マイナス・ゼロ 改訂新版 の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
図書館の閉架コーナーから借りました。 字体も古く、最初はちょっととっつきにくいかな、と思っていましたが、ダイムマシンに乗る頃から俄然面白くなりました。そして、いよいよタイムマシンと再会する当たりの流れ、タイムマシンによる人間関係の混乱、なるほどそうだったのか、と納得しながら進みました。 これは面白いですよ!
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時間ものSFはやっぱり楽しい。 タイムトラベル先が戦前で、その時代の日常がとても具体的で鮮やかに描かれているというのも興味深くておもしろかった。 いやあしかし…私も、何故黙っているのだろうと不思議に思ってたけど、そこの理由はシンプルでしたね。 うん、ある程度予想はできたけど、しか...
時間ものSFはやっぱり楽しい。 タイムトラベル先が戦前で、その時代の日常がとても具体的で鮮やかに描かれているというのも興味深くておもしろかった。 いやあしかし…私も、何故黙っているのだろうと不思議に思ってたけど、そこの理由はシンプルでしたね。 うん、ある程度予想はできたけど、しかしまさか…そこも同じとは…。そんなことがあり得るのか…?(SFに対して今さら何を言っておるのか) まあでも、戦時中の話も絡んでいるのに予想以上のハッピーエンドだったので、気分よく読み終えられて良かった。
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昭和45年に刊行されたタイムトラベルもの。昔の作品ですが設定や時代描写が優れていて、21世紀の現代に読んでも色褪せることのない魅力を発揮しています。作者の生きてきた時代だからなのか、昭和の一桁代、太平洋戦争の昭和20年、そして現代にあたる昭和38年の描写が緻密かつ情景豊かでまさに...
昭和45年に刊行されたタイムトラベルもの。昔の作品ですが設定や時代描写が優れていて、21世紀の現代に読んでも色褪せることのない魅力を発揮しています。作者の生きてきた時代だからなのか、昭和の一桁代、太平洋戦争の昭和20年、そして現代にあたる昭和38年の描写が緻密かつ情景豊かでまさにその場にタイムスリップしたかのような時代感を味わうことができました。物語の内容も起伏に富み、クライマックスに向けた怒濤の展開に驚かされます。 一点気になったのが、レイ子さんの形見の本にかかれた数字の謎が解らないままになっているのでは? この作品は映像にしても面白いと思いました。ぜひ映画化を!
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私がSF少年になったころ、もう広瀬正は故人だった。SF少年になって少ししたら河出書房新社から広瀬正小説全集なるものが刊行され始めた(多分それは新装再刊だったと思う)。和田誠のクールなイラストの表紙で、コンパクトで小綺麗な造本だった。この小説全集、推理小説などあって、これはSF作...
私がSF少年になったころ、もう広瀬正は故人だった。SF少年になって少ししたら河出書房新社から広瀬正小説全集なるものが刊行され始めた(多分それは新装再刊だったと思う)。和田誠のクールなイラストの表紙で、コンパクトで小綺麗な造本だった。この小説全集、推理小説などあって、これはSF作家なのか、と純粋なるSF少年は胡散臭く思ったものだが。 しかし『マイナス・ゼロ』とは何だかカッコいい題名だ。『タウ・ゼロ』を連想するじゃないか。何かすごいハードSFじゃないか。いやいや、時間SFであって、そんなカッコいい話じゃないんです。 タイム・マシンが手にはいったら、ヒトラーの悪行を止めに……行かないだろう。自分の過去にコミットしたくなるのが関の山。それが人情だろうか。だから、タイム・マシンもののひとつの定石が自己の過去と関わる話である。ハインラインの『夏への扉』なんかが典型で、何とも甘酸っぱいノスタルジーと因果のパラドックスのパズルが組み合わさって独特の魅力を発する。広瀬正の『マイナス・ゼロ』も同工で、同じくハインラインの「輪廻の蛇」ばりの見事な時間の織物を織ってみせるのだが、しかしその独創性はいわば昭和を主人公にしたことだ。 ゼロはゼロでプラスもマイナスもないのが数学だから、『マイナス・ゼロ』はおかしい。物語は「プラス・ゼロ」と記された章から始まる。昭和20年がそのゼロである。主人公・俊夫の隣家の先生は戦火に巻かれて死ぬ間際、18年後にその場に戻ってくるように俊夫に頼む。「プラス18」、昭和38年、先生宅に訪れた俊夫の前に現れるタイム・マシン。そのタイム・マシンで、俊夫は誤って「マイナス31」、昭和7年に戻ってしまうばかりかタイム・マシンを失ってしまう。そこで、俊夫のタイム・トラベルは「マイナス31」から自分の足で未来へと戻っていくものとなる、「昭和」を道連れとして。 SFなんてと思う人にも是非読んでいただきたいのは、設定はどうあれこれが苦境に陥った俊夫という普通の人間の物語だからだ。過去に戻ってたどり直すのだからすべてがもう決まっていることなのに、戦争が起こるとか大雑把なことしかわからず、自分の身の回りで何が起こるかわからないという、もつれた時間の糸を解きほぐすかのようなこのハラハラ感。正直、私は読み出したらやめられなくなってしまった(休日でよかった)。 少年時代に読んだときは自分の属する時代から引きはがされて生きねばならぬ俊夫の悲劇に心が痛んだ。いまは、それはまったく悲劇に思えない。どこであれ真摯に生きていくことに不幸はないのだ。
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旧字に骨を折るも面白くて一気読み。 予想も理解も出来ない結末に頭ん中パニックになりました。 The パラドックス。
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名前は知っていたが、広瀬正の本を1冊読んだのは初めて。表紙から、まあ多分また、戦争の話だよなあ、「楡家の人びと」から、戦争もの付いてるなあという感じで読み始めた。 確かに最初は空襲の話だったのだが、18年経ってからは、18年前の少女が、現代に順応する話か?と思いきや、また過去に...
名前は知っていたが、広瀬正の本を1冊読んだのは初めて。表紙から、まあ多分また、戦争の話だよなあ、「楡家の人びと」から、戦争もの付いてるなあという感じで読み始めた。 確かに最初は空襲の話だったのだが、18年経ってからは、18年前の少女が、現代に順応する話か?と思いきや、また過去に戻るのである。それも、戦前。 星新一の解説にも書かれているが、戦争中よりも戦前について、相当量の資料とともに書かれている小説は、なかなか無いであろう。 そして、そのままその世界に適応するかのようにストーリーは進み、せっかく出してきたタイムマシンが無になるかと思ってしまう。 ところが「りんごの話」から、登場人物に、タイムマシンによるパラドックスを解決させようとしたり、過去の自分の体験に合わせるために動いたりと、ハードではないが、手に汗を握るSF作品となっていく。 昭和初期の世俗に関しては、同時代性を持たない我々にとっては、若干鬱陶しくも感じるが、読後の感想としては、それらの資料が非常に貴重であったこともわかる。 なかなか良い物を読んだという気がする。
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超ド級の名作ってことで読んだんだけど、ちょっとだけ古びている感があったなあ。 いやしかし、確かに名作であることはわかる。 それなりに分厚い本なのに、長さは一切感じなかった。特に中盤以降はまさに「のめり込む」感じで。 残念なのがラスト。うーん、そういう終わり方かあ、と。ここで「古...
超ド級の名作ってことで読んだんだけど、ちょっとだけ古びている感があったなあ。 いやしかし、確かに名作であることはわかる。 それなりに分厚い本なのに、長さは一切感じなかった。特に中盤以降はまさに「のめり込む」感じで。 残念なのがラスト。うーん、そういう終わり方かあ、と。ここで「古さ」が決定的に感興を削いでしまった。 ラストが違っていたら、僕の受ける印象はガラッと変わっていたように思う。
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高校か大学の時に読んで、えらく気に入った作品だったので再読。 あの時は感じなかったけど、改めて読むと昔の小説って、時代背景が古いのは当たり前だけど、文章も古臭くてなんか変な感じ。最近の小説の文体に馴染んだからかな? しかし練りに練った伏線は今読んでも感心してしまう。この人の作...
高校か大学の時に読んで、えらく気に入った作品だったので再読。 あの時は感じなかったけど、改めて読むと昔の小説って、時代背景が古いのは当たり前だけど、文章も古臭くてなんか変な感じ。最近の小説の文体に馴染んだからかな? しかし練りに練った伏線は今読んでも感心してしまう。この人の作品に共通するノスタルジーも大好き。俺ってタイムパラドックスもの好きだなぁ、と再認識。 タイムマシン小説に執念燃やしてたこの作家、もっと長生きして欲しかった。
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文学的な葛藤を見せない登場人物たちのおかげで、カラリと乾いたSFと戦前ノスタルジーに集中して中身を味わうことができる。現代の作品であれば循環に関する考察が必要と思われるが、70年代であれば題材の新しさで許されるか。
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タイムマシンに乗って、違う時代に行ってしまったのによく馴染んでるなぁ…と感心しながら終始読み進めました。徴兵されて戦場にまで行って。カシラ一家がいい人達で良かった。色々な事が回収されていく最後は面白すぎて手が止まりませんでした。時代背景に少し戸惑ったりもしましたが、物価など興味深...
タイムマシンに乗って、違う時代に行ってしまったのによく馴染んでるなぁ…と感心しながら終始読み進めました。徴兵されて戦場にまで行って。カシラ一家がいい人達で良かった。色々な事が回収されていく最後は面白すぎて手が止まりませんでした。時代背景に少し戸惑ったりもしましたが、物価など興味深く読めました。そして…はた、と思いました。代わりに乗ったお巡りさんは大丈夫だったのかしら。
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