読めるしなにより絵柄が好み。
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失踪日記に比べると、アル中病棟にとどまっている為、ストーリの展開が少なく、刺激が少なかった。それでも最後のコマに向かう展開は好きだった。
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「失踪日記」の続編になり、アルコール依存症病棟での生活を描かれたものです。 少し懐かしいですね。アルコール依存症になると本当に眠れなくなるし、飲酒欲求なんかの手の振るえもあんな感じでした。睡眠薬も全然効いてくれないです。 半笑いで読みましたが、本当にあんな感じの生活をしていま...
「失踪日記」の続編になり、アルコール依存症病棟での生活を描かれたものです。 少し懐かしいですね。アルコール依存症になると本当に眠れなくなるし、飲酒欲求なんかの手の振るえもあんな感じでした。睡眠薬も全然効いてくれないです。 半笑いで読みましたが、本当にあんな感じの生活をしていましたっけ。 アル中はこの世の喜劇、その後の悲劇。
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アル中になった漫画家が、自身の入院体験を書いた漫画。 アル中症状とかにまず驚いた。お酒で幻覚・幻聴があるとは。どれだけ恐ろしい病なのかが知って驚愕。怖すぎる。 入院して断酒しても、一年後には8割の人が再度飲んでしまうらしい。中々抜け出せない深い闇のようです。 入院患者たちの...
アル中になった漫画家が、自身の入院体験を書いた漫画。 アル中症状とかにまず驚いた。お酒で幻覚・幻聴があるとは。どれだけ恐ろしい病なのかが知って驚愕。怖すぎる。 入院して断酒しても、一年後には8割の人が再度飲んでしまうらしい。中々抜け出せない深い闇のようです。 入院患者たちのキャラクターも面白いし、知られざる実態にふれられてとても興味深かった。これは魂の本です。 同じように作者実際に獄中で過ごした体験を書いた漫画、『刑務所の中』(花輪和一)もすごく面白いのでオススメです。崔洋一監督が映画化していて、そちらも必見です。
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アルコール依存症のケースを複数担当しており、入院生活がどんなもんか気になったので。 漫画でほのぼのとしたイラスト、軽いタッチで描かれているから読み進められたものの、文章で淡々と書きつられていたら読むのが辛いだろう。 それくらい実態は壮絶なことがよく分かった。 アルコール依存症...
アルコール依存症のケースを複数担当しており、入院生活がどんなもんか気になったので。 漫画でほのぼのとしたイラスト、軽いタッチで描かれているから読み進められたものの、文章で淡々と書きつられていたら読むのが辛いだろう。 それくらい実態は壮絶なことがよく分かった。 アルコール依存症、治療後再飲酒することなく社会復帰出来る確率はわずか20%のようだ。それ以外の人は、肝臓壊して亡くなるか、行方不明か、再入院か。 担当のうち、片方は断酒に成功し、仕事も始め、社会復帰に向けて着々と進んでるケース。もう一方は、過去に入院歴あるものの、再飲酒に走り、かれこれ10年以上依存しているケース。 20%に入れるよう、支援していきたい。
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失踪日記2 アル中病棟。吾妻ひでお先生の著書。飲みすぎ、お酒依存でアルコール依存症となってアルコール依存症専門病棟に入院された吾妻ひでお先生の実体験をわかりやすくまとめた良書です。アルコール依存症とひと言にいっても、アルコール依存症にきっかけやアルコール依存症の重症度は人それぞれ...
失踪日記2 アル中病棟。吾妻ひでお先生の著書。飲みすぎ、お酒依存でアルコール依存症となってアルコール依存症専門病棟に入院された吾妻ひでお先生の実体験をわかりやすくまとめた良書です。アルコール依存症とひと言にいっても、アルコール依存症にきっかけやアルコール依存症の重症度は人それぞれ。アルコール依存症の実態を暗い気持ちにならずに明るく楽しく学べる貴重な一冊。
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