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琥珀の夏 の商品レビュー

4

191件のお客様レビュー

  1. 5つ

    52

  2. 4つ

    69

  3. 3つ

    50

  4. 2つ

    5

  5. 1つ

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2023/10/12
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

 読後の感想は(というか途中からずっと思っていたのですが),「辻村深月,すごい作家になったものだ」です.一気読みではもったいない,じっくりかみしめながら味わう作品でした.  まず驚いたのは,このご時世に理想的とも受け取れるカルト的な団体を描いていること.しかも,その団体に潜む危うさと少女時代の淡く美しい思い出を上手く混じり合わせて描き,緊張感あふれる物語を紡ぎ出している(このあたり,さすが辻村先生という感じです).  団体を(まっとうに)批判する元先生から受ける違和感や,カルト団体と関係していたことについての世間に対する恐れや,子供との接し方についての話を挟み,ミステリー的な要素も加味しながら物語は展開して行き,最後に田中美夏がかたくな理由や「子供のため」を理由にした大人達の浅はかで残酷な仕打ちが明らかにされる.  様々な角度から考えさせられる,実に味わい深い作品でした.

Posted byブクログ

2023/10/14

なんだろう、部分部分はゾクゾクするような描写があり確かに物語にも引き込まれるのですが後半に入ったあたりからこの作品は何を言いたいのかと考えた時にその答えが見いだせず、そのまま最後まで読み進んでしまいました。 子供の頃の泉での猫写、マンションのリビングでの娘との猫写、思い出しても...

なんだろう、部分部分はゾクゾクするような描写があり確かに物語にも引き込まれるのですが後半に入ったあたりからこの作品は何を言いたいのかと考えた時にその答えが見いだせず、そのまま最後まで読み進んでしまいました。 子供の頃の泉での猫写、マンションのリビングでの娘との猫写、思い出してもゾクゾクします。一週間の集団生活も私が小学生の頃に行った塾の勉強合宿と重なり感情表現が胸を打ちます。しかし全体が訴える物が弱いんですよね。ミライの学校がもっと大人のドロドロした欲にまみれた存在であれば違ったのかもしれません。あの日の宿舎での描写が痛々しくもどこかソフトに感じたことと、憧れの先生の裏の顔が描かれていればと思いますが、それはそれで作者の思うところとは違うのだろうなとも思います。 大人の傲慢に振り回された子供の話にするならどこか弱い。しかし大人の欲望に振り回された話とまでは言い切れない。子供の頃の少し変わった夏の思い出にスパイスを沢山足した感じでした。

Posted byブクログ

2023/10/11

ちょっと期待しすぎた… わたしは【ミライの学校】の存在がそんなに悪いことじゃないって思ってしまった 宗教ってなるとちょっと…ってなるけど、田舎に住んでるからか都会から1週間過ごす分にはいいんじゃない?って。 親元からずっと離れて子供たちだけで過ごして育つことには疑問もあるけど…...

ちょっと期待しすぎた… わたしは【ミライの学校】の存在がそんなに悪いことじゃないって思ってしまった 宗教ってなるとちょっと…ってなるけど、田舎に住んでるからか都会から1週間過ごす分にはいいんじゃない?って。 親元からずっと離れて子供たちだけで過ごして育つことには疑問もあるけど… 難しい。白黒つけられるような話じゃないと思う。 宗教だろうがなんだろうが、当人たちが良いと思えば良いんだろうし、それらを他人がどうこう決めることではないって思った。

Posted byブクログ

2023/10/10
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

子供と子育てについて様々な視点から体験することができ、自身にとってはとても参考になった。 どの視点に立っても「なるほど、よく分かる」と思わされた。 話自体はとても良かったです。ただ、一点だけ。 大人になった美夏ちゃんが、法子ちゃんに急に真実を話したくなった、そのきっかけだけが理解できません。

Posted byブクログ

2023/10/12

うーん、、、面白かったけど。期待値ほどではなかった。登場人物が多く、脇役の描写はもう少し丁寧に描いて欲しかった。カルト宗教という設定自体が興味深く惹きつけられたが、登場人物の奥の部分というか背景をもう少し知りたかった。

Posted byブクログ

2023/10/03

私も施設で育ったから気持ち分かるよ 余談,,,又吉直樹大先生は、「学生時代の友達なんて、なんの意味もない。家が近い、親が仲良い、習い事が同じ、とかそんなレベルの事。大人になれば価値観の合う友達が出来るから、そちらの方がよっぽど意味のある友達だ」と。

Posted byブクログ

2023/10/02

かつてカルトと批判された団体『ミライの学校』敷地で発見された女児の白骨死体。 30年前、『ミライの学校』の『学び舎』での合宿に参加した経験を持つ、弁護士となった法子。 白骨死体は、友だちになった彼女ではないか…と。 そんな法子のもとに、白骨死体の身元確認を『ミライの学校』と交...

かつてカルトと批判された団体『ミライの学校』敷地で発見された女児の白骨死体。 30年前、『ミライの学校』の『学び舎』での合宿に参加した経験を持つ、弁護士となった法子。 白骨死体は、友だちになった彼女ではないか…と。 そんな法子のもとに、白骨死体の身元確認を『ミライの学校』と交渉して欲しいとの依頼が… 白骨死体はいったい誰なのか?? カルト。カルト教団の狂気による被害、を想像していたが… 『ミライの学校』、なんなんだろう?? 実際のモデルがあるんだろうか、想像がつかない… カルトにまでなるなんて、もっと宗教的なバックがあるのかと思ったが… でもそこに関わるひとたちにとっては、宗教的なものになるんだろうが… 親と子の在り方について考えさせられる。 子どもの自立を促すにはいいのかもしれない。 ただ、幼い子どもを物心つく前から親と離れて暮らさせることができるだろうか?? さすがにそこまでは… それは育児放棄ではないのか?? ミカの両親のように、20歳すぎてから、一緒に暮らしてもいいと言われても… 何か、子どものため、といいながら、本当に子どものことを考えているのか、と、思ってしまう。 親がいいと思ったことを子どもに押し付けているだけなんじゃないか。 『大丈夫』、何が大丈夫なのか… 結局、大人たちの都合で隠蔽されなければならなかったんだろう。 自分たちの秘密が明らかにならないように。

Posted byブクログ

2023/09/30

ミライ、問答、自習室などのワードがその団体の奇妙さをうまく表現している。 子供達の心理描写を的確に表現し、ストーリーも過去、現在と進み飽きさせない。 何が正義かは色々な尺度があると思う。

Posted byブクログ

2023/09/29

読んでいる間も、読み終わってからも、不思議な、複雑な感情が、じわっと、存在している感じ。 もし仮に、この作品を数年後に読み返したとしても、この複雑さはそのまま存在し続けるだろう。 <ミライの学校>という団体の施設の跡地で、白骨遺体が発見される― そんな事件から始まり、主人公の近...

読んでいる間も、読み終わってからも、不思議な、複雑な感情が、じわっと、存在している感じ。 もし仮に、この作品を数年後に読み返したとしても、この複雑さはそのまま存在し続けるだろう。 <ミライの学校>という団体の施設の跡地で、白骨遺体が発見される― そんな事件から始まり、主人公の近藤法子は、弁護士としてこの事件に関わっていくことになる。 そして、弁護士として関わるずっとずっと前から、法子は、この団体を知っていたのだ。 辻村さんの子どもの感情の描き方は本当に丁寧で、今回は、「あなたのためを思って」という、大人がよく子どもに発するこの、良かれと思ってされた表現が、後々その子どもを、ひいては大人になったその人をどれほど苦しめるか、ということが608ページに渡って描かれている。 解説は、こちらも少女の心を丁寧に描くことに長けた、桜庭一樹さん。 解説にあった、愛と平等の話が印象的。 P614「わたしは、子どもには<愛>と<平等>の両方が必要だったのだな、と読後にしみじみ考えた。家庭などのプライベート空間には<愛>があり、学校などの学びの空間には<平等>がある、それが理想だといったら、理想を語りすぎだろうか?」 P614「残酷な現実ではあるけれど、学校であれ、家庭であれ、理想的とはいえない環境で生きのびるしかなかった子どもは、いびつな足場に合う独自の魂の形を作って成長し、その形に固まり、自分だけのバランスでかろうじて立っているような大人になるのではないかと思う。そうやって生き残り、大人になってから、『その足場、間違ってますよー』と誰かの手で正しいものに急に変えられたりしたら、逆にバランスが取れなくなって倒れてしまうかもしれない。」 (これはトー横とかの子どもがまさにそうだと思う) 仕事で出会う保護者や子どものことを思う。 例えば保護者は、子どもが学校に行かないことに、困り果てている。保護者と話していると、「子どものためを思って」いることが多い。だけど、子どもは保護者と同じ方向を向いていなかったり、保護者が、「子どものためを思って」用意した道が合わなくて苦しんでいたり、家庭環境が複雑だったり。 子どもの話を聞くと、「そんな風に思ってたんだー!」ということも多々。 解説にあるように、足場が急に倒れることは、誰にとっても苦しい。だから、保護者も子どもも、少しずつ別の価値観や選択肢を知って、いびつな足場を自分で調整したり、受け止めたりできるようになれたらいいなと思う。 「こうしたら楽なのに」と思うことや、大人が代わりにやってあげられることだってたくさんあるけれど、それを子どもが自分で選んだり決断することが大切で、その選択や決断が子どもにとって苦しいものであっても、いろんな感情と向き合って、「自分で選んだ」「自分で決めた」ことを尊重してエールを送りたい。 その大切な瞬間を「あなたのためを思って」奪って、代理で決めてしまうことは、結果として子どもを苦しめる。 遠回りをしてでも、不登校の期間が多少長くなっても、子どもがじっくり向き合う時間に、じっくり寄り添う。 あなたのためを思うのなら。

Posted byブクログ

2023/09/28

カルト団体「ミライの学校」の施設から白骨死体が見つかる。弁護士の法子は子供の頃にこの「ミライの学校」の夏合宿に参加した経験があった。もしかしたらあの子の白骨死体なのか? 偶然依頼された仕事から、この白骨死体の謎に法子は踏み込むことになるのだが…。 魅力的な謎と、何が正しさなのかを...

カルト団体「ミライの学校」の施設から白骨死体が見つかる。弁護士の法子は子供の頃にこの「ミライの学校」の夏合宿に参加した経験があった。もしかしたらあの子の白骨死体なのか? 偶然依頼された仕事から、この白骨死体の謎に法子は踏み込むことになるのだが…。 魅力的な謎と、何が正しさなのかを突きつける物語。決してカルト団体を擁護しているわけではないが、立場が違うことで価値観も違うことの難しさに読み進めながら考えさせられる。 「ミライの学校」と向き合うことは、自分の過去に向き合うこと。法子の視点、「ミライの学校」の子どもの視点が交互に語られ、物語の本質に近づく様は読む手が止まらなくなる。さすが、辻村深月さん。

Posted byブクログ