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西瓜糖の日々 の商品レビュー

4

115件のお客様レビュー

  1. 5つ

    30

  2. 4つ

    42

  3. 3つ

    22

  4. 2つ

    4

  5. 1つ

    0

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2016/10/29
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

iDEATHという土地、場所の名前からして、ぎらぎらした自分をもったひとがいない、つまり、そういうわたし(I)を失っている(DEATH)という寓意があるのかもしれない。それがいいとかわるいとかじゃなくです。悪党とされる人々が住み始める「忘れられた世界」。そして、ひとの言葉を話す人食い虎たちのいた時代。そういったひとたちや事柄などが、白と黒、光と影、表と裏のように、一様な明るさのなかでiDEATHの人びとが送る生活に立体感のようなものをもたらしているように読めました。幻想小説のなかに、現実のシビアさを寓意として、さらにはファンタジーの翼をあたえて表現したもののようにぼくには感じられました。といっても、内容にしても、文章にしても、これだっていう断定のきかない感じで、逆に言えば、だからこそ魅力的なのかなあと思いましたし、それでこそ素晴らしいんだ、というように、小説というもののとある方面の頂きを極めた作品ともいいたいくらい、惚れましたし、気に入りました。

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2016/10/13

アイデスが死の世界だという指摘を解説で柴田元幸がしていたけど、 夢の世界のような感じもある。 『海辺のカフカ』終盤の、あの世界と似ている。 単純な作りだけれど美しい、 色鮮やかだけれど静謐な物語。 しかしこういう物語を読むたびに、自分はインボイル側だしマーガレット側だなと感...

アイデスが死の世界だという指摘を解説で柴田元幸がしていたけど、 夢の世界のような感じもある。 『海辺のカフカ』終盤の、あの世界と似ている。 単純な作りだけれど美しい、 色鮮やかだけれど静謐な物語。 しかしこういう物語を読むたびに、自分はインボイル側だしマーガレット側だなと感じるのはまあまあつらい。

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2016/10/13

曜日によって色の変わる西瓜から西瓜糖を作り、プレス機を動かし、食事を作り、知っている人たちだけで、分かるものだけを持つ小さな幻想的な共同体の断片。その、物語としての現実と空想の境が曖昧でなんか良く分からない。 後世の小説家への影響やヒッピー文化に先がけて出版され、一大ブームを巻き...

曜日によって色の変わる西瓜から西瓜糖を作り、プレス機を動かし、食事を作り、知っている人たちだけで、分かるものだけを持つ小さな幻想的な共同体の断片。その、物語としての現実と空想の境が曖昧でなんか良く分からない。 後世の小説家への影響やヒッピー文化に先がけて出版され、一大ブームを巻き起こしたという事実を踏まえて読むようなものなのかなと思う。 「アイデス」「黒色の、無音の西瓜」「きれいな声の虎たち」など、ハッとする響きで、人によって想起するイメージが違うであろうモチーフを散りばめていることが印象的。

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2016/06/30

幻想的な世界観と詩的な文章がとても心地よかった。西瓜糖でできた不思議な世界。理想的に見えて理想ではない世界なのだが、私は気に入りました。なかでも、狐火と共にガラスの柩に入れて川に沈めるという西瓜糖世界式のお墓が特に気に入った。夜にはその火が川底でぼんやり光って見えるというのが美し...

幻想的な世界観と詩的な文章がとても心地よかった。西瓜糖でできた不思議な世界。理想的に見えて理想ではない世界なのだが、私は気に入りました。なかでも、狐火と共にガラスの柩に入れて川に沈めるという西瓜糖世界式のお墓が特に気に入った。夜にはその火が川底でぼんやり光って見えるというのが美しく、お墓なのに暖かみがあって良い。自分がこの世界の住人だったら夜の散歩が趣味になるだろうな。 穏やか過ぎると言ってもいいくらい穏やかな人々の住むその世界はとても平和そうだが、その平和は〈忘られた世界〉に象徴されるようにたくさんの忘却の上に成り立っているように見える。彼らの世界には本がなく、いまや自分たちの世界の成り立ちすら誰も知らない。無知こそが平穏の唯一の方法だと感じることも私はあるが、それを余計なことを知らないと言うべきか真に大切なことを知らないと言うべきかはとても決めかねる。無知と人々の均一性が全体の平和をもたらすというのは確かにそのように思えるが、それは真の平和なのか、他の方法はないのか……。 とまあ他にも示唆的な内容をたくさん含んでいるのだが、直の感想としてはとにかく全体の薄甘く生温かい詩的な雰囲気にほろ酔いの心地でした。

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2015/03/02
  • ネタバレ

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私のブローティガン、はこの路線です。で、これが限界。 ”リアリズムばかりじゃ物足らないけど、シュールレアリズムや実験小説の類いはちょっとねー”っていう辺りの微妙なお好みのムキにはオススメです。 オースターの「最後のものたちの国で」を思い出さないでもない。

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2014/11/21
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

[ 内容 ] コミューン的な場所、アイデス“iDeath”と“忘れられた世界”、そして私たちとおんなじ言葉を話すことができる虎たち。 西瓜糖の甘くて残酷な世界が夢見る幸福とは何だろうか…。 澄明で静かな西瓜糖世界の人々の平和・愛・暴力・流血を描き、現代社会をあざやかに映して若者たちを熱狂させた詩的幻想小説。 ブローティガンの代表作。 [ 目次 ] [ 問題提起 ] [ 結論 ] [ コメント ] [ 読了した日 ]

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2016/01/19

初めにこれから書くべきことを箇条書きで話しかけてくれる。ほとんど趣味の悪い悪夢みたいな回想録だけど、西瓜糖という言葉の響きだけで透き通った印象になってずるい。こわかった

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2014/10/05

ブローティガン「西瓜糖の日々」読んだ http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309462301/ …こんな作家だったのか。有名な釣りとか著者写真とかから開高健やヘミングウェイみたいなマッチョな現場主義かと勝手に思いこんでいたら散文詩の幻想世界だっ...

ブローティガン「西瓜糖の日々」読んだ http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309462301/ …こんな作家だったのか。有名な釣りとか著者写真とかから開高健やヘミングウェイみたいなマッチョな現場主義かと勝手に思いこんでいたら散文詩の幻想世界だった。甘い暴力の世界。寓話かと深読みしたくなる(つづく 死の世界と隣り合わせの村は糖で出来ていて、勉強を教えてくれる優しい虎は自分の目前で両親を喰い殺す。ふわふわと実体を伴わない登場人物。暴力、排他性、甘美な幻想世界というとボリスヴィアンみたいだけど、なんだろうやっぱり開拓アメリカの粗暴さや集団からの孤立への不安があるな(おわり

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2014/05/07
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

古本屋にて。 アイデス(iDEATH)という場所と、決まった名前を持たない語り手の「わたし」。理解は出来なかったけど、言葉にできない何かを感じた。 身体を切り落とすことによる自死、名前を持たないことによる自(我の)死。うーん、まだよく分からない。

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2014/03/11

何を差し置いてもまずはその、美しい文体と翻訳について語らずにはいられない。はらはらと今にも壊れてしまいそうな、しかしすべてを包み込むような両義的な世界が広がっている。それはとても心地いい。iDEATH=わた死、つまり心のどこかが漂白された場所に集う人たちは過剰なもの全てを「忘れら...

何を差し置いてもまずはその、美しい文体と翻訳について語らずにはいられない。はらはらと今にも壊れてしまいそうな、しかしすべてを包み込むような両義的な世界が広がっている。それはとても心地いい。iDEATH=わた死、つまり心のどこかが漂白された場所に集う人たちは過剰なもの全てを「忘れられた世界」に置き去りにしているから愛も悲しみも、血液とセックスの匂いもぱちんとはじけ飛んでしまっている。異物としてのinBOILの熱は遺物として捨てられてしまうけど、自分は焦げど尽きぬその過剰さに、最後まで留まり続けていたいんだ。

Posted byブクログ