商品詳細
| 内容紹介 | |
|---|---|
| 販売会社/発売会社 | 新潮社 |
| 発売年月日 | 1985/05/01 |
| JAN | 9784101162133 |
- 書籍
- 文庫
天北原野(下)
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天北原野(下)
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商品レビュー
4.2
18件のお客様レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
大正〜昭和初期にわたる激動の時代に生きる人たちの物語です。 誰が悪いとか悪くないとか、加害者、被害者と単純に分けることのできない、とても入り組んだ物語だと感じました。皆が罪の十字架を背負って生きています。ここまで複雑に絡み合った人間関係は、三浦文学でもそうそうないのではないでしょうか。 貴乃や孝介、完治、あき子…性格はそれぞれ違いますが、皆がどこか自分勝手で他人よりも自分を優先しており、頑固で思いやりに欠けています。聖人君子ではない、人間らしいといえば人間らしい登場人物たちです。 個人的に一番苦手なのが孝介です。孝介と完治は善と悪の様な存在ですが、根底は同じに感じます。むしろ孝介の方が完治のようなわかりやすいあくどさがなく、表面は善人面しているだけに、なおタチが悪いと言えるかもしれません。 様々な事情があるにしても、孝介の振る舞いひとつで貴乃もあき子も全く違う人生を生きることができたと思います。特に自分個人の感情のためにあき子を巻き込むという行為は非常に無責任で私は憤りすら感じました。お前は人の人生を何だと思っているのだ、と言ってやりたいくらいです。 貴乃は大人しく忍耐強いですが、反面とても頑固な性格です。貴乃を見ていると他者に対する誠実さとは何なのか考えさせられます。ある意味この人が一番物語をややこしくしているのでは?とも感じました。 孝介と貴乃の〝純愛〟の一番の被害者、あき子はただただ可哀想で…。 本人は明るくて気立ての良い女性なのに、どうしてこのような不条理な人生になってしまったのか。完治の罪も、孝介の罪も貴乃の罪も全て押しつけられて死んでしまったように思えて、作中で一番同情しました。 不倫はもちろん褒められたものではありませんが、孝介以外の男性と結婚していたら良き妻、良き母として幸せに暮らしていけたように思えます。 完治は言わずもがな。この物語の元凶とも言える人物でこの人を褒める人はいないでしょうが、私は不思議と憎めません。気持ちと行動が一致しない登場人物の多い中、完治は自分の欲求と行動が常に一致している、ある意味自分には誠実で正直な人間です。これで他者への思いやりさえあれば最高だったのですが。 最後になりましたが樺太での暮らしの細かい描写はさすがです。物語にリアリティを与えています。
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人間は生きる上で必ず罪をおかす。人間の原罪。これにより他人から苦しめられる人生。つらくても生きなければならない意味とは? 答えは神のみぞ知るところで人間には計り知れないものなのでしょう。
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貴乃はひたすらに耐え続けた。人間だから耐えなければならないと。しかしひたすらに耐え続けた貴乃は幸せだっただろうか? 完治と結婚した時から貴乃の心は凍てついてしまったように見えた。自分の心を凍らせなければ、耐え抜くことはできなかっただろう。 辛いことを耐えずに礼文島へ帰った女性は幸せに暮らしているという描写がある。 耐え抜くことが必ずしも正義ではなく、辛ければ逃げてもいいと言うメッセージだろうか? 天真爛漫なあき子はお金だけでは生きていけなかった。優しい夫がいるにも関わらずに。 あき子は貴乃と孝介の関係を知らなければ死ななかっただろうか? 知らなくともいつかは孝介の前から姿を消していたように思う。 どれだけお金があり、生活になんの不足も無く、夫から大切にされても愛がなければ寂しく不倫に走ってしまう。 あき子がイワンの子を2度身ごもっても、読者も孝介もあき子を憎むことはできない。これはあき子の天性にも感じる。 孝介の「幾人産んでもいいんだよ、幾人でも育てるから」と言う言葉に深い愛を感じずにはいられなかった。 戦争を知らない世代からすると、戦争が終わって国民は喜んでいたのかと思っていたが 終戦後の虚無が稚内にいる貴乃からひしひしと伝わってきた。 地上戦があったのは沖縄とよく言われるが、樺太でも地上戦があり、樺太から引き揚げを余儀なくされた人々が多くいることを忘れないで欲しい。
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