玻璃の天 の商品レビュー
ベッキーさんシリーズ第2弾(文庫)
直木賞を受賞したベッキーさんシリーズの第2弾。 人の思いが引き起こす謎をベッキーさんとお嬢様が解決します。 「人間のごく当たり前の思いを、率直に語れる世」ではなかった時代のお話ですが、 悲しいことがあった、乗り越えようとしている今現代に、改めて重みを感じるセリフや場面も。 ...
直木賞を受賞したベッキーさんシリーズの第2弾。 人の思いが引き起こす謎をベッキーさんとお嬢様が解決します。 「人間のごく当たり前の思いを、率直に語れる世」ではなかった時代のお話ですが、 悲しいことがあった、乗り越えようとしている今現代に、改めて重みを感じるセリフや場面も。 そしてベッキーさんの過去も・・。
スウィーティー
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※このレビューにはネタバレを含みます
玻璃の天 「街の灯」で初登場した深窓の令嬢と女性運転手のベッキーさんが主人公のシリーズ2作目です。 舞台は昭和初期の日本。昭和8年のようなので、竹蔵の母の生まれた年です。 時代は戦争に向かって坂をころがるように傾いていきます。この時代背景の中で起きる大小の事件で、登場人物の台詞の中に北村氏の重い問いかけがあると感じています。 「あなたは時代に流されることなく、どのように対峙していけますか?」 物語は3つの連作となっています。 「幻の橋」は、ロミオとジュリエットならぬ対立する祖父兄弟の孫娘(主人公の同級生)と孫の恋にからめて、祖父兄弟の対立の謎を解きます。 「想夫恋」では、お琴の先生と同級生との駆け落ち騒動の中で暗号を解を解いていきます。 「玻璃の天」では、右翼の弁士が転落死した事件の顛末を推理するお話ですが、ベッキーさんの生い立ちや過去の悲しい出来事が明らかになります。 「玻璃の天」の中で、乾原という奇妙な建築家の言葉に竹蔵はとても共感しました。 沢山の犠牲を出した十字軍に関して、”使命感を起こさせるから始末が悪いんだ。そりゃあ、神様がやることとしては邪道じゃないか?”とコメントし、”わたしよりも、異教徒一人の命の方がよほど大切なのだと説く神がいたら、中略。。。俺は神の前に跪くね”ととても天の邪鬼な考えを吐きます。 これらの言葉は、右翼の弁士がからんだ悲しい過去故のものですが、時代の空気が段々と傾斜していっている今に於いて、流されないための重要な考え方の一つなのではないかと竹蔵は感じています。 シリーズ3作目をとても期待しています。 竹蔵
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私と別宮さんの昭和初期の物語。一作目と同様に私たちの知らない昭和初期の空気を満遍なく感じられる。 この二作目では、ベッキーさん(別宮)の素性が見えてきて、よりドラマティックになってきた。ミステリー要素より人間関係の機微に唸るシリーズ。
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北村薫の連作ミステリ作品『玻璃の天(はりのてん)』を読みました。 北村薫の作品は3年前に読んだアンソロジー作品『ミステリー傑作選・特別編〈5〉自選ショート・ミステリー』に収録されていた『眼』以来なので久し振りですね。 -----story------------- 令嬢と女性運...
北村薫の連作ミステリ作品『玻璃の天(はりのてん)』を読みました。 北村薫の作品は3年前に読んだアンソロジー作品『ミステリー傑作選・特別編〈5〉自選ショート・ミステリー』に収録されていた『眼』以来なので久し振りですね。 -----story------------- 令嬢と女性運転手。昭和初期を舞台にした北村ワールド 昭和初期の帝都を舞台に、令嬢と女性運転手が不思議に挑むベッキーさんシリーズ第二弾。 犬猿の仲の両家手打ちの場で起きた絵画消失の謎を解く「幻の橋」、手紙の暗号を手がかりに、失踪した友人を探す「想夫恋」、ステンドグラスの天窓から墜落した思想家の死の真相を探る「玻璃の天」の三篇を収録。 ----------------------- 2005年(平成17年)から2006年(平成18年)に文藝春秋が発行する月刊娯楽小説誌『オール讀物』に連載され、2007年(平成19年)に刊行された作品……1933年(昭和8年)の帝都・東京を舞台に、上流家庭の花村家の長女・英子とその運転手・ベッキーさんが活躍するベッキーさんシリーズの第2作で、第137回直木賞候補となった作品です。 ■幻の橋 ■想夫恋 ■玻璃の天 ■解説 岸本葉子 昭和8年、時代を見つめ謎に挑む令嬢と女性運転手……ステンドグラスの天窓から墜落死した思想家、、、 事故か、殺人か。英子の推理が辿りついた切ない真相とは……。 昭和初期を舞台にした北村ワールド……表題作のほか「幻の橋」「想夫恋」を収録したベッキーさんシリーズ第2弾。 上流家庭の花村家の長女で学習院に通い何不自由ない生活を送る令嬢・花村英子によって語られる昭和初期の帝都という時代背景を描いた緻密でリアリティのある描写、そして、英子の運転手で才色兼備で武道にも秀でたスーパーウーマン別宮みつ子(ベッキーさん)の活躍が印象的な作品でしたねー 物語の中で徐々に明かされるベッキーさんの正体も興味深い……第1作から読んでみたくなりましたね、、、 内堀銀行の娘・百合江からロミオとジュリエット状態の自身の恋愛について相談を受けた英子……お互いの祖父は兄弟だが絶縁中の百合江と恋人・東一郎の両家がベッキーさんの知恵で仲直りの運びとなるが、和睦のしるしに贈られた一枚の浮世絵が盗まれるという事件が発生し、その謎を解くとともに、過去の両家が仲違いした一件の真相も明らかにする『幻の橋』、 箏(こと)の演奏が上手なことで知られる公家華族の清浦綾乃と、「あしながおじさん」を読んでいたことがきっかけとなり親しくなった英子……その後、綾乃が老人めいた言葉を残し、姿を消してしまい、残された手紙に描かれた奇妙な暗号の解読に挑む『想夫恋』、 父親以上の切れ者と評判の、有名財閥の番頭の息子・末黒野貴明と、その友人で建築家の乾原剛造と知り合いとなった英子……乾原が設計した末黒野の自宅で開かれるパーティーに招かれるが、そのパーティーで講演した、自由思想・民主思想の排撃者である“荒熊”こと段倉荒雄が講演後、吹き抜けの天窓を彩っていた一面のステンドグラスを突き破って転落死するとう事件の真相を推理する『玻璃の天』、 どの作品も雰囲気がムッチャ好きで愉しめました……事件を通じて、ベッキーさんの出自が明らかになるんですよねー この先の展開が気になります。
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ベッキーさんシリーズ第二弾。当時の両家の子女の生活がわかるというもの。「幻の橋」戦前昭和ロミオとジュリエット。絵を盗んだ執事の心情を思うと…。そして主人公にもとうとうロマンスが?!「想夫恋」暗号物。乱歩再び。二銭銅貨と鏡地獄のことかなーと思いながら読んでた。「玻璃の天」ステンドグラスの謎よりも何よりもベッキーさんの素性が!!いいとこのお嬢さんじゃなくて、学者のお嬢さんだったか…。
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シリーズ一作目よりもその世界観にぐっと引き込まれた。若月さんや綾乃さん、乾原さんと、新たに登場した人物が魅力的だった。情熱と哀しみが入り混じっているようなそれぞれの心に惹きつけられた。 なんとなく、読んでいる間ずっと周囲が夜のような気がした。だんだんと戦争の話になっていくんだろう...
シリーズ一作目よりもその世界観にぐっと引き込まれた。若月さんや綾乃さん、乾原さんと、新たに登場した人物が魅力的だった。情熱と哀しみが入り混じっているようなそれぞれの心に惹きつけられた。 なんとなく、読んでいる間ずっと周囲が夜のような気がした。だんだんと戦争の話になっていくんだろうか...。主人公とベッキーさんとの日常に馴染んできたからこそ、次作を読むのが少し怖い。
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昭和初期のつかの間の平和な時代、華族の栄子と運転手のベッキーさんは身の回りに起きる事件の解明に挑む。ベッキーさん三部作の二作目。 謎解きミステリーは相変わらずにしても、やはり文章そのものに魅力のあるお話なので、これだけ慣れてくると文章を読むだけでもう十分楽しめる気がします。 さ...
昭和初期のつかの間の平和な時代、華族の栄子と運転手のベッキーさんは身の回りに起きる事件の解明に挑む。ベッキーさん三部作の二作目。 謎解きミステリーは相変わらずにしても、やはり文章そのものに魅力のあるお話なので、これだけ慣れてくると文章を読むだけでもう十分楽しめる気がします。 さて、この本では栄子さんとベッキーさんの思いが少し時代に切り込んでいて、そこが見せ場だなあ、と思いました。特に若月少尉と栄子さんの丁々発止のやり取りは見もので、時代の行く先をしっかりと見据えながらも自分が意識していなかった恐るべき社会格差を指摘されて愕然とするあたりからは、このシリーズの時代背景をどう捉えていくのか、その覚悟みたいなものを感じさせられました。 シリーズは「鷺と雪」で終わってしまうのですが、その後戦後までを登場人物たちがどう生きたのか知りたくなります。その先を読みたくなるけど、ここで終わったことがベストだということも明白。楽しいシリーズでした。 破滅的な社会的格差を突きつけられてその人生を革命に投じた上流階級の女性を描いたマンガ、「ベルサイユのばら」といっしょにお楽しみください。
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北村薫作品で私が一番好きなベッキーさんシリーズ第二弾。今回は謎多きベッキーさんの核心に迫る話。ミステリーとしては勿論私の大好きな昭和初期の華族を中心とした上流階級の世界をこれでもかと描いくれていてとても満足。私たちはこの10年後には日本が焦土と化していることを知っているわけだが、...
北村薫作品で私が一番好きなベッキーさんシリーズ第二弾。今回は謎多きベッキーさんの核心に迫る話。ミステリーとしては勿論私の大好きな昭和初期の華族を中心とした上流階級の世界をこれでもかと描いくれていてとても満足。私たちはこの10年後には日本が焦土と化していることを知っているわけだが、主人公2人の悲痛な想いにどうか救いをと祈らずにはいられない。
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ベッキーさんシリーズの第二巻。 舞台は昭和8、9年。 上流家庭の娘英子の生活環境と彼女の身の回りに起きる日常生活ミステリーの解決が主軸であった第一巻「街の灯」から作品の雰囲気が変わり始め、テーマは単なる日常の出来事ではなく時代や国の在り方に関わり始めてきた。 この先第三巻となる「...
ベッキーさんシリーズの第二巻。 舞台は昭和8、9年。 上流家庭の娘英子の生活環境と彼女の身の回りに起きる日常生活ミステリーの解決が主軸であった第一巻「街の灯」から作品の雰囲気が変わり始め、テーマは単なる日常の出来事ではなく時代や国の在り方に関わり始めてきた。 この先第三巻となる「鷺と雪」がどのようなものになるのか、話が日常ミステリーに戻らないことだけは確かだろう。 巻末の岸本葉子さんの解説が作品の解釈を深める。 文庫本ならではのありがたさ。
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暗雲垂れこめ始める昭和初期の帝都を舞台に、令嬢(花村英子)と運転手兼お目付け役兼護衛のベッキ-(別宮みつ子)が、不可解な出来事に挑む『街の灯』に続く<ベッキ-さん>シリ-ズ第2弾。 上野の帝国図書館で閲覧した明治31年の「東京日日新聞」の死亡広告が鍵となる『幻の橋』、デートリッヒ...
暗雲垂れこめ始める昭和初期の帝都を舞台に、令嬢(花村英子)と運転手兼お目付け役兼護衛のベッキ-(別宮みつ子)が、不可解な出来事に挑む『街の灯』に続く<ベッキ-さん>シリ-ズ第2弾。 上野の帝国図書館で閲覧した明治31年の「東京日日新聞」の死亡広告が鍵となる『幻の橋』、デートリッヒのスパイ映画「間諜X27」と暗号解読が絡む『想夫恋』、才色兼備・男装の麗人〝ベッキ-さんこと別宮みつ子〟の過去の素性が明らかにされる『玻璃の天』の三篇は、歴史の歯車が加速をつけて回転を始めた、不穏な時代の哀切感がただよう。
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