猫と庄造と二人のおんな の商品レビュー
面白い。なかなか愉快な、まるで落語を聞いて居る様な悲しい喜劇です 解説者は何でも哲学書にしたがるが、小説であろうが、人生であろうが、なんであろうが面白ければ、すべからく良し。 我が家にも保証書無き雑種の猫が居るから解るのだが、谷崎さんは間違いなく猫を飼っていた。その描写に笑うのだ...
面白い。なかなか愉快な、まるで落語を聞いて居る様な悲しい喜劇です 解説者は何でも哲学書にしたがるが、小説であろうが、人生であろうが、なんであろうが面白ければ、すべからく良し。 我が家にも保証書無き雑種の猫が居るから解るのだが、谷崎さんは間違いなく猫を飼っていた。その描写に笑うのだ。「吾輩は猫である」と比較しながら読んでみるも良い。
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小説の中でのヒエラルキーは、タイトルそのまま。すなわち最上位が猫で、次が庄造、そして最下位に品子と福子の二人の女という構図だ。全体が濃密な関西方言で語られていることが、この小説に独特の柔らかさと、惚けた味わいとを与えているのだが、関西弁ネイティヴでない人には巻末に付された注が必要...
小説の中でのヒエラルキーは、タイトルそのまま。すなわち最上位が猫で、次が庄造、そして最下位に品子と福子の二人の女という構図だ。全体が濃密な関西方言で語られていることが、この小説に独特の柔らかさと、惚けた味わいとを与えているのだが、関西弁ネイティヴでない人には巻末に付された注が必要であるかもしれない。それにしても、谷崎による庄造の「猫可愛がり」の表現は、実に徹底していて見事というほかない。また、庄造自身の造形も後の織田作之助『夫婦善哉』の柳吉に繋がって行くような、かつての典型的な関西の憎めないダメ男だ。
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「谷崎先生、猫にやられなはったなあ」 当方関西語圏ではないが、顰蹙を買ってでもこの方には関西言葉がよく似合う。 雌猫の奴隷となった男と、それを愛するおんなたちの話である。 居場所のない哀れな人間の話である。 猫にかしずく男女の話である。 などとごちゃごちゃ書くより、猫好きには絶対身に覚えのある部分があるので、にやにやしながら読んでみてください。
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面白かったです。 昭和9年くらいかな?の兵庫県芦屋近辺が舞台。 「細雪」的な界隈ですね。 さほど金持ちじゃない、荒物屋の亭主が庄造で、買ってる猫がリリー。 前の妻が品子で、今の妻が福子。 で、みんなそこそこだらしなくて、みんなそこそこ立派じゃなくて、弱くてしんどくて、淋しいんです...
面白かったです。 昭和9年くらいかな?の兵庫県芦屋近辺が舞台。 「細雪」的な界隈ですね。 さほど金持ちじゃない、荒物屋の亭主が庄造で、買ってる猫がリリー。 前の妻が品子で、今の妻が福子。 で、みんなそこそこだらしなくて、みんなそこそこ立派じゃなくて、弱くてしんどくて、淋しいんですね。 話の運びは、先妻の品子が、リリーを譲ってほしいという。 庄造は嫌だけど、今妻の福子が、そうしろ、というので仕方なく譲る。 先妻の品子は庄造をおびきよせるためにしたことだった。 リリーがいなくなって、品子の思惑通り庄造は落ち着かない。 ところが思惑とはずれて、品子がリリーを溺愛しはじめる。 ある日とうとう、庄造は品子のところへリリーを観に行く・・・。 というだけのお話。 谷崎潤一郎さんの本っていうのは、本当に、「自己啓発」的なコトと無縁ですね(笑)。 そういう観点では、全くの無駄な芸術です。素晴らしい。 人は弱くって、ずるくって、卑怯で、小さくて、だから可愛くって美しくって、可笑しくて。それが生きてるって意味でのエロスなのかもですね。 それが更に、俳画的というか、そういう俯瞰で覚めた目線もありますね。 豊田四郎、森繁久弥、というコンビで映画化もされているはずで、 (確か山田五十鈴も出ていた気がする・・・) それもいずれ見たいので、原作も、というくらいの気分でした。 ただ最近、せっかく関西にいるので、 芦屋の旧谷崎邸を眺めに行ったし、ちょっと親近感感じていますね。 文章、状況描写、心理描写、テンポ。省略の仕方。 どれを取っても、当たり前ですが面白い小説でした。 あとは好みですね。 僕は、コレは好きでした。 この辺とか、「痴人の愛」「卍」「刺青」とかって、 目を輝かせて「これこそ僕の私の理想の小説なんです」って熱弁されると、 ちょっと「なんだか面倒くさいヒトかな」と思ってしまうんですけどね(笑)。 そんな人は滅多にいないと思いますけど・・・。 なんていうか、漱石とか芥川とか、ひょっとして太宰も、 彼らが血みどろになって格闘して悩んだ、近代市民の自我とか、ヒトのエゴとか、日本対西洋の気持ちの部分とか、 そういうのって、谷崎ってスタート地点から軽々と超越しちゃってるんですよね・・・。 だからかっこいいとも言えるし、だから物足りない、高踏的、エラそう、とか、どっちでも言える訳ですが。 でもなんか、人の弱さが退廃的に美しい。うん。 なんだかね、近松だと思いますね。心中モノの世界。アレも、弱さ、狡さ、悪さの肯定っていうか、ソレが人間的で面白いわけですもんね。
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私の谷崎潤一郎の最初の印象は、 女々しい男を書くのが上手い作家だなー、でした。 その後『刺青・秘密 』でその完成度の高さに好きになったんだけど、 この作品は私が求めた初期のタイプではなく、 所謂女々しい男タイプでした。 読みやすいし人物描写にも深みがあって やはり上手いなーと思...
私の谷崎潤一郎の最初の印象は、 女々しい男を書くのが上手い作家だなー、でした。 その後『刺青・秘密 』でその完成度の高さに好きになったんだけど、 この作品は私が求めた初期のタイプではなく、 所謂女々しい男タイプでした。 読みやすいし人物描写にも深みがあって やはり上手いなーと思うんだけど、 私のタイプではない。 でも今のところこれまで読んだ谷崎作品で 「くだらない」とか「つまらない」とか思ったことがないので、 安心して手に取れる作家であるのは確か。
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読書会の課題でした。 でも、久々に谷崎です。 小編というより、中編かもしれない。 正直・・・、読み進めるのがつらい。 それほど、庄造の性格にはいらいらするし、二人のおんなにもいらいらさせられる。 猫も猫だ。 本当に猫の性格と修正をしっかり、正確に表現されている。 なんていやな猫な...
読書会の課題でした。 でも、久々に谷崎です。 小編というより、中編かもしれない。 正直・・・、読み進めるのがつらい。 それほど、庄造の性格にはいらいらするし、二人のおんなにもいらいらさせられる。 猫も猫だ。 本当に猫の性格と修正をしっかり、正確に表現されている。 なんていやな猫なんだろう。 でも・・・・、猫をさまざまなものに代えて読むとすれば、ヒトというのは、なんてくだらない日常を、日々生きているのだろうということですね。
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猫好きにはたまらない描写。 タイトルが、かっこいい。 小説としての、人間描写としての、完成度の高さ! 人間は自由を求めているようで、必ずしもそうではない。 猫と二人のおんな。
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猫を飼ったことのある人ならば、リリーの振る舞いの自由さと、それに振り回される一人の男と二人の女の滑稽さにニヤリとせずにはいられないはず。 ただこの物語は猫を「狂言回し」として結婚や打算や色恋に振り回される阿呆な男と女を描いた小説で、決して「猫文学」では無い。人が心を溶かし、人が心...
猫を飼ったことのある人ならば、リリーの振る舞いの自由さと、それに振り回される一人の男と二人の女の滑稽さにニヤリとせずにはいられないはず。 ただこの物語は猫を「狂言回し」として結婚や打算や色恋に振り回される阿呆な男と女を描いた小説で、決して「猫文学」では無い。人が心を溶かし、人が心底憎む存在である「猫」が人からプライドを剥ぎ取り、心のあり様を露わにさせる。猫好きには痛快でもある、人間模様。
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タイトルのとおり、猫と庄造と二人の女の、四角関係?のような面白おかしいお話。嫉妬、やきもち、策略。本人たちはとてもまじめなのだろうけれど。谷崎の猫好きが感じられます。
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谷崎は、猫および猫のように気まぐれで甘えん坊な女性に振り回されたいんだなぁということがとてもよく分かる本でした。笑 マザコン男と、前の奥さんを追い出して結婚した嫁と、追い出された元嫁と、マザコン男が愛してやまない猫、リリーの話。 猫の描写が素晴らしくて、目の前で猫の動きを見てい...
谷崎は、猫および猫のように気まぐれで甘えん坊な女性に振り回されたいんだなぁということがとてもよく分かる本でした。笑 マザコン男と、前の奥さんを追い出して結婚した嫁と、追い出された元嫁と、マザコン男が愛してやまない猫、リリーの話。 猫の描写が素晴らしくて、目の前で猫の動きを見ているかのようでした。 三人の目線で語られる物語ですが、視点が変わるごとにその視点の持ち主の味方をしたくなるのが不思議でした。さすが谷崎。
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