百年の子 の商品レビュー
人類の歴史は百万年。 だが、子どもと女性の人権の歴史は、まだ百年に満たない。 この文章に惹かれて読んでみた。 学年誌を出版するとある出版社を舞台に、戦中〜令和に至る祖母、母、孫三代の女性の物語。 戦争が奪うもの、知らぬ間に巻き込まれていく時代の流れの怖さ、蔑ろにされてきた女性や...
人類の歴史は百万年。 だが、子どもと女性の人権の歴史は、まだ百年に満たない。 この文章に惹かれて読んでみた。 学年誌を出版するとある出版社を舞台に、戦中〜令和に至る祖母、母、孫三代の女性の物語。 戦争が奪うもの、知らぬ間に巻き込まれていく時代の流れの怖さ、蔑ろにされてきた女性や子供の人権、そして仕事への矜持などさまざまなテーマを盛り込んだ物語。 意図せぬ人事に腐っていた主人公・市橋明日花の成長は清々しく、辞めるつもりで破れかぶれだった野山彬が目の前の仕事に懸命に取り組んでいく姿は応援したくなる。 「もしかすると、人は生まれた時から全てを持って、それを何一つ損なうことなく老いていくことこそが、自然なのかもしれない。なにも変わらない。何も失われない」 ラストのこの言葉が心に残った。
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心の中のモヤモヤする部分直撃ですね。 女性の生き方のなんと難しいことか。 たくさんの先達の努力があって今ここがあるのに、それでもまだこんなに苦しい。 どうすれば正解に近付けるんでしょうか。
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古内一絵さんの作品は心が温かくなり読後気持ちが柔らかくなります。 この作品もスケールが大きいですが、子供の頃手にした『小学一年生』を題材しているので親近感が湧きました(*´꒳`*)
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最後は涙で読み終えました。時代の変化で無くなってしまった雑誌ですが、学年が1つ上がった4月号を手にした時の高揚感は忘れられません。戦争や災害のない穏やかな日々が過ごせる世界であることを願います。
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壮大な物語、最後の方は泣きながら読みました まるで傑作朝ドラを1シリーズ見終わったような読後感 でも朝ドラとかで見るとどこか遠い世界に感じられた戦争体験記が、この物語では色んな立場の人の痛みが伝わってきて、今も世界のあちこちで戦争が起こっていることに初めて本心から反対する気持ちや...
壮大な物語、最後の方は泣きながら読みました まるで傑作朝ドラを1シリーズ見終わったような読後感 でも朝ドラとかで見るとどこか遠い世界に感じられた戦争体験記が、この物語では色んな立場の人の痛みが伝わってきて、今も世界のあちこちで戦争が起こっていることに初めて本心から反対する気持ちや憤りが芽生えた 加えて女性と子供の権利については最近考えることが多くて、過激にならずに考える機会を与えてくれるこういう作品がもっと増えればいいなあとも思った 手塚治虫を始めとする色々な作家についてや学年誌の歴史も、フィクションとは言え実在する人や雑誌等が基になっていると思うと興味深かった 自分が所属する社会や集団の流れに飲まれることなく、疑問を持ち続ける、考え続けることって、しんどいけど本当に大事 そして「後悔のないようにするのが一番です」よね 人にも薦めたくなる間違い無しの素晴らしい作品でした
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『~♪ピッカピカの一年生♪~ の物語』 子供のころにお世話になった小学館の学年誌。 付録が待ち遠しかったな~。 そんな懐かしい子供の頃を想い出させてくれる本作。 昔の漫画や児童文学を無性に読みたくなってきた… 人間の歴史は百万年 子供の歴史は百年 私の…?
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子どもと女性の歴史は百年という 始まりと百年目の昭和と令和を交互に語られていく。 無邪気な子どもが、そうでなくなるのは、 型にはめる教育が抜けないからだというが、 学校では?家では?近所では? 子どもと関わる全ての大人の責任だと思った。 昭和なら、日本は勝つ、神の国、アメリカ...
子どもと女性の歴史は百年という 始まりと百年目の昭和と令和を交互に語られていく。 無邪気な子どもが、そうでなくなるのは、 型にはめる教育が抜けないからだというが、 学校では?家では?近所では? 子どもと関わる全ての大人の責任だと思った。 昭和なら、日本は勝つ、神の国、アメリカは嫌なやつ、 そう書かれていた雑誌が世に回り 子どもたちの目にも頭にも入っていたのに、 その雑誌が戦争に負けた途端、 負けから成長しよう、日本は清い国、アメリカは友だち などと書かれ始めた当時の子どもたちは どう思ったんだろう・・・。 文学の楽しさを見出していただけなのに、 そんな雑誌を世にばらまくから 戦争への意気込みがたきつけられたと わが子を失った婦人の怒鳴る姿は 読んでいて心がとても痛かった。 子どものための文学誌、今の子どもたち、 それらが昭和からどのように変わって どのように成長してきたか。 読みやすい物語とともに、勉強になる本でした。
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出版社で働く明日花と祖母のスエ 学年紙100年記念行事を企画開催するにあたり異動させられた明日花が、母親同然に育ててくれた祖母のスエの名前を当時の社員名簿で見つける。 コロナ禍の令和と、戦時中、戦後の昭和を交互に物語は進む。 重ため内容だなと思い、まとまった時間の取れるときに背...
出版社で働く明日花と祖母のスエ 学年紙100年記念行事を企画開催するにあたり異動させられた明日花が、母親同然に育ててくれた祖母のスエの名前を当時の社員名簿で見つける。 コロナ禍の令和と、戦時中、戦後の昭和を交互に物語は進む。 重ため内容だなと思い、まとまった時間の取れるときに背筋を正して挑みました。 読んでたなぁ、「小学○年生」 いつまで読んだかなぁ
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すごく読み応えがあった。ある出版社の百周年企画に携わる事になった女性編集者から話が始まり、戦中戦後、児童向け雑誌の歩みが人々の物語と共に描かれている。私にも懐かしい『小学◯年生』に このような歴史があるのかと とても面白かった。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
著者が、2022年に創立百周年を迎える小学館の記念作品を書いて欲しいと編集者からオファーされてものした書下ろし小説。そのまま歴史小説にするのではなく、うまく換骨奪胎してフィクションとして仕上げた。 社業の周年を記念した小説なら、毎日新聞社のことを扱った原田マハの『翼をください』が思い出される。 https://booklog.jp/users/yaj1102/archives/1/462010745X こちらも、史実をそのままなぞるのではなく、すこしフィクションを交えた設えとなっている点も似ている。 小学館は学年誌から始まった会社。要はその学年誌も創刊百周年ということになる。学年誌とは、我々昭和の世代は大いにお世話になった、学年ごとの「小学〇年生」というあの雑誌だ。要は、子ども向けの雑誌だが、その創刊の意義、教育の一環としての存在、そして百年間にあった様々な毀誉褒貶の歴史を、今現在の激動の時代の、ある意味「鏡」として描いたところがお見事。 文林館(=小学館のこと。作中の名称)で働く令和を生きる主人公の女性(市橋明日花)と、その祖母のスエ。スエは戦火の最中に文林館に一時勤務したことがあり、祖母が働いた軍国主義が台頭著しい昭和の時代と、孫の世代の現代が交互に描かれ、当時の過ちを二度と犯してはならないという思いを読者に訴える。 そのために、子どもにいかにものごとを伝えるか、正しい教育とは、子どもはどうあるべきかという問いにもつながっていく、なかなか大きなお話となっていく。 タイトルの「百年の子」は、作中の登場人物、児童文学作家の斎藤三津彦(佐野美津男がモデル)の 「人類の歴史は百万年。されど、子どもの歴史はたった百年」 というセリフからだ。 「子どもは誰かの所有物ではない。 鋳型にはめられないように、自分の頭でしつこく考える。それが児童文学の仕事。」 と、子どもへの教育がいかに大切かを語る。 一方で、女性の社会進出がようやく果たされてきた(まだまだだけど)、この百年の日本の歴史も概観し、さらには、出版業などメディアの責任や矜持などについても言及する欲張りな作りになっている。 小学館創立百年の2022年に間に合わなかったのは残念だったかな。 それでも、そのおかげ(?)で、2022年に勃発したウクライナ戦争にも最後に触れることができた。そこは怪我の功名。イスラエル・ハマス衝突も激化しキナ臭さを増す世に問う、意義深い好著となった。
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