犬婿入り の商品レビュー
共同体というひとつの…
共同体というひとつのカテゴリーにおける、異物というものを徹底的に排除する傾向が鮮明に描かれている「犬婿入り」。言語を切り離した世界を描き、独特の雰囲気を感じさせる「ペルソナ」収録。時として言葉は、勝手に一人歩きをする。時として言葉は、何の役にも立たない。強い意志を持っているかと思...
共同体というひとつのカテゴリーにおける、異物というものを徹底的に排除する傾向が鮮明に描かれている「犬婿入り」。言語を切り離した世界を描き、独特の雰囲気を感じさせる「ペルソナ」収録。時として言葉は、勝手に一人歩きをする。時として言葉は、何の役にも立たない。強い意志を持っているかと思いきや、全く無力な存在でもあるのだ。そんなことを痛感させられる一冊。
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芥川賞受賞作。民話を…
芥川賞受賞作。民話を取り入れた作品でユーモアもあって面白いです。『ペルソナ』も併録。
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学習塾の中年女講師が…
学習塾の中年女講師が主人公のちょっと変わった作品
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変です。変な話です。…
変です。変な話です。正体不明なものを食べたような、妙な読後感。 日常を書いてる話なのに、なんだかズレがあるのです。 登場人物は感情移入を意図的に拒んでいるのかも。わざと客観的描写をして、はなれたところに物語をぽんと放っておいて、入り込まれるのを嫌がっているような、そんな感じです。
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芥川賞を受賞した表題作のほかに、もうひとつ『ペルソナ』が収録されています。 どちらの作品にも、ふわふわとした浮遊感を覚えました。 『ペルソナ』は、ドイツに留学している日本人の女性が主人公です。 著者ご自身もドイツに住んでおられるので、その経験がもとになっているのかもしれません。...
芥川賞を受賞した表題作のほかに、もうひとつ『ペルソナ』が収録されています。 どちらの作品にも、ふわふわとした浮遊感を覚えました。 『ペルソナ』は、ドイツに留学している日本人の女性が主人公です。 著者ご自身もドイツに住んでおられるので、その経験がもとになっているのかもしれません。 主人公は学業の傍ら、日本人の子供の家庭教師をしたり、ドイツのご婦人に日本語を教えたりして生計を立てています。 異国で暮らす主人公は、自分が東アジア人として一括りにされていることや、西洋人が抱いている東アジア人に対する偏見などに気づかされ、異文化の中で生きることの心もとなさも相まって、次第に自我を保つことが難しくなっていきます。 また彼女は外国で暮らすうちに、本当に思っていることを言おうとすると、日本語が下手になってしまうとも感じるようになっています。母国を離れドイツ語で生活するようになった主人公にとって、日本語もまた他国の言葉になってしまったのでしょう。彼女は自らをドイツ人でもなく、日本人でもなく、東アジア人という宙ぶらりんな存在であると認識するようになってしまったのかもしれません。 物語の最後に彼女は、家庭教師をしている家の壁に掛けられてあった能面を勝手に持ち出し、それを着けて町中を歩き出します。主人公は無意識に日本文化の象徴でもある能面を着けることで人格(ペルソナ)を護ろうとしたのでしょうが、かえってそのことが彼女をなに者でもない存在にしてしまいます。 その能面がスペインで作られた土産物であったことも、この物語の本質を象徴しているのではないかと思われます。 『犬婿入り』は、古くから各地に存在する犬婿伝説や、それに類する物語がベースになっているようです。 舞台は東京郊外の住宅地。主人公は、そこで小学生を対象にした塾を営む、ちょっと変なアラフォー女性です。彼女は、この町に最近移り住んできたよそ者です。 塾に通う子供たちは、先生のちょっとおかしな習慣や、先生が語った風変わりな物語を家へ持ち帰り、親たちに話して聞かせます。親たちは子供の話を耳にして、そこに不穏な匂いを嗅ぎ取るのですが、自分たちに都合の悪いものはなかったことにするか、あるいは自分たちの都合に合わせて解釈するかして、気にはなりながらも受け流すようにしています。新興住宅地に暮らす人たちの間で、無意識に共同体を護ろうとする力が働いていたのかもしれません。 ある日その塾に見知らぬ男が転がり込んできて、主人公と一緒に暮らしはじめます。彼女はなぜか、その正体不明の男を拒むでもなく、なんとなく受け入れてしまいます。この男の登場によって、それまで変に思えた主人公が、むしろ普通に思えてしまうのですが、よくよく考えると、やっぱりみんな変な人たちです。 このお話には、終始おかしなことばかり描かれています。なのに登場人物たちは、どこかしら違和感を抱きつつも、それらのことを普通に受け入れ、日常を生きています。そのあたりが興味深くもあり、また怖いところでもあります。 『ペルソナ』『犬婿入り』いずれの作品とも、登場人物の内面を直接的、説明的な言葉で表現することを極力避け、状景を描写することで、その働きを担おうとしているように思えます。もしかするとそのことが、読書中の浮遊感に繋がっているのかもしれません。あるいはまた、自分も主人公たちと同様、宙ぶらりんの存在だからかもしれないです。 https://note.com/b_arlequin
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日本語表現として普通じゃないことは分かる。あと,「ペルソナ」は三人称小説であることに加えて,視点が動くのでその点も斬新かもしれない。 ドイツで博士号取れるくらいのドイツ語力とネイティブ日本語を,どちらにも寄せずにぶつけるとこういう風になるのか。著者が言語に自覚的であることは伝わっ...
日本語表現として普通じゃないことは分かる。あと,「ペルソナ」は三人称小説であることに加えて,視点が動くのでその点も斬新かもしれない。 ドイツで博士号取れるくらいのドイツ語力とネイティブ日本語を,どちらにも寄せずにぶつけるとこういう風になるのか。著者が言語に自覚的であることは伝わってくる。 話としては正直よく分からない。やっぱり純文学は難しい。
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『ペルソナ』では、複数の国を行き来する浮遊感を味わうことができた。『犬婿入り』では、民話が日常へ侵入するさまが、これほどあっさりと描かれるのかと驚いた。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
プロ向けの小説という印象の作品。 視点は面白いし、価値観を揺さぶってくる感じも悪くないが、読み終わった後の満足感はあまりない。 読んでも読まなくてもよかったなという感じ。 ペルソナ ペルソナとは能面のことらしい。 人種や国民性についてステレオタイプな価値観を持つ人々がたくさん登場する。日本人は能面のように表情がなく感情が読めないと言われる。 道子が混乱して街を歩き回るところはカフカを想起させた。 犬婿入り 犬がお姫様の尻をなめるという「犬婿入り」という民話は本当にあるのかどうか。その話をした北村みつこの家に、何やら犬っぽい太郎という男が住み着いて犬っぽいことをする。
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芥川賞受賞作『犬婿入り』と芥川賞候補作「ペルソナ」の2篇。 「ペルソナ」の方が個人的には好きです。作者が体験したかもしれない様々な出来事・観点みたいなものが出てくるのだけど、ドイツから見たアジアというくくりだったり、そのアジアの中でも日本が他のアジアの国々の人をどう思っているかだ...
芥川賞受賞作『犬婿入り』と芥川賞候補作「ペルソナ」の2篇。 「ペルソナ」の方が個人的には好きです。作者が体験したかもしれない様々な出来事・観点みたいなものが出てくるのだけど、ドイツから見たアジアというくくりだったり、そのアジアの中でも日本が他のアジアの国々の人をどう思っているかだったり。同じアジア、もっと広く見れば同じ人間であるのに境界があるかのような(いわゆる差別的なもの)お話が興味深かった。最後は主人公が仮面(ペルソナ?)をかぶり街を練り歩くときドイツの誰も彼もが主人公を日本人として捉えなかったというのは分かりやすいオチっぽく感じるけど、好き。
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『ペルソナ(能面)』 ドイツに住む日本人である姉弟の物語。日本人である主人公は、東アジア人と一括りにされ、ドイツ人に偏見の目で見られる。いくら活躍しても日本人というだけで、婉曲的にであるが、侮蔑的な屈辱を味わったイチロー選手やダルビッシュ選手を思い出す。主人公は他者が日本人に期待...
『ペルソナ(能面)』 ドイツに住む日本人である姉弟の物語。日本人である主人公は、東アジア人と一括りにされ、ドイツ人に偏見の目で見られる。いくら活躍しても日本人というだけで、婉曲的にであるが、侮蔑的な屈辱を味わったイチロー選手やダルビッシュ選手を思い出す。主人公は他者が日本人に期待する能面を被って街へ出る。その時やっと自分自身が自由な感覚を取り戻す。強い言葉を持った一人の人間として。 『犬婿入り』 「異類婚姻譚」(人間以外の存在と 人間とが結婚する説話の総称)をベースに書かれている。ありえない話なのに、あれ?これ、もしかしたら犬が入ってる人間?それが信じられないくらいリアリティをもって物語が進んでいく。おもしろい! 人間と動物、清潔なものと汚らしいもの、現実ち非現実、昼と夜、整頓と混沌を行き来していく。 でも、一読しただけでは作者のメッセージが読み取れない。
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