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浮世の画家 の商品レビュー

3.7

81件のお客様レビュー

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  2. 4つ

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  3. 3つ

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2012/03/05

<戦中、愛国的作品で名声を得た画家。その戦後、後年の回想期。> だんだん本棚に揃ってまいりました。カズオイシグロ本。 同じ著者の本(=つまり同じ背表紙)が棚に何冊も並んでいると、わけもなく満足感が沸いてきます。。 今回のは彼の長編2作目の作品。 1作目(「遠い山なみの光」...

<戦中、愛国的作品で名声を得た画家。その戦後、後年の回想期。> だんだん本棚に揃ってまいりました。カズオイシグロ本。 同じ著者の本(=つまり同じ背表紙)が棚に何冊も並んでいると、わけもなく満足感が沸いてきます。。 今回のは彼の長編2作目の作品。 1作目(「遠い山なみの光」)~3作目(「日の名残り」)はどれも同じような流れとなっていて、 主人公の一人称で綴られていく過去の回想は、淡々としながらも、現在の自己の正当化に向けられている。 私達も何か間違いを犯したとき、しばらくは「何であんなことを・・・」と考えながらも、 時間が経つにつれ整理がつき、「あの時こうしたから、このように言われたから、あんなことをしてしまった」 というように考え始める。 そしてそれは少しの事実の捻じ曲げも含まれている部分があるということ。 それこそが立ち直ること、これからも人生を歩む上で必要なことなのかもしれません。 一人称の不確かな事実の中で、それを繊細と表現し、現在の自己の正当化に向かうイシグロワールド。 ちなみにこの本もブッカー賞候補だったそうで、惜しくも一票差で破れたそうな。

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2012/02/20

大きな出来事があるわけでもなく、淡々と日常が綴られているように見せながら、その中にやるせなさやもどかしさやどうしようもない想いのようなものをにじませるカズオイシグロの筆致のせいで、一気に読める作品だった。 大戦前後の時代は今では想像もできないくらいの急激な変化で、そこについてい...

大きな出来事があるわけでもなく、淡々と日常が綴られているように見せながら、その中にやるせなさやもどかしさやどうしようもない想いのようなものをにじませるカズオイシグロの筆致のせいで、一気に読める作品だった。 大戦前後の時代は今では想像もできないくらいの急激な変化で、そこについていけるかどうかは死活問題だったのだろう。 過去の栄光や信念を後悔することはなくても、それを隠さなければならない父親の心情、年老いてもまだ自分と闘わなくてはならない葛藤を、ここまでうまく描けるのはすごいと思った。

Posted byブクログ

2012/02/13
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

難しかった. うまく感想がかけないが,自分は優秀だと思いつつも自戒の念も持っている微妙な心情が伝わってきた. 後半で,娘と話が噛み合わなくなったのは何故なのか,よくわからない.

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2012/01/10

来日と映画公開に合わせて、一時期どこの書店でも平積みされていた作品の1つです。日本画家として名を馳せた主人公が過去を振り返りつつ過ごした数年間の物語。何回か読み返したんですが、なかなか感想にまとめられるような解釈ができてません。 以前戦争画を見た時、画家にこんな絵を書かせてはいけ...

来日と映画公開に合わせて、一時期どこの書店でも平積みされていた作品の1つです。日本画家として名を馳せた主人公が過去を振り返りつつ過ごした数年間の物語。何回か読み返したんですが、なかなか感想にまとめられるような解釈ができてません。 以前戦争画を見た時、画家にこんな絵を書かせてはいけない、と悔しくなったことがあります。戦争画家としての過去を、主人公は、家族は、周囲は、どう受け止めていたんでしょう。触れてはいけないような、けどいっそはっきりさせてしまいたいような、この氷の刺が心臓を突き刺すような感覚をどう表していいのか。元々罪悪感や後ろめたさみたいなものを主人公はもっていたんでしょうか。周囲は暗に過去を指摘していたんでしょうか。分からない。けど実際に人間関係って分からないことばかりで、自分の主観なしに相手を見ることはできない。読んでいる間その孤独さが付きまといます。

Posted byブクログ

2018/12/31

引退した画家が、戦時中に行ったことについて自己呵責に苦しんでいた状態から、それを認め、未来に希望を持つまでに至る心の動きを描く。 筋道立てて語られるわけではなく、おぼろげな部分を思い出しながら、ふわふわと話題が移り変わる画家の語り口は、「私を離さないで」と似ている。 言いたいこ...

引退した画家が、戦時中に行ったことについて自己呵責に苦しんでいた状態から、それを認め、未来に希望を持つまでに至る心の動きを描く。 筋道立てて語られるわけではなく、おぼろげな部分を思い出しながら、ふわふわと話題が移り変わる画家の語り口は、「私を離さないで」と似ている。 言いたいことだけをはっきり言うのではなく、周辺のできごとや、自身の感覚などを描くことによって、確信部分の形をおぼろげながらだんだんと浮かび上がらせていく。 他のイシグロ作品もこうなのだろうか。 終始ひどく抑揚のない展開で、なんとなく小津映画を観ているような気持ちになった。 とにかく翻訳がよい。もともと日本語で書かれたかのようにとても自然に翻訳されている。

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2011/12/14

この作家は、美味しいけど小骨が喉に引っかかっちゃう焼魚のような本を書く。あまりクリアでなく、行きつ戻りつする主人公の思考。主題ー戦争に私は加担したのか?という不安が見えるまで時間がかかるけど、日記を読まされているようなリアルさが、胃の辺りにじわじわたまって余韻を残す。

Posted byブクログ

2011/12/24

イギリス文学。日本人とはいえ、5歳からイギリスに暮らしてそのまま定住してる作家さんだからなのか・・・・戦後の日本が舞台なのに日本を描いてる気がしない。翻訳者もそうとう苦労したみだいだけど、やっぱり会話の言い回しが外国風。

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2012/01/03

時代の変化によって自分自身の尊厳への在り方を見つめる物語。 「日の名残り」を想像させる老人の回想録。 カズオ・イシグロ作品は好きです。 人物達の緻密な言葉回しと心模様を、豊かな言葉選びで主人公である画家・小野の人生に静かな彩りを加える。 この物語は終戦間近から戦後の、激変な時...

時代の変化によって自分自身の尊厳への在り方を見つめる物語。 「日の名残り」を想像させる老人の回想録。 カズオ・イシグロ作品は好きです。 人物達の緻密な言葉回しと心模様を、豊かな言葉選びで主人公である画家・小野の人生に静かな彩りを加える。 この物語は終戦間近から戦後の、激変な時代の変化の中で生き抜いた小野の人生とその後を描いている。 自分自身は過った道に進んだことを認め生きている。 しかし、周りからは認めるだけではなく…それ以上の謝罪や罪悪感をただ静かに押し付けられる。 そして追い立てられるような小野の心模様。 しかしこれらは、小野自身が感じている負い目からきている錯覚…だったのかもしれない。 人は追い詰められ、自分自身を責められると苦境な幻覚にさい悩まれる。 画家である小野は、人間が誰が持つ心理的なものに長い間憑かれていたのかもしれない。 そういう細部な心模様を豊かな言葉で並べる著者と訳者は素晴らしいとしか言えない。 カズオ・イシグロ作品を読んだあとに感じる心地好い溜め息を、またこの本を読んで感じました。 若き小野のかつての師匠・モリさんの言葉、 「画家がなんとか捉えることのできる最も微妙で、最も繊細な美は、夕闇が訪れたあとのああいう妓楼のなかに漂っている。」 画家という美を扱う職業を少しだけ理解出来た美しい文章です。

Posted byブクログ

2011/10/05

うーん、この作品はイマイチ分かりずらかった。 いいテーマは扱っているものの 場面が頻繁に変わりすぎて、 ストーリーを追いずらかったし、 余韻に浸る間がなかった。 「日の名残り」とけっこう似てるが 「日の名残り」のほうが完成形だと思う。

Posted byブクログ

2011/03/27

カズオ・イシグロの作品の特徴はそのまま。 戦時中に戦争を推進する絵を書いた画家の戦後の姿。 けして明るい世界ぢゃないけれど 思わず引き込まれてしまう。

Posted byブクログ