銃・病原菌・鉄(下) の商品レビュー
(上下巻を通じての感想です。) 本書の題名の「銃・病原菌・鉄」は、インカ帝国をわずか数百人のたスペイン人は、銃・病原菌・鉄によって征服できたことによるところから題名になっている。またゼロ年代の50冊の1位にも選ばれている。 内容は、プロローグ、4部構成、エピローグに分かれており...
(上下巻を通じての感想です。) 本書の題名の「銃・病原菌・鉄」は、インカ帝国をわずか数百人のたスペイン人は、銃・病原菌・鉄によって征服できたことによるところから題名になっている。またゼロ年代の50冊の1位にも選ばれている。 内容は、プロローグ、4部構成、エピローグに分かれており、それぞれの部で人類史1万六千年の歴史を紐解く手がかりを提示し、それを元に分析を進めている。 1部では、1万3千年から人類が分かれ、環境によって変化が激しいこと、インカ帝国とスペイン人の戦いによって、重要な要素があることが示されている。 2部では、食料生産の観点から、狩猟と農耕は環境によって選択されるものとし、地域差、農耕民の誕生、栽培できる種の有無、家畜の有無、東西南北の広がり方の違いが環境として考えられることを示されている。 3部では、病原菌、文字、技術革新、集団の体制の4観点による異なる文化を示している。 4部では、2・3部を受けて、オーストラリア、中国、太平洋、アメリカ大陸、アフリカについての考察を述べている。 上下巻800ページに及ぶ量は、なかなか読み切るのは大変だったが、さすが人気のある本だけあって知的刺激に富んだ本だった。しかし、これだけ書ける知識もなかなかのものだったと思う。
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本書は同著の2000年頃に発売されたハードカバー版を文庫にしたものです。 ある民族がほかの民族に対して優位に立てた究極的な原因とはなんだったのか? それを解き明かしていこうというのが本書の主題です。 下巻では、現在の使用言語の分布がどのようにして形成されていったのかを、オーストロネシア人の移動を交えながら解説しています。 マダガスカル島の住民がインドネシア系と同じという話や、いつ頃移住していたかを判断するのに、使用言語の中に移住する時点で発明が行われていたものが入っているかどうかで判断するというのが面白かったです。 筆者がエピローグで書いているように、まだまだ課題は多く、しかも証明していくのは難しいことも多いのでしょうが、この分野での進展を期待したいと思います。
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上巻で纏められた総論を、下巻では大陸別に論証している。ので、下巻を読まなくても、内容はつかめる。12章の「文字を作った人と借りた人」が面白かった。
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下巻は東洋を中心とした内容となっていて、日本という国家の成り立ちにも縁深いところが話題となっている。人類の歴史において、農耕による人口集積と階級社会の出現は、文明を形成するための大きな要因となったわけであるが、それがどうしてユーラシア大陸を中心に起こったのであろうか。 肥沃三ケ...
下巻は東洋を中心とした内容となっていて、日本という国家の成り立ちにも縁深いところが話題となっている。人類の歴史において、農耕による人口集積と階級社会の出現は、文明を形成するための大きな要因となったわけであるが、それがどうしてユーラシア大陸を中心に起こったのであろうか。 肥沃三ケ月地帯と言われるペルシャ湾からチグリス・ユーフラテス川を遡り、シリア・パレスチナ・エジプトに至る地域において、人類にとって必要不可欠な農作物のほとんどが栽培種となっていった。カロリーを得るために必要な穀物や豆類、それらを大規模に栽培するために必要な大型家畜、そして継続的に農耕を行なうために必要な土壌と水を運ぶ河川、、それらの要素が揃っていたのがこの地域であり、三大文明のうちの2つが興る必然があったのだ。 南北方向に比べて東西方向は、気候が似ていて季節のサイクルが同じということもあり、農作物や家畜の伝播が早く、やがてシルクロードによって中国の黄河周辺に興った文明とも接続する。ユーラシア大陸においては人口が飛躍的に増え、国家という概念が生まれて戦争も発生するようになる。そのためにローマ帝国や中国などは単一民族が支配する大型国家が生まれ、周辺地域にまで影響を及ぼすようになっていった。 日本においても、氷河期に大陸から歩いてきた狩猟採集民族である縄文人と、中国における農耕による人口集積から海を渡ってきた弥生人という、異なった起源を持つ人種がゆるやかに融合していった歴史がある。東日本は縄文文化が色濃く残る一方で、西日本では早くから天皇を中心とした国家が興り、武家社会となっていったのは周知のとおりである。 このような地政学や環境条件による歴史的必然を認識した上で、どのような未来をつくっていけば良いのか。過去と未来を繋ぐ現代人にとって必要な教養と言える。
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氷河期を終えた人類が、世界各地で一斉に地球の覇者としての競争を開始した13000年前から現代に至る歴史の中で、なぜ斯くも、欧州人の一人勝ちという状況が生まれたのか、本書ではその答えは導くことはできない。しかし、少なくとも、各地の人類の知能の差であったり、高温多湿で食べ物が豊富であ...
氷河期を終えた人類が、世界各地で一斉に地球の覇者としての競争を開始した13000年前から現代に至る歴史の中で、なぜ斯くも、欧州人の一人勝ちという状況が生まれたのか、本書ではその答えは導くことはできない。しかし、少なくとも、各地の人類の知能の差であったり、高温多湿で食べ物が豊富であることが人類を怠け者にしてしまうというような誤った認識が、その理由でないことを明らかにしてくれる。 それにしても、氷河期が終わって僅か2000年足らずで、ライディーンのような二足歩行ロボットを作り出したムー大陸の文明は、凄すぎる。
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現代世界は様々な条件=環境によって成り立っているのだよって事を、浅く広くではあるが順序立てて教えてもらった。すごく物知りな人のお話を聞いてるような楽しさがあった。多角的・現実的に物事を捉え、教え、問題定義までしてくれる作者に感謝。
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歴史書というよりは歴史解説書。地理学的な考察が深く、新しいかも。ただ、民俗学的な考察はざっくりしすぎ。
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人類史だけでなく、あらゆる学問に精通した作者だからこそ書けた一冊だと思う。 なぜ今のヨーロッパが先進国となり、アフリカが発展途上国となっているのか、そこには人種的な差ではなく地理的な差が大きく影響している。地理的な差により栽培・飼育可能な作物・家畜に差が生まれ、そこから余剰食糧が...
人類史だけでなく、あらゆる学問に精通した作者だからこそ書けた一冊だと思う。 なぜ今のヨーロッパが先進国となり、アフリカが発展途上国となっているのか、そこには人種的な差ではなく地理的な差が大きく影響している。地理的な差により栽培・飼育可能な作物・家畜に差が生まれ、そこから余剰食糧が生まれ、言語が発展し、国家が生まれ、産業が発展していった、と膨大な研究成果を基に明快な答えを提示してくれる。 これは教養として、読んでおいて損は無い。
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非常に示唆にとよむ一冊である。 本書の主題は、歴史的には4大文明時代から2つの大戦まで世界の歴史はヨーロッパの歴史であったわけだが、なぜアフリカではなく、アメリカ大陸ではなくそして中国ではなくヨーロッパだったのか? 人間の起源はアフリカにあると言われている。人間の時間を発展の...
非常に示唆にとよむ一冊である。 本書の主題は、歴史的には4大文明時代から2つの大戦まで世界の歴史はヨーロッパの歴史であったわけだが、なぜアフリカではなく、アメリカ大陸ではなくそして中国ではなくヨーロッパだったのか? 人間の起源はアフリカにあると言われている。人間の時間を発展のスピードと言うのであればアフリカ大陸が覇権を握っていてもよかったのではないか。 また、4大文明という点であれば、中国もヨーロッパに引けを取なかった。とくに中世に関してはヨーロッパよりも科学的に進んでいたものもあった。 このような事を踏まえれて、なぜヨーロッパだったのか? それは必然であったのか、偶然であったのか。 なお本書のタイトルである「銃・病原菌・鉄」というタイトルはあまりよろしくない。 というのも、確かにこれらは他者よりも優位になるモノとして本書で紹介されているが、それらが優位になる時代はこの順番ではない。 まず青銅器から鉄という点で、鉄が最初に来るのだろう。そして銃は同じ大陸同士の民族間の争いで優位になる道具であり、病原菌は他の大陸で他者を圧倒するための原因であった(たとえば、インディアンはヨーロッパ人の持ち込んだ病原菌にて絶滅寸前まで至った)。 加えて、筆者によると最初に狩猟民族から農耕民族になるうえで重要になった原因は「家畜」の存在であったという。そして農耕民族になり余剰生産が可能になったときに部族から国家になっていくというプロセスである。 ゆえに、タイトルに「家畜」を加えたほうが良いかと思う。 なかなか大学の勉強や個人の考えでは本書のような問題意識はわかないと思うので良い書籍であると思う。 そして、次回は「科学」という点に焦点をおいて同じような書籍を書いて欲しい。本書では人口が多いので多様な視点が生まれたのだろうと考察は短い(最終章のエピローグ部分)。しかし、そんな単純なものではないと思う。 それならば、なぜ日本で関孝和がヨーロッパに先んじて微分や行列を考え出せたのだろうか。 なぜインドで「0」が生まれてローマで生まれなかったのだろうか。 なぜイスラム圏では錬金術が中心的な課題となったのだろうか。 やはり、科学も同じように必然の部分と偶然の部分があるように思われる。それを整理し考察するのも同じように重厚な一冊になるのではないのだろうか。
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「正確にいうならば、ヨーロッパに何百人もいた王侯の一人をコロンブスが五回目にして説得できたのは、ヨーロッパが政治的に統一されていなかったおかげである。」 「もしもヨーロッパ全土が最初の三人の君主のうちの一人によって統一支配されていたら、ヨーロッパ人によるアメリカの植民地化はなかっ...
「正確にいうならば、ヨーロッパに何百人もいた王侯の一人をコロンブスが五回目にして説得できたのは、ヨーロッパが政治的に統一されていなかったおかげである。」 「もしもヨーロッパ全土が最初の三人の君主のうちの一人によって統一支配されていたら、ヨーロッパ人によるアメリカの植民地化はなかったかもしれない。」(p.380) 「一九六〇年十月、ケネディとニクソンのどちらがテレビ討論会で何をいったかによって、ケネディではなくニクソンが勝利することはあったかもしれない。しかし、ヨーロッパ人によるアメリカ先住民の制服が、誰が何をいったかよってさまたげられることはなかった。」(p.402)
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