新釈 走れメロス 他四篇 の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
文豪たちの残した名作を森見風に! 山月記 自分は偉大な小説家になると信じて疑わない大学生の斎藤秀太郎が いつしか京都の山で天狗になったこと。 藪の中 それぞれの視点で語られる監督の恋人と元恋人で作られた 現実に起きていたやりとりを撮った映画の真相。 走れメロス 部室の危機を救うべく戦いの名を挙げた茅野と巻き添いをくらう芹名の謎の友情(?) 桜の森の満開の下 斎藤秀太郎を尊敬し、自分も小説の道に行きたいと願った青年が桜の下で出会った女性と歩んだ人生。 百物語 大勢で怪談話をする企画に渋々参加したものの 居心地が悪くなり途中で帰った後に知ったのは 誰も見たことがないという主宰者の姿を自分だけが 見ていたという事実。 四畳半王国見聞録に出てきた人たち出てきたよね? 最後のは寝る前に読んでたらちょっと不気味だったなー。
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「山月記」「藪の中」「走れメロス」「桜の森の満開の下」「百物語」。日本文学の傑作の主人公があの京都の腐れ大学生たちに置き換わったら……… 森見登美彦にかかるとやっぱり名作ができるのね。個人的には「夜行」に通じるような感じがした「桜の森の…」が素晴らしかった。 あぁ、また京都に行き...
「山月記」「藪の中」「走れメロス」「桜の森の満開の下」「百物語」。日本文学の傑作の主人公があの京都の腐れ大学生たちに置き換わったら……… 森見登美彦にかかるとやっぱり名作ができるのね。個人的には「夜行」に通じるような感じがした「桜の森の…」が素晴らしかった。 あぁ、また京都に行きたいなぁ。進々堂に行きたいなぁ。
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歴史的な名作を前にしても、相変わらずの森見ワールド全開でおもしろかった。もちろん舞台は京都、登場人物にはお決まりの偏屈的な男子大学生やミステリアスな女性など。人間的には実に残念だけど、どこかほっとけないような、森見登美彦らしいキャラクターが名作を新しい物語にしてくれました。
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初森見登美彦作品。山月記の相剋、メロスの疾走感。どれを取っても絶妙。古典を読み返したくなり京都へ行きたくなった。
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元の物語の筋は残しつつ、全く新しい物語になっていて楽しめた。メロスは抱腹絶倒だったが、他の物語は意外とマジだったかな。5話を通して、同じ登場人物が何度も顔を出すのも楽しかった。
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京都の森見登美彦は博学多才、平成時、若くして名を小説界に連ねたが、性、変態、自ら恃む所頗る厚く、有名に甘んずるを潔しとしなかつた。 「祥伝社編集者に誘われたる古典換骨奪胎」 「さようでございます。寺町通の地下のある喫茶にて、あの企画を提案したのは、わたしに違いございません」(渡...
京都の森見登美彦は博学多才、平成時、若くして名を小説界に連ねたが、性、変態、自ら恃む所頗る厚く、有名に甘んずるを潔しとしなかつた。 「祥伝社編集者に誘われたる古典換骨奪胎」 「さようでございます。寺町通の地下のある喫茶にて、あの企画を提案したのは、わたしに違いございません」(渡辺某の証言) 森見登美彦は躊躇った。必ずこの様な古典的名作の改変を怒る輩が出現すると確信した。しかし引き受けた。渡辺某の提案に抗えなかった。孤高の腐れ大学生を主人公に「山月記」を書くという魅力的な話に抗えなかった。 森見登美彦というと、人々が酒をぶらさげたり団子をたべて花の下を歩いて絶景だの春ランマンだのと浮かれた物語(はなし)ばかり書くと思われているが、それは嘘です。コレはかなり恐ろしい小説なのです。 勿論生れて始ての事であったが、これから後も先ずそんな事は無さそうだから、生涯に只一度の出来事に出くわしたのだと云って好かろう。それは森見登美彦が「新釈 走れメロス」を書き終えた時である。 小説に説明をしてはならないのだそうだが、間違いは誰にもあるもので、この話でも万一ヨオロッパのどの国かの語に翻訳せられて、世界の文学の仲間入をするような事があった時、余所の読者に分からないだろうかと、作者は途方もない考を出して、行きなり「走れメロス逃走図」を以てこの本の表紙開きに挟み込んでいる。結果、とてもオモチロイものになった。 さて、非常に分かりにくいと思うが、順番に「山月記(中島敦)」「藪の中(芥川龍之介)」「走れメロス(太宰治)」「桜の森の満開の下(坂口安吾)」「百物語(森鴎外)」の冒頭部を改変して、本書の紹介に代えてみた。 やって見てわかったが、そういう安易な方法だと、つまらないモノしか書けない。森見登美彦は、文体は全体的に真似てはいるが、有名文章を無理矢理挿入したりはしない。でも構造は紛うこと無きかの名作なのである。でも紛う事無き内容は森見登美彦なのである。しかもラストの「百物語」で、主要登場人物総出という力技もやってのけ、他作品にも出演している詭弁論部や韋駄天コタツや図書館警察長官まで出てくるのである。正に唯一無二の作家と言えよう。
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元ネタとなった話を読んでから本書を読むのがおすすめ。この部分をこう生かしてるのか~と理解できる。 こんなリメイク、よく思い付くなぁと思った。
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名作文学を下地に、京都の大学で燻る学生達の有様を書いた物語。 森見登美彦らしいテンションの高い文章が続くが、最後の百物語は「きつねのはなし」を思わせる薄暗さがあった。
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元の作品を読めてないやつもあったから、その篇はネットであらすじ調べてから読んだ。それでも面白かったから、きちんと原作読んでたら絶対面白かったと思う。
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森見登美彦さんの作品を畏れ多くも二種類に分けるならば、①京都を舞台としたこじらせ系、②異世界との行き来が鍵となる忘我系…とでもなるだろうか。①は名高い『夜は短し歩けよ乙女』や『有頂天家族』、そして②は『夜行』であり『熱帯』であるだろう。もちろんこうした定義はいつだって曖昧さをはら...
森見登美彦さんの作品を畏れ多くも二種類に分けるならば、①京都を舞台としたこじらせ系、②異世界との行き来が鍵となる忘我系…とでもなるだろうか。①は名高い『夜は短し歩けよ乙女』や『有頂天家族』、そして②は『夜行』であり『熱帯』であるだろう。もちろんこうした定義はいつだって曖昧さをはらんでいるもので、『四畳半神話大系』なんかは中間に位置すると言っていい。 『新釈 走れメロス』におさめられた一連の短編たちには、そのどれもが混交し折よく収められていた。連作の大団円としての「百物語」のシニカルな不気味さは、後の大傑作である『熱帯』への萌芽を思わせる。 改めて森見登美彦作品の連なりを整理するのに良い作品であった。
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