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岸辺の旅 の商品レビュー

3.5

97件のお客様レビュー

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2018/01/27

「生と死」という概念について、ライフワークとでも申しましょうか、絵本であれ、小説であれ、その境界領域を描いてらっしゃる湯本香樹実さんです。「くまとやまねこ」、大好きです。今回、「岸辺の旅」(2012.8 文庫)を読みました。生者・瑞希(みずき)と夫優介(死者)の彼岸・此岸の旅の物...

「生と死」という概念について、ライフワークとでも申しましょうか、絵本であれ、小説であれ、その境界領域を描いてらっしゃる湯本香樹実さんです。「くまとやまねこ」、大好きです。今回、「岸辺の旅」(2012.8 文庫)を読みました。生者・瑞希(みずき)と夫優介(死者)の彼岸・此岸の旅の物語。なんとも不思議な世界に迷い込みました。生者と死者がお互いを見つめ、お互いを赦し合う、そんな世界なのかもしれません。私には、まだ難しい物語でした。配偶者というのは、わかるという意味、わからないという意味、不思議な関係ですね!

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2017/09/08

ただ体が反射的に動いて、指にクリームをのせてしまった。 死んだはずの夫・優介が、夜中に食べるロールケーキのシーンがとても印象的だった。両手で掴んでかぶりつく優介。反対側から出てくるクリームを反射的にすくう妻・瑞樹。彼女のこの行動は、無意識であるが、食べることを忘れないしたたかさ...

ただ体が反射的に動いて、指にクリームをのせてしまった。 死んだはずの夫・優介が、夜中に食べるロールケーキのシーンがとても印象的だった。両手で掴んでかぶりつく優介。反対側から出てくるクリームを反射的にすくう妻・瑞樹。彼女のこの行動は、無意識であるが、食べることを忘れないしたたかさを持つ。食べものを通して、少しずつ生きる者と死者との境界線が見えてくる。 不思議だったのが、蟹に食べられて死んだという優介の言葉。タイトルにもあるように、全編を通して水の気配が色濃い。なぜクジラや鯵などではなく、蟹なんだろう。小さくかわいらしい、滑稽な死に方である。

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2017/07/02

ファンタジーであり不条理であり寓話でありロードムービーでありコメディでありハートウォーミングものでありホラーでもある。 浅野忠信はもとから魂の抜けているような顔。なのにチャーミングという。 ばっちりの演技。(空も風も痛いという凄まじい台詞は、そこらへんの役者には言えないだろう。...

ファンタジーであり不条理であり寓話でありロードムービーでありコメディでありハートウォーミングものでありホラーでもある。 浅野忠信はもとから魂の抜けているような顔。なのにチャーミングという。 ばっちりの演技。(空も風も痛いという凄まじい台詞は、そこらへんの役者には言えないだろう。) 深津絵里は静かに悲しみを持続しているような顔。 だからこそ笑顔や笑い声が嬉しい。 怒った手つきで白玉団子を作るとか、いい。 なにやかやと手仕事をする所作も素敵だ。 蒼井優の自信たっぷりのしたたか悪女。 ほか、小松政夫をはじめとして「いいツラ構え」のおっさんたち。 旅は4つに分割できると思うが、「自分の死に気づかない人」と生者のそれぞれの在り方を見届けることで、自分たち夫婦の在り方も決着をつけようと決意する。 死者の未練、生者の執着、それぞれがお互いを引き止めたり引っ張ったりする。 この均衡不均衡は、生者死者だけでなく夫婦の関係性でもあるのだ。 死後でも「愛の確認」をしなければならないとは。(恨みの幽霊は存在しない。) そして普段の生活では自分に見せてくれなかった「別の顔」を見て、理解を深めていく。 生死の境界や通り道は、黒ではなく白や霧や湯気のイメージ。 全編仰々しいとともに美しく幸福なオーケストラ。 これも清節と思えてしまえるくらいには盲目的信者である。 しかし、ここまで不穏なのに幸せな感動に浸れるのは、もう清でしかありえないのではないか。 ##### と、映画版で書いた。 抒情的な怖さを醸し出す設定や小道具や人物や背景やは清の工夫なのだろうとてっきり思っていたが、 実は原作をかなり忠実になぞっていた。 ということは「湯本香樹実の黒沢清性」。変な表現だが。 「死者は断絶している、生者が断絶しているように。死者は繋がっている、生者と。生者が死者と繋がっているように」 という台詞なんて、「回路」に出てきてもおかしくない。 死者が自分の死に気づいていなかったり、生者に交じっていたりするところも。 むしろ映画のほうが、ピアノ勝手に触らないで! や、今度結婚するんです、ふふふ不敵な笑み、や、殴り合い、などなど、エモーショナルな場面が多くなっているほど。 つまり原作は相当に淡々としている。それでいての叙情だから、良作なのだ。 また小説で気づいたのは、決して夫婦の話に限定していない、むしろ親と子という軸が盛り込まれた作品なのだということ。 あとは全編を通じて水の気配。これは小説ならではの巧みな技巧だ。

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2017/06/17

静謐なお話の中に、思わず読みすすめてしまうものがあった。なんだろう。 非日常な旅の中で描かれる日本の風景が、どれも「この風景見たことあるかも」というリアルな感じで、そのアンバランスからくるものなのかな。

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2017/04/26

湯本香樹実の著作は、『夏の庭』『春のオルガン』『ポプラの秋』『西日の町』、どれも大好きだったけど、これはイマイチ。この人といい、椰月美智子といい、児童文学の名手がオトナの小説とかエッセイを書くと、なんだか中途半端に生々しい。どうせなら生々しいなら、桜庭一樹の『私の男』とか桜木紫乃...

湯本香樹実の著作は、『夏の庭』『春のオルガン』『ポプラの秋』『西日の町』、どれも大好きだったけど、これはイマイチ。この人といい、椰月美智子といい、児童文学の名手がオトナの小説とかエッセイを書くと、なんだか中途半端に生々しい。どうせなら生々しいなら、桜庭一樹の『私の男』とか桜木紫乃の一連の作品ぐらい絶望的にどろどろしているほうが好き。

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2017/02/20

非現実的なお話で、私にはわかりづらい。 でも、夫が失踪しずっと探してた主人公の気持ちを表すには、これくらい非現実的なほうがより哀しさが表現できていいのかも。 夢のような話だけど、哀しみに溢れてると思った。

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2017/01/17

失踪した夫が帰ってきた。自分は死んで海の底に沈み、体は半分蟹に食べられたという。そんな夫と二人、失踪をなぞる旅にでるという話。何しろ話も雰囲気も暗くて、昼間にしか読めないほど。映画化されたみたいだが、文字で読むより映画のほうが良いかも。以前の作品のように、わかりやすいけど深みのあ...

失踪した夫が帰ってきた。自分は死んで海の底に沈み、体は半分蟹に食べられたという。そんな夫と二人、失踪をなぞる旅にでるという話。何しろ話も雰囲気も暗くて、昼間にしか読めないほど。映画化されたみたいだが、文字で読むより映画のほうが良いかも。以前の作品のように、わかりやすいけど深みのあるテーマで書いてほしい。この作品は重厚感を求めすぎじゃないかと思う。読者のほうがしらけるほど。

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2016/12/27

設定はとても面白いものだと思ったが文学的な世界観がドライな感じでなにか物足りなさを感じてしまった。 そこが本書の味でありこういったものは元々好きなのだけれど、読んだ時期が悪かったのか。残念。。

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2016/11/19

読み終えてからしばらく経っても、この本のことを思い出すと、静かに沈み込むような気分が蘇ってきます。そういう小説はそんなにあるものではない、まさにこの表紙の写真のような空気感の物語です。 暗いお話は得意ではないのですが、随所にぞくりとするような表現があったりするので、またこの文章...

読み終えてからしばらく経っても、この本のことを思い出すと、静かに沈み込むような気分が蘇ってきます。そういう小説はそんなにあるものではない、まさにこの表紙の写真のような空気感の物語です。 暗いお話は得意ではないのですが、随所にぞくりとするような表現があったりするので、またこの文章に触れたい、と思ってしまう。

Posted byブクログ

2016/12/05
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

不幸を背負い込むのはきらいだ。 だけど、血とか肉とかになるのかもしれない。 こころの奥へ。深く深く。

Posted byブクログ