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小さいおうち の商品レビュー

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466件のお客様レビュー

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2012/12/21

戦前・戦中の東京を舞台に、女中タキの目を通して物語は語られていく。タキは終始読者を物語へ誘う「目」として、タキの奉公先の一家に起る事件を語っていく。読者はタキと一体になって、タキの目を通して小説を読み進めていくが、最終章で物語の語り手が、タキからその甥に移った時、始めて他者として...

戦前・戦中の東京を舞台に、女中タキの目を通して物語は語られていく。タキは終始読者を物語へ誘う「目」として、タキの奉公先の一家に起る事件を語っていく。読者はタキと一体になって、タキの目を通して小説を読み進めていくが、最終章で物語の語り手が、タキからその甥に移った時、始めて他者として物語上語られる「タキ」という他者に出会う。 人は誰しも秘密がある、そのことを思い知らされるのだ。

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2012/12/17

おもしろかった。ミーハーなので昭和初期のお金持ち家庭の暮らしぶりとかが楽しい。賢い女中さんの、賢いプライドをもった仕事ぶりとかも読んでてわくわくする。工夫を凝らしたおいしそうな料理とか。 さらっとした落ち着いた文章で、ユーモアがありつつ淡々とした感じがすごくよくて。 で、ちょっと...

おもしろかった。ミーハーなので昭和初期のお金持ち家庭の暮らしぶりとかが楽しい。賢い女中さんの、賢いプライドをもった仕事ぶりとかも読んでてわくわくする。工夫を凝らしたおいしそうな料理とか。 さらっとした落ち着いた文章で、ユーモアがありつつ淡々とした感じがすごくよくて。 で、ちょっとした奥さんの恋愛事件とかも淡々と時の流れのように流れていくのだろうなあと思っていたらば。 ラストにサプライズが。 うーん、ほんとにまったくただの個人的な好みなんだけど、こんなにこのラストのサプライズをしっかり書かなくてもよかったような気も。それまでのタキさんが書いたものとがらっと雰囲気が変わった感じで、まあ、そこがこの小説のすばらしさなんだろうけれど、わたしとしては、平凡でいいからタキさんが書いたものの穏やかな雰囲気のなかで終わってほしかったかも。 さらっと未開封の手紙の存在を示すだけとかでよかった気も。 これもほんとにまったくただの個人的な好みなんだけど、タキさんが奥さんに恋していたってのはちょっといやかも。あくまでもどこまでも女中さんとして奥さんの立場を守ったってことであってほしい。でも、それをちょっと後悔したってことであってほしい。……とか思ったり。

Posted byブクログ

2012/12/16

ストーリーの巧者、中島京子の本領発揮といったところ。著者のテクニックに酔いながら、80年後の今振り返る戦後と、その中にいて見た昭和初期のギャップを楽しむ。 すると、最終章でビックリ。もう一枚幕が開く。 直木賞も納得のエンターテイメント。

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2012/12/15

かつて昭和の人々が〝大正ロマン〟と名づけ、ひとつ前の時代を懐かしんだように、いまや昭和も懐かしがられる時代になってしまったのですネ。本書に漂う古き良き時代の空気感に、ついつい惹きこまれてしまいます。戦争についても声高に何かを伝えようとするのではなく、あくまで市井の人の視点で描かれ...

かつて昭和の人々が〝大正ロマン〟と名づけ、ひとつ前の時代を懐かしんだように、いまや昭和も懐かしがられる時代になってしまったのですネ。本書に漂う古き良き時代の空気感に、ついつい惹きこまれてしまいます。戦争についても声高に何かを伝えようとするのではなく、あくまで市井の人の視点で描かれ、わたしたちの知らない日本の姿がここにありました。 この小説の大半は、女中という職業に誇りを持って、昭和という時代を生きたタキという女性の、最晩年に書き綴った手記〝心覚えの記〟からなっています。戦前から戦中にかけて奉公した、東京郊外のある家庭の様子が、女中の目を通して綴られているのですが、当然彼女ひとりの視点で書かれたものなので、随所に散りばめられた小さな謎は、最後まで解き明かされることなく、すべて読者の心に委ねられます。それどころか手記を綴ったタキさんの心情さえ、最後まで明かされることはありません。このあたりの構成がとても巧みで、読後に深い余韻が残ります。赤い三角屋根の家で女中として過ごした日々が、60年以上の時を経て、美しくも哀しい物語として甦ります。第143回直木賞受賞作。

Posted byブクログ

2016/07/23

始めは読み難かったのです。 戦前の、ちょっと我儘な所はあるけれど善良で若い美人の奥さんと、主人公の少女の女中の交流の思い出が淡々と綴られて行きます。いったいこの話はどこに向かおうとしているのかと。。。 半分を過ぎたころから物語が動き始めます。戦局の悪化に伴い崩れて行く小さな家で過...

始めは読み難かったのです。 戦前の、ちょっと我儘な所はあるけれど善良で若い美人の奥さんと、主人公の少女の女中の交流の思い出が淡々と綴られて行きます。いったいこの話はどこに向かおうとしているのかと。。。 半分を過ぎたころから物語が動き始めます。戦局の悪化に伴い崩れて行く小さな家で過ごす幸せな日々。善良な人々の、愛情にあふれる交流の中で起こる様々な齟齬。そうしたものが浮き出してきて、俄然ページのめくりが順調になります。例によって電車の中で読んでいたのですが、最後の10ページほどで悩みました。急げば降車駅までに間に合うが。。。。その先で、何かが起こるのは判っていたので、一旦ページを止め、家に帰ってゆっくり読み切ることにしました。 最後は驚くほどの切り返しではなかったけど、それはむしろこの物語に似合っているように思いました。

Posted byブクログ

2012/12/06

淡々と読める本。 長年に渡って家政婦をしていた語り手が、家政婦になりたての頃から振り返りながら半生を綴っていく、というスタイルで進んでいく。 語り手の性格を表すかのように、静かに、淡々と進んでいく物語だけど、語り手が移った最終章、最後の最後でどんでん返しされた気分でした。 読み終...

淡々と読める本。 長年に渡って家政婦をしていた語り手が、家政婦になりたての頃から振り返りながら半生を綴っていく、というスタイルで進んでいく。 語り手の性格を表すかのように、静かに、淡々と進んでいく物語だけど、語り手が移った最終章、最後の最後でどんでん返しされた気分でした。 読み終わったあのときの気持ちを、なんて言ったらいいかわからない気分。 答えはない、というかたぶん想像するしかなくって、本人にもわかってはなかったんじゃないかと。 映画化が決まったそうで、あの静かな世界をどう表現してくれるかがひそかな楽しみ。

Posted byブクログ