遥かなる水の音 の商品レビュー
性描写が多い作品は苦手だったので、村上由佳さんは手を出した事がありませんでした。この度知り合いに、「この作品なら村上由佳さんの中でも初級だ」と教えていただいたので手にとってみました。 よくある、恋愛物で主人公もしくはヒロインが病気になり死んでしまうという形ではあるけれど少しひねっ...
性描写が多い作品は苦手だったので、村上由佳さんは手を出した事がありませんでした。この度知り合いに、「この作品なら村上由佳さんの中でも初級だ」と教えていただいたので手にとってみました。 よくある、恋愛物で主人公もしくはヒロインが病気になり死んでしまうという形ではあるけれど少しひねった設定は新鮮で良い。 そして気になっていた性的描写も思っていたほどは深くないので、まぁちょっと飛ばしつつ読めばいいかな、と思えました。 ゲイの同居人と結婚してもらえない姉、そして高校時代の同級生かつ思い人と恋敵(?)の正気の沙汰じゃないような旅、その旅程でそれぞれに描かれる情景がとてもキレイな言葉で描写されているので想像力をかきたてられる。サハラの風景は、昔TVや雑誌で見た砂漠のイメージに付け加えられた村上さんの描写で、更に鮮やかに思い描く事ができた。 もちろん旅の途中で様々なハプニングが起きて、ついつい読み出したら止まらなくなってしまう。 あまり密接に関わる機会が少ない「アラビア」「モロッコ」という国々も村上さんの描写なら自分が行った事があるような気にさえなってしまう。 死んでしまった周との最後の別れはそれまでの心の変化や葛藤を見てきたからこその感情移入なのか、つい涙を誘われる事が数回。 人は皆孤独で、人にここまで愛されていても「孤独」を感じるものなんだと読後がちょっと寂しくなる感じでした。
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美しい物語、読み終わると心が綺麗になった気がします。 死んでやっと自由になれた周。本当に良かったと思う。そして最後の最後に一番愛する人に触れられて安心しました。途中、え?まさか!っていう展開があったからハラハラしたけど。 本当にに美しいものは男や女、愛や憎しみどころか死さえも...
美しい物語、読み終わると心が綺麗になった気がします。 死んでやっと自由になれた周。本当に良かったと思う。そして最後の最後に一番愛する人に触れられて安心しました。途中、え?まさか!っていう展開があったからハラハラしたけど。 本当にに美しいものは男や女、愛や憎しみどころか死さえも越えてしまうものなんだ。 そのことを教えてくれた周に男女の枠を越えて感謝したいと思います。 それにしても最後の方に語られていた『同性愛者だったためにぬれぎぬを着せられて処刑された』って話し、怖いと思った。でも有り得ない話しじゃないんですよね。人間はいつだって自分と違う人をさげすみ、陥れ、恐れるのだから。 悲しいけど、それは人間がとても弱い生き物だからなんですよね。弱いから同じ方向に向いてないと不安になってしまう。 だけど、命あるものとして突き詰めていけば、結局みんな同じ人間なんだから、どうか歩み寄ることは出来ないのか、と思いました。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
こんな夜に読んだのが失敗だった。素敵なかふぇにでも行って、美味しいけーきとこーひーでも飲みながら読むんだった。…彼女の事しか思い出しゃしないわ。しかも、登場人物はいきなり死んじゃうし。ずるい。 (以下は本文より抜粋) p.34 寂しさそのものより、その境遇の惨めさにぼくは傷ついた。こんなに醜くなっても誰かを求めてしまう自分のいじましさに鳥肌が立った。 ● p.41 完全に手もとに集中している時だけ、僕は全てから解き放たれる気がした。たかだか素人のお菓子作りではあったけれど、僕にとってそれは、現実の世界とつながるためのただ一つの手段だった。 ●多分、「現実」っていうのは、イコール「正気」って意味だと思った。お菓子作りで現実逃避しているように見えるけど、実際はそれで現実に繋がっているってことなんだと思う。私の、感覚で、だけど。 p.147 そもそも人は、迷うと思うから迷うのだ。言い換えると、目的地へ一刻も早くたどり着こうとするから迷う。費やす時間の多寡さえ初めから考えなければ、たいていの場合、いつかはたどり着く。回り道であるにせよ、それは迷い道ではない。 ☆九千の迷路と、千の袋小路。その昔、侵入してくる敵を惑わすために造られた道が、今はそのまま人々の生活の場となっている。九世紀にできたフェズの街は、モロッコで最初のイスラム王朝名都だ。旧市街(メディナ)のおおかたを占めるフェズ・エル・バリは、世界一ともいわれるほど複雑な迷路からなる。 ●そこに住む人らしい考えだと思った。他人や自分や時間に追われ続ける今の私には難し過ぎる。それに、それは、目的があるからそう言えるのであって、たしかなものがなければ、永遠の迷路と同じだ。 だけど、少し余裕ができて、立ち止まる事がもしあったら、回り道だったけど無駄ではなかったと、言って欲しい。 ぶっちゃけ、心動いたのは周の告白とジャン=クロードの想いだけ。浩介と結衣のレンアイには、全然興味が沸かなくて、読んでて冷めてる自分に困った。本がどうのとかではなくて、私の心境がそうだったんだと思う。 一番きっつい口調の裏に何もかも隠して、意地っ張りだなぁ、と思うけど、だから一層せつなくて。そのプライドに、なんて言うか、感服した。 私は近しい人を亡くしたことがまだないから、真に迫った感情は読めなかったと思う。 お酒のせいもあって、読んでる最中はとっても感傷的だったけど、感想を書く段になってやっと落ち着いて、人間一人の命ってこんなに重く遺るものなんだ、と思った。だから大事、かどうかは分からないけど。
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読んだのが一カ月ほど前で、そん時の感動を伝えきれないのが残念です。読み終わった後にこれは頑張って感想書こうと思ったんですが。久しぶりに、昔の村山さんに出会えたと思って、自分の中ではいい本でした。感傷旅行に出るもいなければないらない人のいない喪失感。視点が切り替わるのがよく生きた作...
読んだのが一カ月ほど前で、そん時の感動を伝えきれないのが残念です。読み終わった後にこれは頑張って感想書こうと思ったんですが。久しぶりに、昔の村山さんに出会えたと思って、自分の中ではいい本でした。感傷旅行に出るもいなければないらない人のいない喪失感。視点が切り替わるのがよく生きた作品です。
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遺灰をまくためにサハラ砂漠へ、という設定が有りがちなものに終わっていない。登場人物達が代わる代わる語り部になる手法もうまく、皆が(ほんの端役の人達までも)生き生きとして迫ってくるよう。 村山さんの中では1番好きな1冊となった。
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いわゆるロードノベルというやつ。 弟の遺言に従って遺灰をサハラ砂漠に撒くため、遺された人たちが旅に出るお話です。 弟(の霊?)、姉、友人2人、ゲイの同居人、現地のガイドそれぞれの視点に移り変わりながら物語が進行していきます。 話の要素としては今までの村山由佳作品の寄せ集め...
いわゆるロードノベルというやつ。 弟の遺言に従って遺灰をサハラ砂漠に撒くため、遺された人たちが旅に出るお話です。 弟(の霊?)、姉、友人2人、ゲイの同居人、現地のガイドそれぞれの視点に移り変わりながら物語が進行していきます。 話の要素としては今までの村山由佳作品の寄せ集めのような感じもしますが、話の作り方やわざと書かない部分の作り方、意外な展開などはとても新鮮でした。 そのまんまですが、砂の塊に水がだんだん浸透してくる感じがします。 いい意味で安心して読めました。 前後作品の「WF」と「アダルト・エデュケーション」のインパクトのせいであまり取り上げられない本ですが、昔の良い子だった村山さんにまた出会いたい人にはおすすめです。
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モロッコの景色、意地っ張りのゲイ、みんなに愛された周、周の苦しさ、残された人の辛さ・・・ それぞれがどんどん収束していって、心が満たされました。
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病気で若くして亡くなった青年を取り巻く、それぞれに立場がまったく異なる人々。フランスで恋人と同居している姉、関係は持たずに強い絆をもって添っていたゲイのフランス人の年上の男、青年と同級生の、共同で雑貨店を経営しながらも「過ち」のせいで最近関係がぎくしゃくしている男女。彼らは青年の...
病気で若くして亡くなった青年を取り巻く、それぞれに立場がまったく異なる人々。フランスで恋人と同居している姉、関係は持たずに強い絆をもって添っていたゲイのフランス人の年上の男、青年と同級生の、共同で雑貨店を経営しながらも「過ち」のせいで最近関係がぎくしゃくしている男女。彼らは青年の遺言にのっとって、サハラへの道のりを一緒に行くことになる。 なんともアクの強い面々が揃いながらも、綴られるのは実に繊細な物語。手馴れた豊かな表現力のある文章が、その道行きに訪れる街を、生きる人々を、そしてキャラクタたちを魅力的に紡ぎ上げていく。劇的な展開があるわけではないけれど、死んだ青年の「視点」があることで、どこかファンタジックでユニークな一面を持たせて飽きさせない。彼が指示した「最後の場所」で、ほんとうの眠りを得てくれたことを、願わずにいられない。
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死んでしまった周の骨を遺言通りにサハラ砂漠にまくために周の姉、友人カップル、ゲイの友達、モロッコのガイドであっちのほうを旅をするお話。各人の思いや会話で区切られ話が進んでいく。サハラの景色や習慣なんかがよく書かれていて行ってみたくなった。読んでる途中は好きだったけど読み終わったら...
死んでしまった周の骨を遺言通りにサハラ砂漠にまくために周の姉、友人カップル、ゲイの友達、モロッコのガイドであっちのほうを旅をするお話。各人の思いや会話で区切られ話が進んでいく。サハラの景色や習慣なんかがよく書かれていて行ってみたくなった。読んでる途中は好きだったけど読み終わったらそんな大きな感動もなく普通だった。サハラってのはむこうの言葉で砂漠という意味。サハラ砂漠は砂漠砂漠だったのか。
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ある男性の遺灰を撒くために旅をしている男女の物語。 登場人物それぞれにテーマがあり、それぞれの視点で描かれていますが、全ての登場人物に引きこまれ、存在感があります。 村山さんの舞台の描き方が私はとっても好きです。 自分が行ったことのない場所でもその空気を感じられます。 私は...
ある男性の遺灰を撒くために旅をしている男女の物語。 登場人物それぞれにテーマがあり、それぞれの視点で描かれていますが、全ての登場人物に引きこまれ、存在感があります。 村山さんの舞台の描き方が私はとっても好きです。 自分が行ったことのない場所でもその空気を感じられます。 私はラストの遺灰を撒いたときにジャン・クロードが泣くシーンが好きです。 全体を通して彼は皮肉屋ですが、このシーンでは一番彼が感情を爆発させていて、人間味を感じました。
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