二十四の瞳 の商品レビュー
とても有名なタイトル。 不朽の名作と謳われていながら、未読でした。 時代は昭和初期。自立した芯のある女性と無垢な子どもたちの交流を描いた物語、だと思っていました。 物語が進むにつれ、忍び寄る戦争の影に、この時代の空気を感じました。貧しくとも明るい、いたずらや意地悪さえも振り返れば...
とても有名なタイトル。 不朽の名作と謳われていながら、未読でした。 時代は昭和初期。自立した芯のある女性と無垢な子どもたちの交流を描いた物語、だと思っていました。 物語が進むにつれ、忍び寄る戦争の影に、この時代の空気を感じました。貧しくとも明るい、いたずらや意地悪さえも振り返れば懐かしく思えるような毎日が、「戦争」というものによって失われていく。時代の理不尽さを前に、怒るでもなければ、叫ぶでもなく、大事な教え子を慈しむ眼差しに、なんだか泣きたくなりました。 教え子たちを戦争に取られてしまうのも切ないけれど、平和な時代を知らない自分の息子が、戦地に行きたい、名誉の戦死を誇らしいと思うのを目にするのは、どれだけ辛いことでしょうか。 自らの命を大事にするという当たり前の価値観さえ揺らがせる、戦争というものが怖くなります。むしろ、自分を、相手を大事にするという価値観を持ち続けていては、戦争はできないのでしょうね。 戦争は悲愴。それでいて、本書は暗くない。 あとがきには、「壺井さんの文学にはえくぼがあった」と書かれているけれど、本当にそのとおりで、こんな辛い時代においても、明るさを失わない、人の温かみのようなものがある。これが、戦争を糾弾するような物語であったなら、こんなにも長く人々の間で読み継がれることはなかったと思います。 戦争はよくない。 それはもちろんのことですが、そんな時代を逞しくも生き抜いてきた私たちの祖先に想いを馳せることができる、そんな1冊でした。
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所持/戦争という時代に翻弄されて貧しい中にも、どこか温かみがあって不思議な読後感。子どもたちの無邪気さがつらい。どの時代に生まれても風潮に合わせて生きていかなきゃいけないのは同じだけど、自分の意思とは関係のないところで、なんて理不尽な…と、改めて、平成に生きる自分の自由さを知る。
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児童書のような平易な文体なのでだれでも読めそう。すごいね。 個人的にはもっとこっちのテンションを落としにきてくれても良かったと思う。でもそれをしちゃってたら現代まで残るほどは売れてなかっただろう。
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子どもの頃に何度も読んだ本です。 あらすじは何となく覚えてはいますが、大人になって読んで、ひたむきな子ども達の姿に涙しました。 今だから分かる事もいろいろあります。 この物語は、静かな反戦の小説ともいえるように思います。 夏になると、なんとなく読みたくなる1冊です。
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有名な作品だが、初めて手に取った。 平仮名や方言が多く、始めはなかなか文章が頭に入ってこなかった。 先生と生徒の学校生活の物語だと思いこんで読み進めていたので、何故この先生が人気者になるのか?と疑問だった。 しかし私の視点が違った。 この本はそのような本ではないと気づいてか...
有名な作品だが、初めて手に取った。 平仮名や方言が多く、始めはなかなか文章が頭に入ってこなかった。 先生と生徒の学校生活の物語だと思いこんで読み進めていたので、何故この先生が人気者になるのか?と疑問だった。 しかし私の視点が違った。 この本はそのような本ではないと気づいてから、読書のスピードが上がった。 後半は一気に読み進めてしまった。
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昭和初期、師範学校を卒業して小豆島の分教場に赴任してきた大石先生と12人の教え子との愛情あふれる物語。(文庫裏表紙説明より) 読む前は先生と生徒の物語なのかな、と思っていたけどどちらかというと戦争のことを描きたかった作品なのかなと思いました。 大石先生にすごく感情移入してしまい...
昭和初期、師範学校を卒業して小豆島の分教場に赴任してきた大石先生と12人の教え子との愛情あふれる物語。(文庫裏表紙説明より) 読む前は先生と生徒の物語なのかな、と思っていたけどどちらかというと戦争のことを描きたかった作品なのかなと思いました。 大石先生にすごく感情移入してしまいました。赴任したての大石先生の苦労や戸惑いには私も思わず「あるある」と苦笑(笑) 子どもは生まれる家や時代を選べないんだなぁ、生まれた環境で、時代で、順応して生きていかなければならないというのは今も昔も変わらないことなのだなぁということを改めて感じました。それを、学校の先生や親含め周りの大人がしっかり理解して子どもたちを伸ばしていってあげないといけないんだなぁと思います。 あたたかくて、さびしい物語でした。
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心温まる教師と生徒の当たり前のような日常と、戦争や貧困によって無残にもその日常を切り裂かれた子どもたちの苦悩が克明に描かれている。まっちゃんが弁当箱を肌見放さず持っていたと知った時は泣くかと思った。
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瀬戸内海の小さな島を舞台にした、新米教師の大石先生と純朴な12人の子供たちとの交流を描いた牧歌的な作品。 ……と思いきや、物語が進むにつれて反戦的な描写が濃くなっていく。 無邪気に軍国主義に染まっていく子供たちを一人歯がゆい思いで眺める大石先生の姿は、言いたいことも言えない戦時...
瀬戸内海の小さな島を舞台にした、新米教師の大石先生と純朴な12人の子供たちとの交流を描いた牧歌的な作品。 ……と思いきや、物語が進むにつれて反戦的な描写が濃くなっていく。 無邪気に軍国主義に染まっていく子供たちを一人歯がゆい思いで眺める大石先生の姿は、言いたいことも言えない戦時中の空気をありありと伝える。 反戦という重いテーマはあくまで控えめで、それがいっそう説得力を強くしていると思う。 映像的な表現の美しさもこの作品の魅力。
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小豆島旅行の前に読んだ。有名な作品だけどいつ読んだのか、そもそも読んだことあるのか、そんな感じだったので今回改めて読んで新鮮だったしおもしろかった。単に教師と生徒のこころあたたまる物語、と思ってたら20年にわたる物語だし、戦争や貧困が暗い影を落とすし、でも出てくる人々の素朴さ、優...
小豆島旅行の前に読んだ。有名な作品だけどいつ読んだのか、そもそも読んだことあるのか、そんな感じだったので今回改めて読んで新鮮だったしおもしろかった。単に教師と生徒のこころあたたまる物語、と思ってたら20年にわたる物語だし、戦争や貧困が暗い影を落とすし、でも出てくる人々の素朴さ、優しさが印象的だった。
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壺井栄の文学には、えくぼがある。 解説に書いてあったその表現が、とてもしっくりきた。 小学生だった頃にはみな同じくキラキラ輝いていた二十四の瞳。時代や、家の経済的状況、いろいろなものに翻弄され、いつのまにかできているヒエラルキー。納得いかないことや、悲しい出来事もある中で、そ...
壺井栄の文学には、えくぼがある。 解説に書いてあったその表現が、とてもしっくりきた。 小学生だった頃にはみな同じくキラキラ輝いていた二十四の瞳。時代や、家の経済的状況、いろいろなものに翻弄され、いつのまにかできているヒエラルキー。納得いかないことや、悲しい出来事もある中で、その中でもえくぼがあることでほっとできる。人生その眼差しが大切なんだと思う。 えくぼは、狙って作るわけでなくて、自然にできるところがいい。壺井さんは凛とした、すてきな女性なんだな。 女性が自分の意志で職業をもてる自由があること、自分のやりたいことを思うとおりにできることを、改めてありがたいと思ったのと、教師という職業を改めて素敵な職業だと思った。 舞台である小豆島で読めてよかった。
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