東京都同情塔 の商品レビュー
芥川賞ですね、 冒頭の一文は九段さんご自身が好きだと言ってた 内容ですが、現実とファンタジーの境目がわかりにくく、あまり得意ではなかった(私の想像力が欠けている) 世界観はとても好きです
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言語感覚。とても痛烈でした。圧倒的。 日本人の奥ゆかしさや、日本語の美しさとは、自惚れがゆえの幻想なのではないか。 言語を操る上で、外国人から見た日本人は、日本人から見た言語生成AIと大差がないのだと言われているようで、恐ろしく感じました。 そんなことはないと否定したいけれど、顔を真っ赤にしながら発した言葉には、おそらくカタカナ語がふんだんに混じっていると思います。
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ページ数は少なめだけど、文字はみっちり詰まっている。 言葉に対する考察を主人公たちが重ねているので、読み手の私も、一文ずつ、一語ずつ、慎重に読んでいった。久しぶりにそんな風に噛み締めながら読書をできた気がする。 いつもは雰囲気やストーリーの展開に流されるままに読んでいくのだが、こ...
ページ数は少なめだけど、文字はみっちり詰まっている。 言葉に対する考察を主人公たちが重ねているので、読み手の私も、一文ずつ、一語ずつ、慎重に読んでいった。久しぶりにそんな風に噛み締めながら読書をできた気がする。 いつもは雰囲気やストーリーの展開に流されるままに読んでいくのだが、この本はそれができない。 書かれている言葉に対して、どんな意味が含まれているのか、どんな思いや感情を語り手が託しているのかを考えながら読むように意識していた。いや、意識させられていた。 物語の内容についての感想は、難しくて今すぐには書けない。 こちらについても、ゆっくり噛み砕いていきたい。 そんな風に時間をかけて、じっくり楽しめる本。
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あるところまではいま私がいる世界と同じだったのに、どこかで分岐したパラレルワールドの東京。そのリアルさとファンタジーのバランスが面白かった。 しかし主眼がどこにあるのかいまいちわからず。日本人がいつか日本語を捨てる、という危機感には共感を抱いた。
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ザハ・ハディッドがデザインした国立競技場が建設された世界線では犯罪者を差別や偏見から守る新しい概念の象徴である塔が建設されていた。その塔をデザインした建築家女性の思考の軌跡を辿る物語。 自らの理想とするイメージと惰性からくるイメージや肉体の疲労、欲望とが相剋する文章が絶えず検閲されていて、どのように主人公の精神力の強さが伝わってくる。そんな主人公が自分の仕事の成果である塔の未来に想いを馳せるシーンで唐突に物語は終わる。次の瞬間数多の犯行声明の通り塔ごと爆破されたのか、それ以上考えることを脳内の検閲者が許さなかったのか、とか考察の余地がある終わり方だった。
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2030年の東京で、犯罪者を都内の一ヵ所に集める施設「シンパシータワートーキョー」=「東京都同情塔」を建設した女性・牧名沙羅の語りで綴られた物語。第170回芥川賞受賞作。 文章構築AIが登場する近未来の話だが、”人“が紡ぎ出す文章や言葉に拘泥があるように感じられた。芥川賞受賞...
2030年の東京で、犯罪者を都内の一ヵ所に集める施設「シンパシータワートーキョー」=「東京都同情塔」を建設した女性・牧名沙羅の語りで綴られた物語。第170回芥川賞受賞作。 文章構築AIが登場する近未来の話だが、”人“が紡ぎ出す文章や言葉に拘泥があるように感じられた。芥川賞受賞作だが、意外に読みやすかった(偏見あり…)。
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NEWS ZEROで初めて拝見した九段理江さん(小学生の時から高橋由伸のファンということでデレデレしていた)への強い興味、あまり触れてこなかった芥川賞受賞作をいくつか続けて読んでいることから、この本を読もうと思った。 これまで読んだ芥川賞受賞作がそうであるように、終わりにはどこにも行き着かないだろうなと予想しながら読んで、本当にそんな感じだった。でも、だいたい本質は中盤のあたりの展開で価値観をずるりと横滑りさせるところにあって、読者がまだ予想も想像もできていないことなどを提示するところにあるのでは、と考えるようになった。この小説の場合は「平等主義や共感の極まり、成れの果て」みたいな思想、反論が難しいほどその思想をさも美しく説明する言葉、潜在的な不寛容さ、だろうか。 マサキ・セトが提唱する「ホモ・ミゼラビリス」の論については、頷ける、確からしい、と感じながら、それが「東京都同情塔」という建造物、施設として形になることについては、マックス・クラインと同じように「裏になにかあるだろう」と私自身も感じている。でも、そう感じていながらもスパッと「私はそれについて寛容になれません!」と言い切ろうとすると、どこかなにか躊躇いみたいな、戸惑いみたいな、グレーな状態になってしまう。このことには後半の方でマックス・クラインがタクトを非難して言う言葉が、そのまま自分に向けられているような感覚になる。 タイトルであり、キーとなる言葉、建造物名である「東京都同情塔(トーキョートドージョートー)」、漢字の構成も音も韻を踏んでいて素晴らしい。 表紙を絵だと思って見ていたけど、実はこれ写真で、安藤瑠美さんによるものだった。以前BOOK AND SONSで写真展やっていたタイミングで知って、展示は行けなかったんだけど写真集欲しいんだよね。
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この人を見ると、建築はやっぱり曖昧なものでは無い。言葉と綿密に結びつき、適切に言語化されるべきもの。それを出来るか出来ないか。 べきと言ってしまうのは癖?
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ことば。 同じことばを話していても、わかりあえなかったり、傷つけたり、ましてや人を殺したりすることばが、今この時代にあふれている。 現代に皮肉や疑義を投げかけ、考えさせられる物語ではあるものの、狂気に近いような他人の思考を見せつけられ続けることに耐えきれず、叫びだしそうな感覚す...
ことば。 同じことばを話していても、わかりあえなかったり、傷つけたり、ましてや人を殺したりすることばが、今この時代にあふれている。 現代に皮肉や疑義を投げかけ、考えさせられる物語ではあるものの、狂気に近いような他人の思考を見せつけられ続けることに耐えきれず、叫びだしそうな感覚すら覚える。 薄い本なのに、なかなか読み進まず……そうだ、私にとっての芥川賞ってこうだったわ……と思い出した。
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