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終わりの感覚 の商品レビュー

3.7

59件のお客様レビュー

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2013/02/17

ブッカー賞受賞作。読みやすいのに深い。 自分らしさというのは瞬間瞬間にでると思う。その人がどう何を判断するかの積み重ねが自分らしさじゃないか、と。で、その判断にもっとも影響するのが記憶であり経験だろう。 でも記憶ってのも、とんでもなくあやふやだよね。あれ?じゃあ自分ってなんだよ。...

ブッカー賞受賞作。読みやすいのに深い。 自分らしさというのは瞬間瞬間にでると思う。その人がどう何を判断するかの積み重ねが自分らしさじゃないか、と。で、その判断にもっとも影響するのが記憶であり経験だろう。 でも記憶ってのも、とんでもなくあやふやだよね。あれ?じゃあ自分ってなんだよ。 と、いうのが最近の自分のテーマ。 で、そんな俺にぴったりな小説。

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2013/02/10

自分が覚えてない事で他人を傷付けたことを穏やかな老年期に突きつけられる怖さ。日々、発する何気ない言葉や振る舞いがどんな影響を人に与えているのか考えると身震いがするラストのどんでん返し。年齢を重ねてから再読したい作品。

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2013/02/10

わずか184頁の中篇小説ながら、その破壊力たるやすさまじい。 まず目につくのは簡潔で明瞭な筆致。選び抜かれたワードによって形成されるセンテンスほどモチベーションの高まる読書はない。愛と性、老いと記憶を中心に書かれたこれら言葉の数々は、シンプルだけど感情の奥深くにまで浸透する。作...

わずか184頁の中篇小説ながら、その破壊力たるやすさまじい。 まず目につくのは簡潔で明瞭な筆致。選び抜かれたワードによって形成されるセンテンスほどモチベーションの高まる読書はない。愛と性、老いと記憶を中心に書かれたこれら言葉の数々は、シンプルだけど感情の奥深くにまで浸透する。作家が主人公の口を借りて主義思想を主張する威圧的な雰囲気はなく、主人公に何かしらの役を演じさせているように見受けられた。もちろん、前者のような意識下で書いているのかもしれないが、読み手にそう悟られない心配りとしたたかさが行間から漏れ伝わってくる。老いに対する緩やかな楽観目線が気に入った。 サプライズの後にくる主人公の感情の揺らぎが心地よかった。ひとつひとつ結び目がほどけていくような感覚。一種のカタルシスなのだが、そこに畏怖と悔恨の重ね塗りを見たような気がする。重いです。重いけどそれ以上に巧い。そして大胆。余裕のある周到さに脱帽。 想像力に秀でているというよりは、実体験が大部分を占めているのではないか──そう思わずにはいられないリアルな空気感がある。現実と虚構の隙間にフワフワ浮かんでいるような独特の世界観。作者がミステリ作家ならば残らずリピートしたいところだが、ミステリ作家にはこのような世界観は創れないし、また必要ともされていないところがある意味ラッキーだったのかも。たまには、きちんとした文学作品も摂取しないといけないね。

Posted byブクログ

2013/02/05
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

老年を迎えた主人公のアントニー・ウエブスターが、とあるきっかけから過去を振り返る独白として記される。 親友と出会った思い出深い高校時代の頃から、恋に目覚めた60年代の大学生活の思い出までが前半に置かれている。 若さの特権に満ちた輝かしくも苦い青春の思い出話をさりげなく読み飛ばしがちだけれど、この著者はそこかしこの叙述にいくつも地雷を仕掛けている印象。 物語が大きく動くのは、昔の恋人ベロニカの母の死を告げる一通の手紙が届いてからだ。なぜに遺言が彼に届くのか謎が深まるばかり、、、  その後の急展開は、主人公のリアルタイムでの体験と重なっていく。鮮明だったはずの記憶の中の出来事は、突きつけられてくるいくつかの事実によって、次第にぼやけてくる、、、 主人公の困惑は我々にも伝わってくる。なぜならこの独白を読み進めている以上、読み手も主人公と同じ過去に囚われているからだ。事実が判明し始めるあたりのスリリングさは、まるで乗っている椅子ごと振り回される感覚で、遊園地の乗り物に乗っているかのよう。

Posted byブクログ

2013/01/28

込み入った仕掛けがあるわけではないが、洞察に富む文章を味わいつつ、どんでん返しのラストに驚愕する。月並みな感想だが、まさにそのとおり。 主人公そのままの鈍い俗物としては、苦く辛い気分で身につまされながら読んだ。

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2013/01/16

168ページ以降が不満だ。 そこまでがよかっただけに、そしてラストもよいだけに、残念だ。 なぜこの子がマイナスの存在なのか。そこが不満だ。

Posted byブクログ

2013/01/11

高校時代の歴史の時間、老教授の「歴史とは何だろう」という問いに、主人公トニー・ウェブスターは「歴史とは勝者の嘘の塊です」と答えている。斜に構えて見せたつもりだろうが、紋切り型の使いまわしにすぎず、主人公の凡庸な人となりを現している。老教授は「敗者の自己欺瞞の塊であることも忘れんよ...

高校時代の歴史の時間、老教授の「歴史とは何だろう」という問いに、主人公トニー・ウェブスターは「歴史とは勝者の嘘の塊です」と答えている。斜に構えて見せたつもりだろうが、紋切り型の使いまわしにすぎず、主人公の凡庸な人となりを現している。老教授は「敗者の自己欺瞞の塊であることも忘れんようにな」と生徒を諭す。同じ問いに主人公の親友エイドリアンは「歴史とは、不完全な記憶が文書の不備と出会うところに生まれる確信である」と、先人の言葉を引用して答える。この問答が、この小説の主題である。 今は引退し、平穏な生活を送っていた主人公のところに、かつての恋人の母親から遺産として500ポンドとエイドリアンの日記が遺されたという手紙が届く。エイドリアンは高校時代の憧れの人物であったが、別れた恋人ベロニカが自分の次に選んだ相手でもあった。何故エイドリアンの日記がベロニカの母の遺品となっているのか?また、その日記がなぜ送られてこないのか?主人公は疎遠になっていたベロニカの消息を尋ね、やがて衝撃の真実を知る。 60年代に青春時代を過ごし、一流とまではいかないが、二流の上くらいの人生を生きてきて、今はボランティアなどしながら余裕のリタイア生活を送っている。良くも悪くもない平均的な人物の代表のようで、同世代の読者からすればまるで自分のことを描いているように思わせられる。 たとえば、彼女のチェックを受けるレコード棚の話。彼女が毛嫌いするチャイコフスキーの『序曲一八一二年』と『男と女』のサントラ盤は隠してある。問題は大量のポップスだ。ビートルズ、ストーンズは許されるが、ホリーズ、アニマルズ、ムーディーブルース、それにドノヴァンの二枚組みアルバムは「こんなの好きなの?」と言われてしまう。このあたりでニンマリするご同輩も多いのではないだろうか。 齢を重ねれば、誰にだって一つや二つ心に突き刺さった棘のようなものがあるにちがいない。ただ、それは時の経過とともに記憶の劣化作用を受け、尖った角はまるく削られ、その上を幾重にも皮膜が被い、かつてあれほど感じた痛みを感じなくなってしまっている。 この小説は、それを一気にひっぺがす。小説は読者を問い詰める。いかに矮小であったにせよ一人の男の人生もまた歴史である。おまえのそれは「敗者の自己欺瞞の塊」ではなかったか、「不完全な記憶が不備な文書と出会ったために生まれた確信」に過ぎぬのではないか、と。臆病で、面と向かって真実に向き合う勇気がなく、日々を無事に送ることだけを念じ、面倒なことに背を向けて生きてきた結果としてある平和な老後。それが如何に欺瞞に満ちた偽りの平穏であるかを暴き立てずにはおかない、これは残酷な小説である。 周到に準備され、張りめぐらされた伏線、後の事態を暗示する象徴的な事件、結末に用意された衝撃のどんでん返し、と上質なミステリを読むようなサスペンスフルな展開。『フロベールの鸚鵡』などで知られる、どちらかといえば既成の小説の枠を越える小説を書いてきたバーンズだが、それまでの実験的な作風を封印し、人生に真正面から切り結んだ実に小説らしい小説である。2011年度ブッカー賞受賞作。 蛇足ながら、ドノヴァンの二枚組LPのタイトルが『花から庭への贈り物』と訳されている。“a gift from a flower to a garden”だから、訳としては正しいのだが、発売当時の邦題は『ドノヴァンの贈り物/夢の花園より』だった。当時のファンとしては、邦題でないと、あの民族衣装風の装いをしたドノヴァンの姿が浮かんでこないのだが、今の読者にはどうでもいいことなのかもしれない。

Posted byブクログ

2013/02/03

(借りた本) 新潮クレストの本は同じような匂い、日本語、雰囲気がいつも漂っている。それはこの美しい装丁、紙質、文字のフォント、行間全てが読者に“新潮クレスト”の本を読んでいる感、を意識させるからだろうか? ブッカー賞受賞、土屋政雄訳と聞けば、ある種の読者は読まずにはいられない気分...

(借りた本) 新潮クレストの本は同じような匂い、日本語、雰囲気がいつも漂っている。それはこの美しい装丁、紙質、文字のフォント、行間全てが読者に“新潮クレスト”の本を読んでいる感、を意識させるからだろうか? ブッカー賞受賞、土屋政雄訳と聞けば、ある種の読者は読まずにはいられない気分にさせられるだろう。しかし内容は少年の日のリアルな思い出、同級生の死、ガールフレンドとの手探りな関係、覚えたての哲学者の言葉をからめる幼い詭弁。むず痒く、居心地が悪くなるようなシーンが続く。 後半、大人になった主人公は別れたガールフレンドの母親から謎の遺産が相続される。ここから過去の記憶を照らし合わせながら、前半のあの時のあの場面にはどういう意味があったのか読者に認識させるという小説の技法。 ミステリーと言えるほどではない、しかしこれは、なかなか気が付かないことなのだ、おそらく男性は。女性は理解して欲しいと願い、それを口にすることは出来ない。

Posted byブクログ

2013/01/05

主人公のぐるぐるっぷり。老年ならではの老年論や、人生を俯瞰した意見と、どんでん返しのあるストーリーとの絡みが面白かった。

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