悲鳴 の商品レビュー
418ページが4時間程で溶けた。昭和の田舎の民度、監禁の犯人側被害者側の心理などリアリティーが凄い。
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1995年。東京で働く男のもとに、一時期住んでいた田舎の友人から電話が入る。サチが、自殺未遂をした。サチの家の前に「この骨が本物のサチだ」というメモ入りの段ボール箱が置かれたことが引き金になったのか? サチは小学五年生、11歳の時に誘拐され12年間監禁されていた同級生。時は198...
1995年。東京で働く男のもとに、一時期住んでいた田舎の友人から電話が入る。サチが、自殺未遂をした。サチの家の前に「この骨が本物のサチだ」というメモ入りの段ボール箱が置かれたことが引き金になったのか? サチは小学五年生、11歳の時に誘拐され12年間監禁されていた同級生。時は1983年に戻り、小学五年生、男三人、女二人の仲良しグループ、各視点で、サチが誘拐されるまで、誘拐後の変質者による監禁生活、23歳になって家に戻ってきてから、の話がそれぞれ語られる。もう一つ、サチより年長で、美人で、高校卒業後すぐに結婚した女が、離婚するために夜の仕事を始めるという話も。サチの家の前に置かれた骨は、その女のものだった。 小学生で誘拐監禁、男の子供を産まされるのも、かなりエグかったが、この小説で書かれている最大の悪は、その田舎の村の古い因習。祭りなどの集まりで、男が座敷で飲み食いし、女は台所でおさんどんというのは、よく描かれる田舎の姿で、いまだにそれが当たり前とされているところがあり、それに対する愚痴、相談はネットなどでも見られるが、この小説の村は、もう少しおかしい。男の宴会の場も、長男、次男という、家を引っ張っていく家長グループと、三男以下の、役に立たない男グループ、二つに区切られているのだ。この長男グループの、村の女は男の所有するもの的ふるまいが、胸糞悪く、また、役に立たないグループの酒浸り感、ヤカラ感も疎ましい。が、誰も声を上げない。「そういうもの」だと思っている。タイトルの「悲鳴」とは、虐げられることが当然とされてきたものたちの、心の叫びだった。
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閉じられた古い考えの集落で誘拐されたサチ。11年の時を経て帰って来るも、果たしてそこは本当に帰りたかった場所なのか。突然玄関に現れた段ボールの中身は一体誰なのか。長い年月が、理解できない因習が、村のマドンナの失踪が、ひとりの少女の心を歪に変えていく。 気味の悪いけど確かに存在す...
閉じられた古い考えの集落で誘拐されたサチ。11年の時を経て帰って来るも、果たしてそこは本当に帰りたかった場所なのか。突然玄関に現れた段ボールの中身は一体誰なのか。長い年月が、理解できない因習が、村のマドンナの失踪が、ひとりの少女の心を歪に変えていく。 気味の悪いけど確かに存在する(した)であろう日本の因習村、そこに棲む人々、男尊女卑に長男至上主義、都会への憧れとステレオタイプの将来像。普通以外を嫌う人々の中で、誘拐され子を孕み、帰ってきた異質な娘。解説にもあった通り、社会という集団の中で生きて行く上で逃れられない環境の悪魔
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物語は1983年から始まる。 平成へは近いものの、旧弊な家族観・地域観が色濃く残る閉鎖的な村が舞台となる。 まず、“昭和的家庭内飲み会”の描写に息苦しくなった。親族や父親の友人が集まり、女子は何歳でも給仕に回る。 子供ならお触りが愛情として許されると勘違いしている集団。それが当...
物語は1983年から始まる。 平成へは近いものの、旧弊な家族観・地域観が色濃く残る閉鎖的な村が舞台となる。 まず、“昭和的家庭内飲み会”の描写に息苦しくなった。親族や父親の友人が集まり、女子は何歳でも給仕に回る。 子供ならお触りが愛情として許されると勘違いしている集団。それが当然とされた社会。 今なお、地方によってはこの空気が残っているかもしれません。 本作では、こうした価値観の延長線上に二つの事件が描かれる。 一つは、少女が誘拐され十一年にわたり監禁されてしまう事件。 そしてもう一つは、不可解な嫁の失踪。 一見まったく別の出来事のようでいて、その根底には共通して“昭和的男尊女卑”と“共同体を優先する意識”が横たわっている。 恐ろしいのは、事件そのものより、むしろそれを黙認する空気。被害者をも追い詰める言動。 加害者がどれほどのことをしても、 「そんな悪い人じゃない」 「事情があったのだ」と擁護まで現れる。 被害者よりも加害者に近いところで、村全体が彼らを包み込む。 これはまさに、当時の日本で全国的に共有されていた価値観の暗部であり、閉鎖的な地域社会が持つ恐怖そのもの。 世界に目を向ければ、いまだに同じ構造を引きずる社会は存在する。 本作は、特殊な村の異常性を描いているようでいて、完全に〈どこにでもあった社会〉の残滓でもある。そう思うと、読後しばらくは胸がざわつく。
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形を変えての家庭内外のイジメだ。 時代が変わって、ホッとしている世代です。しかし、ただイジメはなくならない。イジメではなく犯罪ですが。
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依存症シリーズが面白すぎて、こちらも読んでみた。社会問題にフォーカスを置きつつ、結構スラスラと読めた、、!でも依存症シリーズに比べるとグロさ、胸糞さが足りないなあと感じてしまった、、、
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古い田舎の慣習や雰囲気、そこに暮らす人々の陰湿な負の面を丁寧に描写している。誘拐され搾取された女性の心理状況も幾分かソフトではあるができるだけ忠実に書こうとしている努力が見られる。気分が悪くなるのを通り越してむしろ過去の記録を読んでいるような客観的な気持ちで読める。田舎のしきたり...
古い田舎の慣習や雰囲気、そこに暮らす人々の陰湿な負の面を丁寧に描写している。誘拐され搾取された女性の心理状況も幾分かソフトではあるができるだけ忠実に書こうとしている努力が見られる。気分が悪くなるのを通り越してむしろ過去の記録を読んでいるような客観的な気持ちで読める。田舎のしきたりや市井の声に抑圧・蹂躙・搾取されてきた人々の心情が説明されている。この時代の人間じゃなくてよかったと思うと同時に、恵まれた今という環境に感謝しつつも今もある理不尽に抗って前に進んでいけば、いつか真っ暗な闇から抜け出せるんだ、という未来への希望を乗せた物語。
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この物語で悲劇を生むのは、犯罪そのものではない。犯罪を生んでいることに気づかない、気にしない社会だ。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
小学生の時に誘拐されたサチが11年ぶりに発見され監禁生活から解放された後からこの物語は始まる。ほの悲惨な状況も十分問題作だが、その後の世間から取り残されたような馬伏町でのあり方を描いて人々に問いかけているようだ。のさばる長男と媚びる女たち、家父長制度の醜さ歪みをこれでもかと描いている。
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ずっと胸糞悪かった すごく重い内容なのにスラスラ読めてしまった そしてこの時代の価値観にとても嫌悪感を抱きました 「すべてを奪いつくされたと思っていた。だが、まだ奪えるものがあったらしい。わたしはわたし本人である事実ですら、奪われようとしている。」 …こんなん耐えられんて
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