風に立つ の商品レビュー
限りなく不器用な父・孝雄と、その息子にして根は心優しい悟が、最後にわかりあう、、というお約束のエンディングに向かって物語が淡々と進むのだが、とても読みやすく心に響く内容でした。さすがの新聞連載作品、さすがの柚月裕子。
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親子、家族の再生の物語。(ひと言で言ってしまうと) 父親で南部鉄器の職人の孝雄に子どもの頃からほっとかれて愛情をかけてもらわず育ったと反感をもってる息子の悟。 ”あんな辛いめにあいたくない”という理由でこの職人になった孝雄にどんな辛い過去があったのか、 それと非行少年を一時的に預...
親子、家族の再生の物語。(ひと言で言ってしまうと) 父親で南部鉄器の職人の孝雄に子どもの頃からほっとかれて愛情をかけてもらわず育ったと反感をもってる息子の悟。 ”あんな辛いめにあいたくない”という理由でこの職人になった孝雄にどんな辛い過去があったのか、 それと非行少年を一時的に預かる”補導委託”という制度も初めて知った。 その問題を起こした少年、春斗もどんな悪いことをしたのか興味津々だったけど、錆びた自転車を塾に遅れそうになって乗ってしまったり万引きだったり(親に期待に応えられず) (犯罪は犯罪だけどね)だった。 孝雄の辛い過去は後半、友人のこととして語られるけどだからって自分が幸せになっちゃいけないなんてことはない。 悟も孝雄の不器用な愛がわかってよかったし、なにより春斗が自分の決めた道(動物にかかわる仕事)に邁進しようと決意し断固反対していた弁護士の父親も折れてくれてめだたしで良かったよ。 チャグチャグ馬子(100頭の馬にあでやかな衣装を着せて滝沢市から盛岡市まで行進するお祭り、付けた鈴がチャグチャグと鳴ることからこの名称になったとのこと)も秋田の”ババヘラアイス”も初めて知った。 一度食べてみたいな。
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南部鉄器を作る工房で保護観察の少年を預かることにした。 いい話なのだけれど、「いい話をしようとしてる感じ」がずっとチラつく。それが「いい話風」になってる気がする。そう感じる私が歪んでいるのか。
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不器用で無愛想な南部鉄器の職人の父・孝雄を持つ悟。そんな中、孝雄が少年犯罪の補導委託をやると知り、困惑する… 不器用な父と幼少期からのわだかまりを持ったまま大人になった悟と、保護観察の春斗。家族とは?って言う大きなテーマが考えさせられました。 春斗は何不自由ない暮らしだったけど、親の圧力に耐えられず万引きを繰り返してしまう。 春斗の父も苦労した人だったから、子供にそんな思いをさせたくない気持ちも解るけど、とても高圧的で息苦しい春斗の気持ちもまた解ります。 岩手の南部鉄器の職人一家の元で少しだけ息が出来るようになった春斗と、親のやり取りは苦しかったです。 孝雄も不器用で、悟との距離も複雑だったけど、ラストは泣きそうになりました。一生懸命生きてるって感じが愛おしかったです。
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更生のために非行少年を預かる補導委託の物語。 少し前に読んだ、いとうみくさんの「夜空にひらく」に設定が似ていた。 こちらは南部鉄器工房が舞台。何かしらの問題を抱えている少年と職人気質な親方という組合せは、それだけで更生のきっかけを与えてくれそう。 親方の孝雄と息子の悟、少年春斗と...
更生のために非行少年を預かる補導委託の物語。 少し前に読んだ、いとうみくさんの「夜空にひらく」に設定が似ていた。 こちらは南部鉄器工房が舞台。何かしらの問題を抱えている少年と職人気質な親方という組合せは、それだけで更生のきっかけを与えてくれそう。 親方の孝雄と息子の悟、少年春斗と父親の達也。それぞれの父子から、親子関係で大切はものは何なのかを考えさせられた。 「親は応援者ではなく、子供の一番の味方であるべき」という悟の言葉は妙に納得。肝に銘じておきます。
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補導委託についての物語。 舞台は岩手南部地方、非行少年の行動理由や父親の過去などのミステリー部分はありますが、家庭小説と銘打っているように、著者には珍しい不器用な家族たちの人間ドラマでした。 ちょっと三浦しをんテイストな感じもしました。 補導委託とチャグチャグ馬コを知れたことは...
補導委託についての物語。 舞台は岩手南部地方、非行少年の行動理由や父親の過去などのミステリー部分はありますが、家庭小説と銘打っているように、著者には珍しい不器用な家族たちの人間ドラマでした。 ちょっと三浦しをんテイストな感じもしました。 補導委託とチャグチャグ馬コを知れたことは勉強になりました。 著者の家族が東日本大震災で亡くなっているそうなので、故郷の岩手を舞台にして希望のある物語にしたかったのではないでしょうか。
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柚月裕子さんの作品 『風に立つ』 柚月さんの作品だと知り手に取りました。 こんなに感動する作品だと思いませんでした。 父親に大切に育てられてないと思っていた息子の悟は『補導委託』を通して少しずつ打ち解けていきます。 登場人物たちの語りがどれもジーンと心にきました。 「苦労はしても後悔のない人生を送りなさい。」 「辛い思いをしたあなただからこそ、誰かのためにできることがきっとある」 南部鉄器についてやチャグチャグ馬コなんかも…初めて知りました。 終わりかたも私好みでウルっとしました。出会えてよかった一冊です。
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「検事の本懐」「虎狼の血」「盤上の向日葵」「慈雨」「暴虎の牙」など。柚月裕子さん。「風に立つ」、2024.1発行、406頁。読売(夕刊)2022.4.15~2023.4.15連載。「補導委託」がテーマ。
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南部鉄器、岩手山、盛岡八幡宮、チャグチャグ馬コ。 読んでいる間、澄んだ空気や風が感じられる、 そんな盛岡で繰り広げられる父と子の物語。 無口な南部鉄器職人の孝雄、72歳。 弟子で息子の悟、38歳。 父親に対するわだかまりを心に抱え 素直に父と話をすることができない。 ただ、古く...
南部鉄器、岩手山、盛岡八幡宮、チャグチャグ馬コ。 読んでいる間、澄んだ空気や風が感じられる、 そんな盛岡で繰り広げられる父と子の物語。 無口な南部鉄器職人の孝雄、72歳。 弟子で息子の悟、38歳。 父親に対するわだかまりを心に抱え 素直に父と話をすることができない。 ただ、古くからの職人、健司は おしゃべり好きでお人よし。 工房の雰囲気を明るくする。 そんな工房で、孝雄の独断により 問題を起こした少年、春斗を預かることになる。 悟は突然のことに戸惑う。 自分とはまともに口も聞かない父親が なぜ見ず知らずの少年を預かることにしたのか。 春斗の登場で徐々に変わっていく父と子の関係。 補導委託をすることにした父親の心の内は 父の過去が明らかになる中、あぶり出される。 スナックのママと健司のやり取りが面白い。 ママが言う。 「人なんてさ、どんなに話し合ったって、 100% 分かり合えることなんてないんだよ。 近くにいる人のことは近すぎて見えないこともあるからさ」 「近すぎて見えないって、老眼かよ。 そうそう、話した方が相手のことが分かる」 と、ダジャレを重ねる健司。 もうひとつ、いいなと思ったのは、 悟が春斗の父親に啖呵を切るところ。 「あなたは春斗くんの応援団に過ぎない。 応援することと、味方をすることは違う」 応援団は結果が出ないと怒ることがあるが 味方は寄り添い続ける人だと。 タイトルは、ある高齢会長の言葉に由来するのかな。 「物事には風というものがありましてね。 仕事、人生、時代にいろんな風が吹く。 立ち向かうために必要なものは何だか分かりますか」 回答は、やめておきますね。 とても心温まる物語でした。 でも、柚月ファンとしては、敢えて言いたい。 もう少し読者を信用して 最後の説明は端折ってほしかった。 そして、やはり柚月さんには エッジの利いたミステリーを書いてほしいな。
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何かとんでもないことが起こるのではと警戒しながら読んだ、そういう話ではなかった。 補導委託、なかなかできることではない。
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