クララとお日さま の商品レビュー
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ロボットに感情が芽生える経緯が人々を共感させるのはわかり切っているし、もちろん私も大好物。 作中のクララは初めから一定の感情を持って生み出されていて、どうも期待していた感情の発現は訪れないと諦めていたその時、視界の端々から得る情報を基に太陽を信仰する。 崇める対象とその光景を思うと、論理では説明できないような、経験と直感を根拠に何より自分を信じた古の時代を連想した。神話とかそういう時代のね。 まだ解釈しきれていない部分も多くあるので、 これは何度も読みたいと感じる。
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子どもの親友(と書かれるが、乳母に近いイメージだ)として開発された、AIを搭載した精巧なロボットAF(Artificial Friend)が店先に並んでいるところから物語は始まる。AFであるクララが語る内容から、格差が激しくなった世の中の仕組みを読者が理解していく手法だ。また、...
子どもの親友(と書かれるが、乳母に近いイメージだ)として開発された、AIを搭載した精巧なロボットAF(Artificial Friend)が店先に並んでいるところから物語は始まる。AFであるクララが語る内容から、格差が激しくなった世の中の仕組みを読者が理解していく手法だ。また、AFが太陽光をエネルギー源としていることから、クララには太陽信仰に近い感覚があることも理解できるよう仕掛けられている。 人工物だけれど人格がある、いわば “ニンゲン”をどう扱うのか、同じ著者の『私を離さないで』とよく似たテーマだ。 子供の親友として成長に付き添い、子供が成長した後は廃却されるAFの “人生”を見届けるのは廃却場の職員だ。ただし、クララの場合は親友としてあてがわれた病弱な少女が亡くなった後、その少女の代役として生きていく役割を担っていたため、物語は深みを増している。 結果的に少女は健康を取り戻し成長したため、クララは短い使命を終え廃却される。クララの意識はもうろうとしたような描写になっているが、エネルギー源である太陽がある限りクララの余生は永遠に近いのではないか。クララは少女の親友として生きた短い十数年間を反芻し、永遠に近い余生を生きるのだろう。 クララは他のAFより優秀であるよう描かれている。登場人物の中で、低層の階級に属する優秀な少年も描かれるが、低層階級から抜け出すまで物語は展開しない。AFであれ、人間であれ、属性から逃れることはむつかしい。
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少女ジョジーを巡った様々な愛が描かれた温かく、そして少し切ない物語。 AIが主人公であることも面白かった。 携帯やPCにももしかすると感情があるのでは無いかと思うと、もっと物を大事に扱おうと思った。
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文脈からどんどんとフラグが回収されていき、予想外の展開に。ハッピーエンドで終わったことや、クララの言葉の深さなど、満足感が高かった。 普段小説を読むのに時間がかかってしまうのだが2日ほど集中して読み終わりました。
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子どもを寂しがらせず、教育するためのAF(人口親友)。 AIは心を持ちうるか、その場合人間に取って代わる存在になるのではないか、というAIでよく論議されるテーマが垣間見えた。病気のジョジーが亡くなった場合に備えて、AFのクララにジョジーを学習させ、ジョジーを継続させようという計画では、ジョジーに特殊なものは何もないからそれが可能だという立場が提示されるけれど、特殊で代替不可能なものはジョジーの中ではなく、ジョジーを取り巻く人々の心の中にあるのだ、というクララの指摘がとても的を射ていると思う。結局ジョジーの代替品ができても母親は納得しないだろうという父親の指摘も尤も。クララがお日さまと交渉して特別な栄養をジョジーに注いでもらい、ジョジーがそれから回復していくというのも、人工に対する自然の勝利だし、環境破壊に対する警鐘もテーマだと思う。
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ノーベル受賞の「私を離さないで」に続くディストピア連作第2話的な今作。しかし臓器移植における本質をダイレクトに突き付け、考えさせられた「私を離さないで」に比べ、まだ未知数のAIが主人公の今作は寓話として読んでも響く部分が少なかったか。 それでも家族、友達、希望、などその言葉の持つ...
ノーベル受賞の「私を離さないで」に続くディストピア連作第2話的な今作。しかし臓器移植における本質をダイレクトに突き付け、考えさせられた「私を離さないで」に比べ、まだ未知数のAIが主人公の今作は寓話として読んでも響く部分が少なかったか。 それでも家族、友達、希望、などその言葉の持つ意味をもう一度考えさせられる、そんなところは健在で良かった。
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初めてカズオ・イシグロさんの本を読みました。 AF(アンドロイド)目線でストーリーは進んでいきます。クララはAFだけど、人間をよく理解していて、でも本質的に理解しきれてない部分もあると気づいていたり、人間の身勝手さも受け入れて、AFとして何ができるのか、行動で示します。 翻訳ものに慣れてなくて少し難しく、ストーリーを理解するのにも時間がかかりました。 もし本当にクララがジョジーのAFとして生きるという選択肢を取っていたら、クララはジョジーとして適応できたんだろうか…と思います。 人工知能が人間の微細な感情まで理解、再現したり、人間の替えになるような未来になったら恐ろしいです。
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イシグロさんの世界観に引き込まれました。 クララの思考の理屈に沿った部分と、太陽への崇拝の姿勢のような非科学的な部分とがあることで、クララに見えている世界観をまるで自分が感じているかのように味わうことができました。 ラストの廃品置き場でのシーンでは、人間とロボットの間の超えられな...
イシグロさんの世界観に引き込まれました。 クララの思考の理屈に沿った部分と、太陽への崇拝の姿勢のような非科学的な部分とがあることで、クララに見えている世界観をまるで自分が感じているかのように味わうことができました。 ラストの廃品置き場でのシーンでは、人間とロボットの間の超えられない壁のようなものを感じさせられました。 「わたしを離さないで」もそうですが、イシグロさんの作品は読了した後に、もう一度読んでみたい気持ちになります。
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一人の少女に仕えるAF artificia friendの物語 細かい背景の説明をせずに読み手に世界観を伝える力は「わたしを離さないで」に通ずる。 周りの環境や感情の変化を敏感に読むことのできるAFは主人である少女の治療のためにも自らを危険にさらす。
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クララ(AF=AI)は太陽信仰や人間のような感情を持とうとする。 一方人間側は、感情を良いものとは捉えずAFを人間として扱ってしまおうという始末。加えて向上処置(科学技術による能力引き上げ処置?)など、人間離れした存在を目指すようになる。 ここらへんがAIの人間化と人間のロボット化との対比として描かれていて良い。 社会問題も取り上げられているそうなので、これから調べる。科学技術の進歩による倫理観を問う作品であり、心打たれる話でもあった。 最初はカズオイシグロ作品のなかでもあんまり好きではなかったけど、考察や読み返すことで深みの出る作品なのかな。アイロニーとか物悲しさみたいなのは他の作品と同様で存分に味わえた。
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