玻璃の天 の商品レビュー
前作“街の灯”は、独特な時代の世界観とそれぞれの登場人物の魅力で引き込まれた。 今回は、眼をそらせない影「戦争」の気配が近づく帝都で、主人公の少女が成長をしていく。 主人公である少女と兄の会話のなかで、与謝野晶子の詩が出てくる。 着実に戦争への気運が高まる世情のなか、兄はその...
前作“街の灯”は、独特な時代の世界観とそれぞれの登場人物の魅力で引き込まれた。 今回は、眼をそらせない影「戦争」の気配が近づく帝都で、主人公の少女が成長をしていく。 主人公である少女と兄の会話のなかで、与謝野晶子の詩が出てくる。 着実に戦争への気運が高まる世情のなか、兄はその詩の「弟」に自身を重ねるくだりがある。 その時に少女は物事の多面性に気づき、不安になる。 “人間のごく当たり前の思いを、素直に語れる世であってほしい。だか、そのことが愛する人たちを苦しめる世だとしたら、どうすればよいのか。” 前作を踏まえたうえでの人間関係、多彩な登場人物が次々と現れても煩雑にならない。 読みやすいだけの読み物ではない。時代、人、ともにあざやかに描きつつ、全編をとおしてそこにあるのは、知性だ。 おもしろかった。シリーズ3作目を残しているけれど、これが一番好きになるかもしれない。
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ベッキーさんシリーズ2弾目。 今回も英子とベッキーさんが謎を解く。 そしてベッキーさんの過去が少し明らかに。
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第一巻を、プリンセスの物語を読む少女のような気持ちで読んだ事を後悔した。 いや、一巻はそういうふうに書かれているのかもしれない。 時の歯車が大きく軋みながらいびつな回転をしている時代背景だ。 この本は3編で構成されているが、どんどん重たくなってくる。 3編目、「玻璃の天」では、主人公が今まで“ベッキーさん”と呼んでいた、彼女の運転手を“別宮さん”と、愛称でなく記述する箇所が出てくる。 それも意味のあることだろう。 愛称で呼ぶにはあまりにあまりの場面だからだ。 暗い話はちょっと置いておくと、主人公の学友として登場するお嬢様方が、みんな素晴らしい才媛で、高い教養の持ち主である。 1巻で、少し癖のある人なのかなと思った道子さんでさえ、別に悪い人ではなかったし、むしろ冷静に自己分析をする人だった。 上流の令嬢には素晴らしいお嬢様しかいないのかな。 そんな斜な見方もちょっとだけしてしまったのは、私がひねくれてるからなのか。
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雪の降る中、穴の開いたステンドグラスの天窓を登場人物と一緒に眺めている気持ちに・・・。昭和初期の風俗を堪能できる巻であり、そしてベッキーさんの正体が明らかになる巻でした。
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前作から比べると、だいぶ暗い。世の中の描写もそうだが、英子さんにも暗い影がさしているような・・・ 次作で完結するこのシリーズ、先行きが楽しみでもあり、怖くもあり。
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『ベッキーさんシリーズ』三部作の第二作。昭和初期の東京が舞台、女学校へ通うお嬢様と運転手兼付添人のベッキーさんが活躍するミステリー短編集。表題作では謎多き女性であるベッキーさんの過去が判明する。おすすめ。このシリーズは昭和のお嬢様ワールドが味わえるが、いざ事件発生の場面でも作品全...
『ベッキーさんシリーズ』三部作の第二作。昭和初期の東京が舞台、女学校へ通うお嬢様と運転手兼付添人のベッキーさんが活躍するミステリー短編集。表題作では謎多き女性であるベッキーさんの過去が判明する。おすすめ。このシリーズは昭和のお嬢様ワールドが味わえるが、いざ事件発生の場面でも作品全体の気品を損なわない程度の最小限描写にとどめてあり、状況把握がしずらい欠点があると思った。 収録作)『幻の橋』、『想夫恋』、『玻璃(はり)の天』
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昭和初期を舞台にした主人公の社長令嬢とその運転手兼相談相手(?)ベッキーさんとのシリーズ2作目。 相変わらず、北村薫らしい純粋な、人の心を描いた物語が3編、良かったです。 でも、どれもハッピーエンドとは言えない複雑な人間の心が絡み合う話でした。 それと・・・こういうエンターテイ...
昭和初期を舞台にした主人公の社長令嬢とその運転手兼相談相手(?)ベッキーさんとのシリーズ2作目。 相変わらず、北村薫らしい純粋な、人の心を描いた物語が3編、良かったです。 でも、どれもハッピーエンドとは言えない複雑な人間の心が絡み合う話でした。 それと・・・こういうエンターテイメントは政治思想とは分離して書いてほしいんですよね・・・だから、この人の時と人との三部作といわれる3つ目の作品「リセット」で、ああ、この人も私が望むとの違う方向にいってしまったな、と、読むのやめちゃったんですよね。 でも、このシリーズ3作目で直木賞をとった「鷺と雪」ももう手元に。楽しみです!
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ベッキーさんシリーズの1冊目「街の灯」を読んで面白くて 大喜びでこの第二弾の「玻璃の天」を読んだわけですが。 今回は先が気になり過ぎてゆっくり読めずでした。 文章もあんまり味わう余裕がなかったです。 お話の中の雰囲気が、不穏な空気が漂っていて重い感じを受けました。 違う本のことを書いてしまって良くないのかもしれないけど つい最近読んだ広瀬正さんの「マイナス・ゼロ」の中に出てくる時代(の一部)と殆ど同時期で あちらは庶民の目から見た銀座界隈の生活を描いていましたけど その先の戦争のことも書いてあって・・その辺のことを思い出したりで なんか「ああこの先は・・」とか思っちゃって辛かったです。 ベッキーさんのことが段々と分かってきて、悲しくなったり 英子ちゃんのこれからを思うと心配になってきたりとか とても素晴らしい本なのは確かなのに、レビューに暗いことばっかり書いてしまいます・・。 シリーズ最終の「鷺と雪」も買ってあってすぐ近くに置いてあるんだけど なんとなく手が伸びません・・。 なんだこの「街の灯」の時とのテンションの違いは。 もう少し落ち着いたら読むことにしよう・・。 こんな変なレビューだけど、本当に良い本だからこそ影響を強く受けて気持ちが動いているってことだと思ってます。
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柔らかく、優しいミステリーのベッキーさんシリーズの2作目です。 前作からの個人的な疑問ですが、「私」である主人公、背景となる上流社会、この辺りは私的にあまり興味を感じないハズ。にもかかわらず、2作目も読みたかった。何ででしょうね? ミステリーではあるが、「穏やかな流れのなか...
柔らかく、優しいミステリーのベッキーさんシリーズの2作目です。 前作からの個人的な疑問ですが、「私」である主人公、背景となる上流社会、この辺りは私的にあまり興味を感じないハズ。にもかかわらず、2作目も読みたかった。何ででしょうね? ミステリーではあるが、「穏やかな流れのなかにある感じ」がして不思議です。 1作目から少し時間の経った昭和8~9年が背景です。戦意高揚の雰囲気がピリピリしてます。ですが、相変わらず「私」は穏やかな生活の中で、謎を解いていく。「想夫恋(そうふれん)」の謎解きは、読んでもさっぱり分かりません。 傍らにあり終始冷静で透明感のある「ベッキーさん」こと別宮は、1作とは違い「私」との間に距離を感じます。読み終わってみると、なるほどです。 1作目最大の謎であった、「別宮が何者であるか?」が分かります。ココに2作目の冒頭から、「私」に距離を感じた理由がありました。 「ベッキーさんシリーズ」は次の「鷺と雪」で最後で御座います。もうしばらく、この世界感に浸らせて頂きます。 1作目「街の灯」のレビューはココで http://booklog.jp/users/kickarm/archives/1/4167586045
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