風に立つ の商品レビュー
関係性が近ければ近いほど、見えないものがある。 補導委託で預かった春斗との生活により、これまで見えなかったもの、分からなかったもの、様々な事が変わっていく。 それは主人公悟だけではなく、父親の孝雄も、工房の健司も八重樫も、春斗の両親も、春斗自身も。 人と向き合うことは簡単ではな...
関係性が近ければ近いほど、見えないものがある。 補導委託で預かった春斗との生活により、これまで見えなかったもの、分からなかったもの、様々な事が変わっていく。 それは主人公悟だけではなく、父親の孝雄も、工房の健司も八重樫も、春斗の両親も、春斗自身も。 人と向き合うことは簡単ではない。 一人一人、色んな背景があってその人になっているから。 関係性の中に、凝り固まったものがあれば尚更解くことは難しい。 それでも、悟や孝雄、春斗の家族のように、時間はかかっても笑い合える日が来るかもしれない。 どんな状況にいても、相手を思いやる気持ちは捨てずに持ち続けたいなと思った。 壮大な岩手山と川のある風景、賑やかなチャグチャグ馬こ、南部鉄器を作る職人や工房が目に浮かぶ。 読了後、思わず上を見上げた希望の持てるラスト。 優しいお話でした。
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久々の柚月裕子さん いつも読み応えのある作品を しっかり書かれている印象 なのでこちらも腰を据えて読まなきゃ! …と思っているとなかなか手が伸びず ご無沙汰でした。 でも久々に読むととてもよかったー! 補導委託を受け入れる、ある家族の物語。 補導委託というのは 問題を起こした少年を、 更生を目的として一定期間預かる制度のこと 少年を預かることで、 元々あった家族間のすれ違いも 少しずつ変化が見られていきます 家族それぞれの想いが 丁寧に描かれていて 後半は知らぬ間に泣いておりました。 すごい大きな事件があるわけじゃないけど 人と人とがきちんと向き合うことで生まれる 心の動きがよく描かれていました。 この本を読むと 『幸せ』とはなにかと 考えさせられます 自分の過去の経験から 子どもには同じ経験をさせたくないと思う孝雄と達也の気持ちもよくわかります でも子どもには伝わってなくて、、 もっと関心を持って欲しいと思う悟と 好きなことをさせて欲しいと思う春斗くん 二人の気持ちもよーくわかる。。 子どものことを思う親の気持ちは間違ってないのに、すれ違ってしまう。 それはまさに 『なにが幸いで、なにが不幸と思うかは、 人それぞれだ。』からでしょう。 親の思いも、子の思いも きちんとわかりあうために必要なのは 話し合いでした バーのママが言っていた 『思ったことはできる限り言葉にしないといけない。 気持ちなんて、それでやっと自分が言いたいことの数パーセントが伝わる程度なんだから。 しかも、それが近くにいる人だったらなおさら 近すぎて見えないこともあるからさ』 ということでしょう。 とても納得してしまいました。 また 『あなたは春斗くんの敵ではないけれど、 味方じゃない』 『俺から言わせれば、 あなたは春斗くんの応援者にすぎない』 という言葉はとても考えさせられました。 私は子どもの応援者になってないだろうか、、 子どもの気持ちも、 未来の可能性も考えて、 味方でいる。。。 子育てって難しいです。。 うーがんばろm(._.)m 盛岡は行ったことがないですが 行ってみたくなりました(*´-`)
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南部鉄器職人の父と葛藤のある悟は、自分の子供にも愛情のない父親が問題少年の補導委託を引き受けた事に納得いかなかった。 やがて受け入れる事になった少年春斗の親子関係を通し、自分と親との関係を見つめ直していく。 近すぎてよく見えない、老眼のような親子関係。 言い得て妙です。 子供への...
南部鉄器職人の父と葛藤のある悟は、自分の子供にも愛情のない父親が問題少年の補導委託を引き受けた事に納得いかなかった。 やがて受け入れる事になった少年春斗の親子関係を通し、自分と親との関係を見つめ直していく。 近すぎてよく見えない、老眼のような親子関係。 言い得て妙です。 子供への愛情は時によって親の価値観で歪められてしまう事がある。親子の間だけでは治せないその歪みを、補導委託という仕組みで多くの人が関わる事で、少年とその家族を救っていく事が出来るのであろう。
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最初は分かり合えなかった孝雄と悟、そして春斗と達也次第に打ち解けていく…孝雄の過去が明らかになり本当の想いがわかった時、感動がグッと込み上げてきた
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柚月裕子の新境地的な作品でしたが、ある軽犯罪を犯した少年を一時的に預かることになった職人一家を中心とした話ですが、一緒に生活する中で、少年も変化して逞しくなっていく様やぎくしゃくしていた職人一家の親子関係も、少年の更生に合わせるように雪解けしていく様が素晴らしく良かったです!最後...
柚月裕子の新境地的な作品でしたが、ある軽犯罪を犯した少年を一時的に預かることになった職人一家を中心とした話ですが、一緒に生活する中で、少年も変化して逞しくなっていく様やぎくしゃくしていた職人一家の親子関係も、少年の更生に合わせるように雪解けしていく様が素晴らしく良かったです!最後の展開には、思わず涙が出ました!
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補導委託-問題を起こし家庭裁判所に送られてきた少年を一定期間預かる制度 この補導委託を突然 引受た南部鉄器職人の孝雄と仕事一筋で決して良い親とは言えなかった父の行動に戸惑う息子の悟 納得いかぬまま工房で少年と共に働き、同じ屋根の下で暮らしていくうちに・・・ 柚月裕子先生の違う...
補導委託-問題を起こし家庭裁判所に送られてきた少年を一定期間預かる制度 この補導委託を突然 引受た南部鉄器職人の孝雄と仕事一筋で決して良い親とは言えなかった父の行動に戸惑う息子の悟 納得いかぬまま工房で少年と共に働き、同じ屋根の下で暮らしていくうちに・・・ 柚月裕子先生の違う一面を堪能できる秀逸の作品でした。 不器用な父と子 近くにいるからこそ、家族だからこそ、伝わらない想いと過去があり、良かれと思ってしている事が、重荷になったり、期待に応えられず苦しんだり・・・ 幸せな人生ってなんだろう? 恵まれた人生と充実した人生って同じものではないんじゃないのかも? でも生きていくためには? いろいろ考えてしまいましたが、ラストは涙を流し爽やかな読後感を味わうことが出来ました。 ご存知の事と思いますが・・・ この作品は、ミステリーではありません。 落涙の家族小説です。(笑)
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登場人物の心の動きが少し不可解なところがありました。達也の掌返しも不自然。予定調和という感じです。新聞連載小説と聞き、さもありなんと。 でも最後まで一気に読ませる筆力はすごいと思いました。
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初めて知った「補導委託」という制度。問題を起こした少年の引き受け先となった盛岡の南部鉄器の工房を舞台に、職人気質の父へのわだかまりを抱えた息子の心の変化を絡めながら、少年の更生の道のりが描かれる。 子供に苦労をさせたくないという親心と、親の期待に応えられず息苦しさを覚える子供の...
初めて知った「補導委託」という制度。問題を起こした少年の引き受け先となった盛岡の南部鉄器の工房を舞台に、職人気質の父へのわだかまりを抱えた息子の心の変化を絡めながら、少年の更生の道のりが描かれる。 子供に苦労をさせたくないという親心と、親の期待に応えられず息苦しさを覚える子供の心。どちらの思いもわかるだけに一概にどちらが悪いとも言い切れないのが難しいところ。 全ては「何が幸せか」に行き着くんだけど、幸せの形も人によって違うから難しい。 テーマはいいんだけど、悟の父親に対する拗ね具合があまりにも子供っぽくて辟易だし、春斗の父があまりにも簡単に懐柔されたのが小説だな〜っていう印象。 元々春斗は非行少年というほどのワルではなかったから、本当にタチの悪い子を委託された時はこんなに上手くはいかないだろうなとも。 健司と八重樫の口喧嘩も鬱陶しかった。 柚月裕子作品としてはまあまあかな。
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犯罪を犯した少年が補導委託される場所が職人の町工房。ん?どこかで読んだような…と思ったら、いとうみくさんの『夜空にひらく』だった。 『夜空にひらく』はあくまでもYA向けで、こちらの方が一般書で大人に向けた小説。 無口で仕事一筋の南部鉄器職人の父とその息子の関係性と万引きを繰り...
犯罪を犯した少年が補導委託される場所が職人の町工房。ん?どこかで読んだような…と思ったら、いとうみくさんの『夜空にひらく』だった。 『夜空にひらく』はあくまでもYA向けで、こちらの方が一般書で大人に向けた小説。 無口で仕事一筋の南部鉄器職人の父とその息子の関係性と万引きを繰り返していた少年が、心を開くまでの物語。 エンディングは読む前からなんとなくわかるんだけど、柚月さんの文章力に引き込まれどんどんと読み進められた。 母娘って、良くも悪くもおしゃべりで仲良かったり、悪かったりなのに、父息子ってお互い無口で何を考えてるのかわからずに、一方通行が多いような。
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岩手を舞台に南部鉄器を作る職人の親子、そこに補導委託で預かる事になった少年。彼らと職人達の話で展開する、再生の物語。少年の親を除き、登場人物が皆んな善人。過去に苦労し、脛に傷持つ人々が次世代を応援したいと言う思いが少年だけでなく職人の息子にも奇跡を及ぼす。宮沢賢治のグスコーブドリ...
岩手を舞台に南部鉄器を作る職人の親子、そこに補導委託で預かる事になった少年。彼らと職人達の話で展開する、再生の物語。少年の親を除き、登場人物が皆んな善人。過去に苦労し、脛に傷持つ人々が次世代を応援したいと言う思いが少年だけでなく職人の息子にも奇跡を及ぼす。宮沢賢治のグスコーブドリが下敷きの物語らしい。 柚木氏らしく読ませてくれたが、ミステリーを期待してたので⭐︎3で。
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