銃・病原菌・鉄(下) の商品レビュー
「正確にいうならば、ヨーロッパに何百人もいた王侯の一人をコロンブスが五回目にして説得できたのは、ヨーロッパが政治的に統一されていなかったおかげである。」 「もしもヨーロッパ全土が最初の三人の君主のうちの一人によって統一支配されていたら、ヨーロッパ人によるアメリカの植民地化はなかっ...
「正確にいうならば、ヨーロッパに何百人もいた王侯の一人をコロンブスが五回目にして説得できたのは、ヨーロッパが政治的に統一されていなかったおかげである。」 「もしもヨーロッパ全土が最初の三人の君主のうちの一人によって統一支配されていたら、ヨーロッパ人によるアメリカの植民地化はなかったかもしれない。」(p.380) 「一九六〇年十月、ケネディとニクソンのどちらがテレビ討論会で何をいったかによって、ケネディではなくニクソンが勝利することはあったかもしれない。しかし、ヨーロッパ人によるアメリカ先住民の制服が、誰が何をいったかよってさまたげられることはなかった。」(p.402)
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仮にヨーロッパ人の祖先がオーストラリアに産まれ、アボリジニの祖先がヨーロッパに産まれていたとしても、やはりヨーロッパに産まれた側がオーストラリアへと侵略しただろう。 下巻では筆者はヨーロッパに蹂躙された側の歴史を語っていく。ニューギニアとかオーストラリアについてはさすがに専門だ...
仮にヨーロッパ人の祖先がオーストラリアに産まれ、アボリジニの祖先がヨーロッパに産まれていたとしても、やはりヨーロッパに産まれた側がオーストラリアへと侵略しただろう。 下巻では筆者はヨーロッパに蹂躙された側の歴史を語っていく。ニューギニアとかオーストラリアについてはさすがに専門だけあって詳しい。進化生物学、考古学、民俗学の成果を縦横に動員した語りはやはり面白いのだけど、これだけ大胆に語れば論考が弱いところも出てくる。中国を中心とする東アジア史は専門外みたいだし、インドについてはほとんど語られない。 人類史の大きな分水嶺を植物の栽培化と動物の家畜化に求める筆者の発想は私は良いと思うが、歴史の全ての動力源を銃と病原菌と鉄に求めるのは無理があろう。鳥類学者が人間の歴史の何を語るか、と批判する向きもあるかもしれない。しかし西側世界に根強く残ってた人種優位論を環境決定論で葬り去った筆者の功績は認められてしかるべきと思う。
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自然の法則に従い、食糧生産(農業)・家畜→鉄、菌耐性→政治、銃が発達してきた。だから、南北に長いアフリカやアメリカ大陸よりも東西に長いユーラシア大陸の技術伝播が早く、文明が発達した。 海洋技術の役割も大きい。
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「なぜ現在のようにヨーロッパが発展したのか?なぜアフリカではなくヨーロッパが富をほとんど手に入れたのか?」という13000年にわたる人類史の謎を解明する大作です。もう1度じっくり読んでみたいです。上巻のほうがよかった。
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人類社会の発展も、生物の進化も同じ様なスキームで動いているのかな。利己的な遺伝子を思い出す。中国ではなく、ヨーロッパが世界をリード出来た理由とかはまさにそんな感じ。 この本が書かれてから20年、EUの統合が進み、中国が台頭して来た現在、文明社会がどうなって行くのか。 その辺は今度...
人類社会の発展も、生物の進化も同じ様なスキームで動いているのかな。利己的な遺伝子を思い出す。中国ではなく、ヨーロッパが世界をリード出来た理由とかはまさにそんな感じ。 この本が書かれてから20年、EUの統合が進み、中国が台頭して来た現在、文明社会がどうなって行くのか。 その辺は今度出る、文庫版文明崩壊で書かれてるのかな。
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世界が現在の姿となっているのはなぜなのか。 歴史の勝者と敗者を分けた要因とは何か? 様々な分野に渡る研究の知見を組み上げ、この問をつきつめた人類史の素晴らしい一冊。 非常に面白い本でした。 読みたいと思いつつ、ハードカバーになかなか手が伸びなかったんですが、 文庫化してくれた...
世界が現在の姿となっているのはなぜなのか。 歴史の勝者と敗者を分けた要因とは何か? 様々な分野に渡る研究の知見を組み上げ、この問をつきつめた人類史の素晴らしい一冊。 非常に面白い本でした。 読みたいと思いつつ、ハードカバーになかなか手が伸びなかったんですが、 文庫化してくれたのを機に購入。 本当に読んで良かった。 金属器技術の有無、農産物や家畜の種類・技術、運搬・移動手段、 文字の有無などなど様々な要因が存在するが、 そうした地域による違いを生み出した真の要因とは何なのか。 それぞれの違いについて多岐にわたる学問的な背景からの 詳細な解説を行いつつ、丁寧に真の要因に迫っていきます。 それもただ淡々と記述されるのではなく、 オーストラリア大陸はなぜ発展しなかったのか、とか ヨーロッパ人がニューギニアに定住できなかったのはなぜか、とか なぜアメリカ先住民はなぜ旧世界を征服できなかったのか、とか そういう具体的な歴史の場面に焦点を当てながら解説されていて飽きません。 最初から最後まで読みながらずっと興奮してました。 歴史って、おもしろい。オススメ。
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途中旅行等もはさんだので約1か月半かけて上下巻を読了。 旧世界と新世界の衝突において、旧世界が勝利し現代の世界を形作ることになった原因は何かを探っている。それはタイトルの通り銃・病原菌・鉄なのだがそれらが旧世界で生まれ、新世界で生まれなかった理由を食料生産の開始時期に求めている。...
途中旅行等もはさんだので約1か月半かけて上下巻を読了。 旧世界と新世界の衝突において、旧世界が勝利し現代の世界を形作ることになった原因は何かを探っている。それはタイトルの通り銃・病原菌・鉄なのだがそれらが旧世界で生まれ、新世界で生まれなかった理由を食料生産の開始時期に求めている。さらに食料生産が早く開始されたところとされなかったところの差は何か、というところ研究した成果を本書では提示している。 読むのが大変だったのは間違いない。それでも読んでよかったと思える本。 印象的だったことを2点ほど。 ・人間の性質に関して 環境の差なのか、各地域の人々の能力の優劣の差なのかという点については繰り返し検討されている。その中で印象的だったのは人間は与えられた環境の中で好奇心を発揮し最大限に利用可能なものを利用する、という点。民族ごとに怠惰かそうでないかのような性質が分かれる、という研究成果だったらいやだな、と思っていたのでなんだか安心した。 ・中国が覇権を握れなかった理由 エピローグで書かれていた話だが、ヨーロッパ同様早い時期から食料生産が始まっていて進んだ文明を持っていた中国が、なぜ新世界を支配することにならなかったのか、という話。中国は統一されていたがゆえに1人の支配者の(間違った)判断が文明を後退させてしまった。歴史上の大きな流れから見ればささいなことかもしれないが、それが理由で世界は違った方向に動いた、という点に触れているのが新鮮だった。
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「歴史は、民族によって異なる経路をたどったが、それは居住環境の差異によるものであって、民族間の生物学的なさいにおるものではない。」 日本がいかにして恵まれて今があるか、ともすれば日本人の特徴の話になりがちですが、いかに恵まれた場所に位置していたかということを感じました。生き物の...
「歴史は、民族によって異なる経路をたどったが、それは居住環境の差異によるものであって、民族間の生物学的なさいにおるものではない。」 日本がいかにして恵まれて今があるか、ともすれば日本人の特徴の話になりがちですが、いかに恵まれた場所に位置していたかということを感じました。生き物の歴史は繰り返す、人もその連鎖の延長なのでしょうか。 上に続き、色々と学びがありました。
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人類の長い歴史が大陸ごとに異なるのは、それぞれの大陸に居住した人びとが生まれつき異なっていたからではなく、それぞれの大陸ごとに環境が異なっていたからである。というのが結論。過去1万3千年の人類史を様々な手法で分析した内容は読み応えがある。さらにその分析が各地で使用されている言語に...
人類の長い歴史が大陸ごとに異なるのは、それぞれの大陸に居住した人びとが生まれつき異なっていたからではなく、それぞれの大陸ごとに環境が異なっていたからである。というのが結論。過去1万3千年の人類史を様々な手法で分析した内容は読み応えがある。さらにその分析が各地で使用されている言語にまで及んで考察されてることにより説得力が加わっている。コロンブスの船団が大西洋を渡りアメリカの東岸に達する何十年も前に中国は大船団をインド洋の先のアフリカ大陸東岸にまで送り出していた事実は興味深かった。また、このようなアプローチで日本についても詳しく知りたいと感じた。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
一つの事柄から、Why、Whyを繰り返していく手法の分析が心地よくおもしろい。 ざっくりと言えば、発展の要因に ・ある程度の規模の集落が構成され、生産活動以外の事柄に従事する特権階級が生まれることで、文字が発展する = 元々定住での食料生産が実現しやすい地域(良い小麦がある、気候 など) ・家畜の飼育が進むことで、病原菌への免疫がつく。 = 家畜化可能な動物が存在したか ・技術の交換・伝播において、気候が著しく異なる南北方向より東西方向の方が圧倒的に有利である という「地形上の理由であること、元々の人種が違うなどという先天的な能力の問題ではないこと」を繰り返し繰り返しケースを下敷きにしつつ説いている。 その理由自体も大変納得感のあるものでよろしいのだが、こうも「人種の違いではない」というのを強調されると、『欧米の発展を、優等人種だからだと思っている世論は、ここまで説得しないとならないほどに、ある一定数あるのだな」という方向での衝撃を覚えることになる。 これは、日本人の感覚とは異なるのではないだろうか。つまり、「気付いていなかったけど、差別されてた!」ということに気付いてしまう本だと思う。 日本人はアジア人であり、「もし先天的能力と発展に因果関係がある」と仮定した場合においては「選ばれた民」にはなれないであろう。(白人ではないため) にもかかわらず、現在までのある程度の繁栄があるために、原則として「遺伝子が優れているので発展した」理論を日本は採りにくい。 一方で、過去の歴史をさらっとでもやっていれば、 ・鎖国が好例であるが、日本が「島国」であったことは侵略を阻むの有効であったことは自明(地理的要因) ・大国中国から米・漢字等が伝来する程度の近さであった(地理的要因) ・江戸時代の驚異的な識字率等に関しても、「ひらがな」という喋れれば書ける50文字程度の表音文字があったことが勝因ではないかと考えられる。英語と日本語(ひらがな)で比べて、後者の識字率は容易に上がるのは当然な気がする(文化的偶然) などの要素が強そうだなとは感じるのでは無いかと思う。 というわけで、「選ばれた優等人種ではない、明らかに地理的に優位な場所に住む我々日本人」からすると、『主な理由は地理的要因でしたー!あと、偶然の要素も結構ありまーす。人種の優劣などは、なかったんでーす!(じゃじゃじゃーん)』と言われると、「そりゃそうだろ。薄々じゃないかと思ってたわ」感があるのは仕方ないところではないかとも思ったりした。 とはいえ、だからといって、本書の掘り下げのおもしろさが減じるわけではないんだけれども。
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