銃・病原菌・鉄(下) の商品レビュー
仮説としては、なかなか説得力があったと思う。環境が人を変え、進化させその結果、現在までのパワーバランスが完成したという一定の結論に至るまでの構成はよくできていたと思います。このロジックは頭に入れておきたい。
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病原菌から世界史を読むというのは、新しい発見であった。 「病気が人類の歴史を変えていく」 説得力のある内容で、読み応えがあった。
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サイエンス書を定期的に読もうと心がけている僕にとっては、以前から気になっていた一冊でした。 朝日新聞の「ゼロ年代の50冊」ベスト1に選出されたことを契機に文庫化され、書店で平積みにされていたので、満を持して読んでみることにしました。 本書のテーマは、「なぜ、ヨーロッパ人が他の大陸...
サイエンス書を定期的に読もうと心がけている僕にとっては、以前から気になっていた一冊でした。 朝日新聞の「ゼロ年代の50冊」ベスト1に選出されたことを契機に文庫化され、書店で平積みにされていたので、満を持して読んでみることにしました。 本書のテーマは、「なぜ、ヨーロッパ人が他の大陸を征服したり、圧倒しているのか、その逆ではないのか」ということ。 あたり前のように感じられるこの疑問に対して、医学部の教授である著者が、進化生物学、考古学、言語学といった幅広くそして深い知識を総動員して、検証・説明しています。 「人種間の基本的な能力の差では無い」と繰り返し書いた上で、表題となっている銃・病原菌・鉄といったキーワードに連なる要因を、人類史一万三千年を通じた壮大なスケールで説明しています。 著者も書いているように、この本の特徴の一つが、ヨーロッパ視点ではなく、ニューギニア、オーストラリアそして中国といった、逆の立場から記述していること。 時代をおって歴史を語るという形ではなく、上記のキーワードによって、なぜ、大陸間・人種間に差が生じたかということを多面的に検証していく形で書かれています。 いくつかの要因は僕も、これまで漠然と感じていたことですが、家畜となる動物の条件等々、これまで考えたことの無い視点が多く「目から鱗」の記述が多くありました。 扱う時代が有史以前の部分が多いので、手法が限られますが、考古学的な発見だけではなく言語の違いの分析等を駆使して、多面的に検証している点でも、説得力がありました。 まさに「博学の徒による一冊」という印象で、文庫版の帯にあった「知的興奮の書」というキャッチフレーズに納得がいきました。 文庫化されるサイエンス書というのは、”はずれ”が少ないですね。これからもチェックしていきます。
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ヨーロッパ人が人種的に優れているわけではなく、ユーラシア大陸と、南北アメリカ大陸やアフリカ大陸などとの環境の違いが、現在の富や権力の不均衡の理由となっていることが膨大なデータをもとに明らかにされている。 下巻の第18章「旧世界と新世界の遭遇」が本書のハイライト。ヨーロッパが南北アメリカを征服した理由、逆にアメリカ先住民が旧世界を征服できなかった理由として、ユーラシア大陸での定住生活が早くから始まっていたこと、食料生産を効果的におこなえたこと、発明や技術をさまざまな地域に伝搬しやすかったこと、などを挙げる。 その他にも、中国南部出身のオーストロネシア人がインドネシアやポリネシアの島々に広がっていった経緯や、アフリカが黒人の大陸となっていった過程などが解説されており、世界各地で農耕民族が狩猟民族を徐々に追いやったことが歴史に大きな影響を与えたことが分かった。
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民族の盛衰を左右した要因とは何か。 上巻に続き歴史上の出来事が何故起きたのかという内容。世界史で出てくる「旧世界」の人々が「新世界」を征服することが出来たのはなぜか。 着目点が非常に興味深く面白く読むことが出来た。
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必要は発明の母ではなく、発明は必要の母である。社会にその技術の受容生がなければどんなに先進的であっても、歴史に埋れるだけである。孤立社会での技術の放棄も興味深い。日本はかつて銃を放棄している。サムライの時代、一対一の剣技で名を上げることに重きがあり価値があったからだ。同様に中国も...
必要は発明の母ではなく、発明は必要の母である。社会にその技術の受容生がなければどんなに先進的であっても、歴史に埋れるだけである。孤立社会での技術の放棄も興味深い。日本はかつて銃を放棄している。サムライの時代、一対一の剣技で名を上げることに重きがあり価値があったからだ。同様に中国もかつて内部分裂により、世界屈指の航海術を放棄している。ユーラシアに位置する中国が孤立社会とは意外かもしれないが、ヨーロッパと違い統一されていたため、技術の放棄により抜きん出る存在が身近にいなかったのだ。ヨーロッパは不統一であったため、技術をどんどん受け入れ進歩させた。その結果が現代のパワーバランスを築いたのである。環境的要因が全てで、全てはたまたまであったと言っても間違いはないだろう。ぼくは確率論を溺愛している。それにしても文字の羅列の歴史でなく、科学のアプローチによる歴史は初めてだったが、現代の過去へのアプローチの理論には唸るばかりだ。とりわけ、言語学から辿るという論理がすばらしく、夢中で読み入ってしまう。もし、仮にボルネオから直接マダガスカルへオーストロネシア人が航海したのなら、ほんとにノアの方舟レベルの話ではないだろうか。ぼくの想像のはるか上をいってる。 肥沃三日月地帯の土地がダメになって世界への影響力がなくなってしまったのならば、現代の農薬汚染による、土壌崩壊、花粉媒介動物の死滅も影響で国力が低下していくことになるのだろうか、流通網と情報網が発達しているから、そんなこともないのか。でも、核の技術の放棄は絶対起こらないだろうなと思う。これは言い切れる。ゲーム理論でも、本書の内容からも。
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上巻に比べると真新しさは少ない。が、上巻で得た結論を別の角度から分析し、類似性を検証することにより正当性を高めているという点では十二分に面白い内容。 (上巻の後半が分子生物学寄り、下巻の前半は言語学寄りの内容だったので、自分の専門に近いほうが読みやすいというのもあったかもしれない) また、「エピローグ」として今後の研究の方向性などが示されていた点にも非常に好感が持てた(訳者のあとがきで知ったのだけど、著者はUCLAの医学部教授らしい。よって自然科学の論文に慣れてる私なんかがすっと読みやすい論理構成になってたのかもしれない)。 本書の内容を一文でまとめるなら、 「現在の人間世界で地域による発展度合の差異が生じている究極的な要因は、陸の地形であって、そこに住む人の優劣ではない」
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なげー。 なぜ、現在の勢力バランスがあるのかっていう疑問点からの出発なんやけど、証拠集めばっかしに主題が移って、もっと直接に結論をのべれば、読みやすくておもしろいんじゃねーかな。 どーでもいーわって部分が多すぎた。 反論を封じ込めるために書かれた部分が多すぎた。
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二十歳のころは悩みが多く、当然の帰結なのか、哲学的な書物に引き寄せられていた。まさしくアマチュアなので、専門書を手に取ってもぜぇぜぇ言うばかりで、結局は入門書あたりに落ち着いていったように思うのだが、そんな読書遍歴のなかで強烈だったのが、笠井潔『バイバイ、エンジェル』だった。純然...
二十歳のころは悩みが多く、当然の帰結なのか、哲学的な書物に引き寄せられていた。まさしくアマチュアなので、専門書を手に取ってもぜぇぜぇ言うばかりで、結局は入門書あたりに落ち着いていったように思うのだが、そんな読書遍歴のなかで強烈だったのが、笠井潔『バイバイ、エンジェル』だった。純然たるミステリーの体裁を取る『バイバイ、エンジェル』だが、通底して流れているのは「なぜ全共闘に代表される学生運動は浅間山荘事件という阿鼻叫喚の悲劇に終わったのか?」を本質直観する思索だった。おそらく古典物理学に端を発する還元主義では解かれえないこの問題を、笠井潔は現象学という結果から起原を遡ることを容認する無敵の方法論を用いて転回しようとする。『銃・病原菌・鉄』を読了して、ジャレド・ダイアモンドもそのように考えたのではないかと思った。上巻に引き続き、論旨は明快。食糧生産を効率的にできた人々が圧倒的に有利だった。なぜなら、家畜が増える、農産物を効率的に収穫できる、育種する、人口が増える、病原菌が増える。このサイクルが回ることで、「自己触媒的」というイノヴェーティヴな創発が産まれ(これと同様な現象は「RNAワールド」時代の生物にも起こったとされ、「生命」の進化は「自己触媒的」な可変性に立脚するトライ&エラーの累乗的な繰り返しの結果と考えられている)、社会の分業化に呼応する官僚組織が整備され、ペストや天然痘などの疫病に対する耐性が生まれた。さらに、「史的唯物論」よろしく、欧米人が現代社会の覇者然としていられるのは、その欧米人の本質によるところではなく、双六の出た目が良かっただけ、つまり棲息していた環境が食糧生産に最適だったためだと爽快に喝破する。ベネディクト・アンダーソン『想像の共同体』、エドワード・サイード『オリエンタリズム』に比肩する名著であるのは間違いあるまい。朝日新聞の「ゼロ年代の50冊」の選者もちゃんと書物を読んで価値が分かるということか。
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なぜ、今、西欧中心のコスモポリタニズムとなっており、アジアやアフリカではないのか、を解き明かそうとする本。 文明が発達するためには、余暇・余剰が必要であり、そして、それらは農耕が始まったことによりもたらされた。さらにその農耕が発達したのは「人種」の優劣によるものではなく、気候や地理・植物の突然変異等々偶然が重なったことによるのである。 さらに、大型動物の家畜化についても、ユーラシア大陸は恵まれており、その点でも他の地域に比べ有利な状況にあったともいえる。家畜化された動物がたった13種類しかないことに驚いた。 また、地理的な誘因である、ユーラシア大陸が横長であるということもこれに関連しているとされており、驚いた。 そして、同様な発展は、文字・文明・政治体制にもいえる。 だから、農耕が偶然発展した西洋が優勢するようになってしまった。このことを中国大陸やオーストラリア周辺のオセアニア地域・アフリカの状況に当てはめて例示していてわかりやすい説明になっていた。
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