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犬婿入り の商品レビュー

3.4

66件のお客様レビュー

  1. 5つ

    7

  2. 4つ

    23

  3. 3つ

    20

  4. 2つ

    5

  5. 1つ

    4

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2023/03/26

この作家の特徴でしょうか? 文章がとても長い。1つの文章にたくさんの情報が入っている。 「ペルソナ」も芥川賞の「犬婿入り」も間なのか溝なのかを書いてあるんだな?と思いました。 「ペルソナ」の最後にどちらでもない自分になった道子はその後どんな人生を送ったんだろうか? 「犬婿入り」は...

この作家の特徴でしょうか? 文章がとても長い。1つの文章にたくさんの情報が入っている。 「ペルソナ」も芥川賞の「犬婿入り」も間なのか溝なのかを書いてあるんだな?と思いました。 「ペルソナ」の最後にどちらでもない自分になった道子はその後どんな人生を送ったんだろうか? 「犬婿入り」は本人たちとその周りの人たちのギャップが面白かったです。

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2022/01/01
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

2編収録。 ・ペルソナ ドイツに姉弟で同居する道子。二人はそれぞれ留学中の身である。ドイツ中世文学をやる弟、道子はドイツ現代文学を研究中だが、成果なく、奨学金を得られなくなり細々したバイトに明け暮れている。 自分に向けられる差別、自分以外の外国人に向けられる差別、日本人の奥さんたちと弟が持つ差別感情。道子は常にそれらを感じながら生きている。 作者の体験から出てきた作品なのだろう。肌感覚の嫌な感じがうまく文章から伝わりゾクゾクする。 ・犬婿入り 面白すぎる。だが笑って済まされるものではない不穏な物語だ。民話にありがちなエロさ、不潔さ、理不尽さをきちんと備えた、しかしちゃんと現代の話である。なんのメタファーか寓意かわかりそうでわからない。作者の只者ではない力量に感服するほかない。

Posted byブクログ

2021/09/28
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

 献灯使以来の多和田葉子の小説。Kindleでセールされてたのと去年読んだエッセイがめちゃくちゃおもしろかったので今年積極的に読みたい作家。まずはこの芥川賞受賞作から読んでみた。当人がドイツに住んでいることもあるかと思うけど、規格外、小説界のメジャーリーガーという風格を感じた。芥川賞を受賞したのはタイトル作。切れ目のない長い文が産むうねうねとうねっていくリズムがオモシロかった。そのリズムと現代版にアップデートした民話という組み合わせの相性も良い。  芥川賞にどうしても気をとられるが、本著に収められているもう1つの「ペルソナ」という作品がめちゃくちゃオモシロかった。90年代にリリースされているので当時の話をモチーフにしていると思うのだけど今読んでもかなり興味深かった。人種差別がテーマになっていて大きく言えばドイツで生きる日本人の意識のありようの話。十把一絡げに「ドイツ在住日本人」と言っても考え方はさまざまで、そのギャップに苦しむ主人公の話がとてもナマナマしかった。エンタメの要素を強めてドラマティックにし過ぎることなく、ただそこにある風景として描いているところがストイックでかっこいい。文章がとても乾いているとでも言えばいいのか。ここが日本人離れしたメジャーリーガー感だと思う。自分も含め終盤にかけて、たたみかけるようなウェットさ(それは涙だろう)をありがたがる風潮がある中でこのストロングスタイルよ。個人的に一番うまいなと思ったのは変圧器の話。当時日本の家電を使う際には変圧器で電圧を変化させる必要があった。その電圧を変化させることが環境の変化、自分の態度の変化のメタファーになっている。不安定な電圧と自分の周りの環境の危うさ。まだまだ読んでない作品があるので楽しみたい。

Posted byブクログ

2020/10/28

表題作のつもりで読み進めていってたら全然違う作品で焦った。 さて、解説にもあるとおり、二作品を収めたこの『犬婿入り』は「溝」がキーワードになっている。つまり境界線のことだ。 「ペルソナ」では信頼の置ける弟の和男でさえ、主人公・道子とは合同な意見を持っているわけではない。 特に...

表題作のつもりで読み進めていってたら全然違う作品で焦った。 さて、解説にもあるとおり、二作品を収めたこの『犬婿入り』は「溝」がキーワードになっている。つまり境界線のことだ。 「ペルソナ」では信頼の置ける弟の和男でさえ、主人公・道子とは合同な意見を持っているわけではない。 特に序盤は、意識的にさまざまな国の名前が登場する。母語である日本語が、だんだんと自分の体から解離していく。日本人らしさや、外国人らしさ、といったステレオタイプには軽微な齟齬がある。同じくらい執拗に、肉の厚みについて述べられる。それもその一点が明白に羞悪な瑕瑾であるかのように。また、「ニガイ」は一貫してカタカナで表記されていた。途中わずかに登場する黒人の話と何か関係があるのだろうか。 表題作の「犬婿入り」。安部公房の作品群に似た雰囲気が離れない。水平線が分かつ二つの世界がぐるぐると混ざり合っていく感覚。忘れた頃にやってくる「電報」の言葉。何が普通で何がそうでないのかが判らなくなってくる。三人称的な視点で読者は自分を凝視する。伝染していく獣の体臭。みつこもだんだんと臭いに敏感になっていく。特に序盤は、文章が息継ぎすることなく進んでいく。非日常にいざなう導入催眠のようにも思える。

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2020/01/01

異種婚を扱った犬婿入りと、ドイツでの留学生活を描いた「ペルソナ」。個人的体験からペルソナの異文化の中での疎外感、隔絶感、差別意識の描き方が好き。同胞アジア人へのちょっとした見下し感(差別とは少し違う)、自分もドイツ人からみたらアジア人であることの劣等感、裏返しのドイツ人への反発。...

異種婚を扱った犬婿入りと、ドイツでの留学生活を描いた「ペルソナ」。個人的体験からペルソナの異文化の中での疎外感、隔絶感、差別意識の描き方が好き。同胞アジア人へのちょっとした見下し感(差別とは少し違う)、自分もドイツ人からみたらアジア人であることの劣等感、裏返しのドイツ人への反発。 犬婿入りのほうは、文章が好き。映像が流れる様に入ってくる感じで。

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2019/11/17

これが多和田葉子の世界、という短編2編。 純文学はその作家の個性がわかると、あるいは立ち上がってくるものがわかるとなかなか面白いものです。芥川賞の「犬婿入り」の雰囲気もそうですが「ペルソナ」の方はその入り口という感じでしたから、より理解しやすかったですね。 「ペルソナ」は作...

これが多和田葉子の世界、という短編2編。 純文学はその作家の個性がわかると、あるいは立ち上がってくるものがわかるとなかなか面白いものです。芥川賞の「犬婿入り」の雰囲気もそうですが「ペルソナ」の方はその入り口という感じでしたから、より理解しやすかったですね。 「ペルソナ」は作者の分身のような道子さんの、ドイツ留学における生活のもろもろの遭遇と心模様を描いています。移民を認めているドイツには様々人種が集まっている。わたしたちがヨーロッパの人種を判別しがたいように、自分たち日本人や韓国人、中国人を東アジア人としてまとめられる経験をする。違和感や嫌悪感を感じる人(道子さんの弟)もあるが、道子さんは平気だ。しかし自分が「何者か?」ということにはとてもこだわる。しかし、その個性を究めるともう日本人と見られなくなるという皮肉な結果になりました。 人種のパッチワークの中にいるからこそ、それがわかったのか。「犬婿入り」では日本の中の出来事です。ごく普通の町に変わった行動をする女性が塾を開いている。親は眉を顰めるが、子供には人気です。北村みつ子先生だから「キタナラ塾」のあだ名がついたのか。いえ、きたならしいとえっちなことがとめどもなく子供を引き付けるからです。で、尋常じゃないと思われる次第がいろいろと起こってくるのですが、異質なものの存在を認めるのには、普通の町ではもう見て見ぬフリが出来なくなり、受け止められなくなるのです。 すなわち異質なものと折り合いをつけて生きていくのが簡単なのか、大変な困難を伴い、身を削るような思いをするのか。それでも何とかしなければなりません、地球は狭くなったので。

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2019/09/30

春樹の次(寧ろ春樹以上⁉)に、ノーベル賞に近いとされる作家に初挑戦。話題の”献灯使”からとも思ったけど、とりあえず芥川賞作品から。中編2作を収録していて、表題作は後半なんだけど、なんせ前半が辛かった。『~った』がひたすら多用される文章の意図も何となくは分かるし、人種問題も理解はで...

春樹の次(寧ろ春樹以上⁉)に、ノーベル賞に近いとされる作家に初挑戦。話題の”献灯使”からとも思ったけど、とりあえず芥川賞作品から。中編2作を収録していて、表題作は後半なんだけど、なんせ前半が辛かった。『~った』がひたすら多用される文章の意図も何となくは分かるし、人種問題も理解はできるんだけど、物語としての魅力が…。表題作も、唐突に犬婿が入ってきたり出ていったりで、実際問題良くは分からんのだけど、何となくおかしみはあってまだ良かった。

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2019/09/24

「犬婿入り」(多和田葉子)を読んだ。 「ペルソナ」「犬婿入り」の二編。 前回これを読んだのはもう四年くらい前で、日常生活に潜む緊張感とか不条理性とかそういった多和田葉子の世界にすっごく感激した記憶があり今回もやっぱりすっごく感激したけれど、と同時にリラックスして笑える自分がいた。

Posted byブクログ

2019/05/27

多和田葉子の中編集。表題の「犬婿入り」と「ペルソナ」の2作品が収録。 以前に読んだ「献灯使」が心に残ったので、芥川賞受賞作品である本書を手に取ってみた。 「犬婿入り」は芥川賞受賞作。39歳の学習塾を開いている女性を中心とした不思議な物語。 「ペルソナ」はドイツに留学している姉弟...

多和田葉子の中編集。表題の「犬婿入り」と「ペルソナ」の2作品が収録。 以前に読んだ「献灯使」が心に残ったので、芥川賞受賞作品である本書を手に取ってみた。 「犬婿入り」は芥川賞受賞作。39歳の学習塾を開いている女性を中心とした不思議な物語。 「ペルソナ」はドイツに留学している姉弟の話。姉の視点から日々の生活が描かれ、外国で日本人として暮らす姉の心情風景が描き出される。 「犬婿入り」は、芥川賞受賞作らしく、非常に難解であった。実際に犬が婿にくるような話なのであるが、それがエロティックというか、気持ち悪いというか、心にざわざわ感が残るというか、何とも読後の印象の不思議な物語だった。 「ペルソナ」も理解するのが、非常に難しかった。移民の多いドイツであるが、日本人や韓国人などの「東アジア人」はドイツ人や他の移民達から何となく差別を受けている。例えば、「東アジア人は表情がなく、本当の気持ちを顔に出すことは無い」などといった、差別とは言えないほどの些細なものだ。 おおっぴらに差別はされないが、誰もが心の中に壁を作り、それぞれの人たちが持つ「東アジア人」に対するステレオタイプを押しつける、あるいはそのように接してくる。 この微妙な空気のなかで息が詰まりそうになりながら主人公である道子の心情を、独特な筆力で筆者は描き出す。この心情は道子と同じくドイツで暮らす筆者の心情にも通じているのだろう。

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2019/03/18

多和田葉子氏の、芥川賞受賞作。この著者のことは知らず、初めて読んでみた。芥川賞受賞作によくある、なんとも不思議な小説だった。著者は、芥川賞だけでなく、今まで数々の文学賞を受賞しているようだ。 2作の短編小説が入っている。1つめは「ペルソナ」という題で、ドイツに留学中の姉弟の姉の一...

多和田葉子氏の、芥川賞受賞作。この著者のことは知らず、初めて読んでみた。芥川賞受賞作によくある、なんとも不思議な小説だった。著者は、芥川賞だけでなく、今まで数々の文学賞を受賞しているようだ。 2作の短編小説が入っている。1つめは「ペルソナ」という題で、ドイツに留学中の姉弟の姉の一人称の視点で描かれる。外国で外国人としての暮らし、現地日本人との話、自分のアイデンティティ、など。2本目は、中年独身で、傾きかけた古民家に住み自宅で小学生の塾をしている女性が、犬のような男性と暮らす話。犬婿という民話は私は聞いたことが無かったが、普通の人間の女性が、犬と結婚するというような話のようだ。この女性宅に転がり込んでくる男性は、ちょっと変わっているので、塾に子供を通わせる親の間でも話題になっていた。実は以前、その母親の一人の夫だったそうで。 この不思議な小説は何を伝えたいのだろう?不協和音的な心もとなさが、面白いと言えば面白いが、奥が深すぎるのか、響いてこなかった。

Posted byブクログ