終わりの感覚 の商品レビュー
全てが主人公の前に明らかになったとき、エイドリアンの晩年を想像せずにいられない。 彼は幸せだったと思います、という彼女の言葉。そう確信するからこその500ポンドの遺産。 誰かを誰かから奪うということには、様々な方法がある。 どんでん返し後の自分の心が揺れる。良い小説。
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読了後、薄ら寒いものを感じた。知らず知らずのうち何気ない一言で人を傷つけてしまうこともあるし、ましてやその逆で傷つくこともある。 年を重ねるごとに昔友人知人に話したことは適切だったのかとふと思った。 それにしても、若干哲学書を読んでいるような気分に陥ったが、ストーリーの構成はよかった。
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記憶と悔恨の物語。次の一節が胸にしみた。 「人は若くて感受性の強いときにかぎり、やたらと傷つくことをする。一方、血液の流れが弱まりはじめ、感覚が鈍り、まとう鎧が強化され、痛みに堪える方法が身についてから、やっと用心深く歩きはじめる」 若い頃は、自分や周囲の人を、つまり世界を、...
記憶と悔恨の物語。次の一節が胸にしみた。 「人は若くて感受性の強いときにかぎり、やたらと傷つくことをする。一方、血液の流れが弱まりはじめ、感覚が鈍り、まとう鎧が強化され、痛みに堪える方法が身についてから、やっと用心深く歩きはじめる」 若い頃は、自分や周囲の人を、つまり世界を、軽々しく扱って畏れることがなかった。愚かであることは若者の特権かもしれない。年をとって自分の愚かさをごまかすのがうまくなっただけという気もするが。 クレストブックスは全くどの本も美しい。全部買って並べておきたくなる。
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齢60歳を越えた主人公。ある日届く手紙。忘れていた学生時代の記憶。自殺した友、別れた恋人と家族。記憶を紐解くうちに現れる真実。老年に達した人が対峙する、戻れない過去と記憶の物語。ラストはかなり苦い。
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良い小説を読み終わると、しばらくはその余韻に浸っていたくて他に何も読みたくなくなる。私にとって、これはそうした小説の一つだ。 この物語の語り手に近い年輩に至ったいまこの物語に出会ったことに少なからぬ運命的なものを感じてしまう。 迫り来る老い、自分に都合よく書き換えた過去の記憶、...
良い小説を読み終わると、しばらくはその余韻に浸っていたくて他に何も読みたくなくなる。私にとって、これはそうした小説の一つだ。 この物語の語り手に近い年輩に至ったいまこの物語に出会ったことに少なからぬ運命的なものを感じてしまう。 迫り来る老い、自分に都合よく書き換えた過去の記憶、選ばなかった人生への悔恨。 私も自身の記憶を都合よく書き換えているに違いない。 それと気付かず、他人の人生を狂わせているかもしれない。 この先、この語り手に起こったようなことが私にも起こるだろうか? 語り手同様に早々に野心をあきらめ無難な人生を送ってきた私には、あまり有難くないことではあるが、同じような後悔を味わってみたいような気もする。
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訳の土屋政男さんが、いいんだな。生とか死、友情とか愛とか、もう、すべてを、すべてのエグい部分を盛り込んだ感じ。2011年ブッカー賞。
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「歴史とは不完全な記憶が文書の不備と出会ったときに生まれる確信である。」 この物語は、途中で自殺した秀才エイドリアンのこのテーゼを裏付けていく流れで進んで行く。 一番の語り手であり、エイドリアンの親友でもあった「私」は、大学で歴史を学び、平和主義で平穏な人生を望み、それを自らの選択により作り上げてきたと考えていた。 それを振り返る時期にさしかかったあかつき、ひとつの連絡と、いくつかの文書が手元に舞い込んでくる。 その記録と、自分の記憶が出会った瞬間、彼は自身がどのような歴史を刻んできたのかをはじめて確信する。「私」は、自分の不完全な記憶に隠されてきた劣等感、傲慢さ、屈辱、憎悪、自惚れ、自己欺瞞がいかなるものだったのか、ばかのように最後まで気付かなかった。 その文書がなければ「私」は平和的に人生を終えていただろう。 そしてさらなるどんでん返し... 歴史は、大いなる混沌。 たったの184pですが、重いお話でした。
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自問自答モノローグ。自分のことも、恋人のことも、友人のことも、他人のことも、分かったようで、全然わかっていない、ということかしらん。自分の過去の記憶は自分の都合の良い想像上の物語。
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結論がよく分からず?? イギリス版「こころ」といった感じ。 元妻をもっと大事にした方がいいんじゃない? 全く共感できません。
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2011年ブッカー賞受賞作。 穏やかな引退生活を送る男のもとに、見知らぬ弁護士からの手紙が届く。 ある日記と500ポンドをあなたに遺した女性がいると。 その女性とは、学生時代の恋人、ベロニカの母親だった。 そして、日記は、同じ学生時代を過ごした友人エイドリアンのもの。 ベロニカ...
2011年ブッカー賞受賞作。 穏やかな引退生活を送る男のもとに、見知らぬ弁護士からの手紙が届く。 ある日記と500ポンドをあなたに遺した女性がいると。 その女性とは、学生時代の恋人、ベロニカの母親だった。 そして、日記は、同じ学生時代を過ごした友人エイドリアンのもの。 ベロニカは男と別れた後、エイドリアンと付き合っていた。 そして、在学中に突然自殺してしまった彼。 なぜ、彼の日記が母親のもとに? なぜ、エイドリアンは死をえらんだのか? しかし、日記はなかなか彼の手元に届かない。 彼は、日記を取り返すべく、あの手この手でベロニカに接触する。 それは、苦く重い青春時代を思い出すことでもあった。 そして、隠された謎がだんだん明らかになってゆく。 ちょっと衝撃。
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