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カント 信じるための哲学 「わたし」から「世界」を考える NHKブックス1137
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カント 信じるための哲学 「わたし」から「世界」を考える NHKブックス1137

石川輝吉【著】

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カント 信じるための哲学 「わたし」から「世界」を考える NHKブックス1137

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 日本放送出版協会
発売年月日 2009/06/27
JAN 9784140911372

カント 信じるための哲学

¥220

商品レビュー

3.6

5件のお客様レビュー

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2021/09/17

イマヌエル・カントの哲学の入門書である。カントの主著である『純粋理性批判』『実践理性批判』『判断力批判』の三批判書を平易に読み解いていく。そこでは他の思想家(デカルト、ニーチェら)の思想と照らし合わせており、カントのみならず西洋哲学の潮流も理解していくことができる。 本書の特徴は...

イマヌエル・カントの哲学の入門書である。カントの主著である『純粋理性批判』『実践理性批判』『判断力批判』の三批判書を平易に読み解いていく。そこでは他の思想家(デカルト、ニーチェら)の思想と照らし合わせており、カントのみならず西洋哲学の潮流も理解していくことができる。 本書の特徴は入門書でありながら、カントの思想を概説するだけでなく、一つの問題意識に沿って論を展開している点にある。まず現代は、ひとそれぞれの主観的な感覚や考えが尊重される価値相対主義の中にあると位置付ける。これは一つの考え方を絶対的な真理として抑圧が正当化されていた時代への反省に基づくものである。 それ故に「みんな違って、それでいい」という価値相対主義は大きな進歩である。しかし、価値相対主義が普及した先には新たな問題が生じる。あらゆる物事が「みんな違って、それでいい」で済むかという問題である。善悪や優劣を定めなければならない局面があるのではないか、その場合にどうするのかという問題である。 カントは「対象というものは、客観的にあるものではなく、わたしたちの認識(主観)にとってのみあらわれている」と主張した(106ページ)。絶対的な真理は知り得ないとした点で価値相対主義の側に立つ。一方でカントは個々人の主観がバラバラであることを前提としつつ、その主観から人間に共通する普遍性を取り出そうとした。 この普遍性を取り出すカントの哲学は価値相対主義によって他者と共有できる価値観が乏しくなった現代において実践的な意義を持つと本書は位置付ける。そして絶対的な真理を振りかざすのではなく、より多くの人の納得できるような言葉を作り出す態度によって、他者と共に試され、鍛えられることが普遍性を獲得する道と主張する。 私は本書で規定した前提に基づく結論(価値相対主義の中での普遍性の獲得方法)には同意する。但し、現実の日本社会では建前の市民社会レベルでは価値相対主義を咀嚼していても、個々の集団内部では絶対的な真理の押し付けが幅を利かせている。この現実を踏まえると本書の前提は、まだまだ遠い先の話と思えてしまう。 価値相対主義の下では私の意見が他者とは別人格の意見であるということだけで尊重されるべきである。これは私の意見に普遍的な価値があろうとなかろうと、普遍性を持たせる努力をしようとしまいと変わらない。しかし、この常識が日本ではまだまだ通用しない。それは市民メディアの記事に「記事として相応しくない」云々とコメンターの基準で記事の存在価値を全否定するコメントが散見されることからも明らかである。 ここでは「私の自由であり、他人が口を挟む問題ではない」ことを確立することが先決問題となる。このような状況においても、言葉を交わすことで他者と共に普遍性を鍛えていくべきであるのか。これが本書の射程からは外れるが、本書の前提に到達していない環境にある私が感じた疑問である。 一般に哲学書や哲学の解説書には難解という印象がある。それは平易な表現を心掛けている本書でも完全には免れていない。しかし、本書は価値相対主義の中で如何にして普遍性を見出していくかという上述の問題意識で一貫している。このため、一読して頭に入らない表現があったとしても趣旨の理解は容易である。世界的なベストセラーになった哲学の入門書に『ソフィーの世界』があるが、これも「私は何者か」という問いを考えていくものであった。哲学が知識体系の学問ではなく、考える学問であることを再認識した一冊である。

Posted by ブクログ

2018/10/15

竹田青嗣のもとで哲学を学んだ研究者による、カント哲学の入門書です。 デカルトのコギトにはじまる「ひとそれぞれ」の世界の発見は、ヒュームによって徹底されるにいたりました。そのヒュームによって「独断のまどろみ」から目覚めさせられたと語るカントは、『純粋理性批判』において、「ひとそれ...

竹田青嗣のもとで哲学を学んだ研究者による、カント哲学の入門書です。 デカルトのコギトにはじまる「ひとそれぞれ」の世界の発見は、ヒュームによって徹底されるにいたりました。そのヒュームによって「独断のまどろみ」から目覚めさせられたと語るカントは、『純粋理性批判』において、「ひとそれぞれ」のうちに「普遍性」を求める独創的な哲学を構築することになったと著者は主張しています。 さらに『実践理性批判』『判断力批判』についても、著者自身の見解をまじえつつ、わかりやすいことばで解説が試みられています。 著者が、哲学のなじみのない読者にもカント哲学を理解してもらえるような、親しみやすい文章を心掛けていることは十分に読み取ることができます。本書のカント解釈は竹田のそれを継承しており、わたくし自身は不満に感じる点もあるのですが、平明なことばで西洋哲学の根本問題を語ろうとする著者の姿勢は、竹田の仕事のもっともよいところを受け継いでいるといってよいと思います。

Posted by ブクログ

2015/11/26

倫理の勉強も兼ねて。〈ひとそれぞれ〉のキーワードを用いてカントを中心とした近代哲学を現代にも通じるように解説。結局は「信じる」ことに帰結するのがなんとも不思議なような。

Posted by ブクログ

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