琥珀の夏 の商品レビュー
辻村さんはほんとに子どもの心理描写が的確で、あの頃の、全部わかるわけじゃないけど何かおかしいこと、言語化できない気持ち、社会や大人のグロテスクさを感じた時の衝撃がありありと蘇ってくる。 教育とは、親と子の関係とは、を考えさせられる一冊でもあった。 長かったけど続きが気になって一気...
辻村さんはほんとに子どもの心理描写が的確で、あの頃の、全部わかるわけじゃないけど何かおかしいこと、言語化できない気持ち、社会や大人のグロテスクさを感じた時の衝撃がありありと蘇ってくる。 教育とは、親と子の関係とは、を考えさせられる一冊でもあった。 長かったけど続きが気になって一気に読んでしまった!面白かった…
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誰しもが心当たりがあるであろう、幼少期の友人関係の中のヒリヒリした感情、膨らんだ自意識… 子どもたちを描く辻村さんの文章はいつもリアルで、子どもを侮らずリスペクトしていることが伝わってきて好き。 子どもたちが共同生活を送るカルトと批判された施設が舞台。 教育をめぐる理想は、カル...
誰しもが心当たりがあるであろう、幼少期の友人関係の中のヒリヒリした感情、膨らんだ自意識… 子どもたちを描く辻村さんの文章はいつもリアルで、子どもを侮らずリスペクトしていることが伝わってきて好き。 子どもたちが共同生活を送るカルトと批判された施設が舞台。 教育をめぐる理想は、カルト的なものとグラデーションなのかも。 とても読み応えのある長編。
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辻村深月を紹介してくれた人に,「僕から」貸した「最後の一冊」になった. 返って来てから,ちょっとの間,読むのを躊躇っていた.いつもなら読んだ後に貸していたから,感想を言い合うことも,「構える」事ができたのに,もう時間がないと思ってたから,まだ読んでない,1番分厚い一冊を「読み切る...
辻村深月を紹介してくれた人に,「僕から」貸した「最後の一冊」になった. 返って来てから,ちょっとの間,読むのを躊躇っていた.いつもなら読んだ後に貸していたから,感想を言い合うことも,「構える」事ができたのに,もう時間がないと思ってたから,まだ読んでない,1番分厚い一冊を「読み切るかなぁ」と言いながら借りて行った時,「峻別と希望」が入り混じったような想いだったし,最終日の朝,「今,読み終わりました!」て返して来た時も「あ,間に合った,よかったね」と言う気持ちと「あー間に合ったか」と言う的外れながっかりと…そして,内容を知らないから,最後なのに,いつもの様に感想を言い合えないまま,そのままになってしまった事…なんか手が伸びなくて,返されたまま,置かれたまま,机に置きっぱに…そんなわけで,約1ヶ月を置いて読了. あー,この作品が最後で良かったな,と. …意地悪な辻村深月じゃなくて(笑) 後悔を,こんな風に取り戻せることなんて中々ないけど,いつかは形を変えて取り戻せることもあるのかもね,そんな風にお互い思えてたらいいなぁ,と.
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世界観に引き込まれた。 長い話だったけれど、読み始めたら止まらなかった。 子どもの心情がすごく伝わる文章で、大人になってからも心情の移り変わりがよく分かった。
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団体施設の跡地から、白骨化した子どもの遺体が発見された。その遺体は、弁護士の法子が小学生の夏休み、共に過ごしたミカちゃんでは? 前半の子ども時代の静かで不穏な雰囲気。中盤から後半にかけて、次々と襲いくる痛々しい現実。大人のエゴをグサリと突かれ、読後感は重いが希望が残る。 辻村作...
団体施設の跡地から、白骨化した子どもの遺体が発見された。その遺体は、弁護士の法子が小学生の夏休み、共に過ごしたミカちゃんでは? 前半の子ども時代の静かで不穏な雰囲気。中盤から後半にかけて、次々と襲いくる痛々しい現実。大人のエゴをグサリと突かれ、読後感は重いが希望が残る。 辻村作品は容赦なく、大人のエゴ、子どものエゴ、人間のエゴを突いてくるのに、子どもを含めた人間に対する温かな眼差し・希望が常にあります。 だからこれからも読んでいく。
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読んでいる間も、読み終わってからも、不思議で複雑な感情がじわっと存在している感じ。 「あなたのためを思って」という、大人がよく子供に発するイメージのある、良かれと思ってされた表現が、後々その子供をひいては大人になったその人をどれほど苦しめるのか。 自分自身も子供の頃に経験...
読んでいる間も、読み終わってからも、不思議で複雑な感情がじわっと存在している感じ。 「あなたのためを思って」という、大人がよく子供に発するイメージのある、良かれと思ってされた表現が、後々その子供をひいては大人になったその人をどれほど苦しめるのか。 自分自身も子供の頃に経験したような、胸が締め付けられるような気持ちの数々が丁寧に描かれていました。 辻村さんの心理描写の描き方は丁寧でリアルでだからこそ、読み終えた後は心に重いものがずっしり残って、しばらく引きずりました。
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自分の子どもを〈ミライの学校〉というカルト団体じみた場所に預け、 別々で暮らす。 そんな選択をした親たちに対して、ネガティブな意見が飛び交うのは無理な話ではないと思う。 本書を読み始めた頃の自分も、同じような批判的な意見を持ちながら読んでいた。 当時〈ミライの学校〉で親元を離れ生活していたミカの、「お父さんと、お母さんに会えますように」という切実な願い事を聞いからなおさら。 しかし、後半に向かうにつれそんな先入観が少しずつ打ち砕かれていく。 未来の学校で子供たちは悲しいだったり嬉しいだったり、いろんな感情を覚え、〈問答〉を通して広い世界を想像し、成長していった。 ミカだってたくさんの大人や子供に囲まれ、他よりも成熟していた。 それらの思い出を一言で表すことなんて到底できない。 一切関与していない、それこそ〈ミライの学校〉から販売していた水に不純物が入り込んでいたというニュースが全国に広まり、〈ミライの学校〉を「あの水のね」という認識しかできない完全な部外者。 内情や具体的な子どもたちの生活を知らず、コメンテーターや専門家による情報の印象操作によってでっち上げられた発言だけを鵜呑みにする人たち。 自分もそんな人たちの1人として、「カルト団体」という響きも手伝ってか様々な先入観でとらわれていた。 しかし、〈ミライの学校〉へ子供を預ける親の気持ちも、法子が藍子の通う保育園が決まり心の底から安堵した瞬間と同じように、簡単に言い表せるものではない。 親が子へ注ぐ愛情と〈ミライの学校〉へ預けるという決断は同じ次元では話せない、別々の話。 それらを天秤にかけ、無責任だとか親失格だとか烙印を押そうとするのは周囲のエゴ。 ミカは学生時代、〈ミライの学校〉であんなにも両親と会うことを望んでいたのに、なぜ大人になった今、同じことを自分の子供にも繰り返してしまうのか、最初は 法子と同じように疑問を感じていたけれど、それも一言で理由を求めるのはあまりに傲慢なのだと気づかされた。 完全にミカの気持ちを理解したわけではないし、子供が成長する上で親の愛情は不可欠だと思うけれど、それができない人たちがいる、 離れなければならない事情もある。 「かわいそう」「自分の都合」と批判を投げつける方がよっぽど無責任。 ミカもシゲルも志乃も含め、〈ミライの学校〉で育った子たちにはどうか、社会からの偏見に負けず幸せになってほしいと願わずにはいられなかった。
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自分たちの理想を子供に押しつけ、やっていることが正しいと思わせるのがミライの学校の大人集団。子供達も純粋無垢だからそれが正と思い込み、大人たちの言いなりになってしまうと考えると生まれ育った環境って非常に大事なんだなと思う。しかし、ミライの学校の大人集団が悪って訳でもなく、大人たちも過去の生まれた環境や価値観がきっかけでその教育が正しいと思い込んでいるからちょいと厄介。正解がないテーマだから難しい。 あと辻村作品大好きでスラスラ読めるんだけどこの作品はちょっとグダった。
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星4つの評価です。 人はなんて身勝手なのか。 その感覚、感情、思考を 言語化するのが上手いと 感じました。 丁寧すぎて、嫌な思い出が 蘇ってしまう人もいるのでは?と 心配してしまうくらい。 ただ、この手のテーマは難しい。 本当に難しい。 答えがない、という答えを 知らずのう...
星4つの評価です。 人はなんて身勝手なのか。 その感覚、感情、思考を 言語化するのが上手いと 感じました。 丁寧すぎて、嫌な思い出が 蘇ってしまう人もいるのでは?と 心配してしまうくらい。 ただ、この手のテーマは難しい。 本当に難しい。 答えがない、という答えを 知らずのうちに導いてしまう。 そんな危うさを感じた作品でした。
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こういうことあったなと自分の子供時代を容易に振りかえることが出来るほど、子供たちへの解像度が高い。後先考えずなんでも言い合えたり、分別が曖昧な子供時代特有の人間関係がどこか懐かしく思えた。大人も子に対する行き過ぎた理想の押し付けだったり、行動と思考の矛盾だったりと大人が絶対正しい訳では無い。ヒサノちゃんと揉み合いになった理由でもあるその大人の裏も面白かった。結局何が正しいかは社会で決めることであり絶対的存在はいないのだと。 法子が滋とその子供達に最初に会った場所が手の届く狭い範囲内だったのに対し、最後ミカ含めた家族だ日比谷公園に来ていたことにとても救われた。
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