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小さいおうち の商品レビュー

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471件のお客様レビュー

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    130

  2. 4つ

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  3. 3つ

    106

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2023/03/02

山形の少女・タキは、昭和の戦前から戦争初期、東京で、女中として働いていた。それは、大好きで美しい奥様と、可愛い小さなおうちで、家事の腕前をふるう楽しい日常だった。 そんな彼女が、女中を引退後、回想しながらノートに書き留めた物として描かれている。それを、時折、学生の甥が読むといった...

山形の少女・タキは、昭和の戦前から戦争初期、東京で、女中として働いていた。それは、大好きで美しい奥様と、可愛い小さなおうちで、家事の腕前をふるう楽しい日常だった。 そんな彼女が、女中を引退後、回想しながらノートに書き留めた物として描かれている。それを、時折、学生の甥が読むといった趣向。 最近も、敗戦前後の小説を何冊か読みましたが、それらのような、抑圧的な生活を書くのではなく、女中として、知恵と工夫で奥様を支え切るということを、楽しんでいるかのように思う。 この小説は、最終章で趣を変えます。 奥様が、戦時でありながら、夫がありながら、恋をしてしまう。その、想い人へ宛てた手紙が、開封されないままタキの遺品から見つかります。 タキが最初にお勤めした、小説家に教えられていた“かしこい女中”としての行動だったのか。また、タキは、奥様の友人にこの恋愛について相談したことがあります。その時の、“きれいな女は罪ね”と小説の抜粋から、意味慎重な会話がされます。タキさん同様、何を意味しているかわからず、数度読み返しました。ここに、タキさんが手紙を隠した本当の理由があるのか。正解は、作者のみ知るとのこと。

Posted byブクログ

2023/02/04

女中とはお手伝いさんとかそんな軽いイメージしかなかったけど特定の人の人生に寄り添うということなんだなぁと。近くで全てを理解してるようにいても見えてない経験や思いもあり、それが死後に残された日記のようなノートから親戚の子供が伏線を回収していく様子がおもしろかった。昭和初期の日本は今...

女中とはお手伝いさんとかそんな軽いイメージしかなかったけど特定の人の人生に寄り添うということなんだなぁと。近くで全てを理解してるようにいても見えてない経験や思いもあり、それが死後に残された日記のようなノートから親戚の子供が伏線を回収していく様子がおもしろかった。昭和初期の日本は今よりも優雅だったように感じる内容だった。

Posted byブクログ

2023/01/11
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

最後の最後までタキの謎や展開が分からなかった点が結構好きでした。 自分の祖母も戦後ですが東京のお金持ちの家で女中をやっていたらしいので孫に感情移入して読めました。 時子さん魔性の女ですね。 絵の描写も凄く想像力掻き立てられて良かったです。 戦後全てが無くなってしまったことで最後の絵の中のおうちの世界がより清く美しいものになり、もののあはれを感じました。

Posted byブクログ

2022/12/05
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

美しさは罪とはよく言ったものだなあと思う。 中島京子の「小さいおうち」は映画化もされ、直木賞も受賞した名作。実は少し前にNetflixで映画を観たときに原作の小説を読みたいなーとぼんやり思っていて、先日図書館で返却されたばかりの本のコーナーでたまたま見かけて衝動的に借りてきた。 『昭和初期、女中奉公にでた少女タキは赤い屋根のモダンな家と若く美しい奥様を心から慕う。だが平穏な日々にやがて密かに“恋愛事件”の気配が漂いだす一方、戦争の影もまた刻々と迫りきて―。 晩年のタキが記憶を綴ったノートが意外な形で現代へと継がれてゆく最終章が深い余韻を残す傑作。著者と船曳由美の対談を巻末収録。』【「BOOK」データベースの商品解説】 内容のほとんどが女中タキの語りで進んでいく小説なのだが、タキを通して伝わる当時の暮らしぶりが鮮やかで様子が頭のなかに思い浮かぶ。またタキが慕っている時子奥様がどれだけタキにとって素敵であるかが再三に渡って丁寧に伝えられている。これは映画もぜひ観てもらいたい。 残念ながら今はNetflixでも配信が終了し、Amazonでも見放題対象ではなくレンタルしなければならないのだけれど。 とにかく配役が素晴らしいのだ。女中のタキが黒木華さんなのもそうだけれど、何より時子奥様の松たか子さんがもう最高に素敵。あの時代の奥様を見事に演じている。そしてタキが惹かれてしまう、なんとも言葉にし難い絶妙な魅力が存在しているのだ。文章を読んでいて香ってくる時子奥様の不思議な魅力というか、タキが奥様に惹かれることがよくわかる。 そういう出会ってしまったらどうしようもないような魅力がある、という人物像なのだ。 女中タキの時子奥様への感情の解釈は色々あるだろうと思う。そのうえで私は恋慕の情があったと解釈したい。 ずっと女中タキの語りで進んでいくけれど最後の最後は彼女の又甥である健史の語りになるのだけど、そこにきて大きな秘密が明かされる。その秘密がまさに私がタキが時子奥様に恋慕の情を抱いていたと思う理由のひとつだ。正義感から表出した言い分の陰に自分の欲が隠されていることがあるのはめずらしくない。 女性から女性への感情の大きな揺らぎが書かれる小説は存外少ない。雑に百合ものだとか言われて消費されてしまう。 ただこれは読む人によってタキがああいった行動をした理由は違うと思うから、どうか読んでみてほしい。

Posted byブクログ

2022/12/04

面白かった。 最初は、昭和初期の話なので知らない言葉だらけでなかなか読み進められませんでした。少しずつ少しずつ読んでいって、終盤ですよ…ギュンッ!と引き込まれました。後はノンストップで読み切りました。 結論をはっきり書いていないので、想像が膨らみます。

Posted byブクログ

2022/12/02

昭和の初期。難しい時代を女中として生きた女性の手記によって物語は進みます。柔らかく静かな中に、ざらっとした不安定な危うさを持ち続けている文章だな、と感じながら読み進めました。自分は嫁ぐことなくずっとここで暮らしたいと思うほどタキの心をとらえたものとは何だったのか。 最終章は衝撃で...

昭和の初期。難しい時代を女中として生きた女性の手記によって物語は進みます。柔らかく静かな中に、ざらっとした不安定な危うさを持ち続けている文章だな、と感じながら読み進めました。自分は嫁ぐことなくずっとここで暮らしたいと思うほどタキの心をとらえたものとは何だったのか。 最終章は衝撃でした。物語の流れが一変して、もう一度最初から読み返すと全く違った物語が見えてくる程。胸の奥に隠していた想いをぎゅっとつかまれたような鈍い痛みが残りました。 一人の女性の生き方に、大きな余韻がしばらく続いた一冊です。

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2022/11/21

すごい良くて、映画も見たいってなって見てたけれど色々、端折られてるのが、もったいないなって途中でやめてしまった。それぐらい、小説がよかった。配役はとても良かったと思うけれど。

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2022/11/12

戦前、昭和初期の東京の文化華やかなるこの時代の雰囲気が好きです。 晩年のタキが女中だった当時の時代を振り返って綴った記憶は、慎ましやかな中にも生きる喜びが感じられこの時代の空気を味わう事が出来ました。 タキを取り巻く登場人物に起こる様々な出来事、戦後何十年も経ってから明かされた真...

戦前、昭和初期の東京の文化華やかなるこの時代の雰囲気が好きです。 晩年のタキが女中だった当時の時代を振り返って綴った記憶は、慎ましやかな中にも生きる喜びが感じられこの時代の空気を味わう事が出来ました。 タキを取り巻く登場人物に起こる様々な出来事、戦後何十年も経ってから明かされた真実、イタクラショージ記念館。。人と人との営みから繋がる歴史に感動しました。 また、タキが綴ったノートを読んだ甥の次男健史の殺伐とした反応は、失われた古き良き時代の美しさをむしろ際立たせるものだった。 私も若い時は健史の様に戦争でただ暗い時代という印象しか持ってなかった気がする。しかし歳を重ねるうち健史同様、祖父母や父母やこの時代の人も我々と同じ様に懸命に生きておりその歴史が今に繋がっていると言うことを肌で感じるようになったものだ。 戦争の渦中にあっても、街は賑やかで明るかったと言うタキの記憶も本当にそうなのだろうと思った。自分の周りに爆弾が落ちてこない限り、衣食住に不自由しない限り、人は希望を持って明るく生きようとするものだ。今だって海外では戦争が止まず、どこからかのミサイルが頻繁に発射されている様な中で平和だと思って生きている我々と何ら変わらない気がするのです。

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2023/05/09

何度目かな、再読 ほんと好きな本。文体もすき。 時子の危うさとエロスと、板倉のフニャフニャしつつ意外とやるとこ(これはどっちかというと映画の感想かな)、タキちゃんの強さと哀しみ。 時局に流される時子の夫や会社の社長。 そういうみんなのそれぞれを、根こそぎ奪う戦争への怒り

Posted byブクログ

2022/10/20
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

本当は小説を読んでから映画を観たかったのだけど、うっかりテレビで映画のほうを視てしまい、ネタバレ状態で読む小説はいかがなものだろうと思ったけれども、杞憂でした。 映画は一つの解釈ではあるけれど、小説を読んで思ったのは、正解なんてものは各々の心の中にしかないということ。 というよりも、正解なんて、ない。 解釈という名の想像がどこまでも広く深く感じられるほどの奥行きを、この作品は持っていました。 昭和の、まだ支那との間にだけ軍事的いざこざがあると庶民が認識していた頃。 山形から女中奉公に出たタキという娘が、女中として一家を切り盛りする話。 奥様は再婚だけれどもまだ若く、そしてとても美しい。 華やかで美しい奥様はタキにとって、憧れという言葉では言い尽くせないほどの存在だったということは容易に読み取れる。 穏やかで新し物好きの旦那様と、足が悪いく毎日のタキのマッサージが欠かせない坊ちゃま。 戦争の気配はじわじわ近寄ってきていたけれども、おおぜいの日本人はアメリカが日本と戦争するなんて考えもしなかった。 だって日本軍が強いのは世界の常識だもの。 アメリカがそんな馬鹿な選択をするはずがないと、信じていた。 だから戦前も、戦中も昭和18年くらいまでは、驚くほど平和に日々は過ぎていったのだ。 少しずつ生活が窮屈になったとしても。 そしてそんな生活の中に、旦那様の会社の板倉青年が顔を出す。 おもちゃの会社でデザイン部門を担当している板倉は、絵画だけではなくクラシック音楽にも造詣が深く、奥様ととても話が合う。 奥様と板倉と坊ちゃまの3人で他愛のない話に笑い合う。 タキはそんな姿を見ているだけで、とても幸せだった。 しかし戦局は刻一刻と悪化し、目と気管支が悪いので戦場にはいかないだろうと思われていた板倉も出征することになり、タキは奥様の秘密を知ってしまう。 タキの手記という形でこの本を読んでいるのだけど、文章には書かれていないことが実は重要だったりする。 故意にしろ無自覚にしろ、タキには書くことができなかった自分の思い。 あの日の出来事。 言葉にされなかったからこそ胸に迫るものがある。 あらすじだけを追えば、ストーリーがわかればそれでよし、という昨今の風潮ではとうてい気づくことができない心の奥の奥にしまい込まれた温かな思いと苦い悔恨。 それから、多くを語られることがなかった板倉の人生。 そこにもつい思いを馳せてしまう、そんな幾層もの機微が織りなす切なくも骨太の作品でした。 なんでもっと早く読まなかったのか。

Posted byブクログ