終わりの感覚 の商品レビュー
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やはり歳をとったせいか,老年小説(そんなジャンルがあるかしならないが)がとても気になる.というわけで,ブクログでこの本を見つけてさっそく読んでみた. うまい.巧みにいくつも張られた伏線,それを回収していく手際のあざやかさ,アフォリズムの多用.精巧なプランのもとで書いている感じ....
やはり歳をとったせいか,老年小説(そんなジャンルがあるかしならないが)がとても気になる.というわけで,ブクログでこの本を見つけてさっそく読んでみた. うまい.巧みにいくつも張られた伏線,それを回収していく手際のあざやかさ,アフォリズムの多用.精巧なプランのもとで書いている感じ.ちょっと人工的な感じさえする. さて,なんとも,寂しさの漂う話である.それなりにまっとうに生きてきたつもりが,老年になって大きな負債を抱え込んでいるのに気付く感じ.そんなこと今になって言われてもなぁ.若い頃のことはどうしようもないよ.
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読んだことのない作家だが、ブッカー賞受賞作品ということなので、読んでみた。 老年を迎えた語り手が、若かりし頃をシニカルに回想する。その語り口が魅力的。はっきり言って、ストーリーがつまらなくても、この語りだけで十分に面白いので(生徒と教師のやりとりなど)惹きつけられて夢中で読んだ。...
読んだことのない作家だが、ブッカー賞受賞作品ということなので、読んでみた。 老年を迎えた語り手が、若かりし頃をシニカルに回想する。その語り口が魅力的。はっきり言って、ストーリーがつまらなくても、この語りだけで十分に面白いので(生徒と教師のやりとりなど)惹きつけられて夢中で読んだ。 予備知識はなかったので、結末にはやはりある種のショックを受けたが、それは、ストーリーの巧さとはやはり違うな、と思った。 はじめは語り手と同じ気持ちになって読むので、ヴェロニカという女は思わせぶりで、条件が上の男を狙う厭な女だと思っている。しかし終わってみれば、語り手の主観に惑わされていたことがわかる。 ヴェロニカという女の内面は彼女自身が言うように、語り手は全くわからなかったのだろうと思う。 人間というものはかようにわかり合えないものであり、老いてそれに気づいた語り手はある意味幸福なのかもしれない。 真実を知らずに、自分が作り出した記憶だけで人生を終わる人の方が多いのだから。
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うーむ、何だか。身につまされるようなお話ではあるかもしれない。まぁ、誰しも「若さゆえの過ち」は認めたくないものです。歴史だけじゃなくて、人の記憶が作り出す自分の思い出も都合の良いようにねつ造されているものなのかもしれない。しかし主人公の性格・行動には共感できん。ダメダメな奴だ。翻...
うーむ、何だか。身につまされるようなお話ではあるかもしれない。まぁ、誰しも「若さゆえの過ち」は認めたくないものです。歴史だけじゃなくて、人の記憶が作り出す自分の思い出も都合の良いようにねつ造されているものなのかもしれない。しかし主人公の性格・行動には共感できん。ダメダメな奴だ。翻訳が流れるような日本語になっていて読みやすかったのは良かった。
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初老を迎え、青春の失恋、結婚、離婚、それなりの棘はあっても つつがない人生の締めくくりに入ろうとしている男性のもとに 突然とどく、遺産受け取りの知らせ。それは40年前に別れたきりの 気難しい恋人の母親からのものだった…。 歴史が記憶の積み重ねだとしたら、そこには誰の記憶がどのような 形で残るのだろう。誰の主観で、立場で、記憶されるのかで 出来事の様相はまったく異なる。 「あなたはまったくわかっていない。なにもわかっていない」と 元の恋人に繰り返し告げられるのは、なぜ。 圧巻のどんでん返し。 読み終えたとたんに伏線を捜すため、ページをもう一度繰ることに なるのは必至である。
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とても「イタい」小説。主人公自身が。 そして、自分の身につまされる、という意味でも。 年老いたトニーが過去を振り返り語り始める物語が、現在の彼に思わぬ形でつながっていく――。 一人称の語りを読み進めるうちに、記憶というものの持つあやうさが徐々に浮き彫りになっていきます。 人間...
とても「イタい」小説。主人公自身が。 そして、自分の身につまされる、という意味でも。 年老いたトニーが過去を振り返り語り始める物語が、現在の彼に思わぬ形でつながっていく――。 一人称の語りを読み進めるうちに、記憶というものの持つあやうさが徐々に浮き彫りになっていきます。 人間の持つ「業」のようなもの、人生が問いかけてくるものについて考えさせられてしまいます。 読んだ後の気持ちがなんともいえない。・・・苦い、苦過ぎる。 でもきちんと受け止めるべき何か、のある小説です。
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全てが主人公の前に明らかになったとき、エイドリアンの晩年を想像せずにいられない。 彼は幸せだったと思います、という彼女の言葉。そう確信するからこその500ポンドの遺産。 誰かを誰かから奪うということには、様々な方法がある。 どんでん返し後の自分の心が揺れる。良い小説。
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読了後、薄ら寒いものを感じた。知らず知らずのうち何気ない一言で人を傷つけてしまうこともあるし、ましてやその逆で傷つくこともある。 年を重ねるごとに昔友人知人に話したことは適切だったのかとふと思った。 それにしても、若干哲学書を読んでいるような気分に陥ったが、ストーリーの構成はよかった。
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記憶と悔恨の物語。次の一節が胸にしみた。 「人は若くて感受性の強いときにかぎり、やたらと傷つくことをする。一方、血液の流れが弱まりはじめ、感覚が鈍り、まとう鎧が強化され、痛みに堪える方法が身についてから、やっと用心深く歩きはじめる」 若い頃は、自分や周囲の人を、つまり世界を、...
記憶と悔恨の物語。次の一節が胸にしみた。 「人は若くて感受性の強いときにかぎり、やたらと傷つくことをする。一方、血液の流れが弱まりはじめ、感覚が鈍り、まとう鎧が強化され、痛みに堪える方法が身についてから、やっと用心深く歩きはじめる」 若い頃は、自分や周囲の人を、つまり世界を、軽々しく扱って畏れることがなかった。愚かであることは若者の特権かもしれない。年をとって自分の愚かさをごまかすのがうまくなっただけという気もするが。 クレストブックスは全くどの本も美しい。全部買って並べておきたくなる。
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齢60歳を越えた主人公。ある日届く手紙。忘れていた学生時代の記憶。自殺した友、別れた恋人と家族。記憶を紐解くうちに現れる真実。老年に達した人が対峙する、戻れない過去と記憶の物語。ラストはかなり苦い。
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