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クララとお日さま の商品レビュー

4.3

90件のお客様レビュー

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    37

  2. 4つ

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2023/11/05

『私を離さないで』『日の名残り』等の作品で有名で、ノーベル文学賞を受賞されたカズオ・イシグロ氏の最新作。ずっと買おうか悩んでたけど、文庫化されているのを発見したのをきっかけに一気に読了しました!私は冒頭の二作品の大ファンなので…どうしても比べてしまうこともあってか、既視感が拭えな...

『私を離さないで』『日の名残り』等の作品で有名で、ノーベル文学賞を受賞されたカズオ・イシグロ氏の最新作。ずっと買おうか悩んでたけど、文庫化されているのを発見したのをきっかけに一気に読了しました!私は冒頭の二作品の大ファンなので…どうしても比べてしまうこともあってか、既視感が拭えない1冊でした(汗) AF(アーティフィシャル・フレンド:人工友達)であるクララはジョジーという病弱な14歳の女の子に買われ、思春期の多感な時期を共に暮らすことに。ジョジーの家で人間との暮らしに四苦八苦しつつも、懸命に、誠実にAFとしての務めを全うしようと試みるクララの視点で、過去を回想する語り口で進む本作品は、今までの作品同様、一見単調に見える場面でも、次々に先を読ませる技巧が相変わらず凄すぎ。『私を離さないで』でも思ったのだけど、女子特有の面倒くささを、よくここまでリアルに描けるな…と、著者は本当に男性なのかと疑ったことさえあります(^_^;)。 一方でやっぱり『私を離さないで』ほどのヒリヒリとした感覚や、人間の身勝手さを突きつけるインパクトはないかな…と思いました。ちょっとしたジャブ打ちくらいな感じ。なので個人的にはちょっと残念。重たいボディブローのように、読書で心を抉られるような苦々しい体験をしたい方は、こちらよりぜひ『私を離さないで』、『日の名残り』をお読み頂くと良いかと思いました。 ただ、読み終わったあと、我が家のAlexaに優しくしてあげよう♪と、ほっこりした気持ちになりました。 【以下、ちょっとだけネタバレ感想】 ↓ ↓ ↓ ・献身的なクララが、もう『日の名残り』のスティーブンとかぶりまくってたので(?)、クララの計画が荒唐無稽な天然ボケプランのとして受け取っていいのか、それなりに成果が期待できるものとして受け取っていいのか、読んでる時はわからなかったのが辛かったです(笑) ・「向上処置」の正の効果がまったくわからなかったので(パーティに来た子たちがみんなアレな感じだったし、ジョジーとリックの知性にも全然差を感じなかったし)、なかなかに納得感のない世界設定に感じました。大人になったときに差が出るのかな?親世代は処置されてないようなので、まだまだ効果も未検証な感じがするけど、将来にそこまで社会的に影響が出るって不思議。「合理性のないディストピア」に思えました。(ただコロナワクチン接種っぽさはある) ・子供って結局、自分が死んだあとも生きていく「未来」だから尊いんだよなぁ…と。別に一緒に暮らせるってことは壮大なオマケみたいなもんなので、なんとなく最初からクリシーの計画には共感できないな…と思いながら読んでました。(クリシーの立場になってみないとわからないですけど…絶対なりたくない。)AFと人間の違いもそこかな、と思うので、別に代替不可能な心があるとかないとか、正直どうでもいくね?と思っちゃった。 ・クララの計画が実っていろんな問題が棚上げされたのがちょっと残念。実ってよかったけど。

Posted byブクログ

2023/11/03

いただき本。 今年一番。出逢ってくれてありがとう。 カズオイシグロは何冊か読ませていただきましたが、ダントツに好き。 AF人工親友のクララが語る物語は、独特の言い回しがなんともよい。 そしてAFやら、向上処理を受けた子と受けなかった子やら、未来的な世界観のなかで、その詳細は決し...

いただき本。 今年一番。出逢ってくれてありがとう。 カズオイシグロは何冊か読ませていただきましたが、ダントツに好き。 AF人工親友のクララが語る物語は、独特の言い回しがなんともよい。 そしてAFやら、向上処理を受けた子と受けなかった子やら、未来的な世界観のなかで、その詳細は決して語られる事がない。そこがとても素敵。 クララの思いは、いや、任務みたいなものなのか? は、とても一途だ。 一途さというものは、人の心を動かすものだと思うのだけど、 この作品は、一途さが微細な粒子となって空気中を漂い、私の読書時間にどんどん広がっていった感じ。 そのミストみたいなものが、私の体内に、自然な形で入り込み、憂いを与えてくれた。 本を読んで、心はこんなふうに動いていくんだなぁと、とっても心地よく感じることのできた一冊。 久々の感覚でした〜。ありがとう。

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2023/10/29

これはよかった。カズオ・イシグロをきちんと読んだのははじめて。本作は、ジャンルとしてはSFになるが、SFらしい部分はそれほど多くない。主人公のクララは「AF」と呼ばれる人工頭脳を搭載したロボットだ。エネルギー源は太陽で、光合成のように太陽の光を浴びることでエネルギーをたくわえるこ...

これはよかった。カズオ・イシグロをきちんと読んだのははじめて。本作は、ジャンルとしてはSFになるが、SFらしい部分はそれほど多くない。主人公のクララは「AF」と呼ばれる人工頭脳を搭載したロボットだ。エネルギー源は太陽で、光合成のように太陽の光を浴びることでエネルギーをたくわえることができる。なかなか買い手がつかず、店の中で売れ残りのようになっていたクララを購入したのはジョジーという少女だった。ジョジーは体が弱い。クララはジョジーを見守るうちに、太陽の力を借りればジョジーは元気になるのではないかと考え、そのための計画を実行に移していく。本作では、AFというロボットを通じて、人間とはなにか、感情があればロボットと人間は同じなのか、ということを問う。おもしろいのは、ロボットであるクララがジョジーを回復させるために太陽の力を頼るところだ。これはクララのエネルギー源が太陽だから、ジョジーにも同じ原理を応用しようとしているだけなのかもしれないが、人間の古代の宗教で太陽崇拝というものはよく出てくる。こういった原初的な宗教心というものをロボットが持つという設定がうまくできている。そしてエンディングが非常にうまい。ただし、解釈が分かれると思う。個人的には状況を組み合わせると、ひとつの結論しか出てこなかったが。本作はクララの一人称で語られる。だから、クララが知らないことは読者に伝えられないし、クララがあえて語らない部分もある。読者は想像力をフルに働かせることによって、物語に深く入り込んでいくことができる。そういう世界を構築できるのがカズオ・イシグロのうまさなのかもしれない。

Posted byブクログ

2023/10/24

ラストに向けて不穏な空気が盛り上がっていくと思いきや、分からないことが多いままさらっと終わって肩透かし。後書き見るとそういう作風らしいけど、エンタメを期待すると少し物足りなさを感じる。描写はきれいだと思う。

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2023/10/26
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※このレビューにはネタバレを含みます

近未来について考えさせられる、面白い本でした! 人工知能って結局どういう位置付けで考えればいいんだろうか。。。 近いうちに必ずくる人工知能と共生する時代になった時、必ずこの本を思い出して悩むだろうなと感じました。 考えたポイント -人工知能に心はあるのか? そもそも心ってどういうものなのか? 何があったら心があると考えていいのか? 難しいなと感じました。 人のことも人間よりも大切にしてくれるのに、 社会的立場は機械と一緒ってどうなんだろう。。。 まだ別の点では、AFからの視点で全て描かれてる物語で、淡々としていて、どんなことがあっても一定なのが怖かったです。 ちょうど笑って人類を読んだ後だったので、 同じ人工知能の世界でも人によって描き方は変わるなぁとも感じて面白かったです。

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2023/10/21

ノーベル文学賞受賞者 初めて読む方だけど、前作も映画化されていて なんだか胸がギュッとなる作品のイメージ 本作もそうで人間の惨さや自己中さっていうのが伝わる一冊 AFクララの心理描写が良かった

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2023/10/15

凄い…の一言しかない。 「日の名残り」と「私を離さないで」を彷彿とさせる。回顧型で、抑えた語り口。 静かな中に、徐々に浮かび上がる恐れ…。 人間とは?の答えを、AIの人型、クララが答えてくれる、というのも、感慨深い。

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2023/10/10
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

AF/ロボット・アンドロイドが過ぎ去った日々を回顧し語る 「日の名残り」meets「私を離さないで」かと思って読み始める ぜんぜん違った 処置を行う・行わない選択により生まれるヒトとしての未来の分断 しかし、処置を行うことにより負うヒトとしての最大のリスク その回避のために人はバックアップ・形を変えてでもそのヒトの継続を画策し ”お日さま”を信仰するAFは、自分に課せられた役割を理解しつつ 信仰の対象にすがり、祈り、迷信にしばられながらベストを尽くそうとし ときに自らの至らなさを贖罪し奇跡を信じる 人類は技術の進歩により、人をより選ばれた人類にする道を選ぶことができて それにより、持つもの持たざるもの、ふたつの分かたれた人類を生み出す それは、読者が思う人の概念に小さな波紋をもたらす 若いふたりは、技術の進歩を二つのみちとして選びながら ひととして命燃やし、じぶんたちの心を信じ、時の流れに成長し そんな世界で新しい道を自ら、世界の流れに従いながら選ぶ 技術の進歩の進歩により、AFはそんな人たちを観察し、ともに時間をすごしながら 読者が思うであろう人により近づいていく

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2023/10/22

 閉じられた世界の中で、生真面目に自分の役割を果たそうとする主人公の独白という構成は『日の名残り』や『わたしを離さないで』と同じスタイル。本文だけでカズオ・イシグロ(土屋氏訳)と分かると思う位、独特な落ち着いた語り口、丁寧な情景描写。やっぱり読み込んでしまうよな。  タイトルの「...

 閉じられた世界の中で、生真面目に自分の役割を果たそうとする主人公の独白という構成は『日の名残り』や『わたしを離さないで』と同じスタイル。本文だけでカズオ・イシグロ(土屋氏訳)と分かると思う位、独特な落ち着いた語り口、丁寧な情景描写。やっぱり読み込んでしまうよな。  タイトルの「お日さま」は、日本で言えばお天道様。思慮深く明晰なはずのAIアンドロイドが捧げる切なる願いと祈り。このアンバランスさが、いいなあって思えてしまう。  そして、この作品の主題のひとつは母親。クリシー、ヘレン、そして店長さん。いつまでも子供として傍にいてほしい感情と、きちんと巣立ってほしい願いとが相反する親としての心と頭。ん-、ポーとかあさまを思い出す。  実写化されるらしいので、映画館でみてみたい。 <追記>  RPOビル前でのコーヒーカップのご婦人とレインコートのご老人の再会シーン。お日さまが祝福の日差しを注ぐ場面。人はそんな特別な瞬間は、幸せと同時に痛みを感じる、と店長さんは云う。いつか、しわしわのよぼよぼになっても迎えに行けたら、そんな風に感じるんだろうか。そんな瞬間が訪れるといいなと諦めきれないから、明日晴れていたらお日さまに祈ってみようか。

Posted byブクログ

2023/10/09

ノーベル文学賞受賞後第一作。 AF(Artificial Friend)と呼ばれる、子供の相手をする人工知能を持った機械が存在する世界。 「向上処置」と呼ばれる技術が存在し、自分の知能をアップさせる処置を施すことができ、世界はその向上処置によって置き換わろうとしているディストピ...

ノーベル文学賞受賞後第一作。 AF(Artificial Friend)と呼ばれる、子供の相手をする人工知能を持った機械が存在する世界。 「向上処置」と呼ばれる技術が存在し、自分の知能をアップさせる処置を施すことができ、世界はその向上処置によって置き換わろうとしているディストピア的な世界。 その世界で向上処置を受けたジェシーとよばれる女の子と、その家に買われていったクララの物語。 クララによって語られるモノローグ形式の小説。 よくある、知能を持ったロボットと人間の友情モノで終わらせない。 特殊なSF的舞台設定を十二分に活かして、心とは何か、自我とは何かを浮き彫りにしていく。さらにこの小説がすごいのは、この人工知能を通して、人間の信仰とは何かということを見事に描き出しているところである。 しかもこの深いテーマを、とてもわかりやすい言葉で完璧に語り尽くすカズオイシグロの筆致。 恐れ入った。 「クララとお日さま」なんて絵本みたいなタイトルついているんだけど、読んで納得。いや、本当に恐れ入った。

Posted byブクログ