楽園の犬 の商品レビュー
気がつけば岩井圭也作品3冊目。 舞台は太平洋戦争勃発直前の南洋サイパン。 喘息持ちの元教師の男は、日本に残した最愛の妻と一人息子を養うため、日本海軍のスパイとなることを選んだ。 ん~。 外国の包囲網でどんよりと追い詰められ、神州日本が負ける訳はないという無知蒙昧と傲岸不遜によ...
気がつけば岩井圭也作品3冊目。 舞台は太平洋戦争勃発直前の南洋サイパン。 喘息持ちの元教師の男は、日本に残した最愛の妻と一人息子を養うため、日本海軍のスパイとなることを選んだ。 ん~。 外国の包囲網でどんよりと追い詰められ、神州日本が負ける訳はないという無知蒙昧と傲岸不遜により、いっそ開戦を望むという当時の空気感は伝わった。 嫌だな~。 嫌な話だな~。 おもしろくなくはないが、嫌な話だ。 実際、三分の二まで読んだ感想はつまらない、だった。 しかし、そこまでは前フリのようなもの。 そこから物語が激しく動き始める。 著者は……、きっと嫌だったんだろうな。 サイパンで行われた通称バンザイアタックや、捕虜になることを拒否した多くの自決。 凄く嫌だったんだろうと思う。 それを止めたいと願った末に作られた人物ではなかったろうか? それでも……。 歴史を変えることなどできない。 それでも……。 少なくとも一人は、おそらくは彼の説得でもっと多くの人が思いとどまったのだと思いたい。 たとえそれがフィクションの中であっても。 蔓延する猛毒のような全体主義から逃れ、自分の頭と信念によって行動し、名誉や美学による”死”を拒絶し、足掻き続けた彼に称賛を送りたい。 願わくば、違う結末が読みたかったが、本当にどんな姿でも違う形のラストを願ったが、やむを得ないだろう。 「永遠についての証明」>本作>「文身」ってとこかな。 まあ、それはそれとして。 岩井圭也さん、書きすぎじゃね問題(笑) 書き始めが2016年頃か。 そっから8年で単行本だけで14冊。 単行本化されてない掲載作を合わせると倍以上かな。 いや~、凄い。 書きたくて書いてるんならありがたいがね、出版社の意向でガンガン書かされてるんじゃないだろうな。 「売れてる旬の内になんでもいいから書かせろ~!!」 みたいな。 依頼されたら書くしかないんだろうけど、事情はまったく知らんけど、この作家さんに限らず、もっとじっくり腰を据えて書いてもらいたいな~。なんて思ったり思わなかったり。 出版社は短期で作家を食いつぶさないで、長い目で見てあげて欲しい。 今作もね、もっともっと練れる余地があったような気がしてね。 余計なお世話だけどさ。
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ずっと読んでみたかった本。 図書で予約して半年程待ち、やっと回ってきた。 概略☆いま最も熱い著者の最高傑作! 世の中が戦争に突き進もうとするとき、人はどこまで自分でいられるだろうか。 感想☆なんとも戦争と聞くと、内容も重いのかと。犬はどこで出てくるのか。 太平洋戦争前。スパイ...
ずっと読んでみたかった本。 図書で予約して半年程待ち、やっと回ってきた。 概略☆いま最も熱い著者の最高傑作! 世の中が戦争に突き進もうとするとき、人はどこまで自分でいられるだろうか。 感想☆なんとも戦争と聞くと、内容も重いのかと。犬はどこで出てくるのか。 太平洋戦争前。スパイ。職業元女学校英語教員。 海軍少佐のもとで、スパイ(犬)の役目として海洋庁庶務係としてサイパン諸島に送られる。 M:Iの映画のような。 何度となく、任務を遂行すること主人公。 人の命に関わる難事を解決する。 優しい心ある先生が、ここまでスパイ行為をする理由も家族のため、病気で療養する目的ではあった。 外国から来るスパイ摘発の仕事も、そう長くは続かなかった。 自分の雇い主もスパイ扱いされ、主人公も同様な罪を被せられ、逃亡劇もありましたが、最後は、本当に切なかった。家族との再会を果たせられず、ただただ、戦争が憎たらしい思いが残った。 本の表紙の大きな桜?の木も文面に出てきて、謎解きに大きな役割として登場。 最初から最後まで、気の置けないスリル感は大変面白かったです。
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人物造形や内容が誠実だと感じました。 デキる男なのですが、家族想いで喘息持ちな所等親近感のある主人公。スパイとして動くほど、反戦派になっていく所がリアリティを感じる。 戦時化、サイパンの市民の生活なんて、想像もできなかったけれど、島民と日本人の関係等の描写も現実感がある。 終盤の自死を美とせず、何がなんでも生き抜くというテーマが貫かれていてよかった。 ローザさん好き。表紙の鳳凰木の赤がすごい訴えかけてくる。表紙も含めて良い。 そんなに話題作というわけではなかったように思うのですが、もっと読まれていいのでは!? ⭐︎4.5
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「君は米英と開戦すべきだと思うか?」 横浜で英語教師をしていた麻田健吾は、持病の喘息で休職を余儀なくされていたが、友人の伝手で南洋群島のサイパンに赴任することに。温暖な気候の方が喘息症状は緩和するという話を信じて赴任を決意する麻田。そこでの任務は表向きは南洋庁の職員だが、実際は...
「君は米英と開戦すべきだと思うか?」 横浜で英語教師をしていた麻田健吾は、持病の喘息で休職を余儀なくされていたが、友人の伝手で南洋群島のサイパンに赴任することに。温暖な気候の方が喘息症状は緩和するという話を信じて赴任を決意する麻田。そこでの任務は表向きは南洋庁の職員だが、実際は海軍在勤武官補•堂本頼三の“犬”として、情報を集めると同時に、島に潜むスパイを排除する防諜(スパイ)活動だった… 太平洋戦争の開戦前夜、南洋の楽園•サイパンを舞台に繰り広げられるスパイ小説×歴史ミステリ。グアム•サイパンと言えば(私は一度も行ったことないけど)、南の島のリゾート地のイメージが強かったが、その裏にはこんな歴史があったとは… フィクションだとわかってはいるものの、南洋進軍に沸く当時の世相、ナショナリズム、陸海軍の距離感など実にリアリティを感じる。ところどころに挿入された作者視点の史実描写が、それを後押ししているのかも。 本書で繰り広げられる諜報と防諜のせめぎ合いは、謎解き要素もあるし、ひりつくような駆け引きもあって手に汗に握る。特に終盤の逃走劇は祈るようにして読み進めた。麻田の上司である堂本の、掴みどころのないミステリアスな雰囲気も魅力的だ。 表紙を飾るのは南洋桜とも呼ばれる鳳凰木。サイパンでは至る所で見られる木だというが、その燃えるような赤は神々しい。日本人として、言葉に表せない色んな想いが込み上がってきた。国力、死生観、家族への想い、読後じんわり考えさせられた。もし自分がこの時代に生きていたらどう行動していただろうか?当時国の舵取りをしていた上層部に、堂本少佐のような“先見の明”があったなら…因果ずら
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サイパン島を舞台にした大戦前夜のひとりのスパイの物語。 意図せずに宿命に翻弄され海軍のスパイとなった文人の命を賭して伝えたかったこと、それは命を大切にする事。 どんなに周囲が戦争の熱に浮かされ命を軽々と扱っていた時代でもしっかり伝えたかった事。 兎に角面白く読了しました。
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戦争を回避すること。それがベストだと思っても、何か行動に移すことができる人がどれほどいるだろう。戦争がテーマの物語で主人公が軍の人となると共感できないことが多いけど、この作品は別。 堂本や麻田の生き方が人間らしく思えて、だからこそ悲しくて… 開戦前、スパイが入り乱れているサイパン...
戦争を回避すること。それがベストだと思っても、何か行動に移すことができる人がどれほどいるだろう。戦争がテーマの物語で主人公が軍の人となると共感できないことが多いけど、この作品は別。 堂本や麻田の生き方が人間らしく思えて、だからこそ悲しくて… 開戦前、スパイが入り乱れているサイパン。こんな疑心暗鬼になりそうな状況が実際にあったのか。 読み終えて改めて見ると、表紙の血のような赤さの南陽桜が何とも切ない。
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狂っている。 戦争直前、戦中の日本は、日本という国に貢献できなければ自決を選ぶ。 そんな価値観が大勢を占め、生を全うしようとする者は、自死を強要されるほど疎んじられていたのか。 戦前、戦中の、「日本のために自らの生命を捧げる価値観」というのは、戦後の教育により明らかになっている。 今でも、世界の各地で、内戦や戦争、相手の生命を奪おうとする行為を「正当」とする価値観がまかり通っている。 人として、生きとし生けるものとして、自らの生命や、自分に繋がる大切な生命の存続を希うことは、どんな状況下においても当たり前であってほしいと思う。 「生存本能」や「他者への優しさ」 そういうものが当たり前であってほしい そう感じさせてくれた、素晴らしい小説であった。
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読みやすかった。戦前のサイパンの状況がわかった。表紙の樹木は南洋桜 鳳凰木なんだろう。赤い花はなんだか哀しかった。
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評判が高かったので。 ものすごく面白かった。 スパイの話=ジョーカーゲームのD機関に似た話かなと思っていたけれど、人間の内面もしっかり描かれ、苦悩や迷いにも共感できる。 また、サイパン島という狭い世界が舞台なのもイイ。 綱渡りの会話のシーンは、手に汗握る臨場感もある。 物語の...
評判が高かったので。 ものすごく面白かった。 スパイの話=ジョーカーゲームのD機関に似た話かなと思っていたけれど、人間の内面もしっかり描かれ、苦悩や迷いにも共感できる。 また、サイパン島という狭い世界が舞台なのもイイ。 綱渡りの会話のシーンは、手に汗握る臨場感もある。 物語の性格上、続編はない(だろう)のが残念。 表紙に触れられている方が多かったけど、確かに最後まで読むと、感慨深い。
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1940年 太平洋戦争勃発前 南洋サイパン 高校英語教師を 喘息のため辞し 南洋庁サイパン支庁庶務として勤務することになった麻田 堂本少佐の元 日本海軍のスパイとなることが 条件だった イメージしていた訓練されたスパイ小説とは趣きが違いました スパイの密命を受けた麻田は 東大を...
1940年 太平洋戦争勃発前 南洋サイパン 高校英語教師を 喘息のため辞し 南洋庁サイパン支庁庶務として勤務することになった麻田 堂本少佐の元 日本海軍のスパイとなることが 条件だった イメージしていた訓練されたスパイ小説とは趣きが違いました スパイの密命を受けた麻田は 東大を卒業して 英語は堪能であっても一般人 妻と子を養うための仕事なのです この麻田が堂本少佐指示の元 サイパンで起こった 自殺、心中、他殺 それぞれの事件にスパイ活動が絡んでいないか 彼なりのやり方で検していきます 日本統治下、南進の前衛地 あらゆるスパイが混在して スパイ小説の要素は大きい 素人スパイの麻田の成長も緊張感を持つ それ以上に サイパンでの 日本人に支配された島民の扱いの理不尽さ 日本からの移民の中での区別 軍人であるか民間人であるかという区分 海軍と陸軍の対立となる図式 混沌とした楽園での それぞれの生き抜き方を読むのも魅力かなと思う 堂本少佐の日本を守るため戦争をさせないという使命感 非戦のための諜報活動 戦争を回避できなかった時死を選んでしまう スパイとしてではなくて軍人としての生き方 その対比としての 民間人麻田の生に対する固執 戦争は軍人だけでなく あらゆる人を巻き込んでいったのですね
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