猫と庄造と二人のおんな の商品レビュー
あぁ、谷崎のすごい猫文学!猫をこんなに艶めかしくエロティックに悪魔的に描ける人がいるだろうか!私、常日頃から「猫の下僕志願兵です」とか言ってるけども、猫に限らず何らかの人・物に心の底から隷属させられて完璧に翻弄されている(隷属するのと隷属させられるのはもう、全然違うと思う)のって...
あぁ、谷崎のすごい猫文学!猫をこんなに艶めかしくエロティックに悪魔的に描ける人がいるだろうか!私、常日頃から「猫の下僕志願兵です」とか言ってるけども、猫に限らず何らかの人・物に心の底から隷属させられて完璧に翻弄されている(隷属するのと隷属させられるのはもう、全然違うと思う)のって、こんだけ気持ち悪いんだってよーく感じた。どんなに滑稽で気持ち悪くても、でも多分当人は気持ち良いだろうとも。そんなのは危険すぎて、本の中で楽しむに限る!あぁそれでもやっぱり、猫に隷属させられたい!大変好みの良い本でした。
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いい年をして何もできない子どもみたいなダメ男っぷりも、ここまでいくといっそ清々しい。わがままを通しているようで、女たちに首根っこをおさえられ、溺愛する猫さえ失ってしまった庄造が、「どこにも行き場所がないのは自分ではないか」と気づくラストシーンの、なんとも情けない哀しさとおかしさと...
いい年をして何もできない子どもみたいなダメ男っぷりも、ここまでいくといっそ清々しい。わがままを通しているようで、女たちに首根っこをおさえられ、溺愛する猫さえ失ってしまった庄造が、「どこにも行き場所がないのは自分ではないか」と気づくラストシーンの、なんとも情けない哀しさとおかしさと。ゆったりした神戸言葉の響きもうつくしい。
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人間のおかしみを滑らかな文体で表現する。しょうぞうが人間の女でなく猫を追い続けてしまう気持ちは、赤ちゃんの世話をしている今よく分かる。解説もよかった。無駄なものに人間ははまるし、単純な話だけど、ディテールがいちいち面白い。しょうもない男を押し付けがましくなく書けるのがすごい。
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のれんに腕押しの情けない男庄造を二人の女が猫を挟んで取り合うというどうしようもないお話なんだけど、この猫のリリーちゃんがかわいすぎる。 リリーちゃんの描写に猫愛を感じる。 長毛種で茶系だからノルウェイジャンみたいな感じかな。猫の写真見ている時と同じようなときめきを感じました。庄造...
のれんに腕押しの情けない男庄造を二人の女が猫を挟んで取り合うというどうしようもないお話なんだけど、この猫のリリーちゃんがかわいすぎる。 リリーちゃんの描写に猫愛を感じる。 長毛種で茶系だからノルウェイジャンみたいな感じかな。猫の写真見ている時と同じようなときめきを感じました。庄造が最後逃げていく様もなんだか猫のようで可笑しい。猫が活躍する小説の中で一番好きかも。
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三島由紀夫の小説「金閣寺」のなかに、「南泉斬猫」という物語が紹介されている ……山寺の小坊主たちが、一匹の、たいへんかわいらしい猫を拾ってくるのだが さてこの猫の面倒を誰がみようということになって 誰もが、その権利を主張し、ゆずらない そこに、南泉という偉い坊主があらわれて、猫...
三島由紀夫の小説「金閣寺」のなかに、「南泉斬猫」という物語が紹介されている ……山寺の小坊主たちが、一匹の、たいへんかわいらしい猫を拾ってくるのだが さてこの猫の面倒を誰がみようということになって 誰もが、その権利を主張し、ゆずらない そこに、南泉という偉い坊主があらわれて、猫を切り殺してしまう その夜、高弟の趙州が帰ってきたので、南泉が「おまえならどうする」と問うたところ 趙州はなぜか、自分の靴を頭に乗せて、部屋を出て行ってしまった それを見た南泉は 「ああ趙州、おまえがいれば猫も死なずにすんだであろうに」となげいたそうな 「南泉斬猫」は不条理な物語ゆえ、その解釈も様々に可能であろうけれども ひとまず言えることとして南泉は 人心に不和をもたらす存在を、邪悪として断罪せざるをえなかったということ すなわちここでは、「かわいいは罪悪」なのである 谷崎潤一郎の「猫と庄造と二人のおんな」は かわいい猫に振り回されて疲弊していく家庭をえがいた小説 この小説において、猫のリリーとは すなわち、人心に不和をもたらす「かわいい悪魔」なのであり それにかしずく庄造は、「悪魔主義者」ということが言えるだろう 「悪魔主義」とはもちろん、谷崎潤一郎の作品に対し 尊敬と畏怖をもって与えられた通称にも他ならない その谷崎は、「饒舌録」のなかで、小説家と言う職業をこう語っている 「これで生活し、妻子を養っていこうとするのは、いわば 危い綱渡りのような渡世である」と しかし悲しいかな、庄造にはそういう強さがまったく足りないのだった 猫一匹かかえて家を飛び出していくような愚かしい勇気こそ 悪魔主義者には求められるものであろう 「猫と庄造と二人のおんな」は、悪魔主義に片足つっこみながら 出ることもはまりこむこともできず じりじりと破滅していくしかない男の、もの悲しいコメディーである
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*猫と「蜜月」関係を結んだことのある人にはたまらない小説ではないでしょうか。って私自身は、飼っていたことはあるけど、そこまで親密な時期が続くことはなかったですが(子猫のある一時期はよく懐かれたな、とかその程度)。でも、猫と蜜月な人って本当にいると思うので、この小説で描かれている、...
*猫と「蜜月」関係を結んだことのある人にはたまらない小説ではないでしょうか。って私自身は、飼っていたことはあるけど、そこまで親密な時期が続くことはなかったですが(子猫のある一時期はよく懐かれたな、とかその程度)。でも、猫と蜜月な人って本当にいると思うので、この小説で描かれている、庄造と猫の関係は、ちっとも大げさじゃないなと思います。 犬でも、同じくらい溺愛してる人はいると思うので、広く「ペット」文学とみることもできそうだが、「二人の女」が出てくるところが、やっぱり猫じゃないとあかんという気がする。庄造という男が猫とあまりに親しすぎてやきもちを妬く女ふたりが出てくるわけですが、犬には出せないエロチックさとかが、猫にはある気がする。 *庄造、元妻の品子、現妻の福子、母のおりん、が主な登場人物。彼らの心情がすーっと伝わってくる。ただだらだら綴っているだけと言えばそれまでというくらい、文章でひたすら書いてあるだけなんですけどね。この赤い夕日の描写が彼の情熱を象徴しているのだというような、凝ったことはしてなくて。だらだら書いているけど読みにくいこともなく、生い立ちや性格までも、いつの間にか「知らされて」いる。 *でまた、終わりかたの潔さったら!細雪もそうでしたが。このなよなよ男と女たちと母と猫との関係を、どういう結末で片付けるんだろうって楽しみにして読んでいったんですけどねえ! *なよなよ男といま書いた庄造さん、まさに歌舞伎でいう和事の二枚目のような情けなさ。仁左衛門とか愛之助が、眉根を寄せて演じていそう。
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読みやすく面白く、ぱっぱと読了! 猫好き、動物好きなら共感できると思う。猫の描写もうまく、脳内で動くリリーが可愛いかった! 初の谷崎潤一郎、馴染み深い関西弁、舞台が地元、最高〜 次は痴人の愛と春琴抄を読みたい。
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口うるさく強情な品子を追い出し、多額の持参金付きだが腰の軽い福子を後添えにもらった庄造は、やむにやまれぬ状況から愛猫リリーを品子に譲ることになる。しかし、あまりの恋しさに、福子の留守中にリリーに会いに行った庄造は、そのことが福子にばれて、窮地に立たされる。 著者の谷崎自身、並...
口うるさく強情な品子を追い出し、多額の持参金付きだが腰の軽い福子を後添えにもらった庄造は、やむにやまれぬ状況から愛猫リリーを品子に譲ることになる。しかし、あまりの恋しさに、福子の留守中にリリーに会いに行った庄造は、そのことが福子にばれて、窮地に立たされる。 著者の谷崎自身、並はずれた猫好きで知られているが、さすがは文豪、谷崎はただの猫バカではない。嬉しいとき、悲しいときに猫がどのような動作をするか、それがどれほど愛らしいか、そして猫の発する「ニャア」のひと言にどれほどの意味が含まれているか。それを微に入り細に入り描写する筆はあまりに闊達で、猫好きもここまでくれば“芸”だと言える。 庄造がリリーを手放さざるを得なくなる直接の契機となる、リリィーに鯵を与える食卓シーンは中でも秀逸で、口元をだらしなくあけて、目を細めながらニヤついてリリーとイチャつく庄造(谷崎)の様子に、猫好きは快哉を叫ぶだろう。 猫バカ文学史上に燦然と輝く傑作。
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猫を溺愛する荒物屋の主人と、猫を奪うことで復縁を迫る元妻、自分より愛情を注ぐ猫を疎ましく感じる妻。 人間世界の生々しい駆け引きを、一匹の猫を中心に展開させることで、彼らの哀れみと滑稽さをより引き立たせている。
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コメディっぽくてとても読みやすかった。 出だしの品子の手紙の語り口がいかにも谷崎らしくて ファンとしては冒頭からにんまり。 130ページもない小説なのに、登場人物のキャラクターや背景、 駆け引きを淀みなく描ききってしまう文章と表現はただただ尊敬します。 傍から見ると滑稽なくら...
コメディっぽくてとても読みやすかった。 出だしの品子の手紙の語り口がいかにも谷崎らしくて ファンとしては冒頭からにんまり。 130ページもない小説なのに、登場人物のキャラクターや背景、 駆け引きを淀みなく描ききってしまう文章と表現はただただ尊敬します。 傍から見ると滑稽なくらい何かに執着している人たちは どうしてこんなに魅力的なんだろう。 いつか猫を飼う時がきたら、「リリー」と名付けて 振り回されてみたいものです。
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