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東京都同情塔 の商品レビュー

3.4

370件のお客様レビュー

  1. 5つ

    53

  2. 4つ

    95

  3. 3つ

    138

  4. 2つ

    39

  5. 1つ

    11

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2024/02/07

何やら今までの思考の枠組みを揺さぶられる感じがする。張り巡らされたテーマに、いくつもの問いが浮かんでくる。この塔はいったい何を象徴しているのだろうか。

Posted byブクログ

2024/02/06

見境なく増える言い換え表現の言葉遊びであったり、乱れた日本語が蔓延るネットの海であったり。言葉が増えたことで語彙も増えると思いきや、1984でニュースピークがもたらす影響のように、ただしそれは自然の摂理として言語の衰退へ向かっていて、現代は知らず知らずのうちに我々の思考を制限して...

見境なく増える言い換え表現の言葉遊びであったり、乱れた日本語が蔓延るネットの海であったり。言葉が増えたことで語彙も増えると思いきや、1984でニュースピークがもたらす影響のように、ただしそれは自然の摂理として言語の衰退へ向かっていて、現代は知らず知らずのうちに我々の思考を制限しているのではないかと考えさせられました。

Posted byブクログ

2024/02/05
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

 前作の『Schoolgirl』が好きだったので芥川賞を受賞した新刊を読んだ。生成AIを小説に導入していることで大きな話題になったが、それはあくまでパーツであり現在の日本社会のムードを背景に言語論、都市論などにリーチする興味深い作品。色んな考察をしたくなる材料が大量においてあり作品内で解決しないことが多いのでページ数の割にかなり読み応えがあった。  国立競技場を建て替える際にザハ案が採用された東京が舞台になっている。遠くない、あり得たかもしれない未来の中でソフトSFな展開が起こりつつ主人公である建築家の女性が自身の言語感覚について論考する様が興味深かった。彼女の頭の中を覗いてるよう。合間に生成AIとやりとりしつつ言葉が彼女の心の内と外を行き来する。言葉を発するまでの思慮というのは大量にあるわけだが、AIとの対比によって人間の冗長さが際立っていた。それを無駄と捉えるかどうか?何でも最短距離で辿り着くことが合理的とされつつある社会で、今のテキストベースのコミニュケーションの中でも比較的婉曲な小説で表現していく姿勢がかっこいい。  言葉が外に出ていく前に心の内で自己検閲するくだりが何度か出てくる。ソーシャルジャスティス全盛の時代、失言しないためには必要な能力ではあるが、無難を選び続けた結果、個性は死んでいきAIと変わらない言葉を発する人間になるのでは?という疑問を呈しているように感じた。終盤に登場するアメリカ人のライターの言葉遣いが対照的で”fucking(クソ)”を多用する。AIは自重する言葉で自ら発することはないだろう。しかし、こういった言葉がいい意味でも悪い意味でも人間を人間たらしめているのだと感じた。同じような論点でいえば漂白された社会についても意識的で、その象徴が主人公のパートナーのような男性と塔の存在だった。  前者は洗練されているといえば聞こえはいいのだけど色がなさすぎて実体を掴みにくかった。希薄な欲望、足るを知るが極まっているような印象があり、十把一絡げに言えないことは重々承知の上で個人的には最近の若者像を結んだ。  後者は東京都同情塔という名前で実質刑務所なんだけども自由度の高い環境で管理する近未来型のものとして描かれている。刑務所内をジェントリフィケーションしてしまって素晴らしい環境を受刑者に提供し社会にインクルージョンしていこうね、という話。この塔が諸外国に比べて相対的に貧しくなりつつある日本を暗喩しているかのようだ。それと同時に先に紹介したライターの視点(外圧)が加わることにより、エゲツない勾留状況で海外からの難民を排除している現状の入管に対する皮肉にも受け取れた。その他にも女性が受ける性暴力の問題、死刑を含めた厳罰問題の是非、外圧でしか変わらない内向き姿勢など社会に横たわっている課題がさりげなく配置されており、直接物語の推進力に寄与しないが明確に問題視している絶妙な塩梅が見事だった。  また新宿御苑付近に超高層タワーとして建築される同情塔とザハの建築が対をなす描写が個人的に好きだった。近未来の東京、品のあるサイバーパンクとでもいえる艶やかさ。そして終盤に主人公および塔の内外の境目が曖昧になり一体化していく様は圧巻だった。御苑を舞台にしているのも課金制という内外の壁がある中で登場人物たちが壁を乗り越えて無効化していくのも示唆的に感じた。邪推も含めて楽しめる要素満載の芥川賞受賞も納得の快作!

Posted byブクログ

2024/02/05

ストーリーを追うような話ではないけど、巨大建築、コンプラ、AIと言語、令和の価値観など時世を読んだトピックを日本語に落とし込んだ名作。

Posted byブクログ

2024/02/05

微妙。おれてきにはBlueの圧勝。 たぶんおれには気づけないメタファーがあったんだろうな。 訳した文章とかAIの文章はリアルでよかった。 すごく入ってきやすい文章だったんだけど、味わいはなかった。

Posted byブクログ

2024/02/05

AIが書いた文章が数パーセント含まれるということだったので気になって読んでみました。先入観で純文学は読みにくいというイメージがあったが、特にそのようには感じなかったし、表現がきれいだなーと思うところがたくさんあり、純文学に興味が持てた一冊。 AIが書いたであろう部分は意味不明な部...

AIが書いた文章が数パーセント含まれるということだったので気になって読んでみました。先入観で純文学は読みにくいというイメージがあったが、特にそのようには感じなかったし、表現がきれいだなーと思うところがたくさんあり、純文学に興味が持てた一冊。 AIが書いたであろう部分は意味不明な部分もあり読んでて気持ち悪いところもありました。 私自身、今回が初めての「芥川賞」受賞作です。

Posted byブクログ

2024/02/05

これから先の日本を描いた予言みたいな本だったな… 犯罪者も何かの元被害者っていう理論は自分も思ってたところだったけど、ホモ・ミゼラビリスの豊かな生活の描写のところで俺もFUUUCK!!!と思ったので難しい

Posted byブクログ

2024/02/05

言葉によっての分断はもうすでに始まっているな、というのが読後最初の感想。 例えば、70代のおじいちゃんに「マンスプレイニング的な発言はやめてほしい」と言ったところで、おじいちゃんは「は?」という顔しかできないだろうし、それを日本語で「女性にはこういった知識を持っていないだろうとい...

言葉によっての分断はもうすでに始まっているな、というのが読後最初の感想。 例えば、70代のおじいちゃんに「マンスプレイニング的な発言はやめてほしい」と言ったところで、おじいちゃんは「は?」という顔しかできないだろうし、それを日本語で「女性にはこういった知識を持っていないだろうという思い込みで会話するのはやめて」と言い換えても、わたしたちと同じ感覚で伝わるとは思えない。 そもそも同じ日本語でさえ、言葉として発せられた時点で意味なんて誤読されて伝わるものなのに、グルーバル化によるカタカナ語の濫用で、ますますそれは促進されているように感じる。 そして、本書の主軸になっている「この世に生まれくる生命は、どのような出自であれ等しく尊い」と言いながらも自分たちを幸福な特権を持って生まれて来たもの、としてそうじゃないもの(犯罪者)を同情すべきだとする概念。 わたしは、平野啓一郎さんの「ある男」を読んでから死刑反対派となった。 犯罪行為に至る要因は、遺伝的要因と環境的要因が複雑に相関し合っている結果だという考え方のもと、死刑制度は環境的要因を無視した制度のように思えるからだ。 しかし、その考えと同情するという考え方は同じにはならない。 同情とは、公平からも平等からも一番かけ離れた言葉のように感じ、いきすぎれば選民思想にもなりかねない。 本書はそんな言葉や思想の危険さと、サラの少しずつ崩壊していく自我を、サラの視点、タクトの視点に、究極の公平の存在でもあるAIをおり混ぜ、うまく描かれているなと感じた。

Posted byブクログ

2024/02/04

テーマ・思想の真っ当さと、狂気の表現方法。 常人には書けない文章、にも関わらず奇跡的に読みやすい。 設定にも、構成にも、思想にも、表現にも過剰な拘りを感じた。 前半はその過剰な言い回しが喜劇的で、何故だかゲラゲラ笑える。 例えばこんなの。 「私はカタカナをデザインした人間...

テーマ・思想の真っ当さと、狂気の表現方法。 常人には書けない文章、にも関わらず奇跡的に読みやすい。 設定にも、構成にも、思想にも、表現にも過剰な拘りを感じた。 前半はその過剰な言い回しが喜劇的で、何故だかゲラゲラ笑える。 例えばこんなの。 「私はカタカナをデザインした人間とは酒が飲めない。美しさもプライドも感じられない味気ない直線である上に中身はスカスカで、そのくせどんな国の言葉も包摂しますという厚顔でありながら、どこか一本抜いたらたちまちただの棒切れと化す構造物に愛着など持てるはずがない」 最高です。

Posted byブクログ

2024/02/04

芥川賞受賞作。 登場人物の思っていることを、改行なしで続けて書かれているところは、読んでいて眠くなった。 でも、よくこんな取り留めのないことを書けるな〜と思った。 日本語って、カタカナにすることでなぜか遠回しな表現になるよなと思った。

Posted byブクログ