玻璃の天 の商品レビュー
図書館にて借りる。う〜む、ベッキーさんにはそんな過去が…。謎が少し解けた感じ?1作目と比べると英子ちゃんが成長して来てるのが分かるなぁ。
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ミステリという「形式」を借りながら、テーマはいよいよ骨太に、作家はますます饒舌になってきた印象。《ベッキーさんとわたし》シリーズ第2弾。 1930年代、軍国主義に突き進む日本。その渦中に否応なく巻き込まれてゆく上流階級の人々を描きながら、そこはさすがに「日常のなぞ」の名手、けっ...
ミステリという「形式」を借りながら、テーマはいよいよ骨太に、作家はますます饒舌になってきた印象。《ベッキーさんとわたし》シリーズ第2弾。 1930年代、軍国主義に突き進む日本。その渦中に否応なく巻き込まれてゆく上流階級の人々を描きながら、そこはさすがに「日常のなぞ」の名手、けっして韓流ドラマ的臭さを読者に感じさせないのはさすがである。むしろ抑制された筆致だからこそ、かえって徐々に暗雲に囲まれてゆくような不穏さがあるのもたしか。 主人公が、ある宴で出会った若い軍人にむかって思わず語る言葉こそ、また、作者北村薫の思いでもあるのではないか。「わたしのいう自由とは、基本的な徳に向かう行進の中で、右を向き左を向く自由です。鳥の声に耳を傾け、空の雲を見る自由です」。 ここでその正体が明らかになった「ベッキーさん」こと別宮みつ子が、続く第3弾でどのような役回りを演じることになるのか、ますます楽しみになってきた。
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作者を知らず、ミステリーとは思わず読み始めたら、ミステリーだったと言う意外な作品。 昭和初期の時代背景も意外ながら、上流階級のお嬢様と言う知らない世界でのストーリーに結構興味がそそられ結構面白く読めました。
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再読/シリーズ3冊中一番好きなのは、それぞれのキャラクターに深みが増すエピソードばかりだからか。 ベッキーさんと勝久様 若月さんと英子 ベッキーさんと末黒野、乾原 そしてベッキーさんと英子
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1作目、街の灯があまりにも面白すぎて、2作目も流れで読んでしまった。 この本でも、事件に首を突っ込み、別宮さんと会話し、解決するという流れは変わらない。むしろ、謎解き要素が濃くなっている。 彼女初めての恋や、謎多き別宮さんの正体など、気になる秘密が徐々に明らかになる。 この話では多くの人が亡くなっているのだが、彼女はそれに全く動じておらず、その描写さえないのが不思議に思った。 昭和の空気をいうものを詳しく知らないのだが、その空気を味わえた気になれるので、大正ロマンが好きな人は相変わらずお勧め。
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主人公の成長が本人の言動からも両親から許される行動範囲が確実に広がっていることからもうかがえる。 子供と大人の間の少女の描写がなんとも繊細。 ベッキーさんの謎にも鍵が与えられ始める。
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ベッキーさんシリーズ第2弾。 連作短編が3本。 表題作「玻璃の天」のみが殺人事件が起こる。 第2弾で少しだけベッキーさんの正体が分りかけるが 以前ベッキーさんが何者かが1つ1つの話とは別に興味がそそられる ような構成になっている。 このシリーズの第1弾とは今回少し話の内容が...
ベッキーさんシリーズ第2弾。 連作短編が3本。 表題作「玻璃の天」のみが殺人事件が起こる。 第2弾で少しだけベッキーさんの正体が分りかけるが 以前ベッキーさんが何者かが1つ1つの話とは別に興味がそそられる ような構成になっている。 このシリーズの第1弾とは今回少し話の内容が違う感じで 1話、2話は少し小難しい内容になっている。 日常の謎という感じではなく、文学的な要素を絡めたミステリー 仕立て?見たいな雰囲気がするが、3話目の表題作はミステリー (推理小説)としても楽しめた。
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ベッキーさんシリーズ第二弾 後期へと上がった英子お嬢様。学友のロミオとジュリエットのような恋の相談をされ、生きている人の死亡広告の謎を解く「幻の橋」。 「善く師する者は陳せず、善く陣する者は戦はず、善く戦う者は敗れず、善く敗るる者は亡びず。」 同じ本を読んでいたことから親しく...
ベッキーさんシリーズ第二弾 後期へと上がった英子お嬢様。学友のロミオとジュリエットのような恋の相談をされ、生きている人の死亡広告の謎を解く「幻の橋」。 「善く師する者は陳せず、善く陣する者は戦はず、善く戦う者は敗れず、善く敗るる者は亡びず。」 同じ本を読んでいたことから親しくなった公家華族の彩乃さんがある日暗号のような封書を残していなくなってしまう「想夫恋」。 第一話から登場する荒熊こと段倉荒雄。自由思想、民主思想の排撃に尽力し、狂信的な人間もいる段倉の墜落死。 その場に居合わせた英子お嬢様が謎を解く「玻璃の天」。 一番の見所は、若月少尉との出会いでしょうか。 英子がどんなに素敵な女の子でも、やはり世間知らずでお金持ちのお嬢様だということは拭い去れないと痛感させられます。 彼女の一回の外食費で50人の人がカレーライスを食べられる。 軍人にならざるをえなかった人々がいる。それが希望になっている人々がいる。 身分の違いだけではない。男と女ということもあるかもしれない。 どうしたって分かち合えないだろうなぁと思う。それが同じ匂いを持つ二人だけに余計に哀しい。 戦争へと向かいつつあるこの時代。それでも、まだ人々は明るさを持っている。 そういう当時の風俗や上流階級の人々の生活が垣間見えるのがもう一つの魅力。 土足のまま入れるデパートなど夢物語であったこと。 女工さんのストを珍談として取り上げられていたのが、英子さんの時代には、少女歌劇部員のストをファンが熱狂して見守っていること。 早慶戦の凄まじさ。 公家華族と大名華族の生活の違い。 「あしながおじさん」の最初のタイトルがなんと「蚊とんぼスミス」だったこと。 資生堂パーラーのミートクロケット…。 それにしても昔の流行り言葉(お嬢様言葉?)って面白い。 嬉しいが《うれー》、素敵が《おすてー》なのだそう。ちょっと公家っぽい?
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「街の灯」に続く“ベッキーさん”シリーズの第二弾。 英子の成長とともに世の中には不穏な空気が流れるようになっていく。クラスメイトの内堀家で催された講演会で出会った陸軍少尉若月との短いやりとりが印象的だ。全体を通して、ただのお嬢様ではない英子の生きる姿勢ともいうべきものが表れている...
「街の灯」に続く“ベッキーさん”シリーズの第二弾。 英子の成長とともに世の中には不穏な空気が流れるようになっていく。クラスメイトの内堀家で催された講演会で出会った陸軍少尉若月との短いやりとりが印象的だ。全体を通して、ただのお嬢様ではない英子の生きる姿勢ともいうべきものが表れているのがこの第二弾ではないだろうか。 そんな中、ある事件をきっかけにベッキーさんの正体も明らかに…。 「街の灯」に続いてミステリーという側面ではちょっと納得いかない本書だが、変化が見られたのはよかった。
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『街の灯』の続編だから読んでみたが、目が離せないほどおもしろい。『幻の橋』『想夫恋』『玻璃の天』の連作三編。平家物語、伊勢物語、枕草子とお抱え運転手ベッキーさんの教養が主人公・英子さんを助ける。英子さんも冴えている。図書館に調べものに行くくだり、パーラーでお食事する場面、新発売の...
『街の灯』の続編だから読んでみたが、目が離せないほどおもしろい。『幻の橋』『想夫恋』『玻璃の天』の連作三編。平家物語、伊勢物語、枕草子とお抱え運転手ベッキーさんの教養が主人公・英子さんを助ける。英子さんも冴えている。図書館に調べものに行くくだり、パーラーでお食事する場面、新発売の電池式懐中電灯など、時代の匂いをうまく漂わせてタイムスリップ感を味わわせてくれる。その一方「時間を元に戻すことはできない。私たちは前に進むしかないんだわ」とベッキーさんの過去を知った主人公の言葉が心に残る。玻璃の天のトリック、美しくてなかなか良かったです。
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