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浮世の画家 の商品レビュー

3.7

79件のお客様レビュー

  1. 5つ

    12

  2. 4つ

    23

  3. 3つ

    25

  4. 2つ

    3

  5. 1つ

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2015/12/25

価値観の変化についていけない人もいるし、ついていける人もいる。しかも、これは芸術の分野の変化なので、当の本人たちはさぞ辛かろう。こんな日が遠からずくるのかも、と思う。『わたしを離さないで』の次に読んだので、少しインパクトは薄いけれども、この後じわじわ恐ろしくなって来そうな読後感。...

価値観の変化についていけない人もいるし、ついていける人もいる。しかも、これは芸術の分野の変化なので、当の本人たちはさぞ辛かろう。こんな日が遠からずくるのかも、と思う。『わたしを離さないで』の次に読んだので、少しインパクトは薄いけれども、この後じわじわ恐ろしくなって来そうな読後感。やはりこの人のお話は目の付け所が凄い。

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2015/11/10

イシグロが日本を描いた作品は、残念ながらあまり面白いとは思えない。「浮世の画家」も「遠い山並みの光」も、小津映画の雰囲気をそのまま文章にしたにすぎないように思えてしまう。彼は、やはり、ヨーロッパを舞台にした作品を描いてこそ本領発揮という気がする。

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2015/01/19

過去を回想したときの自負、自信。 しかし結果として認めざるをえない過ち、悔恨。 年老いてもなおそれを乗り越えて前を向く清清しさ。 しかしひょっとするとそれらは全て本人の思い違いかもしれないのだが??? そんな世界を相変わらず美しい文章でゆったりと、そうかといって飽きさせることは...

過去を回想したときの自負、自信。 しかし結果として認めざるをえない過ち、悔恨。 年老いてもなおそれを乗り越えて前を向く清清しさ。 しかしひょっとするとそれらは全て本人の思い違いかもしれないのだが??? そんな世界を相変わらず美しい文章でゆったりと、そうかといって飽きさせることは決してなく、楽しく読ませてくれる作品 設定は全く違うけど、日の名残とかなり似たテーマですね ただし日の名残のほうがラストの切れはいいと思う 本作はラストにかけてちょっと書きすぎじゃないだろうか? 次女の結婚のくだりをすっぱりと書かなかったように、黒田とのくだりも書かないほうがよかったような そういうあいまいな部分を残してくれたほうが本作としては良かったように思う 遠い山なみの光からずっと、谷崎の細雪を読んでいるような心地よさを感じながら読んだ 本作については小津の東京物語、笠智衆が随分主人公と重なった 日本にゆかりがあるとはいえ、日本語は話せないほどに英国人である作者がなぜにこれほど日本的な作品を書けるのか、不思議だ 作者さんの作品は少ない、コンプリートまでもう少し 早く読みたいような、とっておきたいような・・・・

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2014/08/12

カズオ・イシグロの最後の未読の一冊。きめ細かく丁寧に紡がれる綺麗な文章とノスタルジーは彼ならではであり、情景が浮かぶ。ただその反面、常に一人称で回想する形式を取るので、脱線したり冗長な部分が多かったりする。その余分の積み重ねが全体として見ると実は結構効いてくるんだけど、読んでる最...

カズオ・イシグロの最後の未読の一冊。きめ細かく丁寧に紡がれる綺麗な文章とノスタルジーは彼ならではであり、情景が浮かぶ。ただその反面、常に一人称で回想する形式を取るので、脱線したり冗長な部分が多かったりする。その余分の積み重ねが全体として見ると実は結構効いてくるんだけど、読んでる最中は時折退屈になる。遠い山なみの光と同様の戦後日本の風景だけど、山なみの方が好きだった。

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2014/04/29

「私を離さないで」「日の名残り」しか読んだことなかったのでこんな日本を舞台にした小説があるんだとびっくり。でも全然違和感ないし、描きたい人間のかなしさとかは前出2作品とかなり通じるものがあった

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2014/04/01
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

2014/02/25/Tue.〜03/31/Mon. 彼の作品を読むのは、『わたしを離さないで』に続き、これで2冊目。 戦時中、日本精神を鼓舞する作風で名をなした画家・小野。 多くの弟子に囲まれ、大いに尊敬を集める地位にあったが、終戦を迎えた途端、周囲の目は冷たくなった。 老人・小野が何を言っても、何をやっても、空回り。 実の娘たちや義理の息子は何かにつけ反論してくるわ、かつての弟子からもそしりを受けるわで、周囲の人間と噛み合うことがないまま、孤立無援となっていく…。 自らの過去を高尚げに語る小野だけど、かつて犯した過ちを素直に認めているようでいて、その実、核心部分(おそらく小野自身にとっては都合が悪いであろう真実)は曖昧なまんま。 独り善がりで、いまひとつスッキリしない独白。 しかも、とりとめないエピソードが頻繁に付け加えられ、その度に話が横に逸れまくるもんだから、コノジイサン、ナンナノ???と違和感を抱きながら読み進めることになる。 『少なくともおれたちは信念に従って行動し、全力を尽くして事に当たった』のはわかるんだけどね…。 奇妙な読後感を誘う筆致は、カズオ・イシグロ節の成せるワザなんでしょうか? 読み手をモヤモヤ(時々イラッと)させるクセに、最後までぐいぐいと読んでしまったんだよなあ。 そして小野は、最後の最後で「あること」を悟り(悟らされ?)ます。 「こういう切り口もあるんだなあ」と、ある種の面白さを感じる小説でした。

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2014/02/18

読んでいる間、翻訳者の存在を時々意識させられた。 最初、時代設定や、戦後になって老境を迎えた芸術家が主人公であることなどから、川端康成の戦後の作品を思い起こしながら読んでいた。 でも、やっぱり翻訳なんだなあ、と随所で感じた。 日本人作家なら、こういう言い回しはしないだろうと思わ...

読んでいる間、翻訳者の存在を時々意識させられた。 最初、時代設定や、戦後になって老境を迎えた芸術家が主人公であることなどから、川端康成の戦後の作品を思い起こしながら読んでいた。 でも、やっぱり翻訳なんだなあ、と随所で感じた。 日本人作家なら、こういう言い回しはしないだろうと思われるところもある。 翻訳であることを主張する文体を敢えて選んでいるのかとも思う。 一方では、「紀子」「節子」など、人物名がどうして漢字表記なんだろう、と思ったりもしたけれど…それは翻訳者、飛田茂雄さんとイシグロの間で話し合って決めたとのこと。 戦時中「新日本精神」発揚の運動に深く関与したという主人公なのだけれど、「八紘一宇」とかそういった当時のよく見られる表現が一切なく、なんだか日本の話のような、どこにもない架空の国のような…不思議な感覚になる。

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2014/01/29
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

太平洋戦争中にアメリカで量産された戦意高揚フィルムにでてくる日本、そんな独特のオリエンタリズムあふれるニッポンがこの小説の舞台。非実在の地名が頻出したり、あずまやの軒に沢山の提灯がつるされいて情緒あふれていたりと、中々日本人には溶け込みにくい世界が描かれる。 物語の最後近く、小野が長女節子と語り合い、言い争いになる部分で、結局著者は何を仄めかしているのか、読者の想像力が試される小説だ。

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2014/01/08

原書で読んだため、英語力が低いので世界観をしっかり理解出来ずに読みおえてしまった。英語力が伸びたらまた読もう。

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2017/01/22

Kazuo Ishiguro の処世作。終戦直後、今までの価値観が 180度転換するようなFloating World に翻弄された老画家を描く。…のだが、ストーリーはこの老人の一人称で語られるため、翻弄されたと思い込んでいるのは実は本人のみという読みがどこまでも否定できない構造...

Kazuo Ishiguro の処世作。終戦直後、今までの価値観が 180度転換するようなFloating World に翻弄された老画家を描く。…のだが、ストーリーはこの老人の一人称で語られるため、翻弄されたと思い込んでいるのは実は本人のみという読みがどこまでも否定できない構造になっている。そして、この「信用できない語り手」の構造はもちろん、『日の名残り』のスティーブンスに継がっていくものだ。(英国側から見たときの)異国趣味と、いかにも英国らしいsarcasm を共に備えた佳作。

Posted byブクログ