坂の上の雲 新装版(八) の商品レビュー
ついに完結。 長かった日露戦争もようやく終結。 バルチック艦隊についての詳しい記述は目を見張るものがあり、とても興味深かった。 かなり長く、読むのに骨が折れたが、読み切ってよかったと思う。
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侵略をもくろむ「悪の帝国」との戦いという正義を胸にいだき、外国との戦いの中で、一般の日本人が自分が国家の国民であるとの強い自覚をいだいた日露戦争の時代。信じられないような貧窮と、負ければ国が滅ぶというのっぴきならない事態でありながらも、自らの行動に一転の曇りも感じない、すがすがし...
侵略をもくろむ「悪の帝国」との戦いという正義を胸にいだき、外国との戦いの中で、一般の日本人が自分が国家の国民であるとの強い自覚をいだいた日露戦争の時代。信じられないような貧窮と、負ければ国が滅ぶというのっぴきならない事態でありながらも、自らの行動に一転の曇りも感じない、すがすがしくこれほど迷いがない理想を人々が生きることができた時代、そんな歴史の中の特異な一時代を鮮やかに切り取って読ませてくれた。日露戦争の30年後、太平洋戦争という大いなる錯誤を犯すことになったわれわれ日本人の教訓を、この物語で描かれる「不思議な勝ち」から学ぶこともできるが、私は本作から端的に味わったことは、その時に持てる力のすべてを一点に注力し数々の難局へ立ち向かった人々の姿だ。仕事でへばりそうになった時、「やれることをやるしかないではないか」という彼らの姿にどれほど勇気を与えられたことかわからない。彼らの勇気と強さの源泉こそが「迷いなく理想を生きる」という、そこにあったのだと思うのだ。
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ようやく読破。秋山兄弟然り明治期の人々にしても、とても高い意識と使命感をもって生きてたんだなぁ、と思うとまだまだ自分の努力は足りないぞ、と。海戦はそのまま組織にもあてはめられて、全艦の意識統一とリーダーの優秀さ、そして一つの生き物のような連携、考えさせられるなぁ・・・。
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スバリ?かなり面白かったです?引き込まれて引き込まれてあれよあれよという間に読んでしまいました? 幕末の薩長の動きはよく知られるところですが土佐藩の動き、板垣退助等の動きがあまりよく知らなかったので知識として勉強になりました? それとビジネスにおいて物事の時勢というのは非常に...
スバリ?かなり面白かったです?引き込まれて引き込まれてあれよあれよという間に読んでしまいました? 幕末の薩長の動きはよく知られるところですが土佐藩の動き、板垣退助等の動きがあまりよく知らなかったので知識として勉強になりました? それとビジネスにおいて物事の時勢というのは非常に大切です。いつ仕掛けるか、それまでの下準備、耐えるところは耐える、こういった事の大切さも勉強になりました。
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ノンフィクションに限りなく近い。プロットよりも作者の歴史観や人物評がめっぽう面白い。物語後半の戦争シーンになると、具体的情景がイメージできず辛い。
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やっと読み終わった。最近は読書スピードも落ちてきている。反省反省。 この小説で学んだことは非常に多い。 夏目漱石の世界ではほとんど神のような存在である乃木大将が実は有能な大将とは言えないこと、東郷平八郎の厳然たる存在、秋山兄弟という、類まれなる才能と精神を持った兄弟の存在な...
やっと読み終わった。最近は読書スピードも落ちてきている。反省反省。 この小説で学んだことは非常に多い。 夏目漱石の世界ではほとんど神のような存在である乃木大将が実は有能な大将とは言えないこと、東郷平八郎の厳然たる存在、秋山兄弟という、類まれなる才能と精神を持った兄弟の存在などなど・・・。 語れば語りつくせないほどだけれども、この小説が小説である限り、それはあくまでフィクションの要素を多分に含んだものである。 ただ、この時代の日本がとてつもなく危うく、それでいてワクワクする存在だったことは間違いないだろう。 国家自体が夢を持つ、国家と国民の夢が共通である、そんな時代の高揚感、そしてその時代に本気で国を守り、国を発展させようとした人々の息遣いは多少脚色がされていようと事実であろう。 今の時代に欠けているのは民度である。誰かがやってくれるわけがない。僕らがやるしかないのである。日露戦争のようなギャンブルを超えてこの国家が存在し続けてるのだから、どっかり座れるような土台などないのである。 変人でも何でもいい。歴史に名を刻もうぜboys!
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日露戦争終盤における日本海海戦が生々しく描かれており、海戦における連合艦隊とバルチック艦隊の組織力の差が鮮明にあぶりだされている。巻の終盤では日露戦争の閉じ方が端的に述べられている。また、あとがきと解説により物語の読解に深みを加えられた。1巻から8巻までを通して読むことで、明治の開国時期における日本の姿を垣間見ることが出来、そこから現在、我々が何を出来るのかを考えさせられる文学である。
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ついに読み終わってしまった。全てはこの文章に表現されていると思います。 ”そのような時代人の体質で、前をのみ見つめながらあるく。のぼってゆく坂の上の青い天にもし一朶の白い雲がかがやいているとすれば、それのみをみつめて坂をのぼってゆくであろう。”
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オトナとして一応よんでおくべきと思い読み始めた作品。 戦争ものをオモシロイと、言うのは非常に気が引けるけれど、 知的興味としてとっても面白かった! 近代史ってなんか、ものすごーくとっつきにくくて、 歴史の授業でも苦痛なことが多かったけれど、 この本は人物に焦点をあてて世界的な流れ...
オトナとして一応よんでおくべきと思い読み始めた作品。 戦争ものをオモシロイと、言うのは非常に気が引けるけれど、 知的興味としてとっても面白かった! 近代史ってなんか、ものすごーくとっつきにくくて、 歴史の授業でも苦痛なことが多かったけれど、 この本は人物に焦点をあてて世界的な流れや、日本のおける状況が書かれているので、とってもわかりやすい! 1巻2巻は辛かったけれど、中盤からは一気に読んだ感じ。 太平洋戦争や昭和にかけての日本を形成したもの、その後の日本についても考えさせられる作品。 みんな読むべし。
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「敵艦見ユトノ警報ニ接シ,連合艦隊ハ直ニ出動,之ヲ撃滅セントス」「本日天気晴朗ナレドモ浪高シ」 「神明はただ平素の鍛錬に力め戦はずしてすでに勝てる者に勝利の栄冠を授くると同時に,一勝に満足して治平に安んずる者よりただちにこれをうばふ。古人曰く,勝って兜の緒を締めよ,と」 これだけ細密に,日露戦争における日本の人々,軍の力,ロシアのそれら,世界情勢等を,挙げ,分析しながら,多くの人に読ませる本は他に存在し得ないのではないだろうか。司馬遼太郎の執念に脱帽の☆5つ。 日露戦争の勝利が日本にもたらした暗い影について司馬遼太郎は,何度も言及する。この司馬良太郎の問いかけは,しかし,今を生きる人間に対する問いかけにつながる。自分達の国力を客観的に把握し,ロシアに挑んだ日本と,大東亜戦争に突入した日本とは連続しており,更に,その日本は現在に続いている。戦前と,戦後を全く別物と考えがちであるが,たとえ日本人の意識が戦争を機に変わったとしても,戦前の日本人と戦後の日本人は連続しており,歴史上の要素は,脈々と現代へと受継がれている。そうだとすれば,日露戦争の失敗,成功を現代にも当てはまらないか検証することで得られるものは,大きいとおもわれる。 「『東郷は若いころから運のついた男ですから』 というのは,山本権兵衛が明治帝に対し,東郷を艦隊の総帥に選んだ理由としてのべた言葉だが,名将ということの絶対の理由は,才能や統率能力以上に彼が敵よりも幸運に恵まれるということであった。悲運の名称というのは論理的にありえない表現であり,名将はかならず幸運であらねばならなかった。」 「純粋に東郷とこの海域で智と勇と誠実さのかぎりをつくして戦いの功績を描ききろうという考えはかれにはなかった。もしかれがその覚悟を決め,この海域を正念場として資力を尽くしてたたかえば,互いにその麾下の諸艦を沈めあいつつも残艦がウラジオストックに入れたかもしれなかった。 むろん,かれは, -何隻かはウラジオストックへ辿りつける。 とおもってはいた。しかしかれのとらわれは,その遁入成功の何隻かのなかにかれ自身が乗っていなければならないと思っていたことであった。そのとらわれが,かれの戦術思考をして尖鋭さを欠かしめ,かれの決断をして鈍重たらしめた。」 このような,ロジェトウィンスキーに対し,東郷は自分が死んでも,戦に勝つ腹積もりだった。結局この大将の違いが,勝負を分けた面がある。しかし,精神論だけに頼ることは危険であり,バランスが難しい。司馬遼太郎が,読者が誤解しないよう注意して書いているのが伝わる。 「・・・この海戦は,敵味方の各艦の性能や,各兵員の能力や士気より,日本側の頭脳がロシア側を圧倒したという方が正確であろう。 ちなみにこの場合の『頭脳』とは,当然ながら天性のそれを指していない。考え方というほどの意味である。」 「『最初の三十分間だった。それで大局がきまった』・・・『ペリー来航後五十余年,国費を海軍建設に投じ,営々として兵を養ってきたのはこの三十分間のためにあった』」 「『剣にかぎらず物事には万策尽きて窮地に追いこまれることがある,そのときは瞬息に積極的行動に出よ,無茶でもなんでもいい,捨て身の行動に出るのである,これがわが流儀の極意である』」 「敗戦が国民に理性をあたえ,勝利が国民を狂気にするとすれば,長い民族の歴史からみれば,戦争の勝敗などというものはまことにふかしぎなものである。」 論功行賞のために,価値論のまったくない官修戦史。
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