ラウリ・クースクを探して の商品レビュー
エストニアがIT先進国になるずっと前にゲーム開発に取り憑かれた若者を探して。 その探しているのが誰か?最初はノンフィクションライターか何かと思っていたら、後半にその人が明かされてびっくりする。 冒頭に「ラウリ・クースクは何もなさなかった」と記載されているが、読み進めるにあたり何か...
エストニアがIT先進国になるずっと前にゲーム開発に取り憑かれた若者を探して。 その探しているのが誰か?最初はノンフィクションライターか何かと思っていたら、後半にその人が明かされてびっくりする。 冒頭に「ラウリ・クースクは何もなさなかった」と記載されているが、読み進めるにあたり何かを成し遂げたのではないかと期待が高まる。が、確かに何も成し遂げてはいない。ただ生き方として何かを残したとは思う。エストニアの独立運動に翻弄された若者として。
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これはラウリ・クースクの「伝記」である。 しかし、「伝記ではない」。 ラウリ・クースクは、1977年 ソ連邦下のエストニアに生まれた。 冒頭で<著者>はいう。「彼は人生において特になにかを成したわけではない。わたしたちと同じように」 ...
これはラウリ・クースクの「伝記」である。 しかし、「伝記ではない」。 ラウリ・クースクは、1977年 ソ連邦下のエストニアに生まれた。 冒頭で<著者>はいう。「彼は人生において特になにかを成したわけではない。わたしたちと同じように」 「へ?」いきなりハシゴを外されたと同時に、こう思った。 「ならば何故、著者はこの作品を書いたのだ?」 がぜん興味を駆り立てられ、読み進めた。 そして、その予感は、、、! ラウリ少年は、黎明期のコンピュータプログラミングにおいて、天賦の才をもっていた。 彼は、同じ才能を持つロシア人の少年イヴァンと出会い、心を通わせる。 しかし、ソ連崩壊とエストニア独立で2人の歯車は狂い出し…..。 ラウリの青春は、希望と喪失によって彩られる。これはやはり私たちの物語なのだ。 そして物語は第二部で唐突に〇〇する! <作者>の〇〇により〇〇〇〇る。なるほどそうくるか……! また、いくつかの伏線が丹念に張られていたことにも気づく。 そこからのお話は、ぜひ読んでほしい。 「幸福な人生とは、他者との友好な関係を築くことだ」といわれる。 「自分を探してくれる人」がいること。 私はそんな幸福を思い、温かな思いに満たされたのだった。 ….久しぶりにアイツに連絡してみるかな、と。
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すごく読みやすかったです! 淡々としてる中でも、歴史に翻弄されていく様子がしっかり書かれていて良かった。ボーンレコードっていうものを初めて知りました…。
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自分と同じ年に生まれた人たちが主役の物語。場所は旧共産圏。日本でのんびりと過ごしていた自分には想像もつかないような政治の季節の中に今もある彼らの物語も夢中になって読みました。
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ゴルバチョフのペレストロイカ前後のエストニアが舞台の「一般人」の物語、とは思わずに読み始めたので、ソビエト連邦から独立を目指す中で、どこで事件に巻き込まれたり、陰謀に関わるのかと思って読んでたら、基本その手のドラマチックなことは起こらない。起こらないけど、天才少年プログラマーだっ...
ゴルバチョフのペレストロイカ前後のエストニアが舞台の「一般人」の物語、とは思わずに読み始めたので、ソビエト連邦から独立を目指す中で、どこで事件に巻き込まれたり、陰謀に関わるのかと思って読んでたら、基本その手のドラマチックなことは起こらない。起こらないけど、天才少年プログラマーだった主人公の友情の物語は、静かに深いリアリティを持って迫ってくる。なんだかキツネにつままれたような、でも読後にスッキリする、不思議な物語だった。次回作にも期待したい。
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また1つ心に響く作品と 出会えたということで 星5つです。 ラウリ・クースク 純粋であるがために 自暴自棄にもなってしまうし 時代に、社会に翻弄されてしまう。 そんな主人公の純粋さに 憧れにも似た魅力を感じるが そうはなれないと知っている自分。 この手の作品を読むと 主人...
また1つ心に響く作品と 出会えたということで 星5つです。 ラウリ・クースク 純粋であるがために 自暴自棄にもなってしまうし 時代に、社会に翻弄されてしまう。 そんな主人公の純粋さに 憧れにも似た魅力を感じるが そうはなれないと知っている自分。 この手の作品を読むと 主人公に感情移入しながら どこか自分自身と向き合うことを 強いられる。 ラウリに共感し、ラウリの人生に 心を打たれるほど、読み手の自分は 純粋なのか?と。 と、まあ読みながら自問自答してたのだが 第二部でびっくり‼️するくらいには 純粋さが残っているみたいだ笑
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国家の独立とは、かくも大変なことなのか。ロシアに翻弄される今、改めて考えてしまった。 あなたに訊く。国とはいったい何? 国を領土とするならば、領土を失ったとき、わたしたちはまた国を失うことになる。 わたしたちは国とは領土ではなくデータであると考える。だから領土を失っても、国と国...
国家の独立とは、かくも大変なことなのか。ロシアに翻弄される今、改めて考えてしまった。 あなたに訊く。国とはいったい何? 国を領土とするならば、領土を失ったとき、わたしたちはまた国を失うことになる。 わたしたちは国とは領土ではなくデータであると考える。だから領土を失っても、国と国民のデータさえあれば、いつでも、どこからでも国は再興できる
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ラウリ・クースクを探して 素晴らしい作品でした。 美しい国の美しい自然の描写もあり 色彩も豊富なのでしょうが、 社会主義国特有の色合いが作品全体にほどよく漂い、 またそれが深みを出し、 まるで実際に見えているかのような感覚で読み進めていました。 天才といっても過言ではな...
ラウリ・クースクを探して 素晴らしい作品でした。 美しい国の美しい自然の描写もあり 色彩も豊富なのでしょうが、 社会主義国特有の色合いが作品全体にほどよく漂い、 またそれが深みを出し、 まるで実際に見えているかのような感覚で読み進めていました。 天才といっても過言ではないラウリ。 生きにくい世界の中で 無から有を作りだす少年。 生まれた時代が早すぎたのか‥‥‥ 西側諸国に生まれていたのなら‥‥‥ 普通とは何か、 周りと違うと変わっていると思われてしまう そんなラウリにとって、 イヴァンとの出会い あの夏の3人での出来事。 ラウリ、イヴァン、カーテャ3人とも大丈夫。きっと大丈夫。 何があろうとも3人で過ごした日々は彼らにとってかけがえのないものだから。 私はそう信じています。
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読み進むほど夢中になったストーリー展開。コンピュータが生活の一部になりつつあったそれこそ今から40年以上前、ラウリやイヴァンのようにCOBOLやBASICといった情報処理言語でのプログラミングの授業があった私の高校時代(歳がバレます…)を思い出しました。今から思えばもっと一生懸命...
読み進むほど夢中になったストーリー展開。コンピュータが生活の一部になりつつあったそれこそ今から40年以上前、ラウリやイヴァンのようにCOBOLやBASICといった情報処理言語でのプログラミングの授業があった私の高校時代(歳がバレます…)を思い出しました。今から思えばもっと一生懸命学んでおけば良かったと今後悔してます。主人公達もその頃の時代の子達で、社会の変化や環境に翻弄されて子供の頃抱いていた道とは違った未来に今いるのかもしれないけど、ラストの再会の場面が本当に良かった。バルト三国の実情等もしれて納得の内容でした
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プログラミングという、理解者の少ないテーマが文学になる。 IT立国エストニアの建国、黎明期を生きた天才が歴史に翻弄されながら、それでもしたたかに生きる希望の物語。 才能、友情、技術、現代史が絡み合い、ミステリの要素まで盛り込んだ重厚さなのに爽やかな読後感。 良い本を読んだ。
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