百年の子 の商品レビュー
令和の時代、文林館で働く明日花はファッション誌から「文林館創業百周年記念 学年誌創刊百年企画チーム」の広報担当への異動にやる気をなくす。その中、100年の歴史を知っていくなかで、祖母スエが戦時中、学年誌の編集に関わっていたことを知る。ここから、令和の明日花と昭和のスエの物語が交互...
令和の時代、文林館で働く明日花はファッション誌から「文林館創業百周年記念 学年誌創刊百年企画チーム」の広報担当への異動にやる気をなくす。その中、100年の歴史を知っていくなかで、祖母スエが戦時中、学年誌の編集に関わっていたことを知る。ここから、令和の明日花と昭和のスエの物語が交互に紡がれていく。そして、二人の物語が繋がっていくことになるラストに涙した。 タイトルにある「百年」は、スエから明日花へ続く100年であり、文中に何度か出てくる「人類の歴史は百万年。されど、子どもの歴史はたった百年」の100年なのだろう。 「子どもの歴史はたった百年」。百年、その意味は、子どもの人権が認められるようになってきたのは、わずか百年、ということ。「私たちは子ども観についてはまだまだ未熟。なのに、おとな達がその時に拠っている社会情勢や権力に合わせて子どもを鋳型に当てはめるように育てれば、子どもはそもそも備わっている能力や個性を十分に発揮することができない」との言葉が出てくる。 あの戦時中、子どもが子ども時代を楽しめることなく、銃後へとかりだされた。能力や個性を発揮するどころか、これからの人生があったのに、戦場へと否応なくかり出され、命を奪われた若者達がどれほどいたことか。 そんな過ちをくり返さず進んで行きたい。 そんな思いも感じた一冊。読んで良かった。
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そでの文章はメインテーマでもあり、裏返しでもあるのか。90代の知人が最近話してくれた内容と繋がるものがあり、改めて、現代に生きることが出来た有り難さ等を実感。
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Audibleで読了。 戦中のメディアが受けた言論統制。それを読んで育つ子どもたち。大人も世間の大きな風潮の影響を受けていた。 21世紀にはメディアも多様であるが、何を信じるかは個人でコントロールできそうで、できるものではない。一人一人が信じる方向が流れを作るのであれば、それは大...
Audibleで読了。 戦中のメディアが受けた言論統制。それを読んで育つ子どもたち。大人も世間の大きな風潮の影響を受けていた。 21世紀にはメディアも多様であるが、何を信じるかは個人でコントロールできそうで、できるものではない。一人一人が信じる方向が流れを作るのであれば、それは大きな強い流れとなって世の中を動かしていくということを意識しなければいけないと思う。
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昭和初期から令和に至るまでの文林館という出版社を舞台に綴られる物語。物語は、主人公の明日花が、ファッション誌から、100周年記念企画へと配置換えされたところから始まる。同僚への不満や母娘の確執の物語かと思ったが、祖母のスエが文林館に勤めていた事実が発覚するや、大きく時間を巻き戻し...
昭和初期から令和に至るまでの文林館という出版社を舞台に綴られる物語。物語は、主人公の明日花が、ファッション誌から、100周年記念企画へと配置換えされたところから始まる。同僚への不満や母娘の確執の物語かと思ったが、祖母のスエが文林館に勤めていた事実が発覚するや、大きく時間を巻き戻し昭和初期へといざなわれる。戦争中の出版がどのように規制され、そして戦後に、どれだけ矢面に立たされたかがわかる。 今だからこそ、読んでほしい本の1冊であり、読み手各々が、ゆっくりタイトルの意味を考えてほしいなぁと思った。 Audibleで。石田ひかりさんのナレーションが、とてもよかった。
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祖母の生きた戦時中の昭和と、学年誌児童出版局で働く令和を生きる明日花。 2人の共通点は同じ文林館で働いていたという事。 それと母子なのに心が通い合わなかった明日花の母待子とのそれぞれの関係。 学年誌100年を調べるにつれ戦時中の知らない話が沢山登場し、とても興味深かったです。 『...
祖母の生きた戦時中の昭和と、学年誌児童出版局で働く令和を生きる明日花。 2人の共通点は同じ文林館で働いていたという事。 それと母子なのに心が通い合わなかった明日花の母待子とのそれぞれの関係。 学年誌100年を調べるにつれ戦時中の知らない話が沢山登場し、とても興味深かったです。 『人類の歴史は百万年。されど、子どもの歴史はたった百年』 まだまだ私達はこれからも足掻き前に進んでいかないといけないんだなと思いました。
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小学館の児童向け雑誌の百年の変遷を実話ベースで追ったフィクション。 こんな歴史があったんだ、と興味深く読んだ。 ひとつ、違和感があったところ。 戦争中、変節し、大政翼賛的になってしまった作家たちに対して、芸術家の「性(さが)」として擁護する主人公の考え方。 これは肯定したくな...
小学館の児童向け雑誌の百年の変遷を実話ベースで追ったフィクション。 こんな歴史があったんだ、と興味深く読んだ。 ひとつ、違和感があったところ。 戦争中、変節し、大政翼賛的になってしまった作家たちに対して、芸術家の「性(さが)」として擁護する主人公の考え方。 これは肯定したくないのだが。 筆を折ることもできたはず、決して体制にすり寄らなかった作家も実際にいたのだし。戦争を賛美し、子供に兵隊になることを促したという事実から目を逸らさずに、大いに恥じて大いに反省し、そしてそこから這い上がっていくしかないのではないだろうか。 雑誌が辿ったそういう変節をきちんと見つめる視点もあった作品だけに、最後の場面での作家たちへの同情と「容認」は違和感があった。
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「朝ドラみたい」とレビューで見かけ、それは読んでみたい‼︎と思い手に取りました。読み終え、本当に朝ドラみたいでした。じんわりと心に響いてくるお話でした。 出版社の文林館で働く、令和の明日花、昭和40年代の野山、昭和20年前後の明日花の祖母のスエの三人の視点で話が進みます。それぞ...
「朝ドラみたい」とレビューで見かけ、それは読んでみたい‼︎と思い手に取りました。読み終え、本当に朝ドラみたいでした。じんわりと心に響いてくるお話でした。 出版社の文林館で働く、令和の明日花、昭和40年代の野山、昭和20年前後の明日花の祖母のスエの三人の視点で話が進みます。それぞれの時代を生きた三人の話を読むと、戦時下の出版社の苦労、表現の自由、戦争とは何か?など考えさせらことばかりでした。 特にスエの話は悲しかった。スエたちがラジオで敗戦を知った時、みんなで大泣きした場面は苦しかった。日本はもう負けると分かってても、現実から目を逸らし日本は勝つと言い続けた。そうしないとみんな心が折れてしまうから。それが当たり前の日常というのは、私は耐えられないだろう。 昭和40年代の野山の話は面白いなと思った。たぶんあの有名な漫画家だと思うのだけど、少し字を変えて登場した。大人の事情でそうなったんだと思うけど、もうそのまま名前出してしまえばいいのに。編集者たちが奔走して学年誌『学びの一年生』を作るのを読むのは楽しかった。でも、ここでも戦争の影響が…。戦争を風化させてはいけない、伝えていかないといけないという想いがとても伝わってきました。 そして、令和の明日花。先輩たちの思いをどう受け止めるのか?
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心に残だろうなと感じられる作品。小学生の頃に読んだ「小学◯年生」は戦前戦中戦後とこんなに長く深い激動の歴史がありたくさんのことを乗り越えてきた人々がいた。五年生の五の字の上一本線を取り除き自由に伸びてゆくものに蓋をするべきではないとした創業者の思いが熱く心が動かされる。そんな思い...
心に残だろうなと感じられる作品。小学生の頃に読んだ「小学◯年生」は戦前戦中戦後とこんなに長く深い激動の歴史がありたくさんのことを乗り越えてきた人々がいた。五年生の五の字の上一本線を取り除き自由に伸びてゆくものに蓋をするべきではないとした創業者の思いが熱く心が動かされる。そんな思いがあっても戦中の荒波に呑まれ戦争を煽ってしまう雑誌になっていたことが悲しい。現代の明日花、戦中のスエや円、戦後の野山、いつの時代も苦境は多いししんどいけどここでのみんなの生き方を眩しく感じる。子どもと女性の人権の歴史はまだ百年だ。
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どんぐりさんのレビューを読んで、朝ドラのようなと聞いたら読むっきゃない!と図書館で探したら私を待っていたかのようにいた!ので借りてきました。 本当いいドラマを一本見終えたような読後感。 現在と過去とが交互に展開されてそれが少しずつ繋がっていく。 彬さんが出会ったあの人が最後の一押...
どんぐりさんのレビューを読んで、朝ドラのようなと聞いたら読むっきゃない!と図書館で探したら私を待っていたかのようにいた!ので借りてきました。 本当いいドラマを一本見終えたような読後感。 現在と過去とが交互に展開されてそれが少しずつ繋がっていく。 彬さんが出会ったあの人が最後の一押しで出会わせてくれたあの人が、あの人だと分かった時には思わず声が出て娘を驚かせてしまったわ。 戦時中の描写は私が今まで読んできた中でもなかなかにリアルで、空襲の中を逃げるっていう恐ろしさが目に見えるようだった。 絡まった糸が解けていく様子がまた良くてね。 終わり方も朝ドラとして完璧。 いやぁ良いもの読みました。 どんぐりさんのおかげでいい本に出会えました。 ありがとうございます。
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最初の頃は読んでも読んでも全然進んでいる感覚がなくて、挫折本なのか……と思い焦りもあったけれど、戦争時の社内名簿に祖母の名前を見つけた辺りからはどんどん進んでいる感覚があって、実際にスラスラ読めたし面白くて時間許されるならずっと読んでいたいって思うようになっていった。 令和の時...
最初の頃は読んでも読んでも全然進んでいる感覚がなくて、挫折本なのか……と思い焦りもあったけれど、戦争時の社内名簿に祖母の名前を見つけた辺りからはどんどん進んでいる感覚があって、実際にスラスラ読めたし面白くて時間許されるならずっと読んでいたいって思うようになっていった。 令和の時代(学年誌100周年)と昭和の時代(戦争中)と行ったり来たりの構成で、登場人物の相関図が徐々に広がっていき、二つの時代が一つにつながる…… ここでこの人の出来事がつながるのかぁ〜とか、この人生きててこう来るのか〜とか、ワクワクが止まらない! 不思議な、ワクワクする世界観すごく良かった。 戦争について語れる人が減っている今だからこそ、こんな時代があったんだよ、こんな事してたんだよって知れるきっかけでもある。戦争中に雑誌出版の制限や他にも制限があったなんて知らなかったし、その中で歴史のある学年誌が実際存在している訳だから、様々な制限を切り抜けてきたんだな〜と思うと感動する。色んな人の手で受け継がれてきて、今も継続している人がいて、受け継ごうとしているって思うと鳥肌モノ。 戦争がテーマに入っていると暗いイメージがあるけど、そんな暗さはなくて、よく聞く戦争の話題にはない分野でもあるから気にせずに読める。 色んな人に読んで欲しい1冊。、
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