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終わりの感覚 の商品レビュー

3.7

59件のお客様レビュー

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2019/12/04

映画「ベロニカとの記憶」の原作 記憶の曖昧さ、ご都合主義の思い込み、歴史の定義など、学生時代から初老に差し掛かった現在までのトニーの心理描写を、時に哲学的に、時に滑稽に(と言うかコミカルに)これでもかという程細かく表現した文章がすごかった。 人は何十年も昔の出来事を鮮明に覚えてい...

映画「ベロニカとの記憶」の原作 記憶の曖昧さ、ご都合主義の思い込み、歴史の定義など、学生時代から初老に差し掛かった現在までのトニーの心理描写を、時に哲学的に、時に滑稽に(と言うかコミカルに)これでもかという程細かく表現した文章がすごかった。 人は何十年も昔の出来事を鮮明に覚えている訳ではなく、ほとんどがぼんやりと紗が掛かったような記憶でしかない。トニーの場合は自分が撒いた悪しき記憶を完全に葬り去り、更に自分の都合の良いようにねじ曲げられている。 教科書に出て来る歴史も、勝者と敗者によって語り方が違うのではと言うことを著書は言いたかったのかなと思った。 物語はトニーとガールフレンドだったベロニカと、親友のエイドリアンとベロニカの母サラの四角関係のような話だけど、私にはベロニカの行動や言動が理解し難かった。特に40数年後にトニーと再会して「あなたは何もわかっていない!」と何度も怒っているけど、詳しい事も語らずトニーを振り回しているだけのように思える。 しかし映画でもびっくりしたけれど、ラストでトニーが知った真実は意外だった。これでトニーはベロニカ(とエイドリアンとサラ)との物語を終わらせる、と言うのが「終わりの感覚(The Sense of an Ending)」って言う意味なのかな?このタイトルの意味がいまいちわからなかった。

Posted byブクログ

2019/10/22
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

最近じじいの青春小説ジャンルの本、それもちょっと古臭めによく当たる。ついこないだ「ストーナー」を読んだばかりやし。俺もそういうじじいになってきたってことやろな。 この本もじじい思い出書とめ帖みたいなとこはオモロかった。ノスタルジーに浸ったり、感情不安定な元カノとの邂逅とか、結婚と離婚とか友情と破たんと愛娘と…。心躍るってわけでもないけど、「もっと老いてきたらそういうの思い出すんやろな」ってシンパシーも感じたのだけど。 この本の売りである、最後のドンデン返しがどうも趣味じゃなかった。自殺させることはないやろし、障碍者で産まれさせることもないやろし、遺産を500ポンドだけ渡すこともないと思うけどなぁ~。そういうオチって好みじゃないわぁ

Posted byブクログ

2019/03/29

土屋さんが翻訳する文章に気品あるのだろうか それともそういう作品を選ばれているのだろうか。 2011年ブッカー賞受賞作品なり。 人生で何かを変える可能性がほぼなくなるころに近づくと 人にはしばし立ち尽くす時間が与えられる。 … 累積があり責任がある。 その向こうは混沌、大いなる...

土屋さんが翻訳する文章に気品あるのだろうか それともそういう作品を選ばれているのだろうか。 2011年ブッカー賞受賞作品なり。 人生で何かを変える可能性がほぼなくなるころに近づくと 人にはしばし立ち尽くす時間が与えられる。 … 累積があり責任がある。 その向こうは混沌、大いなる混沌だ。(本文抜粋) . 人間は忘れる動物である。だから生きていける。 …的なことを耳にし、その通りだと思った。 そして自分を正当化しがたるものでもある。 過去のことを忘れ正しいことのみをしてきたと思い込んでしまいがち。 その傾向が強い人が昔は良かったと言いたがるのじゃないのかなぁ。 自分が正しくなかったことを思い出すのは胸が痛む。 でもその痛みを感じる限り尊厳を持ち続けられるのでは。 自己欺瞞は簡単で自分を守れるけど それによって失うものもあるのでは。 といったことをとめどなく考えさせられた。 それにしてもベロニカにそこまで言われる筋合いはないのでは、と思った。

Posted byブクログ

2018/11/14

またここにも、大人になりきれない男の甘ったれ小説が。 いつまでもノスタルジックに浸っていたい万年少年に、男性は自己を投影したがるのかしら。 「あなたはほんとにわかってない」といわれつづけ、 でもわかってないんだからわかるはずはない、それでも生きてかなきゃいけないんだよ、ね、そう...

またここにも、大人になりきれない男の甘ったれ小説が。 いつまでもノスタルジックに浸っていたい万年少年に、男性は自己を投影したがるのかしら。 「あなたはほんとにわかってない」といわれつづけ、 でもわかってないんだからわかるはずはない、それでも生きてかなきゃいけないんだよ、ね、そうだよね? という内容。

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2018/09/15

直視するのが怖いような、人生についての真相めいたものが、後からじわじわと自分の中に浸透してくる…そんな小説でした。 皆、多かれ少なかれ、自分の見たいものを見て、思いたいように思い、そういう幻想の世界を生きている。 幸せな想い出だけでなく、苦しさや悔恨の情さえも幻想なのかもしれな...

直視するのが怖いような、人生についての真相めいたものが、後からじわじわと自分の中に浸透してくる…そんな小説でした。 皆、多かれ少なかれ、自分の見たいものを見て、思いたいように思い、そういう幻想の世界を生きている。 幸せな想い出だけでなく、苦しさや悔恨の情さえも幻想なのかもしれない、と思わされます。 そして、言葉というもののもつ恐ろしさについて。 言葉は、一旦自分の外に出たら、自分とは切り離された存在となり、思いもかけないところで、思いもかけない作用を果たし、最初に言葉を発した人間の責任とは到底言えないような域へ広がっていく。 まるで全てが、何か大きな力によって仕組まれているかのように。 後味はあまり良くないですが、今自分が生きているこの世界はいったい何なのかと、思わず立ち止まって考えさせられるような、そんな小説でした。

Posted byブクログ

2018/06/10

記憶って自分が生きていくために自分を守るためのものなのか。 最後タネ明かしがあるけど、あまりに唐突でしばらく理解できなかった。 読後の後味があまりよろしくない。

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2018/04/27

 洋の東西を問わず玄冬小説が流行なのか、ニュージェネレーションと呼ばれた世代が玄冬期を迎えているのか。  この小説は英国のインテリおっさんが主人公。学生時代の記憶はあやふやで、とかく美化される傾向がある。このおっさんは、元カノや友人に対しての厳しい手紙のことは忘れていた。夏目漱...

 洋の東西を問わず玄冬小説が流行なのか、ニュージェネレーションと呼ばれた世代が玄冬期を迎えているのか。  この小説は英国のインテリおっさんが主人公。学生時代の記憶はあやふやで、とかく美化される傾向がある。このおっさんは、元カノや友人に対しての厳しい手紙のことは忘れていた。夏目漱石の『こころ』を彷彿させるストーリーで、おっさんは元カノと再会し、過去と向き合っていく。学生時代のエピソードが終わるころから面白さは加速し、最後はちょっとしたどんでん返しで終わる。    同じ玄冬小説だが、『おらおらでひとりいぐも』のような陽気さはない。用の東西を問わず、おっさんは陰気なのかもしれない・・・。

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2017/08/02

無駄のないストーリーに加えて、裏表紙にもあるアニータ・ブルックナーを思わせる硬筆な筆致。 これだけで素敵じゃないか!と思わせてくれる。 本筋からはズレてしまう部分も魅力的だ。 物語に出てくるビートルズ、ストーンズ、ホリーズ、ドノヴァンetc、リズムに乗り、腰をくねらせダンスを踊...

無駄のないストーリーに加えて、裏表紙にもあるアニータ・ブルックナーを思わせる硬筆な筆致。 これだけで素敵じゃないか!と思わせてくれる。 本筋からはズレてしまう部分も魅力的だ。 物語に出てくるビートルズ、ストーンズ、ホリーズ、ドノヴァンetc、リズムに乗り、腰をくねらせダンスを踊る主人公とヒロイン… 読んでいて思わずニヤリとしてしまった。 (私は彼らと違い今でも腰をくねらせ踊っているが…) いかに私たちの中にある記憶があやふやで自分勝手に捏造されたものなのか。いかに私たちが一つの目線からでしか物事を捉えられず、考えられないか。 序盤に飄々とした語り口で読者に学生時代の記憶を語る主人公だが、中盤以降次第にその語りもたどたどしくなってくる。しばらくの後に、この主人公が矮小で逃げ腰のいわゆる'信用出来ない語り手'だと気づいた途端に物語がパッと開けた感覚があった。実に英国小説らしい。 この辺りの手腕はおっ、流石イギリス人小説家の名手だな!と思わせてくれる。 一冊の本の読了に優に1ヶ月はかかる、実に遅読人間の私には極めて珍しく本書は1日足らずで読み終えることができた。バーンズの文章が魅力的であり、土屋政雄さんによる翻訳も実に見事な出来栄えである。そのお陰なのだろう。

Posted byブクログ

2017/04/15

「歴史とは、不完全な記憶が文書の不備と出会うところに生まれる確信である」人生の終わりが近付いた頃に読み返したい。イギリスでは映画の公開が始まったばかり。早く観たいな。

Posted byブクログ

2017/03/22

けっして軽くはない衝撃。なにもかもが主人公トニーのせいじゃないし、ベロニカとエイドリアンが幸せになれなかったのは、エイドリアンが人生を諦めたからだと思う。ふられた男の腹いせに出された手紙が運命をかえたなんて、ずうずうしい。記憶はかけちがいもあるかもしれないけど、これは衝撃だった。...

けっして軽くはない衝撃。なにもかもが主人公トニーのせいじゃないし、ベロニカとエイドリアンが幸せになれなかったのは、エイドリアンが人生を諦めたからだと思う。ふられた男の腹いせに出された手紙が運命をかえたなんて、ずうずうしい。記憶はかけちがいもあるかもしれないけど、これは衝撃だった。うけいれられないひともいるかも。映画化するから見てみたいな。

Posted byブクログ