ツナグ の商品レビュー
吉川英治新人文学賞受賞作品。決して辻村さんの良い読者ではない私ですが、本作を通して作者の確かな力量を感じ取ることが出来ました。 抽象的な表現であるが、作家として読者に1.夢を与える、2.現実を知らしめる、3.生きること(命)の尊さを教える・・・以上の3点が伝わって来ました。 5編...
吉川英治新人文学賞受賞作品。決して辻村さんの良い読者ではない私ですが、本作を通して作者の確かな力量を感じ取ることが出来ました。 抽象的な表現であるが、作家として読者に1.夢を与える、2.現実を知らしめる、3.生きること(命)の尊さを教える・・・以上の3点が伝わって来ました。 5編からなる連作短編集の形をとっていますが1~4編目にて依頼人4人が登場します。そして最終章で使者の姿(歩美)が明確となり、彼のバックボーンと1~4話の話をより深く掘り下げることにより読者により一層の感動をもたらせてくれます。 一番読み応えのあるのはやはり女子高生の友情の話でしょうね。読んでいて胸が一杯になってくる話ですが、私は背負ったものが大きい嵐ちゃんに深く同情します。 原作が素晴らしいのでどのように描かれているか映画も観たいですね。 本多孝好さんの印象的な解説も見事のひとことにつきます。
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辻村先生はデビュー当時から知っていましたが、読んだのはこれが初めてです。正直に上手い!と思います。心情や背景に深い表現はないものの、文章も読みやすいし設定も面白いのでそれで丁度良いです。他の作品も読みたくなりました。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
たった一度だけ死んだ人に会わせてくれる「使者(ツナグ)」。ツナグのルールには難解なものは存在しないし、それ自体に高額なお金は必要ない。そして、この小説の中に登場するツナグはどこにでもいるような高校生、歩美。第5章では歩美の心の中の葛藤も描かれており、その心情は誰もが尊敬するような高尚なものでなければ、なんら特別なものでない。そんな難解でない、特別でない描かれ方が、「死」という重い題材を扱ったこの作品に読者のこころを無理なく引き込んでいく。 少なくともこの作品を読んでいる間は、実際にツナグは存在するものだとこころのどこかで無意識に認識していた気がする。 ただ、こころをいい感じの温かさに支配するこの作品のクライマックスは突如、ぐさりと刺さる形で突然現れる。第3章「親友の心得」はどこか腑に落ちない終わり方をする。しかし、第5章のとある一行で全てを悟れる瞬間がくる。この一行を読んだとき、思わず読むのをやめてしまった。悲しさと、恐ろしさ、ある意味での感動・・・様々な思いが交錯した。もしかしたら、読者によってその部分の解釈は大きく違ってくるのかもしれない。ただ、偉大な一行だとそう思った。 偉そうに、レビューを書いておきながら、矛盾するようなことを言わせてもらうと、皆のレビューとか見る前にとにかく一回読んで欲しい。そんな作品だ。
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映画化されるのをきっかけに知った「ツナグ」。 あり得ない再会の話であっても、読み手それぞれに会いたい人を想像させてくれるパワーを感じた。 特に、がんで母親を亡くした息子のお話は、まるで自分のことのように気持ちが重なってしまった。 読了後、もしも私が会いたい人に会えたなら、きっとこ...
映画化されるのをきっかけに知った「ツナグ」。 あり得ない再会の話であっても、読み手それぞれに会いたい人を想像させてくれるパワーを感じた。 特に、がんで母親を亡くした息子のお話は、まるで自分のことのように気持ちが重なってしまった。 読了後、もしも私が会いたい人に会えたなら、きっとこれまでどおりに変わりなくさりげなく会えるだろうと言う気持ちにさせてくれた。 喪失感を強めると思われるとは、私自身が思わなかったのでふとしたきっかけで今のタイミングで本書に出会えて、本当に良い巡り会いになれたと思ってる。
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一生に一度だけ、死者との再会を叶えてくれるという「使者」。 突然死したアイドルが心の支えだったOL、年老いた母に癌告知出来なかった頑固な息子、親友に抱いた嫉妬心に苛まれる女子高生、失踪した婚約者を待ち続ける会社員…… ツナグの仲介のもと再会した生者と死者。 それぞれの想...
一生に一度だけ、死者との再会を叶えてくれるという「使者」。 突然死したアイドルが心の支えだったOL、年老いた母に癌告知出来なかった頑固な息子、親友に抱いた嫉妬心に苛まれる女子高生、失踪した婚約者を待ち続ける会社員…… ツナグの仲介のもと再会した生者と死者。 それぞれの想いをかかえた一夜の邂逅は、何をもたらすのだろうか。心の隅々に染み入る感動の連作長編小説。 『たった一人と一度だけ、死者との再会を叶えてくれる人がいる』 そんな話が5つの短編が連作になっています。 後半に行くほど、驚きが増していき続き楽しく読み進める事ができました。 死んだ人と会える、というテーマ設定はありがちかもしれませんが... そこで描かれるささやかな感情の揺れみたいなものが、実に若々しいタッチで描かれていて、歳を重ね人生の中盤に差し掛かった私には凄く鮮やかに感じました。 キラリちゃんの話も、頑固親父の話もベタなのですが、それぞれの優しさが無理なく心に染み渡ってきます。 個人的にはキラリちゃんの話が一番心に染みました。 3編目の「親友の心得」はかなり重い内容に。 読者の「こうであってほしい」という思いを見透かしたような予定調和の破壊っぷり... 私はたった一度のチャンスを誰のために使うのだろうか... 私のためにたった一度のチャンスを誰かが使ってくれるのだろうか... ふとそんなことを考えながら読みました。 全てがハートフルな話ではなく、会ったことによる悔いを見せていたり、一筋縄ではいかない作品... 辻村さんの作品は上記通り、初めてなのですが他の作品も読んでみたくなりました。 オススメがありましたら是非、教えて下さいね☆
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辻村さんの本は元々何冊か読んでいた。この本は映画化されたのをきっかけに読むことにした。 生きている人と死者とを繋ぐ「使者(ツナグ)」。人は使者を介し、人生に一度だけ、死んでしまった人と会うことが出来る。死者も一度しか人と会えないため、必ずしも会えるとは限らないが。 辻村さんの本は...
辻村さんの本は元々何冊か読んでいた。この本は映画化されたのをきっかけに読むことにした。 生きている人と死者とを繋ぐ「使者(ツナグ)」。人は使者を介し、人生に一度だけ、死んでしまった人と会うことが出来る。死者も一度しか人と会えないため、必ずしも会えるとは限らないが。 辻村さんの本は殆ど泣いたが、これは泣かなかった。それは、私には会いたい人がいないからかもしれない。
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読み途中。 やばい、これ。 人待ち中で、ものすごい寒い中読んだから、こんなんになるのか。 ものすごい泣きそうになった。 ゆっくり考えて、またさらに泣きそうに。 とりあえず、最後まで一気に読んでしまいます。 スラスラ読める。 映画の方も、気になるなあ。 この作者の本、わたしが読んだ...
読み途中。 やばい、これ。 人待ち中で、ものすごい寒い中読んだから、こんなんになるのか。 ものすごい泣きそうになった。 ゆっくり考えて、またさらに泣きそうに。 とりあえず、最後まで一気に読んでしまいます。 スラスラ読める。 映画の方も、気になるなあ。 この作者の本、わたしが読んだのは2作目。はまりそうな予感。 *** ネタばれ。 そして読み終わった。 途中読むの疲れてきた。最初の方が良いなーって思った。 関係ないけど、続きはぬくぬくした部屋で読んだ。 そういうことかーって展開だったり。 あっけど、死者呼び出す描写とかは、何かあんまり欲しくなかったかもと思った。一気に、児童書っぽくなるというか、いや、児童書が悪いといいたいわけでは全くないけど、いきなりメルヘンになるっていうか。でも、それないと、両親のあのことがいえなくなってしまう?うーん、★は迷った。4に近い5ということにしておこうかな。 また読んで、その時改めて考えよう。
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#読了。短編連作集。生者と死者を、一度だけ逢わせることが出来る使者(ツナグ)。最初の4編に関しては正直それほどであったが、再度の「使者の心得」を読んで、評判の作品と納得。
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面白かった。死をテーマにしてるのに『泣ける!』とか『心温まる!』って感じじゃなく、それが逆に心地よかった。 もし自分が亡くなった人に一度だけ会えるなら・・・ってこれ読んだ人は誰もが考えるだろうなー。 それがこの本の魅力なのかも。
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死んでしまった人に会えるなら自分なら誰と会うことを望むだろうか。現実では起こり得ないとは分かっていても物語を読み進めながら、その人の顔を想像してみる。穏やかに最期のお別れをした人もいれば、突然に最期が来た人もいる。現実世界では旅立ってしまった人に会うことはできないけれど、ツナグを...
死んでしまった人に会えるなら自分なら誰と会うことを望むだろうか。現実では起こり得ないとは分かっていても物語を読み進めながら、その人の顔を想像してみる。穏やかに最期のお別れをした人もいれば、突然に最期が来た人もいる。現実世界では旅立ってしまった人に会うことはできないけれど、ツナグを通して物語と寄り添うことで、逝ってしまった人に想いを馳せ、想像の中で再び会うことができる。また一方で読者は生きている、友達や家族、恋人や伴侶、一人一人との出会い、共有できる時間の瞬間瞬間を愛おしく、かけがえのないものだと感じ、それを大切にしたいという想いを抱く。この物語を読んだ私たちの「生」へのベクトルは、「死」をイメージすることで、よりいっそう強いものになるのではないでしょうか。
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