東京都同情塔 の商品レビュー
近未来の東京メトロポリタン。ザハ・ハディッド国立競技場がアンビルドワールドの器のように振舞われている設定だった 80年90年代にアニメや映画で知った悲壮的未来がAIやSDGsなど日常に出てきて進行形で進んでいる問題が素通りされてる事を考えさせられた。 最近のトレンドが細かく入...
近未来の東京メトロポリタン。ザハ・ハディッド国立競技場がアンビルドワールドの器のように振舞われている設定だった 80年90年代にアニメや映画で知った悲壮的未来がAIやSDGsなど日常に出てきて進行形で進んでいる問題が素通りされてる事を考えさせられた。 最近のトレンドが細かく入る文章が好みでなくTwitterを毎日チェックする現代人らしさがでている。 さもアンドロイドのような登場人物が新時代のルールにいち早く適応すること、AIに書けない文章を書く事に希望を持っていて面白いキャラクターだった。
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引き込まれて一気に読んでしまった。テンポが良く、また、扱っているテーマや設定が時代を反映していて、どこか近くで展開されたパラレルワールドの話を読んでいる気分になった。AIが跋扈する時代ではあるが、自分を批判し、自分自身を問うことの中に人間性を見出していける、といった話と受け取った...
引き込まれて一気に読んでしまった。テンポが良く、また、扱っているテーマや設定が時代を反映していて、どこか近くで展開されたパラレルワールドの話を読んでいる気分になった。AIが跋扈する時代ではあるが、自分を批判し、自分自身を問うことの中に人間性を見出していける、といった話と受け取った。
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一部生成AIが書いたとかザハの国立競技場がある世界だとか、芥川賞を取った時の紹介がそんな話ばかりだったのだが、建築もAIも興味があるから読んでみたら。 すごく、面白かった。面白かった、なんて陳腐な表現をしてしまうほどに、面白かった。 「犯罪者」が、「ホモ・ミゼラビリス」・同情され...
一部生成AIが書いたとかザハの国立競技場がある世界だとか、芥川賞を取った時の紹介がそんな話ばかりだったのだが、建築もAIも興味があるから読んでみたら。 すごく、面白かった。面白かった、なんて陳腐な表現をしてしまうほどに、面白かった。 「犯罪者」が、「ホモ・ミゼラビリス」・同情されるべき人、なんて言うふうに外来語由来の言葉に置き換えて、なんとなく湾曲してどうにかしてしまう。 「東京都同情塔」は、外来語由来の正式名を逆に言い換えた言葉。そこらへんのやりとりだけでも読み応えがたっぷりある。 そんな言葉だけで、僕もまあ同意というか、自分向けに書いてくれたのかとか、挙句、自分が書いているのかと思うぐらいだ。 頭の中に小うるさい校閲者がいて文句を言ってくるとか、ほんと、ページをめくるたびにドキドキしてしまう表現が次々に飛び出してくるのだ。 と、純粋にとても楽しめるけれど、あえて建築絡みで少しひいておくと 「遠い未来の論理で言えば、あらゆる建築は馬鹿げた破壊だと言うこともできる。」 という言葉が終盤に登場する。 どんな建築だって、あらゆる人が賛成し歓迎して建てられるわけではない。そしていつかは壊れる。 建築の、これでいいのだ、と、これでいいのかな、という葛藤も同時に味わえて、一粒で何度も美味しいのだ。
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最後までグイグイ引き込まれた。 建築家の女性と青年の会話劇がちょっと村上春樹っぽくて小気味よい。 言葉が氾濫する現代社会の行く先はディストピアなのか?それでも未来に生きようとする人間の執念を感じた。 ザハ・ハディッドの新国立競技場が実際に建築されたという設定がSFチックで面白い。...
最後までグイグイ引き込まれた。 建築家の女性と青年の会話劇がちょっと村上春樹っぽくて小気味よい。 言葉が氾濫する現代社会の行く先はディストピアなのか?それでも未来に生きようとする人間の執念を感じた。 ザハ・ハディッドの新国立競技場が実際に建築されたという設定がSFチックで面白い。 東京都同情塔の建築理念も常識を覆すようだけど、妙に頷けるところもあるんですよね。 生成AIが使われてるらしいけど、この小説自体が生成AIのある世の中を暗示してますね。
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読み終わった後にスッキリするといった類の本ではなかったけど、読んでよかったなとは思った。 分からないことはAIに聞いて、SNSに思ったことをテキトーに書いて、平々凡々と暮らしている身からすると、なかなか登場人物の気持ちを掴むことが難しかったかも。 この作品を読んだことを、『言葉』...
読み終わった後にスッキリするといった類の本ではなかったけど、読んでよかったなとは思った。 分からないことはAIに聞いて、SNSに思ったことをテキトーに書いて、平々凡々と暮らしている身からすると、なかなか登場人物の気持ちを掴むことが難しかったかも。 この作品を読んだことを、『言葉』『日本語』について考えるきっかけにできればいいなと思った。
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ネット記事を見て、「AIを使って文章を作成した小説」という誤解を抱いたまま、読んでしまった感がある。これから読む方は、思い込みをなくして、フラットに読んで欲しいです。
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言葉の話だ、と思うのに、さまざまに込められていて頭が追いつかない。『ニムロッド』に似ている。天上に近づく塔を建て神に近づこうとした人間は、言葉を散らされ互いに言っていることがわからなくなった。他者を不快にする言葉を封じる。自分だけの表現をして誰にも伝わらない。全てが独り言。自分の言葉で語らず、生成系AIに言葉を翻訳してもらう。差別的な表現にならないように、自分の中にも検閲者がいる。 他者に寛容な日本人、犯罪者は環境がそうさせただけで同情すべき相手=ホモ・ミゼラビリスである。幸福学者。日本人は寛容だ、という作中の発言は絶対逆説的に使われていると思う。表面的な寛容さを装って、実際はものすごく不寛容で、暴力的な。言葉狩りでなんだかおかしくなっている社会。自分の意見だけを主張して、Twitterはただ呟くものではなく、意見を声高に主張するメディアになった。誰もが大声で独り言を言い、みんな同じと謳いながら違いに不寛容だ。そんな社会を象徴的に描いていると思うのに、一読しただけではなかなかとらえきれない深い作品。
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・出るべくして出た作品という印象。 東京都同情塔はその時代に住んでいる人々や文化を象徴したシンボルタワーに思えた。平等で寛容で適切で清潔な世界に住む意味などを考えた。 多様性に忖度するとこうなるのかというディストピア小説。
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まだ中身を理解しきれていないが、仕掛けが面白い本。 例えば、p55の「豊かで恵まれた、ほとんど何でも持っている、前途洋々の、顔が綺麗な若者」という太文字の文章が後にマックスの言葉の引用であることは発覚するなど。このような太文字の引用やChat GPTの文章生成、そしてマキナの頭の中の『検閲者』など、この作者は言葉というものの描き方が上手すぎる。 そしてChat GPTの文章が本の中にスッと馴染んでいるのも心地よい。これは舞台が近未来だからという理由も勿論、マキナの思考回路が論理的で言葉に敏感だからという理由もあるだろう。マキナのキャラクターは、p27にて拓人の『ナンパ』という言葉を訂正した際のものにはっきりと表れており、可笑しみのある台詞で好きだ。 そして、ずっと言葉に関して考え続けているマキナではなく、一瞬「シンパシータワートーキョー」を見ただけの拓人が「東京都同情塔」という言葉を思いつく構成が良い。言葉についてあれこれ検閲しながら考えていると、感覚的な言葉の発露の可能性を失ってしまうのかもしれない。 今後生成AIにより小説世界はどのように変わっていくのか。わからないが、私は頭の中にあまりにも厳密な検閲者は現れないことを祈る。
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説明しないとわからないということは、説明してもわからないということだ、 という感じの本でした。 特に牧名の心情理解はかなり苦しかったです。彼女が何を考えているのか、一読しただけでは掴めなかった。その心情の変化に注目してもう一度読んでみたいと思います。
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