この部屋から東京タワーは永遠に見えない の商品レビュー
なんだか学歴や一流企業といったものに、並々ならぬこだわり(というか憎しみ)が感じられる本。 地名や固有名詞などが具体的なのは、読者が物語を身近に感じる装置になるとは思うのだけど、ここまで学校名、企業名まですべてが実在のものとなると、執念のようなものを感じる。 基本的に学歴はあって...
なんだか学歴や一流企業といったものに、並々ならぬこだわり(というか憎しみ)が感じられる本。 地名や固有名詞などが具体的なのは、読者が物語を身近に感じる装置になるとは思うのだけど、ここまで学校名、企業名まですべてが実在のものとなると、執念のようなものを感じる。 基本的に学歴はあってもコミュ障や毒親育ちで自己肯定感が低く、幸せじゃない人ばかりが出てくる。 早稲田法落ち慶應経済、とか、慶應経済落ちの早稲田商とか、前期の東大落ちで後期の阪大合格、だが就活に有利だからと慶應に進学、とか。 学歴に興味のある人にとってはちょっとした(同族)嫌悪もあるし、学歴にまったく興味のない人にとっては、それこそ何言ってるんだか違いがよくわからないような……。 今まで読んだことのないタイプの小説だったことは確か。これがTwitter文学なのか……。 でも、マツコ・デラックスばりの街ディスりはちょっと笑えた。
Posted by
リアリティさがすごい。 あと暗い、本当に暗い、読むとジメジメして鬱々とした気持ちになる。でもそこがいい。じっとりしているとわかっているけど読みたくなる。あと恥ずかしさ、共感性羞恥?共感して、登場人物を見下してそれがブーメランしてくる、やめられない。文学による自傷行為って感じ。 で...
リアリティさがすごい。 あと暗い、本当に暗い、読むとジメジメして鬱々とした気持ちになる。でもそこがいい。じっとりしているとわかっているけど読みたくなる。あと恥ずかしさ、共感性羞恥?共感して、登場人物を見下してそれがブーメランしてくる、やめられない。文学による自傷行為って感じ。 でも中には自分の幸せを見れていないものもある。東京にいて「人よりも」が勝ってしまい、それに拘束されて浅い呼吸しかできないような、でも田舎の土臭い空気を深く体に取り込みたくなくて、どうしようも動けない感じ。人と比べず自分軸で幸せと認められることが難しくも大切なことなのかな。
Posted by
一部で話題になっていたので積読リストにいれていました。 今の世相を表しているとまでは言わないのでしょうけれど、若い人の間ではこういう空気感なの?と少し驚きました。 バブル時と似たような、属性や学歴のブランド志向、東京コンプレックスは今も健在で、それに苦しめられている人が今も少な...
一部で話題になっていたので積読リストにいれていました。 今の世相を表しているとまでは言わないのでしょうけれど、若い人の間ではこういう空気感なの?と少し驚きました。 バブル時と似たような、属性や学歴のブランド志向、東京コンプレックスは今も健在で、それに苦しめられている人が今も少なからず存在しているんですね。。 今って、平均的に稼げればいいしガツガツ頑張りすぎるのはカッコ悪い。競争もめんどくさい。個性、多様性を大事に世界に一つだけの花を咲かせよう、みたいな風潮だと思っていたけど、それって表向きなの?もしくはごく一部? SNSが発達し情報過多な分だけ虚栄心とか承認欲求とかが肥大化し、それに伴って実際には劣等感が大きくなって、反動で鬱に。短編集だけどそんな道筋がくっきり見える作品でした。 私、港区勤務だけど、港区女子の区別はつかないなあ。。
Posted by
はじめましての麻布競馬場さんの小説! かつて神童だった多くの者たちが成功者に「なれなかった」ケーススタディ。それぞれの孤独に反射されて煌びやかな"東京"が立ち上がっていく。 誰もが、部分的にはこんなはずじゃなかった人生を送っていると仮定するなら、多くの「東京在...
はじめましての麻布競馬場さんの小説! かつて神童だった多くの者たちが成功者に「なれなかった」ケーススタディ。それぞれの孤独に反射されて煌びやかな"東京"が立ち上がっていく。 誰もが、部分的にはこんなはずじゃなかった人生を送っていると仮定するなら、多くの「東京在住経験者」と「東京へ憧れを持つ者」への慰みになるかもしれないけど、きっとR25くらいの作品ではないでしょうか。ほんとうのこと書きすぎ。向上心のある若者は偉いので(なくても偉いよ)。フィクションによるノンフィクションですね。 最後の一章は書き下ろしだそうで、これがあったから本で読んでよかったと思える面白さ。三茶あたりから筆がノンストップ。もはや筆が勝手に書いているまであるので著者に罪はないかと。 "麻布競馬場"って素敵なペンネーム。最終章を読んで、そういう意味なのかー!はアハ体験でした。 どうやらコミカライズもされている。東京カレンダーのような表紙で、「スカッと」とかが好きな層も狙っていそうな幅広作品。なんだかんだで #港区女子 っていつだって好奇の対象ですから、SNSで出回るそれのように外野から物見高くこの小説を楽しむ人もいるだろうし、それでもいいし。 みんなで死なず、死なせず生きようという先生のメッセージを、読後にもう一度読み直して噛み締めたい。 MVPの一箇所は、合コンやクラブなどを"爛れた場所"と表現しているのが最高かよ、だった。未来の辞書に載ってほしい用例です。 併せ読みしたくなったのは、 山内マリコさん『あの子は貴族』 岸政彦さんの『東京生活史』 真鍋昌平さん『闇金ウシジマくん』 岡崎京子さん『東京ガールズブラボー』 ---- 麻布競馬場さんの『令和元年の人生ゲーム』をこれから読みます。
Posted by
いわゆるタワマン文学というのだろうか。SNSでよく目にするようなキラキラとした日常を描く人たちと、それを尻目につまらない日常を送る人々の両方の気持ちを描き出された短編集。 極めて後味の悪い読後感は、いわゆるリア充を語る人たちのマウンティングと、それを目にした人が持つコンプレック...
いわゆるタワマン文学というのだろうか。SNSでよく目にするようなキラキラとした日常を描く人たちと、それを尻目につまらない日常を送る人々の両方の気持ちを描き出された短編集。 極めて後味の悪い読後感は、いわゆるリア充を語る人たちのマウンティングと、それを目にした人が持つコンプレックスが醜いまでに描かれている事だからなのか。 各編で目に付く、東大、慶応、大手商社、港区、麻布十番、白金、といった成功といわばリア充の象徴として出てくる言葉たち。そして対象的に、地方、イオン、ファミレスなどが使われている。これを読んで、他人の生き方や価値観に囚われすぎた生き方は辛いし、間違っているという事に気づく事ができるのだろうか。 小説で描かれているような世界を日常的に見ていては自己肯定感も上がりようがない。著者は、こうした他人の目線や価値観を過剰に意識した社会を、冷めた目線で書き出している。おじさんである評者からすれば、アホか、と思えるような空虚で主体性のない生き方、考え方であり、一方でそうした事で心や精神を痛める若者がいることを心配している。
Posted by
麻布競馬場さん『この部屋から東京タワーは永遠に見えない』読了しました〜! 140文字で綴る『Twitter文学』。最近はインパクトのある実話のような見出しから引き込まれ、ツリーを追ってしまうという事も少なくない。この『Twitter文学』には紙媒体に落とし込んだ時に140字で区...
麻布競馬場さん『この部屋から東京タワーは永遠に見えない』読了しました〜! 140文字で綴る『Twitter文学』。最近はインパクトのある実話のような見出しから引き込まれ、ツリーを追ってしまうという事も少なくない。この『Twitter文学』には紙媒体に落とし込んだ時に140字で区切れるという優れたビジュアルと読みやすさに利点があると考える。 東京に憧れ、東京に住み、東京で挫折する。唯一の居場所の部屋に戻っても、光り輝く東京タワーは見えない。
Posted by
筆者と同年代かつ同大学卒 特に登場する女性陣の解像度が高く、一気に読み進めてしまう 好きな話 ・30まで独身だったら結婚しよ ・青山のアクアパッツァ ・ウユニ塩湖で人生変わった(笑) ・吾輩はココちゃんである
Posted by
率直な感想は非常に良かった! Twitter文学やタワマン文学は初読みでしたがエンタメ小説に純文学を少し混ぜたようなそんな感じかなぁ。 ナンバーワンじゃなくオンリーワンだと言われて育ったZ世代より少し上に刺さりそうなそんな感じ。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
東京に住んでる人って輝いてるよね。 俺(私)が住んでた実家はしょぼいよね。 東京に住んでる俺(私)っておしゃれだよね。 港区女子を口説いて持ち帰る俺って成功してるよね。 決して高いとはいえない給料を切り詰めて、少しでも「東京で成功してる俺」を演出してる。 ネットで拾ってきた東京の画像をX(Twitter)に投稿して、少しでも多くの「いいね」を獲得する。 清澄白河に住んでる私。二人暮らしもできる部屋に引っ越したけど一人暮らし。 一人静かにベランダでおしゃれなコーヒーを飲む。 でもパートナーも恋人もいない。 自分には必要ないと口では言ってるけど、こんな部屋に住んでるってことはこの余った空間を誰かに埋めて欲しいって無意識に思ってたのかな。。。 みたいな自分の実家を下に見て、東京に住んでる人を上に見て、 東京に移り住んだ自分を自慢して、かつての自分の故郷を下に見て。 でも俺(私)って本当の意味で東京を楽しんでない・・・地元で暮らしてた方が幸せだったのかな・・・。というなんとも後味の悪い短編集が多数収録されている。 どの話も望んで「東京」というゲームに参加してるのに、「こんなはずじゃなかった感」を滲み出してる。 ブランドに心が惹かれなかったり、物欲がそんなになかったりする人にはこの「東京」というゲームに参加している人たちはひどく滑稽に見えると思う。 でも、妙なリアル感はある。こういう人たちは実際にいるんだろうな。
Posted by
