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玻璃の天 文春文庫
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商品詳細
| 内容紹介 | |
|---|---|
| 販売会社/発売会社 | 文藝春秋 |
| 発売年月日 | 2009/09/03 |
| JAN | 9784167586058 |

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商品レビュー
4
129件のお客様レビュー
ベッキーさんシリーズ第2弾(文庫)
直木賞を受賞したベッキーさんシリーズの第2弾。 人の思いが引き起こす謎をベッキーさんとお嬢様が解決します。 「人間のごく当たり前の思いを、率直に語れる世」ではなかった時代のお話ですが、 悲しいことがあった、乗り越えようとしている今現代に、改めて重みを感じるセリフや場面も。 ...
直木賞を受賞したベッキーさんシリーズの第2弾。 人の思いが引き起こす謎をベッキーさんとお嬢様が解決します。 「人間のごく当たり前の思いを、率直に語れる世」ではなかった時代のお話ですが、 悲しいことがあった、乗り越えようとしている今現代に、改めて重みを感じるセリフや場面も。 そしてベッキーさんの過去も・・。
スウィーティー
ベッキーさんシリーズ2作目。 セピア調でノスタルジック感を醸し出す装画が綺麗で結構お気に入り。読書意欲が湧いてくる。 昭和初期のまだ戦争の色が濃くなる前の帝都が舞台。前作『街の灯』に引き続き古き良き時代の雰囲気がリアルに感じられる。この雰囲気も何か好きなんだよね。 良家のお嬢...
ベッキーさんシリーズ2作目。 セピア調でノスタルジック感を醸し出す装画が綺麗で結構お気に入り。読書意欲が湧いてくる。 昭和初期のまだ戦争の色が濃くなる前の帝都が舞台。前作『街の灯』に引き続き古き良き時代の雰囲気がリアルに感じられる。この雰囲気も何か好きなんだよね。 良家のお嬢様の英子とお抱え運転手のベッキーさんのコンビが謎を解いていく。 英子はお嬢様なのに好奇心旺盛で、前作と比べ聡明さが増しているように感じられ、15才とは思えない程思慮深くなっている。 そして本作ではついにベッキーさんの正体が一部明かされる。やはりただ者ではなかった。 連作中篇を3篇収録 1 幻の橋 絵画消失の謎を解く 2 想夫恋 手紙の暗号を手掛かりに失踪した友 人を探す 3 玻璃の天 ステンドグラスから転落した思想 家の事件の真相を探る どの話にも芸術や古典、文学、映画を織り込んでいるのがこのシリーズの特徴でもあり魅力! 今作は漢書や伊勢物語、江戸川乱歩、想夫恋、枕草子、与謝野晶子、ロミオとジュリエット、鏡地獄、あしながおじさん、百人一首、浮世絵と多岐にわたる。古典を知っていればもっと楽しめたと思うが知らなくても充分楽しめるし勉強にもなるから全然OK。 鏡地獄は読んだばかりだったのでちょっとテンションがあがった。 与謝野晶子の弟への《君死にたまふことなかれ》歌の解釈にはそういう意味があったのかとそのままの解釈しか出来ない残念な自分にがっかりさせられた。世界の《無数の弟》のための詩だったのか。う~ん本当に勉強になる。 三篇のなかでは表題にもなっている『玻璃の天』が一番良かった。 ステンドグラスの美しさに隠された切ない真相が明かされて心がぎゅっとなった! タイトルの『玻璃の天』の意味、ステンドグラスの照らす光と影、ガラスの脆さが人の弱さを象徴しているようで印象的だった。 単なるトリックの解明にとどまらず、読後深い余韻を残す物語だった。 軍国主義、戦争の足音が少しずつ大きくなり近付いて来ている。 英子の「私達の進めるのは前だけよ。なぜこんなことになったのか。この事を胸に刻んで生きていくしかないのだわ」この言葉がとても辛い。これから進む前がどんな時代なのか私達は知っている。そしてついに次作『鷺と雪』で完結。この二人がこれからの困難な時代をどう乗り越えていくのか期待と同時に寂しさが募る。 北村薫の描く静かで丁寧な文章と描写、物語に派手さはないがさりげなく描かれる伏線の数々、読後じんわり深い余韻を残す物語がちょっとクセになりそう。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
シリーズ第二段、3つのお話が入っている。 「幻の橋」は、電気製品で成功を収めたランプの内堀と銀行経営で成功した銀行の内堀との兄弟間の確執が銀行の内堀の孫娘の恋愛関係にまで影響を及ぼしてしまい、孫娘と同級の英子が相談にのるお話。そこから過去の因縁も浮かび上がってきて事件が起こるのだけれど、英子の采配が見事でやっぱりベッキーさんではなく英子が主役なんだなと思わせられる。シャーロックホームズとワトソン博士のような関係かな。あくまでも主役はホームズなのと一緒。 その孫娘のお家で開かれる堅いお話の会に出席した英子が出会った軍人さんと戦争に向かいつつある現状について意見をしあう場面があるのだけれど、どちらの言い分も深くてとても考えさせられる。戦争は駄目というのは簡単で絶対的な結論なのだけれど、戦争に向かわざるをえない困窮した状況にいる人たちも実際にいて、きれいごとでは済まされないところに人と人との争いのやりきれないところがあった。 「想夫恋」はあしながおじさんの本という共通の話題でお友達になった綾乃さんとのお話。架空の人物を生み出して楽しいスパイごっこのような遊びをしていたらある出来事が起こる。この出来事で子供の延長のようなかわいらしい遊びをしていても英子も綾乃も少女から女性に徐々に成長している過程なのだと思い知らされる。英子は再び謎を解いて解決するのだけれど、終わり方が題名と同じように余韻があってとても良かった。 昔は家というものに縛られていたから、親の決めた結婚相手と結婚しなくてはならない、違う人を好きになったら駆け落ちするしかないってこともあったかもしれないけど、今の時代は個人の自由だからよっぽどのことがない限り自分が選んだ相手と結婚出来て、駆け落ちという言葉もひと昔前の言葉になったんだなと感慨深い。 最後のお話「玻璃の天」は殺人事件が起こる。被害者は街の灯でも名前がでてきたいけすかない思想家。でもこの事件にはとても悲しい背景があって、とても重大な謎が明らかになる。昔の建物の描写が興味深く、事件の行方も気になり、とても夢中で読んでしまった。この話も最後に英子がベッキーさんにすがりつきながら必死に訴える「わたし達が進めるのは前だけよ。なぜこんなことになったのか、そのことを胸に刻んで生きていくしかないのだわ」という言葉がとても胸に響いた。いよいよ最終巻、楽しみだけどこの世界観に浸れるのも最後かと思うと寂しい。
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